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冒険者は人の夢
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雲ひとつない青空が広がっていた。
吹き抜ける風は微かに潮の香りがした。
辺境の村アレスティ、ここにあるのは海と山だけ。
村人の多くは漁をして生活していた。
「もうこんな生活は嫌だ……」
海を漂う一隻の漁船、持っていた釣り竿を放り投げ男は呟いた。
「こんな退屈な人生まっぴらだー!」
「なーにバカなこと言ってんだ」
「だってよう……」
「今日の分釣れなかったらまたどやされるぞディード」
ディードと呼ばれた男は溜息をつきながら再び釣り竿を握る。
「だがなあウィル、こう毎日毎日漁に出るだけの日々、刺激が足りないと思わないか」
しかしウィルは答えなかった。
じっと遠くの海面上を見つめていた。
「どうしたウィル、何か見えるのか?」
「……お前の求める刺激ってやつがどうやら現れたようだぞ」
ウィルの視線の先を見つめるディード。
静寂を斬り裂いて突如現れたのは巨大な海竜だった。
「銛を持てディード!こいつは大物だぞ!」
真っ直ぐに漁船へと向かってくる海竜を避けるようにウィルは舵を切る。
ディードは銛を持ち船首へと駆け上がった。
「全長10mって所か……」
冷静に敵を観察するディード。
漁師である彼らは普段から遠くの海面上を見ることが多い為視力がとても高くなっていた。
「集中しろディード、さすがにあの巨体に体当たりされたらまずいぞ」
「分かってらい、まあ見てなっての」
ディードは銛を構え海竜の顔が水面から出てきた瞬間を狙い、そして放った。
放たれた銛は一直線に飛び、海竜の左目に直撃する。
「まだだ、トドメを刺せ!」
瀕死の傷を負い暴れる海竜、海面は流れでた血で真っ赤に染まっていた。
最後の悪あがきとばかりに船へ体当たりしようとするがウィルの舵捌きがそれを許さない。
2本目の銛を持ったディードはその銛を投げようとしなかった。
まるで槍を構えるかのように持ちじっとタイミングを測っていた。
「さあ来い、次で終わりにしてやる」
海竜はその巨体を持ち上げ船上にいるディードを喰らいつこうと迫る。
その瞬間ディードは開いた口めがけ銛を勢い良く突き刺した。
銛は口から喉の奥まで深々と突き刺ささり、海竜は大量の血を吐き、そして動かなくなった。
「くそ、全身血まみれだ。生臭い……」
返り血を正面から浴びたディードは悪態をつきながら海へと飛び込んだ。
「ディードすぐ上がった方がいい、血の匂いで寄ってくるやつもいるからな」
そう言うとウィルは海竜の巨体を船に括り付けた。
ディードは船へ上がると上着を脱いで水気を絞り干しておき、自分は甲板に横たわった。
冷えた体を照りつける日光が心地よく暖めてくれた。
「今日はもう引き上げよう、これだけの獲物だ。港も騒ぎになるぞ」
ウィルの言葉を聞きながらディードは考えていた。
自分の求める刺激的な日常、それはやはりここにはない。
冒険者になり巨大な怪物と戦いダンジョンを攻略したい、そんな欲求が日に日に自分の中で大きくなっているのを感じた。
「決めたよウィル、俺は村を出る」
「またその話か」
「俺は本気だ。この海竜はここ最近巷で漁師を襲ってたやつだろう。確か捕まえれば報酬も出たはずだ。俺はその金で王都を目指す」
「その報酬、俺と折半ってこと忘れてないだろうな」
「あっ……」
ウィルは大きな溜息をついた。
この幼なじみは本気になったら誰が止めても聞かないことをウィルはよく知っていたのだ。
「……まあいい、好きにしろ」
「ウィル!」
「……俺はお前が言うほどここでの生活は退屈だとは思わないがな」
ウィルは空を眺めぽつりと呟いた。
「俺だって別にこの村が嫌いなわけじゃない。ただな……夢なんだよ。冒険者になって未だかつて誰も見たことも触れたこともないような、そんな何かを見つけたいんだ」
そう言いながらディードは目を閉じた。
自分の華々しい未来を夢見ながら。
吹き抜ける風は微かに潮の香りがした。
辺境の村アレスティ、ここにあるのは海と山だけ。
村人の多くは漁をして生活していた。
「もうこんな生活は嫌だ……」
海を漂う一隻の漁船、持っていた釣り竿を放り投げ男は呟いた。
「こんな退屈な人生まっぴらだー!」
「なーにバカなこと言ってんだ」
「だってよう……」
「今日の分釣れなかったらまたどやされるぞディード」
ディードと呼ばれた男は溜息をつきながら再び釣り竿を握る。
「だがなあウィル、こう毎日毎日漁に出るだけの日々、刺激が足りないと思わないか」
しかしウィルは答えなかった。
じっと遠くの海面上を見つめていた。
「どうしたウィル、何か見えるのか?」
「……お前の求める刺激ってやつがどうやら現れたようだぞ」
ウィルの視線の先を見つめるディード。
静寂を斬り裂いて突如現れたのは巨大な海竜だった。
「銛を持てディード!こいつは大物だぞ!」
真っ直ぐに漁船へと向かってくる海竜を避けるようにウィルは舵を切る。
ディードは銛を持ち船首へと駆け上がった。
「全長10mって所か……」
冷静に敵を観察するディード。
漁師である彼らは普段から遠くの海面上を見ることが多い為視力がとても高くなっていた。
「集中しろディード、さすがにあの巨体に体当たりされたらまずいぞ」
「分かってらい、まあ見てなっての」
ディードは銛を構え海竜の顔が水面から出てきた瞬間を狙い、そして放った。
放たれた銛は一直線に飛び、海竜の左目に直撃する。
「まだだ、トドメを刺せ!」
瀕死の傷を負い暴れる海竜、海面は流れでた血で真っ赤に染まっていた。
最後の悪あがきとばかりに船へ体当たりしようとするがウィルの舵捌きがそれを許さない。
2本目の銛を持ったディードはその銛を投げようとしなかった。
まるで槍を構えるかのように持ちじっとタイミングを測っていた。
「さあ来い、次で終わりにしてやる」
海竜はその巨体を持ち上げ船上にいるディードを喰らいつこうと迫る。
その瞬間ディードは開いた口めがけ銛を勢い良く突き刺した。
銛は口から喉の奥まで深々と突き刺ささり、海竜は大量の血を吐き、そして動かなくなった。
「くそ、全身血まみれだ。生臭い……」
返り血を正面から浴びたディードは悪態をつきながら海へと飛び込んだ。
「ディードすぐ上がった方がいい、血の匂いで寄ってくるやつもいるからな」
そう言うとウィルは海竜の巨体を船に括り付けた。
ディードは船へ上がると上着を脱いで水気を絞り干しておき、自分は甲板に横たわった。
冷えた体を照りつける日光が心地よく暖めてくれた。
「今日はもう引き上げよう、これだけの獲物だ。港も騒ぎになるぞ」
ウィルの言葉を聞きながらディードは考えていた。
自分の求める刺激的な日常、それはやはりここにはない。
冒険者になり巨大な怪物と戦いダンジョンを攻略したい、そんな欲求が日に日に自分の中で大きくなっているのを感じた。
「決めたよウィル、俺は村を出る」
「またその話か」
「俺は本気だ。この海竜はここ最近巷で漁師を襲ってたやつだろう。確か捕まえれば報酬も出たはずだ。俺はその金で王都を目指す」
「その報酬、俺と折半ってこと忘れてないだろうな」
「あっ……」
ウィルは大きな溜息をついた。
この幼なじみは本気になったら誰が止めても聞かないことをウィルはよく知っていたのだ。
「……まあいい、好きにしろ」
「ウィル!」
「……俺はお前が言うほどここでの生活は退屈だとは思わないがな」
ウィルは空を眺めぽつりと呟いた。
「俺だって別にこの村が嫌いなわけじゃない。ただな……夢なんだよ。冒険者になって未だかつて誰も見たことも触れたこともないような、そんな何かを見つけたいんだ」
そう言いながらディードは目を閉じた。
自分の華々しい未来を夢見ながら。
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