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第二部 パーティに捨てられた泣き虫魔法使いは、ダンジョンの階層主に溺愛される
92. 動き出す者①
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翌日、エレインはボスの間でホムラと向かい合って立っていた。
「行きます!」
「おう、かかってこい」
エレインはビシッと右手を上げて宣言すると、ふぅっと息を吐いて内なる魔力に集中する。まずはいつも使っている魔法を試すつもりだ。
「《火球》!」
両手を前に翳し、手のひらから魔力を放出する。繰り出された火球は黄金の光を帯びながらも勢いよくホムラに向かっていった。
「はぁっ!」
ホムラは灼刀を抜き、エレインの火球を両断する。切られて行き場を無くした炎は、キラキラと虹色に光りながら昇華していった。
「へぇ、やっぱ威力が上がってるな」
「本当ですか?うーん、なんだかまだしっくり来ない感じがします。借り物の力、みたいな…」
「昨日の今日だろ。焦らずに掴んでいけばいいさ」
「…はい」
ホムラの言う通り、焦る必要はない。だが、いつまたこの場所に危険が迫るか分からない。エレインは一日でも早く、ハイエルフの魔力に適応したかった。
「次行くぞ。おらよ、っと」
「《水の壁》!!」
続いて、ホムラが両手に手のひらサイズの火球を作り出し、無造作にエレインに向かって投げつけた。エレインは身体の周りに魔力を巡らせ、水の防壁を作り出した。たぷんたぷんと水が波打ち、キラキラと金色の水滴が散る。
「ん、うぅぅ」
《水の壁》は魔力を均一に流し込まねば綺麗な球体を維持することはできない。今のエレインは、ハイエルフの魔力が寄せては帰す波のように満ち引きを繰り返しており、作り出された水の防壁は歪な形を成していた。気を抜けば頭から水を被ってしまうため、エレインは額に汗を滲ませながら、懸命に魔力を均していく。
結局綺麗な球体を維持することはできずに魔法を解除することとなった。
「はぁ、はぁ…防御魔法は特に回数を重ねる必要がありそうです…」
「そうみてぇだな。まぁ、気が済むまで火球をぶち込んでやっから遠慮すんなよ」
「…加減はしてくださいよ」
ホムラの目に僅かに加虐的な光が宿ったことを察したエレインは、少し後退りながら抗議した。
少しの休憩を挟み、エレインは倒れるまでみっちりとホムラに修行をつけてもらった。
それから一週間、毎日欠かさず修行に励んだ。だが、未だハイエルフの力を完全にコントロールできている気はしなかった。
◇◇◇
エレインが修行に励む頃、地上では今日も数多の冒険者たちがダンジョンに挑むべく、各々の到達階層へと足を踏み入れていく。
とある五人組のパーティも、雲に隠れて望むことができないダンジョンの頂上を仰ぎ見ていた。
「さて、いよいよ70階層は目前だな!お前ら、油断はするなよ」
「おう、もちろんだぜ」
「しっかりと準備しないとな」
そのパーティの現在の到達階層は69階層。剣士が三人、魔法使いが二人の前衛寄りのパーティだ。自らの力に驕ることなく、チームワークを活かして着実に攻略を進めてここまで来た。お互いを信じ、固い絆で結ばれた五人の目には未知への探究心や希望の光が灯っている。
しっかりとマッピングをし、時間をかけて隈なく階層を探索するスタイルで進めているが、あと五日もすれば70階層への扉を見つけることができるだろう。その後は武器のメンテナンスと道具の補充、戦略の確認に時間を使い、万全の体制で人類未踏の70階層へ挑戦する。
まだ見ぬ階層主を想像し、ブルリと武者震いをするのはリーダーのビルドという名の男である。栗色のツンツン頭の短髪で、体格の良い身体を鎧の装備で固めている。
「まずは全員無事に帰還することを目指そう。70階層の主である炎の鬼神は『破壊魔神』と恐れられているが、どうやら不殺の信条を持つらしい。深追いさえしなければ大きな怪我なく戻って来れるだろう。何度も挑戦し、攻撃パターンを見極め、確実に勝ちに行こうぜ!」
「おう!!」
五人は拳を突き上げ、69階層に転移すべく《転移門》の魔石を取り出した。その時、ダンジョンの陰からふらりと現れた全身真っ黒な外套の人物とぶつかった。その人物はよろりと身体を傾けると、尻餅をついてしまった。
ビルドは申し訳なさそうに眉根を下げながらその人物に手を差し出した。
「すまない、道を塞いでしまったな。立てるか?」
「…ああ、こちらこそ不注意だった」
「気にするな…うっ…?」
外套の人物の手を取った瞬間、ピリッと針で刺されるような痛みが走った。だが、一瞬のことだったので、ビルドは離した手を数度握り、変わりがないことを確かめると仲間たちに向き合った。
「悪い、さあ行こう!転移!69階層!」
魔石が光り、景色がゆらめく中で、ビルドは視界の端に外套の人物の姿を捉えた。目深に被ったフードから僅かに除く口元が歪に形を変えた気がした。
「行きます!」
「おう、かかってこい」
エレインはビシッと右手を上げて宣言すると、ふぅっと息を吐いて内なる魔力に集中する。まずはいつも使っている魔法を試すつもりだ。
「《火球》!」
両手を前に翳し、手のひらから魔力を放出する。繰り出された火球は黄金の光を帯びながらも勢いよくホムラに向かっていった。
「はぁっ!」
ホムラは灼刀を抜き、エレインの火球を両断する。切られて行き場を無くした炎は、キラキラと虹色に光りながら昇華していった。
「へぇ、やっぱ威力が上がってるな」
「本当ですか?うーん、なんだかまだしっくり来ない感じがします。借り物の力、みたいな…」
「昨日の今日だろ。焦らずに掴んでいけばいいさ」
「…はい」
ホムラの言う通り、焦る必要はない。だが、いつまたこの場所に危険が迫るか分からない。エレインは一日でも早く、ハイエルフの魔力に適応したかった。
「次行くぞ。おらよ、っと」
「《水の壁》!!」
続いて、ホムラが両手に手のひらサイズの火球を作り出し、無造作にエレインに向かって投げつけた。エレインは身体の周りに魔力を巡らせ、水の防壁を作り出した。たぷんたぷんと水が波打ち、キラキラと金色の水滴が散る。
「ん、うぅぅ」
《水の壁》は魔力を均一に流し込まねば綺麗な球体を維持することはできない。今のエレインは、ハイエルフの魔力が寄せては帰す波のように満ち引きを繰り返しており、作り出された水の防壁は歪な形を成していた。気を抜けば頭から水を被ってしまうため、エレインは額に汗を滲ませながら、懸命に魔力を均していく。
結局綺麗な球体を維持することはできずに魔法を解除することとなった。
「はぁ、はぁ…防御魔法は特に回数を重ねる必要がありそうです…」
「そうみてぇだな。まぁ、気が済むまで火球をぶち込んでやっから遠慮すんなよ」
「…加減はしてくださいよ」
ホムラの目に僅かに加虐的な光が宿ったことを察したエレインは、少し後退りながら抗議した。
少しの休憩を挟み、エレインは倒れるまでみっちりとホムラに修行をつけてもらった。
それから一週間、毎日欠かさず修行に励んだ。だが、未だハイエルフの力を完全にコントロールできている気はしなかった。
◇◇◇
エレインが修行に励む頃、地上では今日も数多の冒険者たちがダンジョンに挑むべく、各々の到達階層へと足を踏み入れていく。
とある五人組のパーティも、雲に隠れて望むことができないダンジョンの頂上を仰ぎ見ていた。
「さて、いよいよ70階層は目前だな!お前ら、油断はするなよ」
「おう、もちろんだぜ」
「しっかりと準備しないとな」
そのパーティの現在の到達階層は69階層。剣士が三人、魔法使いが二人の前衛寄りのパーティだ。自らの力に驕ることなく、チームワークを活かして着実に攻略を進めてここまで来た。お互いを信じ、固い絆で結ばれた五人の目には未知への探究心や希望の光が灯っている。
しっかりとマッピングをし、時間をかけて隈なく階層を探索するスタイルで進めているが、あと五日もすれば70階層への扉を見つけることができるだろう。その後は武器のメンテナンスと道具の補充、戦略の確認に時間を使い、万全の体制で人類未踏の70階層へ挑戦する。
まだ見ぬ階層主を想像し、ブルリと武者震いをするのはリーダーのビルドという名の男である。栗色のツンツン頭の短髪で、体格の良い身体を鎧の装備で固めている。
「まずは全員無事に帰還することを目指そう。70階層の主である炎の鬼神は『破壊魔神』と恐れられているが、どうやら不殺の信条を持つらしい。深追いさえしなければ大きな怪我なく戻って来れるだろう。何度も挑戦し、攻撃パターンを見極め、確実に勝ちに行こうぜ!」
「おう!!」
五人は拳を突き上げ、69階層に転移すべく《転移門》の魔石を取り出した。その時、ダンジョンの陰からふらりと現れた全身真っ黒な外套の人物とぶつかった。その人物はよろりと身体を傾けると、尻餅をついてしまった。
ビルドは申し訳なさそうに眉根を下げながらその人物に手を差し出した。
「すまない、道を塞いでしまったな。立てるか?」
「…ああ、こちらこそ不注意だった」
「気にするな…うっ…?」
外套の人物の手を取った瞬間、ピリッと針で刺されるような痛みが走った。だが、一瞬のことだったので、ビルドは離した手を数度握り、変わりがないことを確かめると仲間たちに向き合った。
「悪い、さあ行こう!転移!69階層!」
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