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第一話 ナターシャの婚約者
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穴に落ちた。
深い深い穴。
ウサギを追って穴に落ちて異世界に迷い込む、そんなおとぎ話があったな…なんて冷静な頭でぼんやりと考えながら落ち続ける。
ああ、このまま死ぬのかなーーー
そう思った時、ふわりと柔らかな風が私を包み込み、温かな腕に抱き止められた。
それは私が五歳の頃の出来事だった。
◇◇◇
私の名前は、ナターシャ・ナイジェル。
ナイジェル侯爵家の長女として生を受けた。
精霊の加護を受けるシルフィール聖王国の中でも、特に精霊との結びつきが強い家系の一つである。中でも私はマナと呼ばれる自然界に溢れる力の扱いに長けており、五歳にして三つ年上のレイモンド・ル・べルージュ王太子殿下の婚約者となった。
だけど、王太子殿下には既に想い人がいた。
殿下と同じ歳で幼馴染のアイシャ・アメリア公爵令嬢だ。家柄も申し分なく、アイシャ様のお父様は宰相を務めており、アイシャ様自身も温厚篤実で品行も良くてとても愛らしいご令嬢である。
ただ一つ、マナの扱いが苦手という理由で王太子殿下の婚約者候補から除外されてしまった。
シルフィード聖王国で最も重んじられるのは精霊との繋がり、つまりマナを扱う能力なのだ。いくらアイシャ様が可憐で素敵な女の子だとはいえ、肝心のマナを扱えないのであれば殿下の婚約者は務まらない。
ふんわりウェーブがかったブロンドの髪に、春の日の青空のような透き通った瞳、肌は白くて頬は桃色。まるでお人形のようなアイシャ様。そんな魅力的な女の子が物心ついた頃から側にいたのだ。王太子殿下が恋に落ちるのも必然であろう。
レイモンド殿下もアイシャ様もとても優しくて、私は二人が大好きだった。そんな二人が想い合っていることも、幼いながらに感じ取っていた。
どうして二人は結婚できないのかと尋ねた時の二人の悲しそうな表情は今でも忘れられない。
深い深い穴。
ウサギを追って穴に落ちて異世界に迷い込む、そんなおとぎ話があったな…なんて冷静な頭でぼんやりと考えながら落ち続ける。
ああ、このまま死ぬのかなーーー
そう思った時、ふわりと柔らかな風が私を包み込み、温かな腕に抱き止められた。
それは私が五歳の頃の出来事だった。
◇◇◇
私の名前は、ナターシャ・ナイジェル。
ナイジェル侯爵家の長女として生を受けた。
精霊の加護を受けるシルフィール聖王国の中でも、特に精霊との結びつきが強い家系の一つである。中でも私はマナと呼ばれる自然界に溢れる力の扱いに長けており、五歳にして三つ年上のレイモンド・ル・べルージュ王太子殿下の婚約者となった。
だけど、王太子殿下には既に想い人がいた。
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ただ一つ、マナの扱いが苦手という理由で王太子殿下の婚約者候補から除外されてしまった。
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ふんわりウェーブがかったブロンドの髪に、春の日の青空のような透き通った瞳、肌は白くて頬は桃色。まるでお人形のようなアイシャ様。そんな魅力的な女の子が物心ついた頃から側にいたのだ。王太子殿下が恋に落ちるのも必然であろう。
レイモンド殿下もアイシャ様もとても優しくて、私は二人が大好きだった。そんな二人が想い合っていることも、幼いながらに感じ取っていた。
どうして二人は結婚できないのかと尋ねた時の二人の悲しそうな表情は今でも忘れられない。
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