5 / 12
フリーズガール
しおりを挟む
この場を打開する為に僕が手にしたのは1本の消火器だった。
「まずは彼女を助けないと……」
フリーズガールを捕らえているトカゲ男の背後から僕はそっと近づいた。そして呼吸を整え大声で叫んだ。
「おいトカゲ男! こっちを向くんだ!」
「はあ?」
トカゲ男と呼ばれたことに反応したのか、フリーズガールを捕らえた手はそのままに顔だけを僕の方へと向けた。
その瞬間僕の中で何かが切れる音がした。
「くらえっ!」
油断しているトカゲ男の顔に消火剤をぶち撒けた。
「ぐっ……」
消火剤が目に入ったのだろう。トカゲ男は慌てて目を擦り始めた。
そして僕の目論見通りその手で掴んでいたフリーズガールを放した。
僕はそのまま消火器を振りかぶり呻いているトカゲ男の足の爪先目掛けて叩きつけた。
「てめえ何しやがる!」
足の痛みに悶絶しながらも腕を振り回すトカゲ男。もし一発でも僕に当たればただでは済まないだろう。けれど視界が奪われていたのか一発たりとも僕に命中することはなかった。
「おいお前なにしてる!」
トカゲ男の苦しむ声で窓の外を覗っていたもう一人の犯人も異変に気づいてしまった。
「バカが。油断してるからだ」
手から放たれた炎は真っ直ぐに僕へと向かってくる。その炎へ向けて消火剤を放つが少し勢いを弱めるのがやっとだった。
炎は僕を掠め腕を軽く焼いただけだったが、それでも今までの人生で感じたことのないような痛みで気づいたら僕は悲鳴を上げていた。
「能力のないガキが俺達に歯向かってどうにかなると思ったのか?」
倒れ、悶絶する僕を犯人の男は無理やり立たせた。そして僕の顔にその炎を放つ手を向け……。
「死ね。無力なガキめ」
この上なく惨めな姿だったと思う。痛みと恐怖に支配され最早僕に出来ることは何もなかった。
けれど、その時僕は見たんだ。犯人の背後で倒れていたはずのフリーズガールが立ち上がる姿を。
「その人は無力なんかじゃありません!」
「なっ!」
一瞬だった。犯人は足元から凍りつき僕を掴んだ手先だけ残して1体の氷像になっていた。
「あなた、熱を操るなんて言ってましたけどほんとは手からしか炎を出せないんですよね」
そう言うフリーズガールの足元から地面を伝って氷が犯人のもとまで伸びていた。
「床全体を凍らせるのは簡単ですがそれでは人質も巻き込んでしまいますので……どうやらあなたも油断したバカだったみたいですね」
先程まで苦しんでいたトカゲ男もいつの間にか氷漬けになっていた。そして遅れて到着した警官隊によって犯人達は無事逮捕されたのだった。
幸いなことに一般人にはほとんど負傷者は居なかった。たった1人僕を除いて。
「和輝!」
救急隊に運ばれる途中翔太が駆け寄って来た。
「無事で良かったぜ」
「フリーズガールのおかげだよ。そういえば彼女は……」
「ヒーロー専門病院に運ばれたんじゃないか。正体バレないよう普通の病院は使わないって話だぜ」
「ああそうなのか……一言お礼が言いたかったな」
ヒーローの殆どはその正体を隠している。それは捕らえた悪党が身内に対して報復を行わないようにする為だ。
よってこの国ではヒーローの正体を探ること事態がタブーになっている。万が一知ったとしてもそれを世間に漏らすことは断じて出来ないのだ。
「まあ今はゆっくり休め。怪我、早く治るといいな」
「あぁ……ありがとう」
今日見た光景を僕は一生忘れることはないだろう。フリーズガール、最高のヒーローのことを。
「まずは彼女を助けないと……」
フリーズガールを捕らえているトカゲ男の背後から僕はそっと近づいた。そして呼吸を整え大声で叫んだ。
「おいトカゲ男! こっちを向くんだ!」
「はあ?」
トカゲ男と呼ばれたことに反応したのか、フリーズガールを捕らえた手はそのままに顔だけを僕の方へと向けた。
その瞬間僕の中で何かが切れる音がした。
「くらえっ!」
油断しているトカゲ男の顔に消火剤をぶち撒けた。
「ぐっ……」
消火剤が目に入ったのだろう。トカゲ男は慌てて目を擦り始めた。
そして僕の目論見通りその手で掴んでいたフリーズガールを放した。
僕はそのまま消火器を振りかぶり呻いているトカゲ男の足の爪先目掛けて叩きつけた。
「てめえ何しやがる!」
足の痛みに悶絶しながらも腕を振り回すトカゲ男。もし一発でも僕に当たればただでは済まないだろう。けれど視界が奪われていたのか一発たりとも僕に命中することはなかった。
「おいお前なにしてる!」
トカゲ男の苦しむ声で窓の外を覗っていたもう一人の犯人も異変に気づいてしまった。
「バカが。油断してるからだ」
手から放たれた炎は真っ直ぐに僕へと向かってくる。その炎へ向けて消火剤を放つが少し勢いを弱めるのがやっとだった。
炎は僕を掠め腕を軽く焼いただけだったが、それでも今までの人生で感じたことのないような痛みで気づいたら僕は悲鳴を上げていた。
「能力のないガキが俺達に歯向かってどうにかなると思ったのか?」
倒れ、悶絶する僕を犯人の男は無理やり立たせた。そして僕の顔にその炎を放つ手を向け……。
「死ね。無力なガキめ」
この上なく惨めな姿だったと思う。痛みと恐怖に支配され最早僕に出来ることは何もなかった。
けれど、その時僕は見たんだ。犯人の背後で倒れていたはずのフリーズガールが立ち上がる姿を。
「その人は無力なんかじゃありません!」
「なっ!」
一瞬だった。犯人は足元から凍りつき僕を掴んだ手先だけ残して1体の氷像になっていた。
「あなた、熱を操るなんて言ってましたけどほんとは手からしか炎を出せないんですよね」
そう言うフリーズガールの足元から地面を伝って氷が犯人のもとまで伸びていた。
「床全体を凍らせるのは簡単ですがそれでは人質も巻き込んでしまいますので……どうやらあなたも油断したバカだったみたいですね」
先程まで苦しんでいたトカゲ男もいつの間にか氷漬けになっていた。そして遅れて到着した警官隊によって犯人達は無事逮捕されたのだった。
幸いなことに一般人にはほとんど負傷者は居なかった。たった1人僕を除いて。
「和輝!」
救急隊に運ばれる途中翔太が駆け寄って来た。
「無事で良かったぜ」
「フリーズガールのおかげだよ。そういえば彼女は……」
「ヒーロー専門病院に運ばれたんじゃないか。正体バレないよう普通の病院は使わないって話だぜ」
「ああそうなのか……一言お礼が言いたかったな」
ヒーローの殆どはその正体を隠している。それは捕らえた悪党が身内に対して報復を行わないようにする為だ。
よってこの国ではヒーローの正体を探ること事態がタブーになっている。万が一知ったとしてもそれを世間に漏らすことは断じて出来ないのだ。
「まあ今はゆっくり休め。怪我、早く治るといいな」
「あぁ……ありがとう」
今日見た光景を僕は一生忘れることはないだろう。フリーズガール、最高のヒーローのことを。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる