黒猫のクロ〜優しい魔女に拾われた僕のちょっとした恩返し〜【改訂版】

水都 ミナト

文字の大きさ
8 / 13

episode07 sideノエル

しおりを挟む
 クロは不思議な子。

 普通じゃないと気付いたのは、十年ぐらい一緒に過ごしてからだった。気付くのに十年もかかったのは、私が長き刻を生きているからで、ちょっぴり時間の感覚が鈍くなっていたから。

「あら、この子……歳を、取らないの?」
「んなぁん」

 出会った頃から変わらない毛艶と瞳の輝き。
 クロは老いる様子がない。

 初めて出会った時、無性に惹かれたのはこの子の秘めた力だったのだろうか。
 どこから来て、これまで誰と生きてきたのか。
 気になることは山ほどあるけれど、少しずつ尋ねていくことにする。だって私にはまだまだ時間があるんだから。
 それに、なぜだかクロは私の言葉をよく理解しているようで、会話が成立しているように感じることが多いのよ。
 永く一人で生きてきたから、話し相手ができてどれほど嬉しかったことか。


 命あるもの、いつかその灯火は消えてしまう。


 最近町の女の子に頼まれて、一人の老婆の最期を看取った。
 しわしわになっていたけれど、彼女が幼い頃に私の薬を買いに来てくれていた頃のことをよく覚えていた。だからこそ、とても驚いた。
 ついこの間まで、それこそあの女の子と同じ年頃だったのに、と。
 人間の命は短い。だからこそあまり深く関わらない方がいい。仲良くなりすぎると、離れる時が辛いから。私は彼らよりずっとずっと長生きだから、失うことしかできないのだから。

 だから、クロを拾ったのだって、ほんの気まぐれだった。猫は人間よりももっと短命。この子との穏やかな日々も長くは続かない。そう思って覚悟していたんだよ。


 それでも、私はすっかりクロに情が移ってしまっていた。


 老いないで。置いていかないで。私ともっと一緒に過ごそうよ。
 そう思っていただけに、クロが普通の猫ではないと気がついた時は驚きよりも喜びが勝った。


 そっか、私はまだ、クロと一緒にいられるのね。


「うふふ」
「んな?」

 おっといけない。
 嬉しくって思わず笑みが溢れてしまったわ。
 クロが『変なやつ』とでも言いたげにこちらを見ている。そんな目を細めなくったっていいじゃないの。

「ごめんなさい。あなたともっと一緒にいられると思うと嬉しくって」
「……にゃん」

 ちょっぴり素っ気ないけれど、手を伸ばせばスリ、と頬を寄せてくれる。

 あなたも嬉しいと思ってくれているのかしら?
 ……ふふ、そうだといいな。

 いつまで一緒に過ごせるか分からないけれど、別れは出来うる限り先のことだといいな。ねえ、クロ。あなたもそう思うでしょう?

「んにゃお」

 絶妙なタイミングで相槌を打つものだから、またわたしは笑みをこぼしてしまった。



 本当に、どうか少しでも長く、あなたと共に過ごせますように。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

行き遅れ王女、重すぎる軍団長に肉で釣られる

春月もも
恋愛
25歳、独身、第四王女システィーナ。 夜会でも放置されがちな行き遅れ王女の前に、ある夜突然現れたのは、ローストビーフを差し出す重すぎる第三軍団長だった。 形のない愛は信じない。 でも、出来立ての肉は信じてしまう。 肉に釣られ、距離を詰められ、気づけば下賜され、そして初夜へ。 これは、行き遅れ王女が重たい愛で満たされるまでの、ちょっとおかしなお話。

冷遇妃ライフを満喫するはずが、皇帝陛下の溺愛ルートに捕まりました!?

由香
恋愛
冷遇妃として後宮の片隅で静かに暮らすはずだった翠鈴。 皇帝に呼ばれない日々は、むしろ自由で快適——そう思っていたのに。 ある夜、突然現れた皇帝に顎を掴まれ、深く口づけられる。 「誰が、お前を愛していないと言った」 守るための“冷遇”だったと明かされ、逃げ道を塞がれ、甘く囲われ、何度も唇を奪われて——。 これは冷遇妃のはずだった少女が、気づけば皇帝の唯一へと捕獲されてしまう甘く濃密な溺愛物語。

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

聖女は聞いてしまった

夕景あき
ファンタジー
「道具に心は不要だ」 父である国王に、そう言われて育った聖女。 彼女の周囲には、彼女を心を持つ人間として扱う人は、ほとんどいなくなっていた。 聖女自身も、自分の心の動きを無視して、聖女という治癒道具になりきり何も考えず、言われた事をただやり、ただ生きているだけの日々を過ごしていた。 そんな日々が10年過ぎた後、勇者と賢者と魔法使いと共に聖女は魔王討伐の旅に出ることになる。 旅の中で心をとり戻し、勇者に恋をする聖女。 しかし、勇者の本音を聞いてしまった聖女は絶望するのだった·····。 ネガティブ思考系聖女の恋愛ストーリー! ※ハッピーエンドなので、安心してお読みください!

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない

ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。 既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。 未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。 後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。 欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。 * 作り話です * そんなに長くしない予定です

冷徹宰相様の嫁探し

菱沼あゆ
ファンタジー
あまり裕福でない公爵家の次女、マレーヌは、ある日突然、第一王子エヴァンの正妃となるよう、申し渡される。 その知らせを持って来たのは、若き宰相アルベルトだったが。 マレーヌは思う。 いやいやいやっ。 私が好きなのは、王子様じゃなくてあなたの方なんですけど~っ!? 実家が無害そう、という理由で王子の妃に選ばれたマレーヌと、冷徹宰相の恋物語。 (「小説家になろう」でも公開しています)

契約妻に「愛さない」と言い放った冷酷騎士、一分後に彼女の健気さが性癖に刺さって理性が崩壊した件

水月
恋愛
冷酷騎士様の「愛さない」は一分も持たなかった件の旦那様視点短編となります。 「君を愛するつもりはない」 結婚初夜、帝国最強の冷酷騎士ヴォルフラム・ツヴァルト公爵はそう言い放った。 出来損ないと蔑まれ、姉の代わりの生贄として政略結婚に差し出されたリーリア・ミラベルにとって、それはむしろ救いだった。 愛を期待されないのなら、失望させることもない。 契約妻として静かに役目を果たそうとしたリーリアは、緩んだ軍服のボタンを自らの銀髪と微弱な強化魔法で直す。 ただ「役に立ちたい」という一心だった。 ――その瞬間。 冷酷騎士の情緒が崩壊した。 「君は、自分の価値を分かっていない」 開始一分で愛さない宣言は撤回。 無自覚に自己評価が低い妻に、激重独占欲を発症した最強騎士が爆誕する。

処理中です...