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第一部 はじまりの物語

終章 ある少女の手記

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「ねえねえ、お母さん。それで、そのお姫様と騎士さんはどうなったの?」

「この物語にはね、まだ続きがあるのよ」

 幼い少女が母親に問いかければ母親は、そう返した。幼い少女は、瞳の奥に好奇心を孕ませて母親を見つめる。けれど、母親はどこか困ったように微笑んだ。

「教えて! お姫様と騎士さん、どうなったの?」

「それは……また今度ね」

「ええー! 気になるよ。お母さん、教えて」

 駄々をこねる少女に母親は、柔らかく微笑んで人差し指を立てる。

「ゼノビアがいい子にしていたらね」

「うん、いい子にしてる!」

 ゼノビアと呼ばれた少女が満面の笑みを浮かべて答えれば、母親はにっこりと微笑んだ。その時、扉が開いて父親が入ってきた。

「ただいまー」

「あ、お父さん!」

 ゼノビアは父親に突進するように抱きついた。

「ゼノビア、お母さんから“お話”を聞いていたのか?」

「うん、そうなの! 続きが気になるのにお母さんがまた今度って」

「そうか、じゃあ今度はお父さんから話そうかなー」

「ホント!?」

「もう、あなたったら」

「いいじゃないか。たまには俺から話しても」

「いいけれど。あまり、変なこと話さないでね」

「話さない、話さない。ねえ、ゼノビア。お父さんは変なこと言ったことないもんな」

「うん! お父さんから聞くのも好き!」

「そうか、そうか。ゼノビアはかわいいなあ」

 そう言って父親はゼノビアを抱き上げた。ゼノビアは満面の笑みを浮かべてはしゃいでいた。

「それにお父さんも大好き! 強くてかっこいいお父さんが大好き!」

「ありがとう、ゼノビア。明日もお仕事、頑張れる気がするよ」

 母親は二人の様子を眺めてにっこりと微笑む。すると、父親が母親の方を見て「こっちへ来て」と言った。母親が父親に近寄るとぎゅと抱きしめる。

「あ、あなた……」

「いつも、ありがとう。俺には二人がいないとお仕事頑張れないから」

「もう」

 頬を赤く染めて母親は、自分の夫にそう呟いていた。夫は自分の妻と娘を愛おしそうに見つめる。

「やっぱり、家が一番いいな。なあ、ゼノビア。物語の続き、気になるか……?」

 ゆっくりと父親は、娘に物語を聞かせ始めた。
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