少年マンガの主人公になってしまったが未来が暗すぎた

柳秋彦

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第1章 五歳児

第8話 週末の話 上

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俺たち子供は一日の大半を子供部屋で過ごす。そんな閉じられた世界で俺たちの世話をするのが乳母、いわゆるナニーのルシールとナニーの手伝いをするナースメイドのカレンの二人だ。

ルシールは三十代後半の女性だ、紫色の巻き毛をメイドキャップに包み、メイド服もピシッと着こなしテキパキ働く、大柄な方で力強い腕は俺とアルバスを同時に抱えあげて移動できたりする。厳しくも優しい俺たちの母ちゃん的な存在だ。ナニーは俺たちの世話と同時にしつけも受け持って要るので貴族に相応しくない振る舞いをすると彼女からお小言をくらう。

一方でカレンは結構俺たちを甘やかすお姉ちゃん的存在だ。セピア色髪をお団子にし、ピンク色の垂れ目の小柄のうら若き乙女だ。ルシールとは凸凹コンビと言える。とても溌剌とした機転もきく優秀なメイドさんだが心配性なのが玉に傷と言える。

後は教育係のホーン夫人、勉強を教えるのではなくナニーが教える事ができない貴族としての立ち振る舞いを教える係だ。週二回のマナーの授業のある日はほとんど一日中行動を共にして俺たちが貴族らしい振る舞いをして要るか監視する正直一緒にいると気が落ちつかない少し怖い存在だ。

他にも座学の先生セブン先生。乗馬の先生ダグラスさん。剣術の先生ファーロウ先生が俺たちと接触の多い大人たちだ。

そして今日は久しぶりにアルバス以外の子供と触れ合える日だ。
ルビーとヴィオラは普段近くの貴族の夫人が開いたプライベートスクールに通っている、同じ屋敷に住んでいるがタイムスケジュールが違うので平日はなかなか会えない。そして週末になりやっとお茶の時間と休憩の時間に会える。

「コール!熱を出したと聞くけど今は大丈夫なの?」挨拶もそこそこにヴィオラが飛びついてくる。
「ヴィオラ、走らないでください、はしたないです。御機嫌よう、アルバス、回復したようでなによりです、コール。」
ルビーが名前の通り赤いドレスの裾をつまみ澄ました挨拶をする。
「姉さん達久しぶり!大丈夫だよヴィオラ姉さん。コールが熱を出したのは大昔の事だから。昨日もピクニック行ったし」
「お久しぶりです。昔というほどでもないですけど熱を出したのは先週の安息日の夜なのでもうなんともないです」
ヴィオラからなんとか潜り抜けて返事をする。
「そういえばコール安息日の時少し元気がなかったわよね」
「そうなんだよー、コールったらあの夜の晩御飯ローストビーフだったのに全然食べなかったんだよ、すごくもったいないない!」
そうだ、俺は先週アルバスと剣の話をした後なんだかずっと胸が苦しいような気がしていた。食欲もなくいったいなんだろうと思っていたらルシールがおでこを触ってきて「熱ですね」といった。
あの時アルバスの言葉を聞いての胸騒ぎは熱の前兆で気持ち悪かっただけかもしれない。ある意味ほっとしたがあれ以来どうにもクラウ・ソラスのことが気にかかる。

ヴィオラとアルバスがどうやら一緒に散歩に出かけるらしい。
「私はパスします。読みたい本があるので」ルビーはマギーから本の束を受け取りさっさといつものソファの上に陣取る。
「僕も同じく」
「もう!本当にこの本の虫二人組ときたら!」あきれられたがヴィオラとアルバスはルシールとともに外に出る。
休憩室に残されたのは、俺とルビー、マギーの三人だ。
「ルビー姉さん、読書中に失礼します、少しお話ししてもいいですか?」少女のアーチ型の細い眉が面倒くさそうにひそめられる
「……何?」
「すいません、実はこの最近四英雄のことが気になっていて、この家の書斎に聖剣に関する本はありましたか?」
「……わかりました。この本を読み終わったら書斎に見に行きます。」顔を本から上げずに彼女は淡々と答える。
「ありがとうございます、ルビー姉さん」
書斎は7歳からという取り決めがある。なんで7歳からなんだと色々不満だが古い家のしきたりというものは理由がなくとも絶対厳守で子供のわがまま一つでなかなか変えられる物ではない。仕方がないので姉さん達にいつも頼んでいる。
今まで聖剣のことを調べたことはあるが持ち主のことはそこまで重視していなかった。子守唄がわりに聞いた英雄譚ぐらいの情報しかない。持ち主を調べることで剣に対する新しい情報が出るかもしれない。
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