【完結】パーティに捨てられた泣き虫魔法使いは、ダンジョンの階層主に溺愛される

水都 ミナト

文字の大きさ
34 / 109
第一部 ダンジョンの階層主は、パーティに捨てられた泣き虫魔法使いに翻弄される

33. エレインのルーツ

しおりを挟む
「古代文字??」

 手記の持ち主であるエレインは、身に覚えのない言葉に戸惑いを隠せない。

「ええ、もうずーーっと昔にダンジョンに住んでいた、とある種族固有の文字だわ」
「ほえぇ…なんでそんな文字で書かれてるんだろう…」

 顎に手を当てて、首を捻るエレイン。ドリューンはパタンと手記を閉じると、やや不自然な明るさで言った。

「ま、ダンジョン内で拾ったのかな?エレインちゃんのお婆様か、ご先祖様にダンジョンを攻略していた冒険者がいたんじゃなあい?」
「はっ!お婆ちゃんは冒険者だったって…よく当時の話を聞かせてもらいました!そっか、なるほど~」

 ドリューンの説明に、エレインはあっさり納得してニコニコ笑みを浮かべた。
 一方のドリューンは、ちらりとホムラに目配せする。それに気づいたホムラは露骨に嫌な顔をしたが、頭の後ろで手を組むと、エレインに話しかけた。

「おい、おチビ。手記の件はこっちで色々調べるから、お前はいつもの走り込みに行ってこい」
「えーーー!?嘘でしょっ!?地上から戻ったばっかですよ?」
「だぁーウルセェな。じゃあアグニも連れてけ」
「んなぁぁあ!?何でですか!!」
「お守りだ。ほら、帰りの魔法陣はコレな」
「あ、ありがとうござ…ってちがぁぁぁう!きゃぁぁっ」

 エレインとアグニが異議を唱えるも、無理やり帰りの魔法陣を持たされ、階層移動用の魔法陣に放り込まれた。転移間際、二人の断末魔のような非難の声が部屋に響いて消えていった。

「…で、アイツらに訊かれたくない話でもあんのか?」

 二人が居なくなったことを確認すると、ホムラらはドリューンに向き合った。

「エレインちゃんの補助魔法を見た時から、もしかしたらって思ってたんだけど…」

 ドリューンは少し躊躇いがちに言葉を続けた。

「あの子の補助魔法は、やっぱり古代魔法だったんだわ」
「あぁ?それがどうかしたのかよ」

 要領を得ないドリューンの言葉に、ホムラはやや苛立ちながら先を促す。

「さっきの木箱もそうだけど、特有の血族にしか使えない魔法というものが存在するのよ。だから、古代魔法をエレインちゃんが使えているってことは…」

 ドリューンは、躊躇いがちに視線を下ろすと、意を決したように顔を上げた。

「エレインちゃんのお婆様…ううん、もっと、ずっとずっと先のご先祖様は、ダンジョンの魔人だったんだわ」
「はぁ?」

 想定外のドリューンの言葉に、ホムラは声を上擦らせた。

「ハイエルフって、知ってる?今は99階層の深くに潜んでしまっている稀少な種族なんだけどね。昔に、彼らの一部が地上へ降りて行ったのよ。ダンジョンの外のことまで私は分からないから、その後どうなったのかは知らないけれど…そう、きっと彼らは人間の世界に溶け込んで生きて行ったのね…エレインちゃんは、地上へ降りたハイエルフの末裔ってことでしょうね。もうほとんどその血は薄まっているでしょうけど。古代魔法を使えるのがその証拠よ。彼らは自分達の固有の魔力じゃないと使えない魔法をいくつも生み出していたわ。補助魔法もその一つ。普通の人間がいくら修行しても、使えるものじゃないのよ」

 ドリューンの話をまとめると、つまり、エレインは人間でありながら、ここダンジョンにルーツを持つ特殊な人物だということか。
 ホムラはガシガシと頭を掻き、ふーっと息を吐き出した。

「はぁ…何だか途方もねぇ話だが…」
「?」
「結局、アイツはアイツだろ?へっぽこで泣き虫で、実は負けず嫌いで根性のあるエレインに変わりはない」
「…ふふ、そうですね」

 ホムラにとって、エレインが何者であるかは関係がなかった。エレインはエレインであり、それ以外に気に病むことは何もない。

 ふと、ホムラは頭に浮かんだ疑問を口にする。

「あ?ってことは、99階層のどっかにいるってハイエルフは、おチビの親戚になるってことかァ?」
「うーん、まあそうなるけど…会いに行くのはやめた方がいいわね」

 ホムラの問いに、ドリューンは眉根を下げながらゆるりと首を振った。

「は?何でだよ。アイツはもう地上に身寄りがいねぇんだぞ」
「うん…あのね、ハイエルフの一部が地上に降りる時、残留組とかなり揉めたのよ。ダンジョンを降りると力が激減するし、生きていける保証もないしね。だから、ダンジョンに残ったハイエルフ達は、地上組のことをあまりよく思っていないのよ」

 ドリューンの言葉にホムラは深くため息を吐く。

 地上に繰り出した古代のハイエルフ達。彼らは地上に何を求め、何を得たのだろうか。

「なんだか面倒くさいな」
「みんながホムラ様みたいに単純に物事を考えられたらいいんですけどね」
「お前それ褒めてんのか?貶してんのか?」
「ふふふ、褒めてますよ」

 ドリューンの冗談で、しんみりした雰囲気が少し和らいだ。ホムラは手記をパラパラ捲る。

「ここには何が書いてあるんだろうなァ。おチビは全部把握してんのか?」
「うーん、私の予想だけど、エレインちゃんのお婆様は全部を彼女に打ち明けてはいないようだし、手記の内容も補助魔法のところしか読めないんじゃないかしら?」

 恐らく、エレインの祖母も、この手記を先代から受け継いだのだろう。そこにはもしかしたら、地上に降りたハイエルフ達の生活の様子や、その心持ちが記されているのかもしれない。或いは、強力すぎる禁忌の魔法かーーー

「ま、アイツのためになる内容なら知らせてやればいいさ。後の判断は本人に任せるわ」
「そうね」

 ドリューンとホムラが話を切り上げ、まったりとお茶を楽しんだ。しばらくして、ボロボロになったエレインとアグニが戻って来て、ブーブーとホムラに対して不満を述べたのだった。
しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

治療院の聖者様 ~パーティーを追放されたけど、俺は治療院の仕事で忙しいので今さら戻ってこいと言われてももう遅いです~

大山 たろう
ファンタジー
「ロード、君はこのパーティーに相応しくない」  唐突に主人公:ロードはパーティーを追放された。  そして生計を立てるために、ロードは治療院で働くことになった。 「なんで無詠唱でそれだけの回復ができるの!」 「これぐらいできないと怒鳴られましたから......」  一方、ロードが追放されたパーティーは、だんだんと崩壊していくのだった。  これは、一人の少年が幸せを送り、幸せを探す話である。 ※小説家になろう様でも連載しております。 2021/02/12日、完結しました。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

「お前は用済みだ」役立たずの【地図製作者】と追放されたので、覚醒したチートスキルで最高の仲間と伝説のパーティーを結成することにした

黒崎隼人
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――役立たずの【地図製作者(マッパー)】として所属パーティーから無一文で追放された青年、レイン。死を覚悟した未開の地で、彼のスキルは【絶対領域把握(ワールド・マッピング)】へと覚醒する。 地形、魔物、隠された宝、そのすべてを瞬時に地図化し好きな場所へ転移する。それは世界そのものを掌に収めるに等しいチートスキルだった。 魔力制御が苦手な銀髪のエルフ美少女、誇りを失った獣人の凄腕鍛冶師。才能を活かせずにいた仲間たちと出会った時、レインの地図は彼らの未来を照らし出す最強のコンパスとなる。 これは、役立たずと罵られた一人の青年が最高の仲間と共に自らの居場所を見つけ、やがて伝説へと成り上がっていく冒険譚。 「さて、どこへ行こうか。俺たちの地図は、まだ真っ白だ」

S級パーティを追放された無能扱いの魔法戦士は気ままにギルド職員としてスローライフを送る

神谷ミコト
ファンタジー
【祝!4/6HOTランキング2位獲得】 元貴族の魔法剣士カイン=ポーンは、「誰よりも強くなる。」その決意から最上階と言われる100Fを目指していた。 ついにパーティ「イグニスの槍」は全人未達の90階に迫ろうとしていたが、 理不尽なパーティ追放を機に、思いがけずギルドの職員としての生活を送ることに。 今までのS級パーティとして牽引していた経験を活かし、ギルド業務。ダンジョン攻略。新人育成。そして、学園の臨時講師までそつなくこなす。 様々な経験を糧にカインはどう成長するのか。彼にとっての最強とはなんなのか。 カインが無自覚にモテながら冒険者ギルド職員としてスローライフを送るである。 ハーレム要素多め。 ※隔日更新予定です。10話前後での完結予定で構成していましたが、多くの方に見られているため10話以降も製作中です。 よければ、良いね。評価、コメントお願いします。励みになりますorz 他メディアでも掲載中。他サイトにて開始一週間でジャンル別ランキング15位。HOTランキング4位達成。応援ありがとうございます。 たくさんの誤字脱字報告ありがとうございます。すべて適応させていただきます。 物語を楽しむ邪魔をしてしまい申し訳ないですorz 今後とも応援よろしくお願い致します。

処理中です...