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7:トシカンリ
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「そこまでだ」
冷酷な声が響く。
それはアルファとオメガが生み出した喜びの声を打ち消すものだった。
冷水を浴びせられたように皆が静まり返る。その声の主を探して。
「素敵な歌をありがとう。そして、完成してくれてありがとう。これこそが我々が望んだものだ」
称賛する言葉が並んでいたが、そこに心はこもっていなかった。
「これは――都市管理?」
あの女性が疑問と疑惑の主を指摘する。この地下都市の最上位に位置する者たちだ。
驚きと沈黙がざわめきになる。
人々はアルファの歌を奪われたことに疑問と疑念を抱き始めていた。そして、抗議の声があがる。
それに都市管理は告げる。
「沈まれ。市民諸君。これは君たちにも重要な処置だ。我々が求めていたアルファと言う存在は、我々都市管理が必要とする段階にまで到達した。あとは世界再生のために我々が運用する」
それはアルファを開発した人々には寝耳に水のコトバである。あの女性が叫びを上げる。
「聞いてないわ? アルファはまだ未完成よ! まだ世界全体を救えるほどにはなっていない!」
都市管理の冷酷な声が告げる。
「そのレベルの能力は必要ではない。要は世界再生が果たせればいいのだ。だからこそだ――」
そこに続くのは悪魔の知慧――、到底、心ある人には発せられない言葉であった。
「現段階のアルファを凍結し、アンドロイド開発余裕枠の残り23枠をすべて、現行アルファの複製体に改変する」
「何を言ってるの?」
「そして総数24体のアルファを完成させ、これらを連続的に用いて惑星環境を局所的に改善していく」
「れ、連続的にって――」
その言葉の意味をアルファの生みの親である彼女は即座に理解した。
「〝使い捨て〟にするっていうの?!」
その抗議の声には怒りが満ちていた。
「リサイクルと言ってほしい。運用不能となったアルファの同位体には再生処置を施す。そして新たな個体として生まれ変わって、再び惑星再生の作業に従事してもらう。局所的にでも地球環境が再生すれば、資源確保の道筋は立つ。そうなればさらなるアルファの同位体の生産が可能だ」
「あなた達は自分たちが何を言っているのか解っているの?」
都市管理に非情な言葉に、怒りの声が響く。だが、それは決して届かぬ蟷螂の斧だ。
「これは決定事項だ。そして――」
機械のような声で都市管理は告げる。
「これから実行に移される」
その宣告と同時に中央シャフト空間に姿を表したのは数多くの警備ロボット――、その外見はまさにオメガとうり二つであった。
――ザッ、ザッ、ザッ――
足音を一つに揃えて警備ロボットたちはアルファへと迫る。
市民が抗議の声を上げる。
だが、警備ロボットの攻撃の意思は市民たちへも向けられた。
「妨害するものはすべて敵とみなす」
都市管理が告げる。悪魔の命令を。
「さぁ、惑星再生のためだ。君自信を我々に提供したまえ」
隊列を成して警備ロボットが迫り来る。そこにオメガのような暖かさはない。
「い、嫌――」
それはアルファが初めて感じる恐怖であった。
「提供したまえ」
警備ロボット23が言う。
「惑星再生プログラムのため」
警備ロボット15が言う。
「凍結を受け入れろ」
警備ロボット07が言う。
「犠牲を」
警備ロボット12が言う。
「犠牲を」
警備ロボット34が言う。
「犠牲を」
警備ロボット04が言う。
「さぁ、今こそ――」
警備ロボットは一列に並びアルファを取り囲む。
「やめなさい!!」
アルファの生みの親の女性が涙声で叫んでいた。
「―おかあさん―」
アルファが救いを求める。そしてその声は――
「助けて! オメガ!!」
――〝彼〟の名を呼んだのだ。
冷酷な声が響く。
それはアルファとオメガが生み出した喜びの声を打ち消すものだった。
冷水を浴びせられたように皆が静まり返る。その声の主を探して。
「素敵な歌をありがとう。そして、完成してくれてありがとう。これこそが我々が望んだものだ」
称賛する言葉が並んでいたが、そこに心はこもっていなかった。
「これは――都市管理?」
あの女性が疑問と疑惑の主を指摘する。この地下都市の最上位に位置する者たちだ。
驚きと沈黙がざわめきになる。
人々はアルファの歌を奪われたことに疑問と疑念を抱き始めていた。そして、抗議の声があがる。
それに都市管理は告げる。
「沈まれ。市民諸君。これは君たちにも重要な処置だ。我々が求めていたアルファと言う存在は、我々都市管理が必要とする段階にまで到達した。あとは世界再生のために我々が運用する」
それはアルファを開発した人々には寝耳に水のコトバである。あの女性が叫びを上げる。
「聞いてないわ? アルファはまだ未完成よ! まだ世界全体を救えるほどにはなっていない!」
都市管理の冷酷な声が告げる。
「そのレベルの能力は必要ではない。要は世界再生が果たせればいいのだ。だからこそだ――」
そこに続くのは悪魔の知慧――、到底、心ある人には発せられない言葉であった。
「現段階のアルファを凍結し、アンドロイド開発余裕枠の残り23枠をすべて、現行アルファの複製体に改変する」
「何を言ってるの?」
「そして総数24体のアルファを完成させ、これらを連続的に用いて惑星環境を局所的に改善していく」
「れ、連続的にって――」
その言葉の意味をアルファの生みの親である彼女は即座に理解した。
「〝使い捨て〟にするっていうの?!」
その抗議の声には怒りが満ちていた。
「リサイクルと言ってほしい。運用不能となったアルファの同位体には再生処置を施す。そして新たな個体として生まれ変わって、再び惑星再生の作業に従事してもらう。局所的にでも地球環境が再生すれば、資源確保の道筋は立つ。そうなればさらなるアルファの同位体の生産が可能だ」
「あなた達は自分たちが何を言っているのか解っているの?」
都市管理に非情な言葉に、怒りの声が響く。だが、それは決して届かぬ蟷螂の斧だ。
「これは決定事項だ。そして――」
機械のような声で都市管理は告げる。
「これから実行に移される」
その宣告と同時に中央シャフト空間に姿を表したのは数多くの警備ロボット――、その外見はまさにオメガとうり二つであった。
――ザッ、ザッ、ザッ――
足音を一つに揃えて警備ロボットたちはアルファへと迫る。
市民が抗議の声を上げる。
だが、警備ロボットの攻撃の意思は市民たちへも向けられた。
「妨害するものはすべて敵とみなす」
都市管理が告げる。悪魔の命令を。
「さぁ、惑星再生のためだ。君自信を我々に提供したまえ」
隊列を成して警備ロボットが迫り来る。そこにオメガのような暖かさはない。
「い、嫌――」
それはアルファが初めて感じる恐怖であった。
「提供したまえ」
警備ロボット23が言う。
「惑星再生プログラムのため」
警備ロボット15が言う。
「凍結を受け入れろ」
警備ロボット07が言う。
「犠牲を」
警備ロボット12が言う。
「犠牲を」
警備ロボット34が言う。
「犠牲を」
警備ロボット04が言う。
「さぁ、今こそ――」
警備ロボットは一列に並びアルファを取り囲む。
「やめなさい!!」
アルファの生みの親の女性が涙声で叫んでいた。
「―おかあさん―」
アルファが救いを求める。そしてその声は――
「助けて! オメガ!!」
――〝彼〟の名を呼んだのだ。
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