【完結】パーティに捨てられた泣き虫魔法使いは、ダンジョンの階層主に溺愛される

水都 ミナト

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第二部 パーティに捨てられた泣き虫魔法使いは、ダンジョンの階層主に溺愛される

55. 眠れない夜

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 その日の就寝時、エレインは布団を頭から被り、ガタガタと震えていた。

「ね、眠れないぃ…うぅっ…ぐすっ」

 半べそで恐る恐る布団から顔を出すと、隣のベッドのアグニはスヤスヤと可愛い顔をして寝ているではないか。アグニは寝相が酷いので、既に上布団はベッドの足元でぐちゃぐちゃに丸まっている。
 エレインは恨めしそうに熟睡するアグニを見据えると、再び布団の中に潜り込んだ。

 ホムラとアグニが側に居てくれたものの、やはり死霊やアンデッド系はエレインにとっては苦手な魔物なのだ。
 目を閉じると瞼の裏に魔物達の青白い顔や爛れた皮膚、光の灯されていない暗い瞳が浮かび上がってくる。手を伸ばし縋るように襲いかかってくるアンデッドの瞳には、底の知れない闇の深さが窺え、その闇の中に吸い込まれてしまいそうに錯覚する。
 その度に飛び起きては冷や汗を拭う。

 その後も悶々としながら中々眠りにつけないエレイン。ひょっこり布団から顔を出して、しばし思案すると、そーっと身体を起こしてベッドから抜け出した。
 そして、2つ隣のベッドに歩み寄り、ホムラの寝顔を覗き込む。

(ね、寝てる…よね?)

 ホムラはベッドの右端で外側を向いて寝ていた。反対側にはエレインが潜り込むには十分なスペースがある。

(お、怒られるかな…でも1人じゃ寝れない…!)

 エレインはそろりそろりと布団を捲り、スルリとホムラのベッドに潜り込んだ。ほんのりと温かさを感じ、少しホッとする。

 エレインは、自分のベッドの中と同様に、布団を被ってギュッと目を瞑る。

「ったく、怖いのか?」
「んきゃっ!?」

 不意にバサリと布団を奪われ、顔を上げると、ホムラが肘をつきながらこちらを向いて呆れ顔をしていた。

「ほ、ホムラさぁん…」

 エレインがじわりと目に涙を滲ませ見つめると、ホムラはやれやれと肩をすくめて片手を広げた。

「ん」
「ん?」
「寝れねぇんだろう?来いよ」

 エレインがホムラの意図を掴めずにいると、痺れを切らしたホムラがグイッとエレインの腕を引き寄せた。

「~~っ!?」

 突然のことに顔がぼんっと熱くなるエレイン。ホムラにより、エレインは後ろから抱き締めるように抱えられている。

「これでもう怖くねぇだろ。早く寝ろ」
「…は、はい」

 確かに、恥ずかし過ぎて恐怖心は吹き飛んでしまった。だが、これはこれで眠るのは難しいのではなかろうか。
 あわあわと動揺するエレインの耳元でフッと吐息が漏れた。その息が耳にかかって、エレインはびくりと身を震わせる。

「抱き枕みてぇだな」
「ぅえっ!?そ、そう、ですね?」

 ホムラはくくく、と楽しそうに笑っている。いつもの調子のホムラに、少し緊張が溶けたエレインも、へへへと小さく笑みを漏らす。
 ホムラの熱が背中から伝わって来て、ドキドキと胸が高鳴るが、何だかとても安心する。
 エレインはホッと息を吐くと、急激な睡魔に襲われて、そのまま落ちるように眠りについた。

 もう瞳を閉じても恐ろしいアンデッド達の姿は、浮かび上がってこなかった。

「…ったく、安心した顔して寝やがって」

 ホムラを信頼しきってスヤスヤと腕の中で眠るエレイン。その寝顔を覗き見ながら、ホムラは深く息を吐いた。

「俺も1人の男なんだがなァ…」

 誰にも聞こえない声量でボソリと溢した言葉は、夜の静寂に溶けていった。

 ホムラは困った顔をしながらも固く目を閉じて、眠れるように努めたのだった。
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