『壁の花』の地味令嬢、『耳が良すぎる』王子殿下に求婚されています〜《本業》に差し支えるのでご遠慮願えますか?〜

水都 ミナト

文字の大きさ
10 / 10

最終話 手を取り共に

しおりを挟む
「さて、マリリン嬢。行こうか」
「はい。エドワード様」

 カリーナ様が去ったことを確認すると、エドワード様は蕩けるような笑みを私に向け、胸に手を当てて恭しくお辞儀をした。そして差し出された手に、私はそっと自分の手を重ねた。

 エドワード様にエスコートされながら私たちは会場の中心へと向かう。参列者はみんなエドワード様な隣に立つのは誰かと話しているようだ。

「みんな君に見惚れているね」
「違いますよ。エドワード様に見惚れているのです」
「いや、僕の耳には君の話題ばかり入ってきているよ」
「…さようですか」

 チラリと見上げたエドワード様は嬉しそうに頬を上気させている。

 間もなく会場の中心に到着し、エドワード様は会場を見回した。

「本日は私の誕生パーティのため、遠路はるばるご列席賜り誠にありがとうございます。本日の会場の装飾から料理、飲み物に至るまで全てこちらのマリリン・モントワール嬢が手配をしてくれた。自信を持って最高の誕生パーティになると宣言する。存分に楽しんでくれたまえ」

 エドワード様の凛とした声が会場に響き、一呼吸遅れて会場中から、わぁっと歓声が上がった。エドワード様を祝う声と拍手が会場中に鳴り響く。

「嘘…あの『壁の花』が?」「美しい…彼女は本当はあんなに美しかったのか」「この会場の手配をマリリン様が…?」「是非今度の我が家のパーティもプロデュースしてもらいたい!」

 祝いの声に混ざってそんな声も聞こえてきた。少し気恥ずかしいが悪い気はしない。エドワード様の隣に立つのだ。精一杯飾り立てた甲斐があった。

「それにしても、まさか君が僕のパートナーを引き受けてくれるなんて思いもよらなかったよ」

 エドワード様は、しばらく来賓の挨拶対応に追われていたが、落ち着いた頃合いを見計らい私の側に来てくれた。
 私は私で、是非パーティや茶会のプロデュースをして欲しい、調度品を一新しようと考えているが商品を紹介してもらいたい、この料理はどこで食べられるのかなどなど様々な繋がりを得て満足していた。

「そうですか?…ふふ、考え直したのです。エドワード様の誕生パーティには国内外の重鎮がたくさんご列席されます。我が商会と取引のない方もまだまだいらっしゃいますわ。この場の宣伝効果は凄まじいものになるでしょう。手配を請け負ったのがモントワール商会であるとご理解いただくためにも私が表に立つのが最適だと判断したのです」
「ははっ、君らしいね。…そうだ、言い忘れていたけど、今日の君は見惚れるほど綺麗だ。普段の君も愛らしくて素敵だけど。送ったドレスが無駄にならなくて安心したよ」
「ありがとうございます。エドワード様も素敵ですわ」
「ありがとう」

 エドワード様がウェイターから白ワインを受け取り、私に手渡してくれる。二人で料理が並ぶテーブルへ行き、今日のために王城のシェフ達が腕によりをかけてくれた料理を堪能する。
 そして一息つくためにバルコニーに出て夜風にあたった。
 会場からはガヤガヤと賑やかな声が響いてくる。みんなとても楽しんでくれているようで何よりだ。

「ねぇ、前から思ってたんだけど、僕の耳と君の商売魂はとても相性がいいと思うんだが」
「ふふっ、そうですわね」

 それは私も思っていたことだ。
 今回のカリーナ様の企ては、私の元に駆けつけてくれた商人達と、王城での怪しい話を聞きつけたエドワード様により未然に防ぐことができた。
 こうした社交の場でもエドワード様が聞きつけたことを私に教えてくれれば、そこから新たな商売が生まれうる。

「それで、そろそろ僕の奥さんになる決心はついたのかな?」
「ええ、そうですね」
「ははっ、そうだよね。まあ気長に口説き落とすとするよ……え?今なんて?」
「なんでもありませんわ」
「いやいやいやいや!え、ちょっと待って…あー…」

 目を白黒させて慌てるエドワード様が可愛らしい。いつも翻弄されるのは私ばかりだったから、少し意趣返しができたようで満足だ。

「エドワード様、心よりお慕いしております」

 信じられないというように私を見つめるエドワード様に微笑み返し、私は心からの言葉を送った。
 エドワード様は深いため息を吐くと、熱を帯びた瞳で真っ直ぐに私を見つめてくれる。

「はぁ…最高の誕生日だよ。マリリン、必ず君を幸せにすると誓おう」
「よろしくお願いします」

 差し出された手に、そっと手を重ねる。エドワード様の顔が赤い。

「あーー…最後の切り札にと取っておいたんだが、僕はいずれ公爵位を賜って王城を出るつもりなんだ。だから、例えば君が筆頭となり新しく商会を立ち上げる、なんてこともできると思うんだ」
「…それは魅力的すぎるお話ですわ」

 でも、そんな条件がなくても私はエドワード様の手を取った。この二ヶ月共に過ごすうちにゆっくりと育まれた暖かな気持ち。『壁の花』として商売に携わってきたけれど、どんな形であれ商売は続けることができる。
 大切なのは『信頼』と『情報』。私がこれまで築いてきた信頼関係はこれからも根強く私を支えてくれることだろう。
 私は、真っ直ぐに私を愛して敬ってくれるこの素敵な王子様と未来を紡いでいきたい。彼とならきっと、今まで以上に楽しくて素敵な毎日が過ごせることだろう。




 その後、商会の仕事を妨害しようとした罰で、カリーナ様はしばらくの謹慎を言いつけられたらしい。ましてや王族からの仕事を請け負っていた私への妨害は、回り回って王族に害を及ぼすもの。そこまで気が回っていなかったらしいカリーナ様は顔を真っ青にして大人しく謹慎しているらしい。何でもお父上の伯爵様がひどくご立腹で、カリーナ様は辺境の地へと嫁がれることになったようだ。キツくお灸を添えられて、今後は血迷ったことをしないように祈る。

 ちなみに、罰が謹慎のみで済んだのは、私がエドワード様に嘆願したからだ。エドワード様は「そんな軽い罰でいいの?」と何度も確認されたが、「ええ、だってカリーナ様も我が商会の大事なお得意様ですもの。うふふ、実は伯爵様が今後全ての取引は我が商会を介して行なってくれると言うのです。しっかりと稼がせていただきますわ」とお答えすると、驚いたように目を見開いた後、大笑いをされてしまった。



 ーーー数年後、モントワール商会と肩を並べる勢力が台頭することになる。その商会の名前はマリリン商会。とある公爵家の奥方が商会長を務める女性ならではの視点が光る商会である。
 奥方は目立たぬように変装して、今でもパーティで商売の種を拾い集めては綺麗な花を咲かせているらしい。








ーーーーー
最後までお付き合い頂きありがとうございます!
一気に更新しました…!
お気軽にご感想やお気に入り登録いただけますと次作の励みになります(*^o^*)
また短めのお話を書く予定なので、公開の暁にはまたお会いできることを祈っております…!
  ↓↓
「精霊に愛されし侯爵令嬢が、王太子殿下と婚約解消に至るまで~私の婚約者には想い人がいた~」公開開始しました!こちらも短めです。よろしければご一読ください(*^o^*)
しおりを挟む
感想 2

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(2件)

にゃあん
2022.10.18 にゃあん

面白くて一気に読ませていただきました。

2人のDNAを受け継いだ子供が出来たら、すごい事になるんだろうなとか想像してしまいました。

読ませていただきありがとうございます。

2022.10.18 水都 ミナト

ありがとうございます(*^o^*)!
そのお言葉が一番嬉しいです♡

とんでもない優秀な子供になりそうですね!笑
商会の未来も安泰ですな(*´ω`*)

こちらこそ見つけていただき、そして最後まで読んでくださりありがとうございます!

解除
おこ
2022.10.16 おこ

面白かったです✨

読み初めから最後まで
読みやすく、エドワード殿下(様❓)の一途さも素敵でした💓

2022.10.16 水都 ミナト

ありがとうございますー(*^o^*)!
嬉しいです!!

エドワードのことも気に入っていただけてホッとしました♡

解除

あなたにおすすめの小説

【完結】ブスと呼ばれるひっつめ髪の眼鏡令嬢は婚約破棄を望みます。

はゆりか
恋愛
幼き頃から決まった婚約者に言われた事を素直に従い、ひっつめ髪に顔が半分隠れた瓶底丸眼鏡を常に着けたアリーネ。 周りからは「ブス」と言われ、外見を笑われ、美しい婚約者とは並んで歩くのも忌わしいと言われていた。 婚約者のバロックはそれはもう見目の美しい青年。 ただ、美しいのはその見た目だけ。 心の汚い婚約者様にこの世の厳しさを教えてあげましょう。 本来の私の姿で…… 前編、中編、後編の短編です。

女避けの為の婚約なので卒業したら穏やかに婚約破棄される予定です

くじら
恋愛
「俺の…婚約者のフリをしてくれないか」 身分や肩書きだけで何人もの男性に声を掛ける留学生から逃れる為、彼は私に恋人のふりをしてほしいと言う。 期間は卒業まで。 彼のことが気になっていたので快諾したものの、別れの時は近づいて…。

記憶を無くした、悪役令嬢マリーの奇跡の愛

三色団子
恋愛
豪奢な天蓋付きベッドの中だった。薬品の匂いと、微かに薔薇の香りが混ざり合う、慣れない空間。 ​「……ここは?」 ​か細く漏れた声は、まるで他人のもののようだった。喉が渇いてたまらない。 ​顔を上げようとすると、ずきりとした痛みが後頭部を襲い、思わず呻く。その拍子に、自分の指先に視線が落ちた。驚くほどきめ細やかで、手入れの行き届いた指。まるで象牙細工のように完璧だが、酷く見覚えがない。 ​私は一体、誰なのだろう?

聖女の座を追われた私は田舎で畑を耕すつもりが、辺境伯様に「君は畑担当ね」と強引に任命されました

さら
恋愛
 王都で“聖女”として人々を癒やし続けてきたリーネ。だが「加護が弱まった」と政争の口実にされ、無慈悲に追放されてしまう。行き場を失った彼女が選んだのは、幼い頃からの夢――のんびり畑を耕す暮らしだった。  ところが辺境の村にたどり着いた途端、無骨で豪胆な領主・辺境伯に「君は畑担当だ」と強引に任命されてしまう。荒れ果てた土地、困窮する領民たち、そして王都から伸びる陰謀の影。追放されたはずの聖女は、鍬を握り、祈りを土に注ぐことで再び人々に希望を芽吹かせていく。  「畑担当の聖女さま」と呼ばれながら笑顔を取り戻していくリーネ。そして彼女を真っ直ぐに支える辺境伯との距離も、少しずつ近づいて……?  畑から始まるスローライフと、不器用な辺境伯との恋。追放された聖女が見つけた本当の居場所は、王都の玉座ではなく、土と緑と温かな人々に囲まれた辺境の畑だった――。

身代わり令嬢、恋した公爵に真実を伝えて去ろうとしたら、絡めとられる(ごめんなさぁぁぁぁい!あなたの本当の婚約者は、私の姉です)

柳葉うら
恋愛
(ごめんなさぁぁぁぁい!) 辺境伯令嬢のウィルマは心の中で土下座した。 結婚が嫌で家出した姉の身代わりをして、誰もが羨むような素敵な公爵様の婚約者として会ったのだが、公爵あまりにも良い人すぎて、申し訳なくて仕方がないのだ。 正直者で面食いな身代わり令嬢と、そんな令嬢のことが実は昔から好きだった策士なヒーローがドタバタとするお話です。 さくっと読んでいただけるかと思います。

毒味役の私がうっかり皇帝陛下の『呪い』を解いてしまった結果、異常な執着(物理)で迫られています

白桃
恋愛
「触れるな」――それが冷酷と噂される皇帝レオルの絶対の掟。 呪いにより誰にも触れられない孤独な彼に仕える毒味役のアリアは、ある日うっかりその呪いを解いてしまう。 初めて人の温もりを知った皇帝は、アリアに異常な執着を見せ始める。 「私のそばから離れるな」――物理的な距離感ゼロの溺愛(?)に戸惑うアリア。しかし、孤独な皇帝の心に触れるうち、二人の関係は思わぬ方向へ…? 呪いが繋いだ、凸凹主従(?)ラブファンタジー!

【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました

雨宮羽那
恋愛
 結婚して5年。リディアは悩んでいた。  夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。  ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。  どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。  そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。  すると、あら不思議。  いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。 「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」 (誰ですかあなた) ◇◇◇◇ ※全3話。 ※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜

図書館でうたた寝してたらいつの間にか王子と結婚することになりました

鳥花風星
恋愛
限られた人間しか入ることのできない王立図書館中枢部で司書として働く公爵令嬢ベル・シュパルツがお気に入りの場所で昼寝をしていると、目の前に見知らぬ男性がいた。 素性のわからないその男性は、たびたびベルの元を訪れてベルとたわいもない話をしていく。本を貸したりお茶を飲んだり、ありきたりな日々を何度か共に過ごしていたとある日、その男性から期間限定の婚約者になってほしいと懇願される。 とりあえず婚約を受けてはみたものの、その相手は実はこの国の第二王子、アーロンだった。 「俺は欲しいと思ったら何としてでも絶対に手に入れる人間なんだ」

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。