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第二部 パーティに捨てられた泣き虫魔法使いは、ダンジョンの階層主に溺愛される
62. ローラからの手紙
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「それでねー、ホムラさんってば酷いんだよ?」
「……お前は何故当たり前のようにここに居座っているのだ」
ウォンと再会してから早くも5日が経った。ここはウォンの住処である大樹の中。エレインは当たり前のようにこの場所に居た。
ウォンは短刀の手入れをしながら、エレインに視線を投げた。
「え?ダメだった?」
「いや……俺は構わないが…少しは警戒というものを覚えてはどうだ」
「?」
目を瞬くエレインの反応に、ウォンは深く溜息をついた。
この5日で、エレインは日中の空いた時間を利用して、既に3回この場所を訪れていた。
エレインはダンジョンで暮らしていること、その経緯などを聞かれてもいないのに語って聞かせた。ウォンはたまに相槌を打ちながらも静かに耳を傾けてくれた。ウォンは寡黙だが、聞き上手なのでついつい色々と語ってしまうのだ。
ウォンは自分のことを多く語ろうとはしなかった。だが、エレインは受け入れられているだけで満足であった。
無闇に詮索はせず、ウォンが身の上話を打ち明けてくれる日を気長に待つつもりだ。
「そういえば、この階層の攻略は進んでいるのか?」
珍しくウォンから話題を振られて、エレインは嬉しそうに顔を綻ばせた。
「思うところがあって、ちょっとお休み中なんだー。今は防御魔法の練習に専念してるの。《水の壁》はかなり使えるようになったから、今は《土壁》と《風の檻》の練習中!」
「ふむ…」
サーベルモンキーに追われた時、エレインは適切な魔法を選択できずに追い詰められてしまった。今のままだとまた凶暴な魔物に襲われればひとたまりもない。そう思い、しばしダンジョン攻略を休んで修行に励んでいるのだ。
修行の話をすると、ウォンは作業する手を止めて少し考え込んだ。どうかしたのかとエレインがウォンの顔を覗き込む。
ウォンは躊躇いがちに口を開いた。
「風魔法なら、俺の得意属性だ。少しなら見てやることもできるが…」
「えっ!?本当!?」
エレインは想定外の提案に驚き、思わずウォンの両手を取った。
「嬉しい…!是非!うわー…友達に魔法を教えてもらうなんて夢みたい」
「……友達?」
エレインが呟くように述べた言葉に、ウォンは首を傾げる。エレインは照れ臭そうに頬を掻いた。
「えへへ、私は勝手にそう思ってるんだけど…ダメ、かな」
「…………いや、そんなことはない」
ウォンは気まずそうに視線を逸らすが、その耳はほんのり赤い。ウォンは照れるとすぐに耳が赤くなる。エレインは思わずクスクス笑みを浮かべてしまう。
「笑うな」
「ごめん」
ウォンに諌められるが、エレインの心はぽかぽかと暖かかった。
エレインはパーティに属していた頃は友と呼べる者は1人も居なかった。祖母と暮らしていた時も、森で二人暮らしだったため、そもそも人との関わり合いは得意ではなかった。
友人やライバルと切磋琢磨しながら魔法の修練を積む経験も勿論ない。今でこそ師と呼べるホムラや、アグニやリリス、ドリューンといった心優しい人達に囲まれているのだが、どうしても憧れがあった。
「じゃあ、お言葉に甘えて次来た時は教えてもらおうかな」
「ああ、任せておけ」
エレインはウォンに微笑みかけると、挨拶を済ませて70階層へと帰還した。
◇◇◇
エレインが70階層の居住空間に戻ると、ちょうどホムラとアグニも戻って来たところで、エレインに気がつくと片手を上げて近づいて来た。
「おう、おチビ。何処かに行ってたのか?」
「あ、えーっと…ちょっとダンジョンに潜ってました」
「ふーん?」
ホムラに何気なく行き先を問われ、エレインはぎくりとした。密かにウォンに会っていることがバレると間違いなく怒られる。
エレインが目を泳がせながら曖昧に答えると、ホムラは首を傾けながらも深く問いただすことはしなかった。
ホムラとアグニがドカッとソファに腰掛けたため、エレインもその対面に腰掛けた。
と、その時。部屋の中心で転移の光が弾けた。光の中から姿を現したのは、リリスであった。
「リリス!いらっしゃい」
エレインはいつものようにリリスに駆け寄って迎え入れたが、リリスの表情は晴れなかった。
「リリス…?」
「エレイン…」
よく見ると、リリスは何か手紙のようなものを手にしており、躊躇いがちにその手紙をエレインに差し出した。
「誰から…?って、ローラさん?」
手紙の差出人は、かつての担当受付官であり、ギルドのサブマスターであるローラであった。
エレインは慌てて封を破き、手紙を広げた。ホムラとアグニもなんだなんだと集まって来た。3人で覗き込むようにして手紙を読む。
そこには簡単に一文だけ書かれていた。
『大切なお話があります。明日正午、ギルドでお待ちしております』
「えっ…と?」
「つまり、あれか?」
「地上へ降りて来いってことですかね」
エレインとホムラ、そしてアグニは顔を見合わせた。
「……お前は何故当たり前のようにここに居座っているのだ」
ウォンと再会してから早くも5日が経った。ここはウォンの住処である大樹の中。エレインは当たり前のようにこの場所に居た。
ウォンは短刀の手入れをしながら、エレインに視線を投げた。
「え?ダメだった?」
「いや……俺は構わないが…少しは警戒というものを覚えてはどうだ」
「?」
目を瞬くエレインの反応に、ウォンは深く溜息をついた。
この5日で、エレインは日中の空いた時間を利用して、既に3回この場所を訪れていた。
エレインはダンジョンで暮らしていること、その経緯などを聞かれてもいないのに語って聞かせた。ウォンはたまに相槌を打ちながらも静かに耳を傾けてくれた。ウォンは寡黙だが、聞き上手なのでついつい色々と語ってしまうのだ。
ウォンは自分のことを多く語ろうとはしなかった。だが、エレインは受け入れられているだけで満足であった。
無闇に詮索はせず、ウォンが身の上話を打ち明けてくれる日を気長に待つつもりだ。
「そういえば、この階層の攻略は進んでいるのか?」
珍しくウォンから話題を振られて、エレインは嬉しそうに顔を綻ばせた。
「思うところがあって、ちょっとお休み中なんだー。今は防御魔法の練習に専念してるの。《水の壁》はかなり使えるようになったから、今は《土壁》と《風の檻》の練習中!」
「ふむ…」
サーベルモンキーに追われた時、エレインは適切な魔法を選択できずに追い詰められてしまった。今のままだとまた凶暴な魔物に襲われればひとたまりもない。そう思い、しばしダンジョン攻略を休んで修行に励んでいるのだ。
修行の話をすると、ウォンは作業する手を止めて少し考え込んだ。どうかしたのかとエレインがウォンの顔を覗き込む。
ウォンは躊躇いがちに口を開いた。
「風魔法なら、俺の得意属性だ。少しなら見てやることもできるが…」
「えっ!?本当!?」
エレインは想定外の提案に驚き、思わずウォンの両手を取った。
「嬉しい…!是非!うわー…友達に魔法を教えてもらうなんて夢みたい」
「……友達?」
エレインが呟くように述べた言葉に、ウォンは首を傾げる。エレインは照れ臭そうに頬を掻いた。
「えへへ、私は勝手にそう思ってるんだけど…ダメ、かな」
「…………いや、そんなことはない」
ウォンは気まずそうに視線を逸らすが、その耳はほんのり赤い。ウォンは照れるとすぐに耳が赤くなる。エレインは思わずクスクス笑みを浮かべてしまう。
「笑うな」
「ごめん」
ウォンに諌められるが、エレインの心はぽかぽかと暖かかった。
エレインはパーティに属していた頃は友と呼べる者は1人も居なかった。祖母と暮らしていた時も、森で二人暮らしだったため、そもそも人との関わり合いは得意ではなかった。
友人やライバルと切磋琢磨しながら魔法の修練を積む経験も勿論ない。今でこそ師と呼べるホムラや、アグニやリリス、ドリューンといった心優しい人達に囲まれているのだが、どうしても憧れがあった。
「じゃあ、お言葉に甘えて次来た時は教えてもらおうかな」
「ああ、任せておけ」
エレインはウォンに微笑みかけると、挨拶を済ませて70階層へと帰還した。
◇◇◇
エレインが70階層の居住空間に戻ると、ちょうどホムラとアグニも戻って来たところで、エレインに気がつくと片手を上げて近づいて来た。
「おう、おチビ。何処かに行ってたのか?」
「あ、えーっと…ちょっとダンジョンに潜ってました」
「ふーん?」
ホムラに何気なく行き先を問われ、エレインはぎくりとした。密かにウォンに会っていることがバレると間違いなく怒られる。
エレインが目を泳がせながら曖昧に答えると、ホムラは首を傾けながらも深く問いただすことはしなかった。
ホムラとアグニがドカッとソファに腰掛けたため、エレインもその対面に腰掛けた。
と、その時。部屋の中心で転移の光が弾けた。光の中から姿を現したのは、リリスであった。
「リリス!いらっしゃい」
エレインはいつものようにリリスに駆け寄って迎え入れたが、リリスの表情は晴れなかった。
「リリス…?」
「エレイン…」
よく見ると、リリスは何か手紙のようなものを手にしており、躊躇いがちにその手紙をエレインに差し出した。
「誰から…?って、ローラさん?」
手紙の差出人は、かつての担当受付官であり、ギルドのサブマスターであるローラであった。
エレインは慌てて封を破き、手紙を広げた。ホムラとアグニもなんだなんだと集まって来た。3人で覗き込むようにして手紙を読む。
そこには簡単に一文だけ書かれていた。
『大切なお話があります。明日正午、ギルドでお待ちしております』
「えっ…と?」
「つまり、あれか?」
「地上へ降りて来いってことですかね」
エレインとホムラ、そしてアグニは顔を見合わせた。
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