戦国武将異世界転生冒険記

詩雪

文字の大きさ
5 / 200
第零章 転生編

第4話 ~皇帝の決意~

しおりを挟む
「ご苦労諸君。玉座は話すのに向かん。緊急だ。ここへ集まってもらった」

 ここは、皇帝ウィンザルフの居館パラスにある貴賓室。既に監視員を除き、事を知る人物は集合していた。

「お休みのところ誠に申し訳ありません、陛下」

「構わん、ノルンより状況は聞いている。さっさと本題に入ってくれ」

 ウィンザルフも緊急性を察してか、カーライルの口上は無用と話を進めるよう促す。

「はっ、それでは私から。事の擦り合わせと、今後の対応について具申いたします」

 パルテールは魔法陣の反応や目視したその姿形、現在の進行方向などを説明し、自身とカーライル、カデシュの意を添えて、相手は神獣ロードフェニクスであるとの結論をウィンザルフに伝えた。

「ふむ。ゆるりと茶を飲みながら書物を読んでいたと思ったら、数刻後には亡国の危機とはな」

 笑いながらそういうウィンザルフだったが、目が全く笑っていない。『亡国』という言葉に、本人を除く全員に改めて緊張感が走る。

「続きを」

「はっ。すぐさまマイルズのドリード卿へ連絡し、騎士団にて神獣の後を追うよう、命を発するべきかと。これは、討伐や拘束の為ではなく、神獣の被害を受けた領土のすみやかな把握の為です。あと、野に居る無謀な冒険者や野盗がいた場合、神獣に攻撃を与える可能性もゼロではありません。万が一、危害を加えて神獣の気に触ればそれこそ――――」

「国は亡ぶ…か。余には後者が主のように聞こえたが」

「…仰せの通りです」

「パルテールの言う通りだ。そのようにしよう。カーライル」

「はっ。私もパルテールと同意見です。加えて、もし神獣が地上に降り立った場合、そこは”魔素溜り”となって強力な魔物の巣窟となるのは明白でしょう。それに神獣ほどの魔力で出来た魔素溜りからなら、これまでに無い規模の魔物大行進スタンピードが発生する可能性もございます。こうなってしまうと、仮に神獣の被害が無くとも甚大な被害が予想されます」

「なるほどな。カーライルの申す事ももっともだ。そうなるとマイルズの騎士団だけでは心許ない。ここからも速やかに兵を出そう。仮に運よく神獣が何もせず領土を去ったとしても、民たちはこの地を恐れ、土地を捨ててしまう可能性がある。そのような事にならぬよう、帝都の騎士団が出撃し、国内を見回る事によって、大事無しである事を喧伝する事も出来よう」

「御英断にございます。陛下」

「(若くして配下の言を言外も含め即理解し、柔軟に対応し、お決めになる迅速な決断力とその先をも見通される先見性。この方さえ居られれば、帝国の更なる繁栄は間違いない)」

「では陛下。先帝陛下と共に南部のビターシャまでご移動願います。かの城塞都市ならば、神獣との距離も取れまするし、万が一の事態になりましても、都としての役も果たせましょう」

「何を言うカーライル。私も騎士団と共にゆくぞ」

「そっ、」


 ――――それだけはなりませんっ、陛下!!


 カーライル、パルテール、ノルン、カデシュの声が貴賓室に響き渡る。

「ノルンとおきなまで大きな声を出すのだな」

 ククッと笑うウィンザルフに、ノルンとカデシュが慌てる。

「た、大変失礼致しました。しかし陛下。どうかじじいの最後の頼みと思うてここはご自重下さいませ!」

 カデシュは額に汗をかきながら、ウィンザルフに懇願する。

「カデシュ老の言う通りです陛下! 陛下に万が一の事があれば、帝国はどうなります!」

「私もカーライル殿と同じでございます。陛下がご存命である限り、この国は何度でも蘇ります!」

 その後もカーライルとパルテールは滔々とうとうと説得するが、

「ふむ、2人とも、あまり時間は無いのではないか? 余を案ずるお前たちの心は十分に伝わった。しかし、もし戦となれば帝国の全戦力をもってしても、かの神獣を滅ぼすことは敵わぬのであろう? カーライル」

「っつ!…見込みは薄いかと」

「パルテールはどうだ?」

「…残念ながら、不可能にございます」

「翁、ノルンも聞いたな? 帝国最高クラスの戦力である2人がそういうなら、そういう事よ。ならば、アルバート帝国皇帝として戦うまでだ」


◇ ◇ ◇ ◇


 強化魔法に優れた100名の団員達を率いて、先頭を駆けるマイルズ騎士団長ボルツに、すぐ後ろを走る通信士オペレーターが声を上げる。

「団長! アルバニアより伝令! アルバニア騎士団、魔法師団の混合部隊500名が先程アルバニアを出陣! 目標はスルト! 可能な限り駆け続けよとの事です!」

「やはりスルトか。了解だ!」

 通信士オペレーターとは各都市に配備されている、騎士団に所属する陣魔法士キャスターで、その国特有の魔法陣を使い、長大な距離の通信魔法トランスミヨンを扱う職に就くものをいう。

 平時は都市間連絡員だが、戦時は当然出陣する。ボルツの後ろを走る通信士オペレーターもマイルズに所属する3人の通信士オペレーターの内の1人だ。

「全隊よく聞け! 目標は事前に話した通りスルトだ! 通常なら5日かかるが、このペースで駆ければ2日で到着できるはずだ。気合で馬に強化魔法を掛け続けろ! 通信士オペレーターより先にバテた奴は、帰ったら特別訓練だ! そのつもりで駆けろ!」

 ボルツは部下達に目標を伝えるついでに、檄を飛ばす。

 彼らの多くは近接戦に特化した騎士である。近接戦では無属性魔法である身体強化や、武器強化が物をいう。

 また、彼らは騎乗する馬にも強化魔法をかける事ができるので、一日中馬を走らせることも可能なのである。このような強行軍は彼らの得意とするところだった。

 それに引き換え通信士オペレーター陣魔法士キャスターであるため、強化魔法も使えなくはないが専門外なのである。

「団長~そりゃないっすよ~」
陣魔法士キャスターより先にバテたら流石にダメだろ」
「なぁ、どうやってションベンすりゃいいんだ?」
「漏らせよ。仕方ねぇから笑ってやる」
「いやいや、お前ら。2日眠れない事確定だぞ?」

 馬を駆けさせながら思い思いに喋る団員達。だが、これは決して状況を楽しんでいるのではない。

 襲い来る恐怖から少しでも気を紛らわせているに過ぎなかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」  王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。  パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。  アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。 「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」  目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?    ※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。 『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...