STARDUSTER  ―終わりのオメガと始まりのアルファ―

美風慶伍

文字の大きさ
6 / 10

6:コンサート

しおりを挟む
「正直驚いたわ」
「まったくです。二人がここまで自発的な行動を取るようになるとは」
「この勢いで外部活動も始めてくれるといいんだけど」
「それはこのコンサート次第でしょう」

 アルファによるコンサート。それをプロデュースして運営するのはオメガ――
 それは二人を生み出した人々からみれば驚くべき成長だったのだ。
 
 そして、地下都市の中で最大の空間である、中央シャフト空間がアルファのコンサート会場となった。
 必要な設備とセッティング、観客の導入ルート、コンサートを開催するのに必要な物資とエネルギーの調達、そして都市機能への影響への配慮など、それらを取り仕切り実作業を行ったのはオメガだった。

 音楽を楽しむ――

 そんな当たり前のことすら失われた世界だ。
 人々はいぶかしがった。反対する声もあった。
 エネルギーの浪費だと。
 
 だが、それを説得したのもまたオメガであった。
 自分自身の持てる情報処理能力の全てを駆使して長期計画を試算し、都市の存続に問題の無いレベルで開催が可能であると、そして、アルファのやる気を引き出し彼女に求められている星の再生のためには必要な事であると説明し説得したのだ。
 
 都市の最終的な意思決定を握っている人々はこれを承諾した。
 必要な行動だと認めたのだ
 
 そして、その日――
 
――運命の瞬間が訪れたのだ。


 ~     ~     ~
 
 
 それは夢の時間だった。
 時間にしてわずかに40分位だろう。
 曲数も6曲程度。
 豪華な衣装も、華麗なステージもない。ごく質素なコンサートだった。
 
 だが、都市の人々は沸き立った。
 
 若い世代や、子どもたちの中には音楽を楽しむと言う事すらしらない者たちも多い。
 まだ体験したことのない出来事に戸惑うばかりの人たちもいる。
 コンサートの場へとたどり着けない人には構内放送でその歌声が届けられた。

 オメガの誘導と説明により準備を終える。
 中央シャフトの空間にアルファが現れ、たった一つだけのスポットライトが浴びせられる。
 人々の視線は彼女へと注がれる。
  
 そして、アルファはつげる。
 
「私の歌を聞いてください、いずれ来るだろう希望を信じて――」

 演奏が始まる。
 オメガが地下都市の文明資産保存のデータベースから見つけだした音楽の中から、アルファの声に見合ったものを選んだのだ。
 コンピューターによる合成演奏であったが、それはオメガがアルファのために奏でる最高の演奏だったのである。

 夢の時間は流れる。
 一曲、一曲と流れ去る中で人々の顔に笑顔が浮かんでいた。
 そして、都市の中は〝喜び〟に満たされる。
 歓声が溢れる。
 歓声はうねりとなる。
 誰もがアルファの歌声を後を追い、口ずさんでいる。
 そしてそこそが――
 
「そうよ、これよ」

――アルファたちの創造者が求めたものなのだから。
   
 そして5曲目が終りを迎える。その都市の中に笑顔に満ちていない場所は存在しなかった。
 唯一、一握りの者たちを除いて。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

~春の国~片足の不自由な王妃様

クラゲ散歩
恋愛
春の暖かい陽気の中。色鮮やかな花が咲き乱れ。蝶が二人を祝福してるように。 春の国の王太子ジーク=スノーフレーク=スプリング(22)と侯爵令嬢ローズマリー=ローバー(18)が、丘の上にある小さな教会で愛を誓い。女神の祝福を受け夫婦になった。 街中を馬車で移動中。二人はずっと笑顔だった。 それを見た者は、相思相愛だと思っただろう。 しかし〜ここまでくるまでに、王太子が裏で動いていたのを知っているのはごくわずか。 花嫁は〜その笑顔の下でなにを思っているのだろうか??

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

女神に頼まれましたけど

実川えむ
ファンタジー
雷が光る中、催される、卒業パーティー。 その主役の一人である王太子が、肩までのストレートの金髪をかきあげながら、鼻を鳴らして見下ろす。 「リザベーテ、私、オーガスタス・グリフィン・ロウセルは、貴様との婚約を破棄すっ……!?」 ドンガラガッシャーン! 「ひぃぃっ!?」 情けない叫びとともに、婚約破棄劇場は始まった。 ※王道の『婚約破棄』モノが書きたかった…… ※ざまぁ要素は後日談にする予定……

思いを込めてあなたに贈る

あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

小さくなった夫が可愛すぎて困ります

piyo
恋愛
夫が、ある日突然、幼児の姿になってしまった。 部下の開発中の魔法薬を浴びてしまい、そのとばっちりで若返ってしまったらしい。 いつも仏頂面な夫が、なんだかとっても可愛い――。 契約結婚で、一生愛とは無縁の生活を送ると思っていたノエルだったが、姿が変わってしまった夫を、つい猫可愛がりしてしまう。 「おい、撫でまわすな!」 「良いじゃありませんか。減るもんじゃないし」 これまで放置されていた妻と、不器用に愛を示す夫。 そんな二人が、じれじれ、じわじわとお互いの距離を詰めていく、甘くて切ない夫婦再生の物語 ※完結まで毎日更新 ※全26話+おまけ1話 ※一章ほのぼの、二章シリアスの二部構成です。 ※他サイトにも投稿

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...