スティールスキルが進化したら魔物の天敵になりました

東束末木

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第71話 聖女と悪魔と気配察知の訓練です #2

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「なっ、ななななな、何だい突然っ!?」
むせたせいか、真っ赤な顔でそう叫ぶベルベルさん。
……こういう姿を見ると、やっぱりアーシュのお祖母さんなんだなあって思う。

「だって僕のお母さんがベルベルさんの娘なら、ベルベルさんは僕のお祖母さんって事だから……やっぱりアーシュみたいに『お祖母様』って呼んだ方が良いのかなあって」
「…………」

暫く僕を見つめたベルベルさんは、やがてどこか残念そうな顔で溜息を吐いた。
「この間さ、あんたの危機が全てクリアされるまでは、あんたとベルマリア家の関係を秘密にするって言っただろう? だけど何がどう未来に影響するかなんて誰にも分からない。そうだろう?」

うん、確かにその通りだ。
母さんが視えるのはその先の結果だけなんだし。

「だからさ、妙なところでうっかり足を踏み外さないように普段から習慣付けておく必要があるんだよ。だから呼び方は今まで通り変えるんじゃないよ。例え周りにいるのが仲間や身内だけだったとしてもだ。あたしは単なるあんたのチームの一員、それはアーシュに対して同じだよ。あんたとあのはただのパーティメンバー同士。従兄妹だなんて思うんじゃないよ。いいね?」

「……はい、分かりました」
そっか……
うん、全部自分の為なんだからちゃんと気持ちを切り替えなくちゃ。
今まで通り、今まで通り。

だから――
「しかし『お祖母様』か……ああ悪くない、悪くないねえ……ふふふふふふ……」
なんてニヤけてるベルベルさんは、全力で見なかった事にする!

それからモリスさんからの最後の注意が。
「ああそうそう、他にも魔石パウダーの技術使用料とかその他諸々が振り込まれるけど、その分の税金とかはベルマリア家の方で全て支払い済みだからね。むしろ税金関連から足がつく事も考えられるから、誰かに何か言われても絶対に確定申告とかしちゃダメだよ?」

税金……
そんな問題もあったんだ……

そしてモリスさんは悪戯っぽく笑って――
「まあ税金とかはいつか冒険者以外の仕事をする時に考えればいいさ。そう、例えば『カルアやらか商会』を設立した時とかにね」
本日の呼び出しはこれにて終了。



さて次はどうしようかなって思ってたらギルマスから通信が来てフィラストダンジョンの前にやって来た。今日の訓練はもう終了? いつもよりかなり早いけど……

「すまないなカルア君。実は森での訓練を終えてダンジョンでの訓練に進んだのだ。それでダンジョン内での気配察知にも十分慣れたから、いよいよ魔物部屋の訓練を始めてくてな。それで魔物部屋へのギリーとして君を呼んだのだ」
「ああ、それで……分かりました。今から行きますか?」
「うむ、頼む」

ダンジョンの入口でカードを翳し、いつも通りダンジョンの中にやって来た。
「じゃあ魔物部屋へのトラップを発動させますね」
一歩進むとダンジョン内が赤い光に包まれる。
そう言えば前回来たのってピノさん達との『現場検証』だったっけ――なんて事を考えながら振り返って転移装置にカードを翳せば、こちらもいつも通りに転送トラップが発動されて……
僕達は魔物部屋へとご招待された。



「【結界】は張りますか?」
「ああ、頼む」
結界を張って少し待つと、壁から魔物がわらわらと滲み出てきた。
……うん、もう見慣れたこの景色には何も感じないや。

「さてネッガー君、これがダンジョンの魔物部屋だ。どうだ、初めて見た感想は?」
「とんでもない数の魔物です。……これをカルアは初めてで全部倒したのか?」
「そうだよ。いやあの時はもうダメかと思ったよ。まあ実際スキルが進化しなかったらダメだったんだろうけどさ。あははは」
「……」

ネッガー、そんな深刻そうな顔しないでよ。
もう随分前の話なんだからさ。ね?

「この訓練でネッガー君には、この魔物に触れられる事なく全てを倒せるようになってもらう。と言っても最初からこの数を捌き切るのは無理だろうから、まずは間引いた状態からだ。カルア君、間引きは君に頼んでいいかな?」
「いいですよ、ちょうど僕も魔石が欲しかったので」

クリームのね。

「了解した。確か前回は4回の【スティール】で全て倒したのだったな。ならば今回は3回めまで全て殲滅し、4回目は部屋の隅に移動してからランニングバットだけを残して殲滅してくれ」
「分かりました」

さてと、じゃあまずは【俯瞰】――
で、把握した空間から全部魔物指定して――
「じゃあ始めますね。【スティール】」
目の前に浮かぶ沢山の魔石――はもちろんそのまま【ボックス】へイン。
足元に落ちた死骸も訓練の邪魔だから【ボックス】に入れとこう。

「凄い……これがカルアの【スティール】か」
「時空間魔法との組み合わせによって、この数を一撃で跡形もなく殲滅できる凶悪スキルだからな。初めて見たら驚くのも当然だ」
「倒すと言うより消し去ると言うべきか……これは戦いとは違う」
「その通りだ。どちらかと言うと採取とか駆除……もしくは投網漁か?」

すぐ横で交わされるそんな会話を聞きながら、3回めまでスティールが完了した。
部屋が空っぽになった隙に隅へと移動して、結界を張り直してから4回目。予定通りにランニングバット以外を全てスティールしたら、いよいよネッガーの訓練が始まる。
「ではネッガー君、君は部屋の中央に移動してランニングバットを倒すのだ」



「――くっ」
一瞬の隙を突かれ、ランニングバットからの体当たりを受けてしまった。
「考えるのは後にしろ。今はまず感じ取る事に集中するのだ」
すかさずそんな俺に飛んでくる、ブラック先生からの鋭い指摘。
効率よく倒していく手順を考えてしまったのを見抜かれたか。
まだまだ先は長いな。

「――むっ!?」
後ろから体当たりを食らったか。
もしこれが攻撃力の高い魔物からだったら危なかったな。

「――うっ!」
左右から同時に引っ掛かれた。
「目で追おうとするな、全身で感じるのだ」
そうは言ってもこれだけ数が多いとな……

「一匹一匹を追おうとするな、周りの全てを一体として感じとるんだ」
はっ、いつの間にか俺は一匹ずつ全てを感じ取ろうとしていたのか。
そうじゃないだろう? 森の中での訓練を思い出せ!
焦点を絞らず、自分の周りの全ての気配を薄く薄く感じ取れ……
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