55 / 109
第二部 パーティに捨てられた泣き虫魔法使いは、ダンジョンの階層主に溺愛される
51. ダンジョン上層階
しおりを挟む
「う、うーん…」
朝、珍しくアグニに起こされる前に、エレインは目を覚ました。
未だ覚醒し切らない頭でボーッとまどろみながら、もそもそと布団を引き上げ、その温もりに包まれ寝返りを打つ。この時間が何とも至高だ。
「んふふ…あったかい……ん?」
寝返りを打った先で眠っていたホムラの胸に顔を埋めて、暖を取っていたエレインは、ふと我に返った。
「ん?んんん?んぇぇぇぇぇ!?」
(何でホムラさんが私のベッドにいるのーーー!?)
そして飛び跳ねるように起き上がると、布団を抱き抱えながらアワアワと状況を確認する。
ホムラもエレインも着衣に乱れはない。一夜の過ちがあったわけではなさそうだ。エレインはひとまずホッと息を吐いた。
「う…さびぃ…」
急に布団を奪われて外気に晒されたホムラが、意識を浮上させたようで、もそりと縮こまった。そして薄く目を開けて、未だに口をパクパクさせているエレインを確認すると、ニヤッと口元に悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「わ、きゃっ」
そしてホムラは、抱き抱える布団ごとエレインを抱き寄せて、抱き枕の如くギュウっと両脚で挟み込んだ。
「あーあったけぇ…」
「な、ななっ…あばばば」
「ぶはっ、何だよそれ」
自らの腕の中で目を白黒させて狼狽えるエレインを、ホムラは楽しそうに見つめている。
「え、えっと…何でホムラさんが私のベッドに…?」
「あァ?お前覚えてないのかよ」
エレインは赤くなった顔をホムラの胸に埋めて隠しながら、おずおずと尋ねた。その言葉に、ホムラは信じられないと言うように目を見開いた。
「そもそも、ここは俺のベッドだぞ」
「えっ!?あ、ほんとだ…何で!?」
エレインが全く何も覚えていない様子なので、ホムラは呆れたようにため息をついた。
「ったく、説明すんのも面倒くせぇ…」
ホムラはようやくエレインを解放すると、欠伸をしながら起き上がった。
「昨日の夜、ダンジョンに入ったことは覚えてるか?」
「ダンジョン……あっ!」
エレインも火照った顔を押さえながら慌てて身体を起こし、記憶の糸を手繰る。そして、昨日経験した恐ろしい出来事を思い出し、赤くなっていた顔を青ざめさせた。
時は数日遡るーーー
◇◇◇
エレインがダンジョンに追放されてから、早くも2ヶ月が過ぎようとしていた。
「きゃぁぁぁぁぁ!!」
「オラオラァ!逃げてばかりじゃ何も変わらねぇぞォ!!」
「そんなこと言われましてもぉぉ!?」
エレインは日課となったホムラとの修行に勤しんでいた。
飛び交う火球を紙一重で回避するが、今日の課題は『攻撃を躱しながらホムラに触れること』。一向に縮まらない距離にホムラが叱咤を飛ばすが、エレインは回避に必死で、水球を放ってホムラの火球を相殺するのでやっとな状態だ。
「ぜぇ、はぁ…」
「ったく、だらしねぇな」
「ううっ、ぐすっ…」
結局ホムラに触れることは叶わず、今日の修行は終了した。エレインがべそをかいていると、見学していたアグニがてててと歩み寄ってきた。
「エレイン」
「ん?どうしたの?アグニちゃん…」
「エレインは、防御魔法は使わないのですか?」
「……へ?」
アグニの問いに、エレインは目を瞬かせた。
「あァ?攻撃が最大の防御だろうが」
脳筋なホムラはそう言うが、エレインはアグニの問いに盲点を突かれていた。
(ほ、本当だ…防御魔法と攻撃魔法を上手く使いこなせたら、戦い方の幅も広がる…)
「あら、いいんじゃない?使えるに越したことはないと思うわ」
「ドリューさんっ!」
エレインが考え込んでいると、パァッと目の前に光が集まり、樹人族のドリューンが姿を現した。
ドリューンからも賛同を得て、エレインは防御魔法について学ぶこととなった。早速ダンジョンの裏へ移動して祖母の手記を取り出した。
祖母の手記には、初級魔法を始めとし、防御魔法ついても細かく記されていた。生前祖母に教わった範囲は解読ができたが、教わっていなくても同レベルの魔法についての記載なら何とか読み解ける。
「基礎的なものだと、《水の壁》、《土壁》、《風の檻》辺りかなぁ」
「そうね、ホムラ様は火属性が得意だし、水か土から覚えるのがいいと思うわ」
呪文と魔法を発動する際のコツや注意点を何とか読み込むエレインとドリューン。その時、ドリューンがとあることを思い出したようで、ポンと手を叩いた。
「そうだわ。エレインちゃん、アナタ地上で光魔法を使ったんじゃなかった?」
「え…?あ、はい。でも、ハイエルフの力に覚醒していた時ですから、今は…」
「あら、一度でも使えたということは、習得を目指してもいいんじゃないかしら?」
エレインは確かに、ホムラが受けた呪詛を光魔法を用いて浄化した。だが、光魔法は魔法の五大要素とは別の魔法にカテゴライズされている。闇魔法も同様であるが、誰でも使える魔法ではないのだ。
地上で使えたのであれば、エレインにはその素養があるはずなのだが、習得するのは容易ではない。
「防御魔法に光魔法…うん、大変そうだけど…私、習得したいです!頑張ります!」
エレインはしばらく考え込むと、覚悟を決めたように両手で拳を作って頷いた。
「そういえばおチビ、ここに来てからレベルはどうなってる?」
「え?」
その様子を目元を和ませながら眺めていたホムラが、不意に尋ねた。その言葉を受けて、エレインは手で空を切り、《ウィンドウ》を表示する。
「…実は、レベル79には上がったんですけど、それっきり上がる兆しがなくて…」
日々のダンジョンでの訓練で、着実に経験値を貯めてレベリングをしているはずなのだが、エレインのレベルは伸び悩んでいた。
ちなみに地上にいる冒険者の中で、エレインに匹敵するレベルの持ち主は居ないのだが、本人の知る由はない。レベル70オーバーともなると、レベルアップに必要な経験値も膨大な量となり、レベル上げも容易では無い。
「ふーむ」
エレインの答えを聞き、ホムラも思案顔となる。そして、エレインを見据えると、とあることを提案した。
「おチビ、お前上層階を攻略する気はあるか?」
朝、珍しくアグニに起こされる前に、エレインは目を覚ました。
未だ覚醒し切らない頭でボーッとまどろみながら、もそもそと布団を引き上げ、その温もりに包まれ寝返りを打つ。この時間が何とも至高だ。
「んふふ…あったかい……ん?」
寝返りを打った先で眠っていたホムラの胸に顔を埋めて、暖を取っていたエレインは、ふと我に返った。
「ん?んんん?んぇぇぇぇぇ!?」
(何でホムラさんが私のベッドにいるのーーー!?)
そして飛び跳ねるように起き上がると、布団を抱き抱えながらアワアワと状況を確認する。
ホムラもエレインも着衣に乱れはない。一夜の過ちがあったわけではなさそうだ。エレインはひとまずホッと息を吐いた。
「う…さびぃ…」
急に布団を奪われて外気に晒されたホムラが、意識を浮上させたようで、もそりと縮こまった。そして薄く目を開けて、未だに口をパクパクさせているエレインを確認すると、ニヤッと口元に悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「わ、きゃっ」
そしてホムラは、抱き抱える布団ごとエレインを抱き寄せて、抱き枕の如くギュウっと両脚で挟み込んだ。
「あーあったけぇ…」
「な、ななっ…あばばば」
「ぶはっ、何だよそれ」
自らの腕の中で目を白黒させて狼狽えるエレインを、ホムラは楽しそうに見つめている。
「え、えっと…何でホムラさんが私のベッドに…?」
「あァ?お前覚えてないのかよ」
エレインは赤くなった顔をホムラの胸に埋めて隠しながら、おずおずと尋ねた。その言葉に、ホムラは信じられないと言うように目を見開いた。
「そもそも、ここは俺のベッドだぞ」
「えっ!?あ、ほんとだ…何で!?」
エレインが全く何も覚えていない様子なので、ホムラは呆れたようにため息をついた。
「ったく、説明すんのも面倒くせぇ…」
ホムラはようやくエレインを解放すると、欠伸をしながら起き上がった。
「昨日の夜、ダンジョンに入ったことは覚えてるか?」
「ダンジョン……あっ!」
エレインも火照った顔を押さえながら慌てて身体を起こし、記憶の糸を手繰る。そして、昨日経験した恐ろしい出来事を思い出し、赤くなっていた顔を青ざめさせた。
時は数日遡るーーー
◇◇◇
エレインがダンジョンに追放されてから、早くも2ヶ月が過ぎようとしていた。
「きゃぁぁぁぁぁ!!」
「オラオラァ!逃げてばかりじゃ何も変わらねぇぞォ!!」
「そんなこと言われましてもぉぉ!?」
エレインは日課となったホムラとの修行に勤しんでいた。
飛び交う火球を紙一重で回避するが、今日の課題は『攻撃を躱しながらホムラに触れること』。一向に縮まらない距離にホムラが叱咤を飛ばすが、エレインは回避に必死で、水球を放ってホムラの火球を相殺するのでやっとな状態だ。
「ぜぇ、はぁ…」
「ったく、だらしねぇな」
「ううっ、ぐすっ…」
結局ホムラに触れることは叶わず、今日の修行は終了した。エレインがべそをかいていると、見学していたアグニがてててと歩み寄ってきた。
「エレイン」
「ん?どうしたの?アグニちゃん…」
「エレインは、防御魔法は使わないのですか?」
「……へ?」
アグニの問いに、エレインは目を瞬かせた。
「あァ?攻撃が最大の防御だろうが」
脳筋なホムラはそう言うが、エレインはアグニの問いに盲点を突かれていた。
(ほ、本当だ…防御魔法と攻撃魔法を上手く使いこなせたら、戦い方の幅も広がる…)
「あら、いいんじゃない?使えるに越したことはないと思うわ」
「ドリューさんっ!」
エレインが考え込んでいると、パァッと目の前に光が集まり、樹人族のドリューンが姿を現した。
ドリューンからも賛同を得て、エレインは防御魔法について学ぶこととなった。早速ダンジョンの裏へ移動して祖母の手記を取り出した。
祖母の手記には、初級魔法を始めとし、防御魔法ついても細かく記されていた。生前祖母に教わった範囲は解読ができたが、教わっていなくても同レベルの魔法についての記載なら何とか読み解ける。
「基礎的なものだと、《水の壁》、《土壁》、《風の檻》辺りかなぁ」
「そうね、ホムラ様は火属性が得意だし、水か土から覚えるのがいいと思うわ」
呪文と魔法を発動する際のコツや注意点を何とか読み込むエレインとドリューン。その時、ドリューンがとあることを思い出したようで、ポンと手を叩いた。
「そうだわ。エレインちゃん、アナタ地上で光魔法を使ったんじゃなかった?」
「え…?あ、はい。でも、ハイエルフの力に覚醒していた時ですから、今は…」
「あら、一度でも使えたということは、習得を目指してもいいんじゃないかしら?」
エレインは確かに、ホムラが受けた呪詛を光魔法を用いて浄化した。だが、光魔法は魔法の五大要素とは別の魔法にカテゴライズされている。闇魔法も同様であるが、誰でも使える魔法ではないのだ。
地上で使えたのであれば、エレインにはその素養があるはずなのだが、習得するのは容易ではない。
「防御魔法に光魔法…うん、大変そうだけど…私、習得したいです!頑張ります!」
エレインはしばらく考え込むと、覚悟を決めたように両手で拳を作って頷いた。
「そういえばおチビ、ここに来てからレベルはどうなってる?」
「え?」
その様子を目元を和ませながら眺めていたホムラが、不意に尋ねた。その言葉を受けて、エレインは手で空を切り、《ウィンドウ》を表示する。
「…実は、レベル79には上がったんですけど、それっきり上がる兆しがなくて…」
日々のダンジョンでの訓練で、着実に経験値を貯めてレベリングをしているはずなのだが、エレインのレベルは伸び悩んでいた。
ちなみに地上にいる冒険者の中で、エレインに匹敵するレベルの持ち主は居ないのだが、本人の知る由はない。レベル70オーバーともなると、レベルアップに必要な経験値も膨大な量となり、レベル上げも容易では無い。
「ふーむ」
エレインの答えを聞き、ホムラも思案顔となる。そして、エレインを見据えると、とあることを提案した。
「おチビ、お前上層階を攻略する気はあるか?」
0
あなたにおすすめの小説
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~
テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。
しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。
ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。
「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」
彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ――
目が覚めると未知の洞窟にいた。
貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。
その中から現れたモノは……
「えっ? 女の子???」
これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。
魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた
黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。
名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。
絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。
運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。
熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。
そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。
これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。
「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」
知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。
大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる
遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」
「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」
S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。
村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。
しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。
とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。
スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~
きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。
洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。
レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。
しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。
スキルを手にしてから早5年――。
「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」
突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。
森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。
それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。
「どうせならこの森で1番派手にしようか――」
そこから更に8年――。
18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。
「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」
最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。
そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。
勇者パーティーにダンジョンで生贄にされました。これで上位神から押し付けられた、勇者の育成支援から解放される。
克全
ファンタジー
エドゥアルには大嫌いな役目、神与スキル『勇者の育成者』があった。力だけあって知能が低い下級神が、勇者にふさわしくない者に『勇者』スキルを与えてしまったせいで、上級神から与えられてしまったのだ。前世の知識と、それを利用して鍛えた絶大な魔力のあるエドゥアルだったが、神与スキル『勇者の育成者』には逆らえず、嫌々勇者を教育していた。だが、勇者ガブリエルは上級神の想像を絶する愚者だった。事もあろうに、エドゥアルを含む300人もの人間を生贄にして、ダンジョンの階層主を斃そうとした。流石にこのような下劣な行いをしては『勇者』スキルは消滅してしまう。対象となった勇者がいなくなれば『勇者の育成者』スキルも消滅する。自由を手に入れたエドゥアルは好き勝手に生きることにしたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる