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第57話 それぞれの休日、それぞれの家族 #2
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ここミツツメの街は、王都の東に位置する大きな街である。
そんなミツツメの街で生まれ育ったネッガーは、今日再びこの地へと戻って来た。
「ただいま帰りました」
家の扉をくぐったネッガーを出迎えてくれたのは、母親のシルと弟のローンの二人だ。
「お帰りなさいネッガー、久し振りね」
「お帰りなさいっ兄上!」
優しく微笑むシルと溢れる笑顔を見せるのローンに微笑みを返すネッガー、そのネッガーの背後からミツツメの警備隊長を務める父ベスタが姿を現した。どうやら今日の仕事を終え帰宅してきたようだ。
「おお、帰ってきたのかネッガー。では早速――前回からどれほど強くなったのかを見せてもらおうか」
ベスタは強者特有の人を惹きつける笑みを浮かべると、そのまま隣に建つ道場へと足を進めた。そのすぐ後ろからはネッガーが、そしてそのまた少し後にはシルとローンが期待に満ちた表情で付いてきている。どうやらこの家ではこれが平常運行のようだ。
「む、帰ってきおったかネッガー。――全員そこまで、場所を空けよ!」
道場主である祖父のスターから掛かった声に弟子達は動きを止め、素早く壁際に下がった。
そんな彼らからの視線が集まる中、道場の中心では父と子が剣を取り正対する。
「――では始めよう」
やがてどちらともなく剣を合わせると、予定調和の如く流れるその剣は、やがてせせらぎから急流、そして激流へとその様相を変えてゆく――
長いような短いような剣戟の末、静止したベスタは我が子に声を掛けた。
「ほう、中々腕を上げたようだ。しかし……この程度か?」
その父の挑発とも取れる言葉に、ネッガーはニヤリと笑みを返した。
「いいえ父上、今の俺にはもう一段上があります」
「ふっ――ならば見せてみよ!」
こうして再び剣を交える父と子。
より速く、より強く、より激しく。……そしてより美しく。
それを静かに見守る弟子達に家族達、その目の輝きもまた――より強く。
やがて父と子がその動きを止めると、道場は壁際から漏れる溜息の後に再び静けさを取り戻した。
「――見事だ」
「ありがとうございます父上。本日はお願いがあって参りました」
「言ってみるがいい」
「冒険者登録を致したく――」
「強くなれるのか?」
「間違いなく」
「ならばやってみるがいい」
「ありがとうございます」
脳筋達に、言葉による説明は不要である。
そしてこちらは王都の南、ヨツツメの街。
「父よ、母よ、わたしは帰ってきた」
「ふふふ、相変わらずねワルツちゃん。お帰りなさい」
まったく挨拶になっていない、そんな我が娘の帰宅の挨拶に、ふんわりと微笑みを返す、母トレス。
そして――
「帰ったか、ワルツ。待っていた」
厨房から顔を出す父コクサン。
ワルツの口調が誰から受け継がれたものかは、説明するまでもないだろう。
ワルツの家はここヨツツメでは知らぬ者が無い超有名レストラン。
海がほど近いこのヨツツメに数多くあるシーフード専門のレストランとは違い、幅広いジャンルのメニューを揃えた、王都に近いスタイルのレストランである。
その大繁盛レストランも今はディナータイム前の準備中、当然客の姿はない。
「家に入る前に何か食べてく?」
「うん、いつもの」
「はい、いつものね。あなたお願い」
愛娘からのオーダーにコクサンは音もなく動き出し、そして間もなくワルツのもとに届いた『いつもの』プレート――
美しく盛られたピラフとその横に鎮座する湯気を纏いしハンバーク、向かいには清楚な佇まいのオムレツに、その黄色との対比が鮮やかなスパゲッティ。そしてそれら至高のソファに身を預けるは、気品溢れるタルタルのマントにその身を包む神々しき女王――エビフライ。そう、ここはワンプレートの王国。ならば当然ピラフの中央には――王国を象徴する高貴なる純白の旗が彼らの誇りを現し示す!
そう、『いつもの』王侯さm――お子様ランチである。
目の前に置かれたそのプレートをキラキラした瞳で見つめ――まずは旗へとその手を伸ばす、今日も安定のワルツであった。
そして今日の営業も終わり、その夜――
「そう、そのカルア君って子といつも一緒なのね」
「うん、カル師、マイ師匠」
「ふーーん、それでカルア君って、ワルツちゃんにどんな事を教えてくれるの?」
「カル師、色々凄い。すごい事を、わたしに、たくさん。開発とかも」
ぶふおぉぉぉぉーーーーっ!!!!
ワルツの言葉に盛大にお茶を吹き出す父コクサン。
それを横目に、静かに言葉を続ける母と娘。
「じゃあ、新しい事とかも色々教えてくれたりとか?」
「うん、今まで知らなかった。カル師の、すごく熱い。わたしも熱く出来た」
がふぁっ!!! げふっ!! げはっ!! げほっ!!
気を落ち着けようと再度お茶を口に含んだコクサンだったが、今度は気管に入ったのか盛大に咽る。
それを見つめる妻と娘の眼は冷たい。
「じゃあワルツちゃんもちょっと変われた感じなのね」
「そう、太く長く。あと上手に飛ばせる。すごい勢いで。量もコップ2杯に」
「こここ、コップ2はいーーーっ!?」
度重なる興奮に限界を超えたコクサンは、その叫びを最後に崩れ落ちた。
「父、魔法の話で興奮しすぎ。実は魔法好き?」
「ふふふ、そうねえ、どうなのかしらね」
娘のキョトンとした表情に、トレスは実に楽しげな笑みを浮かべた。
これまでの微妙な言い回しは勿論全て彼女の狙い通り。ワルツから返ってきた想定を上回る素晴らしい回答に心底大満足といった様子である。
「そうかあ……凍らせるだけじゃなくって、カルア君が開発した熱くする魔法も使えるようになったのね。それに作れる氷も倍の大きさになって飛ばすのも上達出来たのかあ。カルア君って凄いお師匠さんなのね」
「そう、それで今度みんなでパーティを組んで冒険者登録する」
「それは楽しそうね。ワルツちゃん頑張ってね」
「うん、がんばる」
哀れなコクサンに真実が伝えられるか否かは、全てトレス次第……
そんなミツツメの街で生まれ育ったネッガーは、今日再びこの地へと戻って来た。
「ただいま帰りました」
家の扉をくぐったネッガーを出迎えてくれたのは、母親のシルと弟のローンの二人だ。
「お帰りなさいネッガー、久し振りね」
「お帰りなさいっ兄上!」
優しく微笑むシルと溢れる笑顔を見せるのローンに微笑みを返すネッガー、そのネッガーの背後からミツツメの警備隊長を務める父ベスタが姿を現した。どうやら今日の仕事を終え帰宅してきたようだ。
「おお、帰ってきたのかネッガー。では早速――前回からどれほど強くなったのかを見せてもらおうか」
ベスタは強者特有の人を惹きつける笑みを浮かべると、そのまま隣に建つ道場へと足を進めた。そのすぐ後ろからはネッガーが、そしてそのまた少し後にはシルとローンが期待に満ちた表情で付いてきている。どうやらこの家ではこれが平常運行のようだ。
「む、帰ってきおったかネッガー。――全員そこまで、場所を空けよ!」
道場主である祖父のスターから掛かった声に弟子達は動きを止め、素早く壁際に下がった。
そんな彼らからの視線が集まる中、道場の中心では父と子が剣を取り正対する。
「――では始めよう」
やがてどちらともなく剣を合わせると、予定調和の如く流れるその剣は、やがてせせらぎから急流、そして激流へとその様相を変えてゆく――
長いような短いような剣戟の末、静止したベスタは我が子に声を掛けた。
「ほう、中々腕を上げたようだ。しかし……この程度か?」
その父の挑発とも取れる言葉に、ネッガーはニヤリと笑みを返した。
「いいえ父上、今の俺にはもう一段上があります」
「ふっ――ならば見せてみよ!」
こうして再び剣を交える父と子。
より速く、より強く、より激しく。……そしてより美しく。
それを静かに見守る弟子達に家族達、その目の輝きもまた――より強く。
やがて父と子がその動きを止めると、道場は壁際から漏れる溜息の後に再び静けさを取り戻した。
「――見事だ」
「ありがとうございます父上。本日はお願いがあって参りました」
「言ってみるがいい」
「冒険者登録を致したく――」
「強くなれるのか?」
「間違いなく」
「ならばやってみるがいい」
「ありがとうございます」
脳筋達に、言葉による説明は不要である。
そしてこちらは王都の南、ヨツツメの街。
「父よ、母よ、わたしは帰ってきた」
「ふふふ、相変わらずねワルツちゃん。お帰りなさい」
まったく挨拶になっていない、そんな我が娘の帰宅の挨拶に、ふんわりと微笑みを返す、母トレス。
そして――
「帰ったか、ワルツ。待っていた」
厨房から顔を出す父コクサン。
ワルツの口調が誰から受け継がれたものかは、説明するまでもないだろう。
ワルツの家はここヨツツメでは知らぬ者が無い超有名レストラン。
海がほど近いこのヨツツメに数多くあるシーフード専門のレストランとは違い、幅広いジャンルのメニューを揃えた、王都に近いスタイルのレストランである。
その大繁盛レストランも今はディナータイム前の準備中、当然客の姿はない。
「家に入る前に何か食べてく?」
「うん、いつもの」
「はい、いつものね。あなたお願い」
愛娘からのオーダーにコクサンは音もなく動き出し、そして間もなくワルツのもとに届いた『いつもの』プレート――
美しく盛られたピラフとその横に鎮座する湯気を纏いしハンバーク、向かいには清楚な佇まいのオムレツに、その黄色との対比が鮮やかなスパゲッティ。そしてそれら至高のソファに身を預けるは、気品溢れるタルタルのマントにその身を包む神々しき女王――エビフライ。そう、ここはワンプレートの王国。ならば当然ピラフの中央には――王国を象徴する高貴なる純白の旗が彼らの誇りを現し示す!
そう、『いつもの』王侯さm――お子様ランチである。
目の前に置かれたそのプレートをキラキラした瞳で見つめ――まずは旗へとその手を伸ばす、今日も安定のワルツであった。
そして今日の営業も終わり、その夜――
「そう、そのカルア君って子といつも一緒なのね」
「うん、カル師、マイ師匠」
「ふーーん、それでカルア君って、ワルツちゃんにどんな事を教えてくれるの?」
「カル師、色々凄い。すごい事を、わたしに、たくさん。開発とかも」
ぶふおぉぉぉぉーーーーっ!!!!
ワルツの言葉に盛大にお茶を吹き出す父コクサン。
それを横目に、静かに言葉を続ける母と娘。
「じゃあ、新しい事とかも色々教えてくれたりとか?」
「うん、今まで知らなかった。カル師の、すごく熱い。わたしも熱く出来た」
がふぁっ!!! げふっ!! げはっ!! げほっ!!
気を落ち着けようと再度お茶を口に含んだコクサンだったが、今度は気管に入ったのか盛大に咽る。
それを見つめる妻と娘の眼は冷たい。
「じゃあワルツちゃんもちょっと変われた感じなのね」
「そう、太く長く。あと上手に飛ばせる。すごい勢いで。量もコップ2杯に」
「こここ、コップ2はいーーーっ!?」
度重なる興奮に限界を超えたコクサンは、その叫びを最後に崩れ落ちた。
「父、魔法の話で興奮しすぎ。実は魔法好き?」
「ふふふ、そうねえ、どうなのかしらね」
娘のキョトンとした表情に、トレスは実に楽しげな笑みを浮かべた。
これまでの微妙な言い回しは勿論全て彼女の狙い通り。ワルツから返ってきた想定を上回る素晴らしい回答に心底大満足といった様子である。
「そうかあ……凍らせるだけじゃなくって、カルア君が開発した熱くする魔法も使えるようになったのね。それに作れる氷も倍の大きさになって飛ばすのも上達出来たのかあ。カルア君って凄いお師匠さんなのね」
「そう、それで今度みんなでパーティを組んで冒険者登録する」
「それは楽しそうね。ワルツちゃん頑張ってね」
「うん、がんばる」
哀れなコクサンに真実が伝えられるか否かは、全てトレス次第……
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