僕の彼女はヒーローなんです

テル

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フリーズガール

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 この場を打開する為に僕が手にしたのは1本の消火器だった。
「まずは彼女を助けないと……」
 フリーズガールを捕らえているトカゲ男の背後から僕はそっと近づいた。そして呼吸を整え大声で叫んだ。
「おいトカゲ男! こっちを向くんだ!」
「はあ?」
 トカゲ男と呼ばれたことに反応したのか、フリーズガールを捕らえた手はそのままに顔だけを僕の方へと向けた。
 その瞬間僕の中で何かが切れる音がした。
「くらえっ!」
 油断しているトカゲ男の顔に消火剤をぶち撒けた。
「ぐっ……」
 消火剤が目に入ったのだろう。トカゲ男は慌てて目を擦り始めた。
 そして僕の目論見通りその手で掴んでいたフリーズガールを放した。
 僕はそのまま消火器を振りかぶり呻いているトカゲ男の足の爪先目掛けて叩きつけた。
「てめえ何しやがる!」
 足の痛みに悶絶しながらも腕を振り回すトカゲ男。もし一発でも僕に当たればただでは済まないだろう。けれど視界が奪われていたのか一発たりとも僕に命中することはなかった。
「おいお前なにしてる!」
 トカゲ男の苦しむ声で窓の外を覗っていたもう一人の犯人も異変に気づいてしまった。
「バカが。油断してるからだ」
 手から放たれた炎は真っ直ぐに僕へと向かってくる。その炎へ向けて消火剤を放つが少し勢いを弱めるのがやっとだった。
 炎は僕を掠め腕を軽く焼いただけだったが、それでも今までの人生で感じたことのないような痛みで気づいたら僕は悲鳴を上げていた。
「能力のないガキが俺達に歯向かってどうにかなると思ったのか?」
 倒れ、悶絶する僕を犯人の男は無理やり立たせた。そして僕の顔にその炎を放つ手を向け……。
「死ね。無力なガキめ」
 この上なく惨めな姿だったと思う。痛みと恐怖に支配され最早僕に出来ることは何もなかった。
 けれど、その時僕は見たんだ。犯人の背後で倒れていたはずのフリーズガールが立ち上がる姿を。
「その人は無力なんかじゃありません!」
「なっ!」
 一瞬だった。犯人は足元から凍りつき僕を掴んだ手先だけ残して1体の氷像になっていた。
「あなた、熱を操るなんて言ってましたけどほんとは手からしか炎を出せないんですよね」
 そう言うフリーズガールの足元から地面を伝って氷が犯人のもとまで伸びていた。
「床全体を凍らせるのは簡単ですがそれでは人質も巻き込んでしまいますので……どうやらあなたも油断したバカだったみたいですね」
 先程まで苦しんでいたトカゲ男もいつの間にか氷漬けになっていた。そして遅れて到着した警官隊によって犯人達は無事逮捕されたのだった。
 幸いなことに一般人にはほとんど負傷者は居なかった。たった1人僕を除いて。
「和輝!」
 救急隊に運ばれる途中翔太が駆け寄って来た。
「無事で良かったぜ」
「フリーズガールのおかげだよ。そういえば彼女は……」
「ヒーロー専門病院に運ばれたんじゃないか。正体バレないよう普通の病院は使わないって話だぜ」
「ああそうなのか……一言お礼が言いたかったな」
 ヒーローの殆どはその正体を隠している。それは捕らえた悪党が身内に対して報復を行わないようにする為だ。
 よってこの国ではヒーローの正体を探ること事態がタブーになっている。万が一知ったとしてもそれを世間に漏らすことは断じて出来ないのだ。
「まあ今はゆっくり休め。怪我、早く治るといいな」
「あぁ……ありがとう」
 今日見た光景を僕は一生忘れることはないだろう。フリーズガール、最高のヒーローのことを。
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