少年マンガの主人公になってしまったが未来が暗すぎた

柳秋彦

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第1章 五歳児

第12話 初めての生徒の話 中

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更新が遅くなりすみませんでした。あけましておめでとうございます。

依頼主の資料を受け取った時ミネルヴァは思わず目を疑った。何度も瞬きをし、しげしげと見るが間違ってはいない。
「あの?手違いとかでは無く……?」
「ええ、ヴォイアチェスター辺境伯からのご依頼です」事務員の女性が淡々と答える。
「しかし辺境伯様というと大貴族ではないですか……卒業したての学生では無く経験ある魔道士でさえ雇えるはずなのにどうして……」
「さあ?」
「後、ヴォイアチェスターって王都からめちゃくちゃ離れているじゃないですか……」
「3日やそこらでつける距離ですよ、それよりも別にこれで仕事が決まったわけでは無いですからね。あくまで面接の申し込みです。何か質問があれば直接伺っては?」
「め、めんせつ……!?」
「ちょうどヴォイアチェスター辺境伯が王都に滞在している間に会いたいそうです。」

セブン家は大騒ぎになった。
「さすがアニー!面接に受かれば辺境伯邸に住み込みできるかもしれないぞ!」
そう素直に喜ぶ人物は一人だけで
「もーお兄ちゃん気が早いよ…それより面接ってなんの準備をしていけばいいんだろう……」
「あんた面接に着て行く服はどうするの?」
妹や母親は渋面を作っていた
「制服……は変よね…魔道士ローブも辺境伯様に会うには失礼かもしれないし…」
「だからこういう時の為にドレスを仕立てておきなさいって言ったのに!」
「えっと、前に叔母さんからもらった紺のストライプのシンプルなドレスはダメかな?」
「え?それってお姉ちゃんが何年か前に買ったやつ?いくらお姉ちゃんが痩せててももう会わないんじゃない?型も古いし……」
「でも、新しい服を仕立てるよりは早いかもしれないわ、オーヴェンさんに頼んで……」
そんな風に計画を立ててもらい、貴族と会うこともある父親に礼節に関する話を教えてもらい、会社からもう渡されているだろうが後は念のため履歴書をもう一度準備して当日、いつも乗るより随分と高級なワゴンに迎えられミネルヴァは貴族街に向かった。
ヴォイアチェスター辺境伯が王都に滞在する間に住む屋敷に着いた彼女は使用人に客間に通された。
(うわぁ、すごい綺麗な部屋……魔法学校には貴族の友達もいたから貴族の家に来るのははじめてじゃないけど、なんというか辺境伯まで来ると格が違うな……)道中思わず玄関先の装飾や廊下に飾られる絵に目を奪われたミネルヴァだったがいざ部屋に入るとなると緊張で唾を飲む。
使用人がドアを開くと中には一人の青年が座っていた。彼女を見ると彼は立ち上る、会ったことはないものの新聞で見たことのある顔だ、ミネルヴァはすぐに父親に教えてもらった台詞を言う
「お初にお目にかかります、ヴォイアチェスター伯様、ミネルヴァ・セブンです。この度は面接の機会を下さったばかりかお屋敷招いていただきありがとうございます。」震える指先でドレスをつまみなんとか礼をする。早口過ぎたかもしれない。わざとらしかったかもしれない……豪華な絨毯を見つめる彼女の頭の中には悪い考えがぐるぐる回る。
「セブンさん、私は王族ではないので許しがあるまで頭を下げる決まりはありませんよ。」笑いを含んだ爽やかな声にミネルヴァは慌てて頭をあげる。
「こちらこそ魔道士界の若き天才と名が高いセブンさんに会えて光栄ですよ。どうか畏まらず、まずは席にお掛けになってください、お茶を飲みながらゆっくりお話ししましょう、貴女は好きなお茶の銘柄はありますか?」
立派な紳士だ……これがミネルヴァが間近で若い辺境伯を見て出した評価だった。
現辺境伯、セルレアン・アクア・モンタギュー。先代の急逝により16歳の若さで爵位を継いだ彼は今年で18歳、ミネルヴァよりも年下だ
「さっそくですがセブンさんに頼みたい仕事は手紙に書いた通りです。うちの弟たちの座学の先生になって欲しいのです。」そう言って両手を組む動作は年齢に合わない貫禄がある。
弟たち……モンタギュー家の三男と四男は双子だということは魔法学校時代貴族のクラメイトの中でも噂になっていた。と言ってもただ双子だということが有名なのではない。何しろ一人は王族である母方の血を継いだ銀髪、もう一人は伝説の勇者である先祖返りの黒髪黒目という珍しい容姿の兄弟だ。先代の辺境伯が祝いに双子の精霊カズーとラクスの絵を有名な画家に描かせた程だ。
たしか今年で五歳になる。
「内容は共用語と星文の綴り、算数は百の位までの足し引き、後は簡単な歴史でよろしかったでしょうか?」
手紙に書いてあった内容を脳から引っ張りだす。一般的な貴族の子どもの学齢前の教養だ。
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