戦国武将異世界転生冒険記

詩雪

文字の大きさ
19 / 200
第一章 スルト村編

第17話 父の条件Ⅰ

しおりを挟む
 今年で四度目か…今年こそ四人に勝って、冒険者として旅に出て見せる!

 3年前、数えて12の年に俺は冒険者になりたいと、父上と母上に申し出た。だが父上に猛反対され、それでも引き下がらない俺に、父上は条件を出された。

 四人抜き。

 父上とその友人三人と勝負し、すべてに勝つ事を条件に冒険者となる事を許された。その年に早速父の友人であり、俺の狩猟の師匠でもあるエドガーさんに勝負を申し出た。父から事情を聞いていたのか『じゃあやるか』と、軽く勝負を受け入れてくれたエドガーさんに、俺は彼が油断していると思い勝利を確信したものだ。

 武器は無し。20分以内に村周辺の森にいるエドガーさんの身体に触れられたら勝ちだという条件を出された。

 そんな事でいいのかと思ったが、甘すぎた。

 結果は惨敗。見つける事すらできなかったのだ。『時間切れまで遠くへ逃げるなんて卑怯です!』と叫ぶ俺に、エドガーさんは後ろから声を上げ、慌てて振り向く俺に向かって、

「ジン坊よ、俺に卑怯な手を使わせたら大したもんだ。がっはっは!」

 と、大笑いされた。

 普通に後ろにいたのだ。俺は追いかけているつもりが、追いかけられていた。情けなくなり泣きそうになったが、その場で『どうすればエドガーさんを捕まえられますか?』と聞き、教えを請うた。

「そ、それを俺に聞くのか。この度胸と言うか素直さと言うか…」

 と、なにやら小言を言っていたようだが、そんなものは気にしない。なにせこの人は俺の頼みを断ったことが無い。いつも『しゃーねぇなぁ』と言いながらも頼みを聞いてくれる、いい人なのだ。

 エドガーさんに負けた次の日には、オプトさんに勝負を申し込んだ。四人抜きしなければならないので、エドガーさんに負けた時点で今年はもう諦めるしかないのだが、来年の勝負の為に勝負内容を知っておきたかった。

 オプトさんは『それってアリなのか』と、父に聞いていたが、思い知らせてやってくれと言われたらしく、渋々ながらも勝負してくれた。

 勝負の内容は、半径2mの円にお互い立ち、どちらかが円から出る、もしくは一矢でも当てたら勝ちというものだった。お互いの円の距離は50m。オプトさんは俺の弓の師匠だが、弓には自信があった。最近やっと大人と同じサイズの半弓を引くことが出来るようになり、楽しくて一層鍛錬に励んだのだ。

 開始の合図とともに、最近やっと出来るようになった3連射を浴びせる。これで円は飽和状態になるので、もう勝ちは決まったも同然だ。避ければ円から出るし、そうしなければ当たる。そう思った瞬間、

 ―――カンカンカンッ

「なっ!?―――うっ!」

 3射とも撃ち落されると同時に、腹部に鈍痛が走る。

 4射目が全く見えなかった。それに矢先は粘土だったはずで、こんなダメージを与えられる訳が無い。

 するとオプトさんが駆け寄ってきて、

「すまんジン! やり過ぎた!」

 謝りながらオロオロしている。そんなオプトさんの姿を見て、俺は自分の未熟さが恥ずかしくなった。

 だが、恥じている場合ではない。この人に勝たなければならない。

「絶対に、ごほっ!…許しません!」

 怒りを目の当たりにし、オプトさんはショックを受けているようだったが、続けざまに言ってやる。

「許して欲しいのでしたら、オプトさんにどうすれば勝てるか教えて下さい! お願いします!」

 命令なのかお願いなのか。

 深々と頭を下げる俺を見て、勝負の行方を見ていた野次馬からどっと笑いが起る。同じく見ていた父上は頭を抱えていた。

「ぐっ…このしたたかさと礼儀正しさ。だっ誰だ! こんな敵わねぇ奴に育てたのは! わかったよジン、教えてやるからそんな目で見るな!」

 俺は拳を握る。オプトさんは母上によく似ている俺に、下から見上げられるのが苦手のようだ。だが、俺の頼みを断ったことが無い。エドガーさんと同じで、いい人なのだ。
 
 皆に笑われるのも俺が弱いから。

 しかし、これでオプトさんにも勝てるようになるはずだ!


◇ ◇ ◇ ◇


 こうして俺は、来年の勝負に向けて1年間ひたすら鍛錬に励んだ。

 仕事の狩猟もこなしながら、エドガーさんを見つける方法、オプトさんに勝つ方法を本人達から学び、根本的に俺に足りないものがそれで分かった。

 それは魔法。

 2人とも魔法で身体を強化し、さらに武器を強化していた。終始使っていた訳ではないと言っていたが、決定打になったのは間違いない。

 エドガーさんには探知魔法サーチという魔法と、ついでだと言って通信魔法トランスミヨンの陣、オプトさんには身体強化魔法と、強化を遠距離武器に込める方法を教わった。俺は飲み込みが早かったらしく、二人は目をいていたが、俺にはなぜそれが出来たのかが分かっていた。

 それは俺が8歳の時。

 母上が村の怪我人を不思議な力で治しているのを見た。俺はその日の夜に母上に不思議な力の使い方の教えを乞うたが、『ジンにはちょっと早いかしら』と言って、手を握り、不思議な力を使ってくれた。

「どうかしらジン?」

「あたたかいです」

「そうね。これが皆を元気にする力よ。ジンも大きくなったらきっと出来るようになるわ。だからこの暖かさを覚えておいてね」

 ――――はいっ! 母上!

 このような出来事があり、その日から母上の言いつけ通りに、毎日寝る前にあの暖かさを思い出すという習慣が出来たのだ。

 それが今、功を奏したのだろう。探知魔法サーチや身体強化魔法を発動する時、あの暖かさを思い出してみたらすぐに出来たのだ。その暖かさ、つまり”魔力”を体内にとどめれば身体強化魔法に、魔力を自分を中心に広げるのが探知魔法サーチ

 エドガーさん曰く、どう広げるのかはイメージ次第だという。彼は自分を中心に球体をイメージしているらしい。最初はごく至近距離にしか出来なかったが、『今は出来ただけですげぇよ』と言って頭をガシガシ撫でられた。

 全て、この時の為に母上は助言してくれていた。そう思えてならなかった。

 家に帰ったら、母上にお教えしなければっ。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」  王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。  パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。  アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。 「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」  目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?    ※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。 『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

処理中です...