【完結】パーティに捨てられた泣き虫魔法使いは、ダンジョンの階層主に溺愛される

水都 ミナト

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第二部 パーティに捨てられた泣き虫魔法使いは、ダンジョンの階層主に溺愛される

75. 闇の魔道具店

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「エレイン…!」
「おかえりなさい!」

 エレインがホムラと手を繋ぎ、70階層に戻ると、2人の帰還を待ち兼ねたアグニとリリスが出迎えてくれた。
 リリスはホムラにペンダントを届けた後、日が暮れたらエレインを迎えに行くと聞き、再度70階層に訪れていたのだ。

「あら?あらあらあら~」
「わわっ」

 リリスは目ざとくエレインとホムラが手を繋いでいることに気づき、ニヨニヨと頬を緩めながら歩み寄ってきた。
 エレインは慌てて繋いだ手を解いて、頬を染めながら手を後ろで組んだ。その様子に、ホムラがくっと喉を鳴らして笑った気がした。

「うふふ~収まるところに収まったのかしら?」
「え?なんのこと?」

 リリスがエレインに尋ねるも、返ってきたのはキョトンとしたエレインの間抜け面。リリスがどういうことかとホムラを見上げるが、ホムラは諦めたように溜息をついていた。

「いいんだよ、地道に攻めることにしたからよ」
「まぁっ!」

 ホムラの言葉にリリスは両手で口元を押さえた。楽しくて仕方がない様子だ。

「私、応援してますからね。何か協力が必要な際は遠慮なくお申し出ください」
「ふっ、ま、何かあったらそうさせてもらうわ」

 すっかり開き直ってスッキリした顔をしているホムラ。
 リリスの見立てではエレインもホムラに好意を寄せているはずなのだが、これはこれで面白そうなのでしばらく見守ることにした。
 リリスが生暖かい目で2人を観察していると、不意にホムラがエレインに尋ねた。

「そういえばお前…」
「はい?」
「この3日間であの狐野郎に何もされなかっただろうなァ?」
「へ?何もされなかったって…何をですか?」
「…いや、もういいわ。その反応で分かったわ」
「何をですか!?」

 目をぱちくり瞬くエレインの様子から、ホムラが懸念した男女のあれこれはなかったと見て取れた。ホムラは少し呆れつつもホッと胸を撫で下ろした。
 そしてその様子を、まるで不憫なものを見るように、リリスが眺めていた。

「エレイン、帰って来たところで申し訳ないのですが、リリスから話があるようですよ」
「あっ、そうでした、うっかり忘れるところでした」

 呆れた顔で3人の掛け合いが終わるのを待っていたアグニに言われて、ようやくそもそものダンジョンを訪れた理由を思い出したリリスはポンと手を叩いた。

「じゃあ、裏で茶でも飲んで話すか」

 ホムラの提案により、4人はダンジョンの裏、居住空間へと移動して話すことにした。

「エレインちゃん、おかえりなさい」
「ドリューさん!…すみません、ご心配おかけしました」

 そこには、エレインの帰還を聞き付けたのであろうドリューンが既にいた。エレインはペコリと頭を下げて詫びたが、ドリューンはなんとも複雑そうな表情を浮かべていた。

 ドリューンを加えた5人は、ソファに腰掛けた。
 エレインの隣に真っ先にホムラが腰掛けたため、その対面にリリスとアグニ、そしてドリューンが詰めて座った。アグニは素早く茶を沸かして、以前エレインが地上で買ってきたハーブティーを人数分用意した。

(んんん?なんか…ホムラさん近くない…?)

 涼しい顔をしてエレインにピッタリとくっつくように座るホムラ。両手を広げて背もたれに肘をかけているため、エレインの肩を組んでいるように見える。そんなホムラにエレインは戸惑いを隠せない。
 ホムラのことが異性として好きだと自覚したばかりなので、余り側に寄られると意識せずにはいられない。
 ホムラの表情はどこ吹く風であるが、対面の3人はニヤける顔を隠そうともしていない。

「ごほん、では、早速ですが本題に入りますわね」

 リリスがようやく話を切り出したため、エレインは少しホッとした。

「先日、エレインと一緒にギルドへ行き、闇の魔道具についてのお話を聞きましたよね。その後70階層にも手鏡を使う冒険者が何組かやってきて、捕縛の上地上へ帰されたと聞いております。その者たちは無事にギルドに拘束されて、尋問を受けたようです」
「そっか…何か分かったの?」

 無事冒険者達がギルドの手に渡ったと聞き、エレインはホッと息をついた。エレインの問いかけに、リリスは神妙な顔をして頷いた。

「ええ…どうやら街外れの魔道具店で入手したのだとか。ギルドが踏み込んだ時には、既にその店はもぬけの殻になっていたようです。任意で冒険者数名に聞き取り調査をしたところ、どうやらその魔道具店は、普通の魔道具とは異なる独自のものを販売していたようです…それもかなりの高値で」
「そ、そんな店があったなんて…」
「十中八九、アレクもその店で闇の魔道具を手にしたのでしょうね…」

 アレクの話になり、リリスとエレインは少し表情に影が差した。

「それで?肝心の主犯は捕まったのかよ?その様子だと逃げられたんじゃねぇのか?」
「え、ええ…」

 ホムラの問いに、リリスが残念そうに頷いた。

「そいつの狙いは何なんだろうなァ…」

 ホムラは面倒臭そうにソファにもたれかかっているが、地上でエレインやホムラを窮地に追いやった魔道具の提供主である。内心では雲を掴むような不気味な存在に警戒心を強めていた。

「あ…そういえば…」

 エレインは、以前ウォンが語った兄貴分の話を思い出した。ウォンの私情に関わることだと誰にも言わないでいたが、少しでも有意義な情報は共有しておくべきだろう。心の中でウォンに詫びつつ、エレインは概要だけ語ることとした。

「昔、魔道具の扱いに長けた魔物がいたそうです。その魔物は、ある日ダンジョンから姿を消したらしいんですけど…もしかしたら、かつてのハイエルフのように地上に降りているとは考えられないでしょうか?」
「魔道具の扱いに長けた魔物…」

 エレインの言葉に、ドリューンが思案顔になる。

「魔道具については分からないけれど、闇魔法の使い手なら居たような気がするわ…大昔だからどんな種族だったかは流石に覚えていないけど」
「そうですか…」
「ええ。植物の記憶を辿るにも、何十年、何百年も前のこととなると難しいわね」

 地上で秘密裏に流通していたのはただの魔道具ではなく、闇の力を秘めたもの。であれば闇魔法の使い手というのはかなり濃厚な線になるのではないか。

「ん?闇魔法…って」
「…あっ」

 ふと、エレインは、よく知る人物に闇魔法の使い手がいたことを思い出した。リリスも同時に同じ人物を思い浮かべているようだ。

「…あの子なら何か闇魔法について知っているかもしれませんね」

 かつてエレインやリリスと同じパーティメンバーで、いつもエレインを小馬鹿にし、邪険にしてきた闇魔法の使い手。

「そういえば、今彼女はどこで何をしているのでしょうか…」
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