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ようこそ川崎へ

二話 バカと借金と発狂女

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「嘘っ!もう起きるの!?」

聞き慣れない声と共に起きるとそこは保健室?のような場所だった。

「ここどこ、、、?」

辺りを見てみると椅子に座って眠っている野畑とそれを起こそうとしているやけに髪が長く白衣を着た幼女が一人。

「ちょっとまだ安静にしていなさい。貴方、頭8針縫ってるのよ。」

どこからか妖艶な大人の女性の声が聞こえる。

周りを見渡してみるが該当しそうな人物は見当たらない。

「幻聴か?疲れが溜まってるのかな。」

「幻聴って失礼な子ね。こっちよこっち、もっと下よ。」

声のした方を見てみるとさっきの幼女だ。最近の小学生は進んでいると聞いたことがあるが声帯も進んでいるとは驚きだ。
でも流石に進みすぎだと思う。

「なに?人の顔ジロジロ見て。あと10年たったら相手してあげるから、今は大人しく寝てなさい。」

なんというか、この幼女の言う通りにするべきだと本能が諭してくる。待て、何故お前は昂っているんだ我が息子よ。

「おぉ、おはよう!新人クン!キミのおかげで目当てのブツを回収できたよ。」

いつのまに起きたのか野畑がニヤニヤしながら近づいてくる。手にはUSBメモリが乗っている。それがブツなのだろうか。

というか、あんな事があった後なのに擦り傷一つ見当たらないとはコイツ人外だろ。

「野畑さん、本当に強いんですね。出発前とほとんど変わらないじゃないですか、むしろ元気そうですし。」

「流石にあの数相手だと一、ニ発は貰ったさ。でも内海先生ののおかげで今はピンピンだよ。」

「私の能力じゃなくて私が扱う機材の能力よ。」

野畑を内海と呼ばれた幼女が軽くあしらう。?さっきから何の話をしているのだろう。

「そうだ新人クン。今からキミの入社説明会を始めるから来てもらうよ。」

そういって野畑は俺の手を引っ張る。コイツはつくづく強引なやつだ。

連れられてやって来たのはハピネスクラブの店内。そこで赤城麗子が待っていた。店の中には客もホストもおらず、電気もつけられていて明るいため閉店後なのかもしれない。

閉店後?ホストクラブで?今が何時か気になり時計を見ると4:00をさしている。こりゃ家に帰ったらお説教かもな。

「予想以上に早いお目覚めですね。そこに座ってください。」

赤城が笑いながら声をかけてくる。

「んじゃ、俺は呼んできますわ。」

野畑はそういうと部屋を出ていった。何を呼ぶって?

「ひとまず、初仕事お疲れ様です。はいこれ初任給3時間分。」

そう言って渡された封筒の中を見てみると、、

「5000円?」

おかしい。命をかけた結果が時給1600円?これが噂のブラックバイトなのだろうか。

「いや残りの2万6500円はどこ行ったんすか!?」

「それは後ほど説明するから待ってくださいね。では、このハピネスクラブの説明から行います。」

赤城が冊子を渡してきた。説明用の資料のようだ。

「ハピネスクラブは表ではホストクラブ、裏ではホワイトマフィアとして活動を行っています。」

ほわいとまふぃあ?初めて聞く単語に困惑していると

「一般人には馴染みのない単語でしたね。その説明から行いましょう。
現在、この川崎では川崎駅以外のほとんどの地域が反社会勢力の巣窟になっているのは知っていますね?
500を超える反社会組織を統制するのは日本の軍事力を持ってしても難しいです。」

たしかに、アジア中の反社会組織が集まる川崎では武装警備兵でも気休めにしかならないのかもしれない。

「そこで、政府は一部の組織を国の管理下に置くことで日本の治安を維持することにしました。
それに選ばれた組織はホワイトマフィア、それ以外はブラックマフィアと呼ばれ、私達はホワイトに該当します。」

「はぁ、でもそれじゃあマフィアらしいこと出来ないし、メリットが無いんじゃ?」

加入する気はないがつい気になって質問してしまう。

「ホワイトマフィアは国からの監視員を受け入れること、国の任務を受けることを条件に自由な活動と多額の援助、技術提供を受けられるのです。」

なるほど、そういえばチンピラもホワイトがどうとか言ってたな。アレはこのことだったのか。

「はい。では次にあなたの質問に答えますね。」

赤城はゴソゴソと隣に置いてある袋から何かを取り出した。

「てってれー戦闘用バトラースーツRX01-3」

なんて心のこもっていない「てってれー」だろうか。いやそんなことよりも、これは野畑が着ていた執事服ではないか。

「えっとなんですかコレ?」

「何って戦闘用バトラースー「そうじゃなくて、何に使うんですかコレ。」

「野畑君の異常な怪力具合を見ましたよね?あれはこのスーツの特性によるものです。」

赤城の説明が始まる。

「このスーツには持ち主の基本能力向上に加えて、突出している部分をさらに引き伸ばす能力があります。例えば野畑君なら腕力、私なら気候適応能力などです。」

なるほど、野畑の人間離れした耐久力と馬鹿力はこのスーツのおかげだったのか。気候適応能力ってことは運動能力以外も上がるのだろう。そういえば、やけに握力の強いメイド少女がいたが彼女のメイド服も戦闘服なのかもしれない。

「男の子は戦闘用とか付けたら喜ぶと思ったのですが残念です。野畑君は貰った時、興奮の余り服を脱ぎ始めたというのに。」

野畑と同じにされては困る。とはいえ確かに戦闘服に惹かれることもなくはない。おぉ!変なボタン押したら回路みたいのが光り出したぞ。かっこいいなこれ。

受け取ったRX01-3で遊んでいると、赤城が話を続ける。

「それはあなた達、マフィア班の制服になります。くれぐれも失くさないように。そしてこれが領収書です。」

領収書を受け取る。えーと戦闘用バトラースーツRX01-3が2000万円で今回の支払い分が12万6500円か、、、、
2000万!?!?

「どういうことですか!?」

「それが貴方の初任給が5000円だった理由です。」

どうやら一部というか大半が勝手に購入された服の返済に充てられているらしい。

「これ、返品できないんすか?、、、」

「オーダーメイドですから。」

「クーリングオフは?、、」

「製造元は政府ですから可能でしょうが、私なら後が怖くて出来ません。」

笑顔で答える赤城。その笑顔がなによりも怖い。

「とはいえ、あなたの家の事情はうちのハッカーに調べさせたので把握しています。そこで勝手にシフトを組ませてもらいました。」

もう驚かない。ハッカーくらいいて当然ですよね。はい。

「えーと、平日はpm18:00から23:00までで土日祝日はam9:00からpm21:00までか。いや無理ですよこれ。」

「何故ですか?学校の時間も考慮していますよ。」

「労働基準法って知ってますか?」

「あ、伝えわすれていましたね。今日から住み込みで働いて貰います。」

いや、どういうことですか?

「こいつは何をいっているんだ?というか返答も出来ないのか、さすが川崎の女だ。」

「卍原君、考えと発言が逆転していますよ。」

「おっと、すみません。いや、どういうことですか?」

「仕切りなおすんですね。その図太さには驚きました。
だから、ここに住んで働いてもらいます。もう親御さんには事情を説明しておきましたし問題ないですよ。あ、ちゃんと借金のことは隠しておいたのでご安心を。」

うちの親は本当に俺の親なのだろうか。子供に無関心すぎやしませんかね。

「そして、これが卍原君の給与の流れになります。」

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

月給:2000000円

制服代 毎月返済額1200000円

従業員寮 家賃100000円

武器の整備、補給費 100000円

家への仕送り 300000円


手元100000円

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

「うちの従業員寮は食堂、風呂、WiFi、他娯楽施設を完備しています。使用料は家賃に含まれているのでご自由にどうぞ。
武器も月額料金を払っていただければ追加オプションを購入しない限り使い放題となっています。武器の選択は後ほど。」

うむ、案外悪くないバイトの気がしてきた。つまり、昨日のようなことをあと9ヶ月程行えばいいのか。なんだ余裕じゃないか。

「これで説明は終わりです。契約書にサインを。」

卍原卓郎と名前を書き、母印を押す。

「これでいいですか。」

こんな頭のおかしいバイトだとしても、新しく何かを始めるというのはワクワクするものだ。それにマフィアって結構カッコいいし。

「ふふふ、ふははははは!!!!」

赤城が狂ったように笑い始める。

「大丈夫ですか?主に頭の方。」

なんて顔だ。なまじ顔が良いだけあってギャップからより狂気を感じる。

「君は本当に馬鹿ですねぇ。いくら川崎でもいきなり2000万の借金を負わせることなんてブラックマフィアでもしませんよぉ。」

その言葉に唖然とする。騙されただとぉぉぉ!!??

「驚きで声も出ないようですねぇ。あーあ、普通に返品すれば良かったのに。ギャハハハ。」

しまったブラフだったのか。というより、この人怖い!チンピラ集団の5倍怖い!誰か俺に手榴弾をくれ、口の中に突っ込んで永遠に眠らせなければ。

「いやぁ最近は不景気だからか、ここ1年ほどマフィア班には新入社員がいなくてですね。皆、新人研修後に辞めてってしまうんですよ。」

落ち着きを取り戻した赤城が悲しそうに話す。絶対に不景気は関係ないと思う。

「だから、こんな強引な方法で引きずりこんだと。」

「その通りです。まさか引っかかる馬鹿がいるとは思いませんでした。」

満面の笑みだ。穢したいその笑顔。あ、もう穢れてたか。

「まぁ、ようこそハピネスクラブへ。店長兼ボスとしてあなたを歓迎します。」

赤城が手を差し出してくる。

「こちらこそ、よろしくお願いします。!」

しっかりと赤城の手を握り返す。痛い痛い。この女もゴリラなのか?

「何するんですか!?!?」

「なるほど、確信犯でしたか。指弾いてもいいんですよぉ?」

目が笑っていない。なにか気に触ることを言ってしまったのだろうか?あと確信犯の使い方違いますよ、ブス。

「とりあえず、今から貴方に仕事仲間を紹介しますね。入ってきて良いですよ。」

赤城が声をかけると、7名ほど男女が入って来た。その中には野畑はもちろんのこと、メイド少女の姿も見られる。
他の初めて見る人達も黒人男性風の大男に三つ子と思わしきそっくりな女性3人組、迷彩服を着た眼帯をつけた女性と個性豊かすぎる面々が入って来た。

そして、彼らは俺の前に一列に並ぶと、全員が拳銃を向けてきた。

赤城が叫ぶ。

「さぁ!今から卍原君の歓迎会を初めまーす!」

一斉に発砲。

その瞬間。視界が真っ赤に染まった。




続く






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