僕の彼女はヒーローなんです

テル

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違う世界

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 事件から数日、怪我の治療と警察での事情聴取で忙しかった僕は結果として学校を休むことになった。診察してくれた医師によると処置が早かったので数週間もすれば傷跡は目立たなくなるとのことだった。
 今日は久しぶりの登校、通学路を歩く僕の背後から僕を呼ぶ聞き慣れた声が聞こえた。
「和輝ー!」
「翔太!」
「怪我はもう大丈夫なのか?」
「問題ないよ。まだ何度か通院するけど」
 いつもと同じように通学路の途中で合流した翔太と僕は休んでいた間の話で盛り上がった。
「クラスのやつとかにも事件のこと聞かれてさぁ、ここ数日はほんと大変だったぜ」
 そう語る翔太は妙に楽しそうだった。
「たぶんお前も色々聞かれると思うから覚悟しとけよ」
「お、おう」
 教室に着くと早速待ち構えていたクラスメイト達の質問攻めにあった。
 どうやら僕が居ない間に様々な噂が広まっていたらしく、中には僕が実はミュータントでフリーズガールと共闘して悪人を倒したなんて話まで出てくる始末だった。
「和輝君って勇敢だよね。見直しちゃったよ」
「いや別に僕はたいしたことしてないし……」
 普段なら絶対話しかけて来ないような女子も今日は妙にチヤホヤしてくる。
 男子達は主にフリーズガールの見た目についての質問が多かった。
「俺実物は見たことないんだけどやっぱり美人なの?」
「服装はアニメに出てきそうな……でも顔は隠してたから美人かどうかは」
 いつもの僕とはまるで違う扱いに、もしかしたら自分は違う世界に飛ばされたのでは……とさえ思えた。そして翔太も同じように質問攻めにあったのであろうことは容易に想像出来た。
 やがてチャイムがなり教師が現れると皆いそいそと自分の席へと戻っていった。けれど周りではヒソヒソと、恐らく僕に関するであろう話し声が聞こえるのだった。
「えー、それじゃあ出席を取る。相浦 和輝!」
「はい!」
 こうして僕にとっては珍しい、慌ただしい一日が始まったのだった。
 昼休み、翔太と僕は騒がしいクラスメイトから逃れる為2人で屋上へと向かっていた。どうやら噂はクラスだけでなく学校中に広がっているようで、屋上へ向かう途中も何度も声をかけられた。
 それは生徒だけでなく教師も同じだった。
「相浦、お前凄かったんだってな。先生お前にそんな根性あるなんて知らなかったぞ。どうだ、今度俺が顧問を務める柔道部の見学に来ないか」
「あ、えっと昼飯食べに行くんでその話はまた今度で……」
「おっとそうだったな。それじゃまた今度な」
 これ以上誰かに声をかけられるのも面倒なので僕達は屋上へと急ぐ。
「体育教師の杉山、お前に興味津々だったな」
「僕は柔道に興味はないけどね」
 事件の後、もっと体を鍛えておけば良かったと思ったりはしたがこれとそれとは別問題だ。
 幸いなことにその日屋上には僕と翔太以外誰も居なかった。僕はいつものようにコンビニで買っておいた菓子パンとおにぎりを食べた。
「それにしてもほんと、あんな事件に巻き込まれてよく無事だったよなぁ」
「フリーズガールが居なかったらほんとにダメだったかもね」
 僕と翔太はお互い無能力者だった。それゆえに話題は自然と犯人とフリーズガールの能力のことになった。
「犯人は手からしか炎を出せなかったみたい。それで全身凍ったら何も出来なくなくて捕まったって」
「建物の周囲の炎も火を着けたのは犯人だけど予め燃料をばら撒いてあったみたいだな」
 僕はあの時の一部始終を思い出していた。思えば手から炎を出すだけの犯人と違いフリーズガールはもっと多彩に能力を操っていた。
「僕の目の前で犯人を足元から凍らせたんだ。それにトカゲ男の攻撃を防ぐ時も氷をバリアみたいに出して防いでた」
 まるで漫画やアニメの登場人物のようなその動き、あの時はそんな余裕もなかったが今こうして思い出してみると無性に僕達の心をくすぐる何かがあった。
「なんかこう……カッコイイよね」
「ああ、カッコイイな」
 それ以上の言葉が出なかった。ヒーローに憧れる子供のようで、けれど同時に彼らと僕達では済む世界が違うことも十分理解していた。
 そんな時、不意に後から声をかけられた。
「あなた達面白そうな話してるわね」
 振り向くと、そこに居たのはあの愛川 雪乃だった。
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