少年マンガの主人公になってしまったが未来が暗すぎた

柳秋彦

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第1章 五歳児

第11話 初めての生徒の話 上

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ミランダ・セブンは王都に住む比較的裕福な商人の家に長女として生まれた。幼名はアニー。兄が一人、下には弟と妹が一人づついる。
子供の頃から彼女は「将来学者になるんじゃない?」と周囲から言われていた。ある時は褒め言葉としてまたある時は揶揄いで。
それは彼女の真面目すぎる気質だ、疑問に思うような事があれば必ず質問する。例えば、4歳の頃「時計の針はどうやって動いているの?」と母親に聞く、しかし弟の世話や家事で忙しい母親は取り合わない。今度はお手伝いさんや兄など別の人物に同じ質問を繰り返す。
「精霊が中にいて針を動かしているんだよ。」
面倒臭がった兄が適当に出した答えを今度は裏付けようとする。

家にある掛け時計を人のいない間に椅子を運び上に乗り時計を外し、こっそり持ってきたフォークでこじ開けて中を見ようとする。残念ながらフォークは時計の裏を傷つけただけで母親に見つかった後こっぴどく叱られた。

普通の子供ならこのことは終わった事になりやがて小さい頃のやんちゃエピソードとして話に出すぐらいだ。

だが彼女は考える、どうやったら時計の中を見ることができるだろう?そんなある日母親が彼女を連れて街に買い物に出掛けた。途中彼女はたくさんの時計が窓越しに並べられた店を通りかかる。
「お母さん!このお店は何のお店?」
「ああ、そこは時計屋さんよ」
「時計屋さんが時計を作っているの?」
「そうね、後は壊れた時計を直したり」
「時計ってどうやって作るの?」
「さあ……知らないわね。もういいでしょう、アニー、そろそろ帰らないとお夕飯の支度が間に合わないわ」
これ以上は母親から聞けないだろう、そう判断した彼女は時計屋から家への道のりを覚えた。そして次の日に人目を盗んで外に出た。非常に危険な行為だ、王都は管理が行き届いて治安がいい場所であったが4歳の幼女が一人で街中で歩くのはそれでも危険だ。通行人にぶつかるかもしれない、馬車に轢かれるかもしれない、あるいは人さらいに連れて行かれるかもしれない。幸運な事に彼女は無事に時計店にたどり着いた。

全身の力をかけて苦労してドアを開く、中の景色は彼女を圧倒した。そこは所狭しと時計が並べられていた。中央の大きなテーブルにはあらゆる置き時計、懐中時計が並べられ壁にはあらゆる掛け時計、大きな振り子時計がかけられ、チクタクと針が動く音が部屋中にしみていた。
そして彼女は店の奥に一人の老人を見つける。作業机に向かい今まさに客の預けた懐中時計を直している。
彼女は経験から仕事中の大人の邪魔をすると叱られるのを知っていたので彼女は質問をしたくなるの抑えて息を潜めて作業机に近づく。
老人はちょうど懐中時計を裏から開いたところだった。
(なんだか小さな丸いものがいっぱい入ってる、何だろう?まるで馬車の車輪みたい)
幼い少女はピンときた。
(まるの小さな凸凹、あそこがお互い噛み合って一つが動くと他のまるも動き出すのね。)
4歳とは思えない理解力で彼女は静かに老人の時計を見守りそのまま時計の仕組みを理解してしまった。
「なーんだ、じゃあ精霊さんが動かしていたわけではないのね」思わず声に出した思いが作業に集中していた老人を驚かす。その老人は幼い子供が一人で店内にいる事に肝を冷やしたが優しい彼は彼女を怖がらせないように彼女を手招き、店にきた意図を訪ねた。そして彼女が並ならぬ探究心と行動力で一人で店に歩いて来たこと作業を観察しただけで時計の仕組みを理解した聡明さに二度驚く事になる。老人は親切にもアニーを家まで送り届け歯車のプレゼントまでした。
後日改めてお礼に店にきたアニーの母親に老人は言った。「あの子は必ず立派な学者になるじゃろう、いやもしかしたら大魔道士にもなれるかしれん」

老人の言った通りアニー、改めてミランダ・セブンは名付けの儀式で魔法の素質を認められ魔法学校に通う事になる。そして魔法学校を首席で卒業し無事魔道士になった彼女はそのまま大魔道士を目指すこと決めた。
ただ大魔道士になるための魔法大学は学費が高い、成人したからには親からこれ以上援助を受けるのはやめにしたい、そして彼女はたくさんの若い学生のように家庭教師斡旋会社に登録する。そして日を立たず彼女は最初の面接の申し込みを受けた。
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