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第86話 セントラルダンジョンを探します #1
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「……ねえ、そういえば今日突然集まる事になった理由って、結局何だったの?」
場が落ち着いたところでピノは質問を投げ掛けた。
突如開催された夜の女子会。会場であるミレアの部屋を訪れたピノを待ち構えていたのは、前回の女子会と同じくミレアとロベリーであった。出されたお茶とお菓子に手を伸ばしつつの軽い雑談――から現在に至る。
そのピノの疑問に答えたのは部屋の主であるミレアだった。
「目撃情報があったの」
「目撃情報?」
何処と無く不穏な響きのその言葉に思わず問い返すピノ、そして何事かと興味深そうに見つめるロベリー。その二人に向かって、ミレアはゆっくりと言葉を続けた。――以前本で読んだ名探偵のように。
「そう、今日この王都でピノ様とカルア君が仲睦まじくデートをしていたという目撃情報が、ね」
「なっ!?」
「…………」
その言葉に驚くロベリー、そしてそっと目を背けるピノ。犯人はこの中にいるっ!
「予定ではカルア君はまだフタツメにいるはずよね? それが今日は王都でデート……どういう事なのか、きっちり聞かせてもらえるかしら?」
「学校行事をサボって彼女とデートとか、カルアくんって実は不良くん? っていうかパーティの子達はどうしたのよ」
事実を突き付けて容疑者に問いかけるミレアと、一瞬で問い詰める態勢に移行したロベリー。女子会という名の女子裁判が今、幕を開ける!
裁判長ミレアと判事ロベリーに対し、被告人ピノは身の潔白を証明するべくセカンケイブでの出来事を包み隠さず証言した。
その結果――
「そっか、室長が一昨日突然どっか行っちゃったのって、あれセカンケイブに行ってたんだ……帰ってから凄く忙しそうにしてたし、訊いても上手くはぐらかされてたから……けど、やっと分かったわ」
と、身の回りで起きた出来事との線も繋がった事で納得したのは、ロベリー判事。
「なるほど。じゃあ昨日セカンケイブ攻略から戻って今日は一日休みだったって事か。それなら取り敢えず今日のデートについてピノ様は無罪って事でいいわね」
と、こちらはミレア裁判長。
何とか無事にカルアのサボり疑惑及びピノのサボらせ疑惑を晴らす事が出来たピノは、掴み取った無罪判決にほっと息をついた。
だがそれはそれ。ピノへの追求が終わった訳ではない。
「じゃあ次は、突っ込みどころ満載のセカンケイブの話をしましょうか。色々と聞きたい事はあるんだけど……まず一番はコレよね」
そう言ってミレアとロベリーは目を合わせて軽く頷き――
「「『主に愛の戦士』って何よ!?」」
そう口を揃え、勢いよく突っ込んだのである。
彼女達にとって最も重要なのは、隠しダンジョンの存在よりもダンジョンの精霊よりもむしろその部分。そしてそれはピノもまた……
「だって……『愛の戦士』って言い切っちゃうと何だか恥ずかしいっていうか……それにもし後でカルア君に正体がバレたら気まずいかもって思ったら……だから『愛だけじゃないよ』って……」
「うーん、分かるような分からないような微妙な理由ね……要するにピノ様、逃げ道を用意しときたかったって事?」
「はうっ!」
微妙な乙女心を一言で切って捨てられ、思わず胸を押さえたピノ。だがその直後――
「ま、逃げ道にはなってないけどね」
「ひぐっ!?」
返す刀でとどめを刺されてしまった。残念!
「でもまあ、もう遅いか。一度そう名乗ってしまった以上、この先もそれで押し通すしかないわね。それでピノ様、『愛』以外の設定もちゃんと考えてあるの?」
「う………………ない」
「だと思った。じゃあ後で一緒に考えましょ」
「……うん」
一番聞きたかったところはガッツリ聞けた。で、その次にミレアの興味を引いた点といえば――
「わたし的には『撲撲棒』っていうのが気になってるのよね」
応用魔法研究所は魔法の軍事転用を主とした組織である。その所長であるミレアとしては、仕事柄武器に対する情報を見過ごす事は出来ない。ましてやそれが今まで見た事も聞いた事も無いようなモノであれば、もう心底興味津々間違い無しなのである。
「これがその撲撲棒。私のだよって今朝カルア君が作ってくれたの。王都に来る前にヒトツメの森に行って試したんだけど……打撃感って言うのかな、これで魔物を打った時の感触がすっごく楽しいの」
そう嬉しそうに話すピノからミレアは撲撲棒を受け取り、そして――
「どれどれ……うん、視えないって事はやっぱりロベリー式で――って作ったのが弟弟子君なんだから、それはそうか。ねえちょっとロベリー、これ視てもらえる?」
通常の付与を習得しているミレアにはロベリー式を視る事が出来ない。なので受け取った撲撲棒はそのままロベリーの手に。
「ええっと……ふーん、なるほどぉ……仕組みは単純だけど発想が面白いわね。当たった瞬間に多少の負荷だけを残した差分のベクトルを発動させる事で、棒を最後まで強制的に振り抜かせる、か。発動は相手に接触している間だけだから、体への負担は無さそうね。……へぇ、棒同士の場合はベクトルを打ち消し合うのか。これは多分訓練用かな?」
付与の聖女の目は欺けない。彼女によってカルアの付与が丸裸にされてゆく。
その解説を聞くミレアの瞳が輝きを増す。最初に感じたよりも更に数段面白そうだ。
「面白いわね……これは確かに発想の勝利って感じかな。ねえロベリー、この棒のコピーは作れる?」
自分の手でも思う存分試してみたい!
「そうね、ギルドでなら出来ると思うわ。もちろんカルア君の魔石じゃなくって抜いた魔石の方で作るんでしょ?」
「流石分かってるぅ! じゃあお願いね。時間がある時でいいから」
「りょーかーい」
リバースエンジニアリングからのコピー品ではあるが、面白そうな玩具を手に入れる算段はついた。
ならば話題は次へと――
「次は……ダンジョンの精霊か。その精霊ってピノ様自身は見てないのよね?」
「そうなの。それって全部私が帰ってからの出来事で、後でカルア君から聞いた話だから」
「分かった。精霊の事は明日にでも室長を問い詰めてみるわ。もうここまで聞いてるからって言えば、室長も今更惚けたりしないでしょ」
「あ、だったら私も一緒にモリス先輩を問い詰めたいな。じゃあさ、ししょーのところに集まって話すように予定組んじゃって。ロベリーなら出来るでしょ?」
「勿論。だって秘書だもの」
どうやらモリスの予定がロベリーの秘書権限で決まりそうだ。
「あ、でもちょっと待って。カルア君、明日みんなでセントラルの探索に行くって言ってたの。どうせならその結果と一緒に聞く方がよくない?」
「あっ、それ賛成!」
「だとすると……その報告は次の日曜日か月曜日あたりかな。仮押さえしとこっと。確定したら連絡するね」
……決まったようだ。
場が落ち着いたところでピノは質問を投げ掛けた。
突如開催された夜の女子会。会場であるミレアの部屋を訪れたピノを待ち構えていたのは、前回の女子会と同じくミレアとロベリーであった。出されたお茶とお菓子に手を伸ばしつつの軽い雑談――から現在に至る。
そのピノの疑問に答えたのは部屋の主であるミレアだった。
「目撃情報があったの」
「目撃情報?」
何処と無く不穏な響きのその言葉に思わず問い返すピノ、そして何事かと興味深そうに見つめるロベリー。その二人に向かって、ミレアはゆっくりと言葉を続けた。――以前本で読んだ名探偵のように。
「そう、今日この王都でピノ様とカルア君が仲睦まじくデートをしていたという目撃情報が、ね」
「なっ!?」
「…………」
その言葉に驚くロベリー、そしてそっと目を背けるピノ。犯人はこの中にいるっ!
「予定ではカルア君はまだフタツメにいるはずよね? それが今日は王都でデート……どういう事なのか、きっちり聞かせてもらえるかしら?」
「学校行事をサボって彼女とデートとか、カルアくんって実は不良くん? っていうかパーティの子達はどうしたのよ」
事実を突き付けて容疑者に問いかけるミレアと、一瞬で問い詰める態勢に移行したロベリー。女子会という名の女子裁判が今、幕を開ける!
裁判長ミレアと判事ロベリーに対し、被告人ピノは身の潔白を証明するべくセカンケイブでの出来事を包み隠さず証言した。
その結果――
「そっか、室長が一昨日突然どっか行っちゃったのって、あれセカンケイブに行ってたんだ……帰ってから凄く忙しそうにしてたし、訊いても上手くはぐらかされてたから……けど、やっと分かったわ」
と、身の回りで起きた出来事との線も繋がった事で納得したのは、ロベリー判事。
「なるほど。じゃあ昨日セカンケイブ攻略から戻って今日は一日休みだったって事か。それなら取り敢えず今日のデートについてピノ様は無罪って事でいいわね」
と、こちらはミレア裁判長。
何とか無事にカルアのサボり疑惑及びピノのサボらせ疑惑を晴らす事が出来たピノは、掴み取った無罪判決にほっと息をついた。
だがそれはそれ。ピノへの追求が終わった訳ではない。
「じゃあ次は、突っ込みどころ満載のセカンケイブの話をしましょうか。色々と聞きたい事はあるんだけど……まず一番はコレよね」
そう言ってミレアとロベリーは目を合わせて軽く頷き――
「「『主に愛の戦士』って何よ!?」」
そう口を揃え、勢いよく突っ込んだのである。
彼女達にとって最も重要なのは、隠しダンジョンの存在よりもダンジョンの精霊よりもむしろその部分。そしてそれはピノもまた……
「だって……『愛の戦士』って言い切っちゃうと何だか恥ずかしいっていうか……それにもし後でカルア君に正体がバレたら気まずいかもって思ったら……だから『愛だけじゃないよ』って……」
「うーん、分かるような分からないような微妙な理由ね……要するにピノ様、逃げ道を用意しときたかったって事?」
「はうっ!」
微妙な乙女心を一言で切って捨てられ、思わず胸を押さえたピノ。だがその直後――
「ま、逃げ道にはなってないけどね」
「ひぐっ!?」
返す刀でとどめを刺されてしまった。残念!
「でもまあ、もう遅いか。一度そう名乗ってしまった以上、この先もそれで押し通すしかないわね。それでピノ様、『愛』以外の設定もちゃんと考えてあるの?」
「う………………ない」
「だと思った。じゃあ後で一緒に考えましょ」
「……うん」
一番聞きたかったところはガッツリ聞けた。で、その次にミレアの興味を引いた点といえば――
「わたし的には『撲撲棒』っていうのが気になってるのよね」
応用魔法研究所は魔法の軍事転用を主とした組織である。その所長であるミレアとしては、仕事柄武器に対する情報を見過ごす事は出来ない。ましてやそれが今まで見た事も聞いた事も無いようなモノであれば、もう心底興味津々間違い無しなのである。
「これがその撲撲棒。私のだよって今朝カルア君が作ってくれたの。王都に来る前にヒトツメの森に行って試したんだけど……打撃感って言うのかな、これで魔物を打った時の感触がすっごく楽しいの」
そう嬉しそうに話すピノからミレアは撲撲棒を受け取り、そして――
「どれどれ……うん、視えないって事はやっぱりロベリー式で――って作ったのが弟弟子君なんだから、それはそうか。ねえちょっとロベリー、これ視てもらえる?」
通常の付与を習得しているミレアにはロベリー式を視る事が出来ない。なので受け取った撲撲棒はそのままロベリーの手に。
「ええっと……ふーん、なるほどぉ……仕組みは単純だけど発想が面白いわね。当たった瞬間に多少の負荷だけを残した差分のベクトルを発動させる事で、棒を最後まで強制的に振り抜かせる、か。発動は相手に接触している間だけだから、体への負担は無さそうね。……へぇ、棒同士の場合はベクトルを打ち消し合うのか。これは多分訓練用かな?」
付与の聖女の目は欺けない。彼女によってカルアの付与が丸裸にされてゆく。
その解説を聞くミレアの瞳が輝きを増す。最初に感じたよりも更に数段面白そうだ。
「面白いわね……これは確かに発想の勝利って感じかな。ねえロベリー、この棒のコピーは作れる?」
自分の手でも思う存分試してみたい!
「そうね、ギルドでなら出来ると思うわ。もちろんカルア君の魔石じゃなくって抜いた魔石の方で作るんでしょ?」
「流石分かってるぅ! じゃあお願いね。時間がある時でいいから」
「りょーかーい」
リバースエンジニアリングからのコピー品ではあるが、面白そうな玩具を手に入れる算段はついた。
ならば話題は次へと――
「次は……ダンジョンの精霊か。その精霊ってピノ様自身は見てないのよね?」
「そうなの。それって全部私が帰ってからの出来事で、後でカルア君から聞いた話だから」
「分かった。精霊の事は明日にでも室長を問い詰めてみるわ。もうここまで聞いてるからって言えば、室長も今更惚けたりしないでしょ」
「あ、だったら私も一緒にモリス先輩を問い詰めたいな。じゃあさ、ししょーのところに集まって話すように予定組んじゃって。ロベリーなら出来るでしょ?」
「勿論。だって秘書だもの」
どうやらモリスの予定がロベリーの秘書権限で決まりそうだ。
「あ、でもちょっと待って。カルア君、明日みんなでセントラルの探索に行くって言ってたの。どうせならその結果と一緒に聞く方がよくない?」
「あっ、それ賛成!」
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……決まったようだ。
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