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十二年後の手紙
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誰に宛てた訳でもないが、私はこの筆を取ってみようと考えた。
この十二年間、罪の意識が頭から離れることはなかった。引き金を引いた後の手の感触は、今なお残っている。
彼女が何を考え、何を思って行動をしたのか。私はそれを理解できたはずなのだ。
だというのに、私は自分の手が、自分の意思が彼女を還らぬ人間としたことを理解できないのだ。
これを読む人間がいるかどうかは分からない。いたとしても、この文字を読めるかどうかも分からない。
けれど一つだけ。一つだけ伝えたいことがある。それは
● ● ●
「ん?」
いつものように砂浜で遊んでいると、海から緑色の瓶が流れついていた。中には手紙のようなものが入っている。
私は興味本位でそれを手に取った。なんて書いてあるんだろう。わくわくする。
「……なにこれ」
中に書いてある手紙は、私の知る文字ではなかった。どこか西の方の国で使われている文字だろう。私にはさっぱり分からない。
あーあ、つまんないなぁ。……いや、待てよ。父さんなら読めるかもしれない。父さんは1年ほど前に西の国に行ってたじゃないか!
急いで家に戻った。父さんはいるかな。
「父さん! 面白いもの見つけたよ!」
私の言葉に、父さんは仕事部屋からぬぅっと顔を出した。
「おう、どうした?」
「見てみて、砂浜に瓶が流れついてたんだ!」
「ほぉ」
どれどれ、と言って瓶と手紙を受け取った。
「ふむ、これはかなり遠い国の瓶だな。ほれ、底に鷲の刻印が刻まれているだろう。国の名前はなんといったかな……」
「もう、父さん! そっちよりも手紙の方が気になるよ! 読んでみて!」
私が急かすと、父さんは手紙のほうに目をやった。
「なになに。えぇ、誰に宛てた訳でもないが……」
父さんは手紙の内容を教えてくれた。ちょっと意味が分かりづらいけど、要は殺人の告白ってことかなぁ。
「ふぅむ、こりゃ興味深いなあ」
「なんで?」
「ああ、確かその遠い国は、魔術とかいうえらい便利な代物が人々の生活を豊かにしてるそうだ。んで、それを使えば手から火でもなんでも出しちまうわけよ」
ええっ。手から火を出すなんて危ないなぁ。
「まあ、こっちでいう錬金術みたいなものかな。いや違う、なにが言いたいかというと、そういう技術があるわけだから、その国には拳銃というのはねぇんだな」
「あれ? でもこの手紙には、引き金を引くって書いてあるんだよね?」
「その通り。ってことは、どういうことなんだろうなぁ」
私は少し考えた。魔術なるものを使えば人を殺せるのに、なぜ拳銃を使ったか。……そうだ!
「そうだよ、きっと魔術が使えない人がいたんだ!」
「魔術が使えない?」
「そう! 錬金術も勉強しないと使えないみたいに、魔術も勉強が必要なんだよ」
「ほぉ」
「それで、魔術の使えない人が、魔術を使える人を妬んで拳銃で殺しちゃったんだ!」
父さんは、なるほどといった表情で私を見ている。すごい。自分がここまで冴えているなんて思いもしなかった。
「なるほどなぁ、今日は冴えてるじゃねぇか。お前はその調子で学校でも点数取ってこい」
「あはは……」
学校の話はちょっと。それよりもその手紙の続きが気になる。
「ねぇ。その手紙、誰が書いたのか分からないの?」
「それなんだがなぁ。後半の方は文字が掠れてて読めねぇんだよ」
「えー、でもちょっとくらいは分かるでしょ?」
私が気になるのを見て取ったのか、父さんは仕事部屋から虫眼鏡を取って戻ってきた。どんな人がこの手紙を書いたのか、気になるなぁ。
「ふぅむ、なになに……。お、名前のところはギリギリ読めそうだ」
「だれだれ?」
「名前は……ソフィア・ワインバルド」
この十二年間、罪の意識が頭から離れることはなかった。引き金を引いた後の手の感触は、今なお残っている。
彼女が何を考え、何を思って行動をしたのか。私はそれを理解できたはずなのだ。
だというのに、私は自分の手が、自分の意思が彼女を還らぬ人間としたことを理解できないのだ。
これを読む人間がいるかどうかは分からない。いたとしても、この文字を読めるかどうかも分からない。
けれど一つだけ。一つだけ伝えたいことがある。それは
● ● ●
「ん?」
いつものように砂浜で遊んでいると、海から緑色の瓶が流れついていた。中には手紙のようなものが入っている。
私は興味本位でそれを手に取った。なんて書いてあるんだろう。わくわくする。
「……なにこれ」
中に書いてある手紙は、私の知る文字ではなかった。どこか西の方の国で使われている文字だろう。私にはさっぱり分からない。
あーあ、つまんないなぁ。……いや、待てよ。父さんなら読めるかもしれない。父さんは1年ほど前に西の国に行ってたじゃないか!
急いで家に戻った。父さんはいるかな。
「父さん! 面白いもの見つけたよ!」
私の言葉に、父さんは仕事部屋からぬぅっと顔を出した。
「おう、どうした?」
「見てみて、砂浜に瓶が流れついてたんだ!」
「ほぉ」
どれどれ、と言って瓶と手紙を受け取った。
「ふむ、これはかなり遠い国の瓶だな。ほれ、底に鷲の刻印が刻まれているだろう。国の名前はなんといったかな……」
「もう、父さん! そっちよりも手紙の方が気になるよ! 読んでみて!」
私が急かすと、父さんは手紙のほうに目をやった。
「なになに。えぇ、誰に宛てた訳でもないが……」
父さんは手紙の内容を教えてくれた。ちょっと意味が分かりづらいけど、要は殺人の告白ってことかなぁ。
「ふぅむ、こりゃ興味深いなあ」
「なんで?」
「ああ、確かその遠い国は、魔術とかいうえらい便利な代物が人々の生活を豊かにしてるそうだ。んで、それを使えば手から火でもなんでも出しちまうわけよ」
ええっ。手から火を出すなんて危ないなぁ。
「まあ、こっちでいう錬金術みたいなものかな。いや違う、なにが言いたいかというと、そういう技術があるわけだから、その国には拳銃というのはねぇんだな」
「あれ? でもこの手紙には、引き金を引くって書いてあるんだよね?」
「その通り。ってことは、どういうことなんだろうなぁ」
私は少し考えた。魔術なるものを使えば人を殺せるのに、なぜ拳銃を使ったか。……そうだ!
「そうだよ、きっと魔術が使えない人がいたんだ!」
「魔術が使えない?」
「そう! 錬金術も勉強しないと使えないみたいに、魔術も勉強が必要なんだよ」
「ほぉ」
「それで、魔術の使えない人が、魔術を使える人を妬んで拳銃で殺しちゃったんだ!」
父さんは、なるほどといった表情で私を見ている。すごい。自分がここまで冴えているなんて思いもしなかった。
「なるほどなぁ、今日は冴えてるじゃねぇか。お前はその調子で学校でも点数取ってこい」
「あはは……」
学校の話はちょっと。それよりもその手紙の続きが気になる。
「ねぇ。その手紙、誰が書いたのか分からないの?」
「それなんだがなぁ。後半の方は文字が掠れてて読めねぇんだよ」
「えー、でもちょっとくらいは分かるでしょ?」
私が気になるのを見て取ったのか、父さんは仕事部屋から虫眼鏡を取って戻ってきた。どんな人がこの手紙を書いたのか、気になるなぁ。
「ふぅむ、なになに……。お、名前のところはギリギリ読めそうだ」
「だれだれ?」
「名前は……ソフィア・ワインバルド」
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