スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第88話 セントラルよいとこ一度はおいで #4

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「そんな大人気ダンジョンを運営するお姉ちゃんには、是非ともこのダンジョンについて相談にのって欲しいです!」
「そっ、それは……ええっと……」

今度は凄い勢いで視線が泳ぎだした……
気持ちは分かるけど。

「……あっ、そうだ! ほら、せっかく冒険者が来てるんだから、彼らに聞いてみたらどうかしら。私も実はそれで成功したってゆーか」
「なるほどぉ! 直接ユーザーの声を聞くのが大事って事ですね。流石はセカンお姉ちゃんです!」

ラルの素直さの上で続くセカンの綱渡り、見ていてハラハラする。

「セカンお姉ちゃんにあえて本当によかったです。ダンジョンってゴブリンとかをたくさん用意しとけばいいのかなぁ、なんて思ってたです! うっかり大失敗を犯すところだったですぅ!!」
「ぐふわっ!!」

あ、直撃受けた……

「冒険者として言わせてもらうと、一般的に冒険者っていうのは、利益を求めてダンジョンに行くんだ。もちろん冒険者だから『冒険をしたい』っていうのもあるけど、それよりまず仕事として素材とか食べ物とかの採取を依頼されるんだよ。だからね、人気のあるダンジョンにするには、冒険者に『ここのダンジョンは儲かる』って思わせる事が大事なんだ」

おおっ、流石はノルト! なんて見も蓋も無くて的確な意見!!

「私もそう思うわ。セカンケイブダンジョンがあるフタツメの街はね、付近に森が無くて森の魔物や植物が手に入りにくい場所なの。そこでダンジョンを森にする事で冒険者を呼び寄せたって訳ね」

そしてアーシュとのコンビネーションが冴え渡る!

「じゃあこの場所はどうだと思う? 人口が多くて商人も商品も多く集まる王都がすぐそばにあって、ダンジョンの周囲は大きくて豊かな森に囲まれてる。そんな場所で求められるのは何?」

それって何の不足もないから何の必要もないって事? 僕と同じように感じたのか、ラルも不安そうな表情。

「王都には各地から食べ物とかが集まってくるけど、それ以上に人も増えてきてるの。だからやっぱり食材系は欲しいところよ。あと魔道具作りとかも盛んだから、それらの素材も喜ばれると思う。あとは金属。需要は高いけど重いから、近場で確保出来ると助かるわね。ノルトはどう思う?」

アーシュ凄い。こうして聞くと、モノはあるけど不足もあるって事がよく分かる。

「うん、そのあたりは固いだろうね。あとは冒険者目線で考えると、ダンジョン産の武器や防具なんかが手に入れられたら嬉しいと思うよ。特にこのダンジョンは規模が大きいからさ、より深い場所ではより良いアイテムが手に入るようにしつつ、稀に浅い階層でもたまに良い物が出たりすると、射幸性アップ間違いなしじゃないかな」

「成程です。つまりこのダンジョンが目指す方向性っていうのは……」
「「本格派ダンジョン!」」

ついに、新しいダンジョンの方向性が決まった……
プロジェク◌・エーックス!

「難易度とかはこれから状況を見て調整していけばいいんじゃない? あとはそうね……簡単に踏破されないように、時々マップが変わっちゃう階層を作ったりとか?」
「おーっ、それは面白そうです!」

「カルアお兄ちゃんのおかげでダンジョンの魔力量は全く問題ないです。強大な資本にモノを言わせてやりたい放題やってやるです!」

可愛い顔から繰り出す驚く程の悪い笑み!
実に楽しそうだ。

あ、でも――
「ちょっと待って。これは僕からのお願いっていうかワガママなんだけど……」

できれば叶えて欲しいから。

「1階層目だけはすっごく簡単な階層にしてくれないかな。迷路とかじゃなくって広くて見晴らしのいい場所で、罠とか強い魔物とかが出なくって、良質な薬草とかがたくさん生えてるような」

そんな場所があったら……

「カルア、それって……」
「中にはきっと、親がいないとかやむ無い事情で冒険者になった子もいるだろうから。そんな子供でも暮らしていけるようにしてあげたいんだ」

そう、かつての僕みたいな、ね。
それに――

「特にこのあたりの森、浅いところは薬草とか採り尽くされちゃってるからさ。みんな苦労してると思うんだ」
「「「「…………」」」」

僕とみんなの表情から何かを汲み取ったみたいで、ラルは少し思案気な様子を見せ、そしてパッと明るい表情を浮かべた。

「分かったです! それなら第1階層はサービス階層にして、その下の浅い階層は初心者向けのチュートリアル階層で育成モードにするです! いいお客さんは自らの手で作り上げるのが、精霊の心意気ってヤツですよ!!」
「ははは……ありがとうラル!」
「まったく、優しいお兄ちゃんに付き合う妹は苦労するです!」

本当に、よく出来た妹だよ。

「さて、それじゃあ早速始めるです! 気合い入れて今日中にダンジョンを作り上げるですよ!」
ラルが『ふんすっ』って感じで腕まくり。力こぶは無いけど気合いは漲ってるみたいだ。

「セカンお姉ちゃんはどうするです?」
「私は一旦帰るわ。結界を解除してくれた人を待たせちゃってるしね」
そうだ、モリスさんがラルの所にいるんだっけ。

「結界の改良が終わったらまた来るから。あっそうそう、この最下層は誰も入れないように閉じときなさい。変な人が来たら危ないし、カルア達だったら転移で来れるし」

30階層を踏破する力を持った変な人……確かに危なそう!

「分かったです。今日はありがとうです、セカンお姉ちゃん!」

こうして僕達のセントラルダンジョン探索ミッションは、初日のうちに完了を迎え――
「それで、カルアお兄ちゃん達には記念すべきお客さん第一号になって欲しいです! 明日の朝、攻略をお待ちしてるですよ!!」

ははっ、それなら予定通り明日もまた来なきゃね。
僕の妹に会いに!



▽▽▽▽▽▽
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