戦国武将異世界転生冒険記

詩雪

文字の大きさ
44 / 200
第二章 帝国中央編

第42話 帝都アルバニアⅡ

しおりを挟む
 冒険者ギルドに駆け込み、さっそく受付に依頼完了報告をする。

「依頼の達成承りました。あら? あなたがマイルズで認定された最年少アジェンテでしたか。ようこそアルバニア冒険者ギルドへ。こちらの依頼達成によりEランクへの昇格要件を満たしました。本日よりEランクとなります。おめでとうございます。つきましてはギルドカードの更新を行いますので、少々お時間頂きますが建物内でお待ちいただけますか?」

 カードを見ればアジェンテである事は分かるだろうが、俺がマイルズで認定を受けた事も分かっているらしい。ギルドの情報網はすごいな。

「わかりました」

 あんな楽な依頼で上がっていいものかと少々怖くなったが、上がるのは別に悪い事ではないし、今はさして興味も無い。とりあえず掲示板を覗いて時間を潰すとしよう。

 す、少なっ…

 張り出されている依頼は、明らかにマイルズの半分以下だった。周りにいた冒険者も同じような事を思っているようで、方々から文句が聞こえる。

「やっぱ帝都の依頼は大したもんねぇなぁ」
「美味しいやつはやっぱ早いもん勝ちかぁ…今日は出直すか」
溝攫どぶさらいかぁ~、報酬は悪くねぇけど手間がなぁ。水魔法出来れば簡単なんだけどな」

 やはりこの時間だと他の冒険者が一通り物色していった後のようだ。それに帝都周辺は騎士団の警戒が強いので、討伐依頼もそんなに無いのだろう。

 まぁ、戦闘ばかりが冒険者の仕事ではない。何か受けられそうなものがあったらまた後で受けよう。とりあえず、ギルドカードの更新が終われば街に出たい。依頼はそれからだ。

 しばらく依頼を眺めていると受付の職員に呼ばれ、新たなギルドカードを渡される。今度は緑のカードだ。Fの時と同じく、端に”E”と刻印されていた。

「リカルドさん。現在暗潜士アサシンで登録されていますが、他にも登録可能な職業が列記されていますよ? その…アジェンテになる方はすごいですね。さすが最年少で認定されるだけはあります」

「ああ、そういえばその事をすっかり忘れていました。何が登録できるのか知らないのですが、何があるのですか? あとジンで結構ですよ」

「そうでしたか。ふふっ、ジン君はいろいろ規格外ですね。今は剣術士ソードマン武闘士ファイター、その2つの上位職である剣闘士グラディエーター、魔法職の魔法術師ソーサラー、中距離支援の弓術士アルクス探査士サーチャー、今登録されている暗潜士アサシン、その上位職の斥候士スカウターの8つが登録可能ですよ」

「えーっと、そんなに登録する事に意味があるのですか? 登録しなくても依頼は受けられますよね?」

「ええ。依頼は推奨ランクと職員の判断ですので、依頼を受けるのに職業は関係ありません。ですが、パーティー募集に応募したり、仕事の指名依頼やギルドの方でパーティーの斡旋をしたりする時は、職業が指定される場合が殆どですので、登録しておけば仕事が増えますよ」

「なるほど。ではお任せします」

「…え?」

「私は冒険者になったばかりで職業に関してはあまり詳しくありませんし、やれることをやるだけです。冒険者であればそれでいいので。仕事が頂けるように、詳しいギルドの方にお任せした方がいいと思いました」

「ふふっ、わかりました。では上位職の剣闘士グラディエーター斥候士サーチャー、基本職の弓術士アルクス魔法術師ソーサラーの4つを登録しておきますね。それぐらいは覚えておいてくださいよ?」

「わ、わかりました。4つですね、4つ、4つか…グラ、ディ?…サーチ…アルクス、はオプトさんと同じで…ソーサ…はい! 覚えました!」

 俺の様子がおかしかったのか、職員はクスクスと笑っている。とりあえず仕事の幅が増えるのなら問題ない。今日は宿を確保してから街を探索する。それが今の俺の任務なのだから。

「では、また明日こちらに伺います。ありがとうございました」

「はい。いってらっしゃい。お待ちしていますね」

 ◇

 宿を確保して荷物を置いた。宿の代金が1泊朝食付で銀貨2枚だったのが気になったが、帝都なら多少高くても仕方がないと思い直す。

 金袋だけ携えて俺は街を散策していた。かなり離れたとこに皇城がある。城付近はマイルズと同様に、貴族の別宅が並ぶ貴族街だろうから入れないが、それは別に構わない。

 どうやらアルバニアは皇城を中心に周りに貴族街、そこから放射線状に街が形成されているようだ。マイルズの様に住宅区、商業区、工業区に分かれている訳ではなく、すべてが入り乱れて建物が立っているようだが、街の景観は綺麗に舗装された道路や街灯で統一感が醸し出されており、雑多な印象どころか、整然とした美しい街並みである。

 とりあえず腹ごしらえにと食堂に入る。中は人でにぎわい、給仕がいそいそと動き回っていたが、待つことなく席に案内されて品書きを見る。すると表書きに大きな文字で『今日のおススメ。”超新鮮!海の幸の満足アクアパッツァ”』と書かれていた。銅貨2枚でお勧めなら食べない手は無い。

 ただ、内陸にある帝都で本当に新鮮な海の幸なのか? と若干疑ったがそれはいい。アクアパッツァと言うのも何かわからない。何かの魔法かとも思ったがそれも置いておく。とにかく食う。文句はそれからだ。

「そうこそ猫又亭へ! ご注文はお決まりですか?」

「あの今日のおススメを頂けますか? それとパンと果実酒を」

「承りました! 少々お待ちくださいねっ!」

 少し待つと、テーブルの上にドンと魚や貝をメインに野菜がちりばめられた大皿が出て来た。立ちのぼる湯気からは、潮の香りが漂う。野菜も赤、緑、黄と色鮮やかで目でも味わえる。とても旨そうだ。アクアパッツァという名の由来は謎だが、美味けりゃどうでもいい。

 一口食べると、新鮮な魚と貝のうま味が口の中に広がった。

 うまいっ!

 手に持つナイフとフォークが止まらない。次々と口に運び、時折パンを大皿に浸し、海鮮のエキスを吸わせ頬張る。パンも柔らかく、マイルズの騎士団宿舎で出て来たパンにも劣らない。最後に贅沢に果物を絞って作られたであろう果実酒をゴキュっと飲み干し、ごちそうさま。

 さすが帝都に店を構えるだけの事はある。しばらくこの品でいいのではと思ったが、どうやらお勧めは毎日違うようなので、しばらく通うのも良いかも知れない。

「うまかった…すみませんお会計を」

「は~い。今日のおススメが銀貨2枚、パンが中銅貨1枚、果実酒が中銅貨1枚になりま~す」

 ――――な、なにっ!? 

 どうやら俺は銅貨と銀貨を見間違えていたらしい。

 何という油断! 戦なら完全に致命傷を受ける程の失態ではないか! パンと果実酒もそれぞれでマイルズの宿の食事1食分だし、完全に帝都の物価を侮った! 帝都の食堂は皆こうなのか!?

 あれだけ美味かったのだから文句を言うつもりは無いが、流石に1日2回通える金額ではない。そんな事をすればすぐに金が底をついてしまう。

 俺はなるべく顔には出さぬよう銀貨2枚を差し出しながら、せめてもと、魚介が新鮮な理由を聞いてみた。

「あの、どうして内陸の帝都でこのような新鮮な魚介が手に入るのですか?」

「北部の港町シーモイから氷魔法で凍らせてここまで運ばれてくるからですよ。その代わり、お値段は見ての通りになっちゃいますけどね♪」

 スルト村からさらに北東に行くと、シーモアと言う街があると聞いたことがある。母上が稀に魚介を食卓に出してくれていたが、こんなに高かったのか。申し訳…いや、ありがとうございます、母上。

「なるほど、勉強になりました。美味しかったです、ご馳走様でした。」

「いいえ~、またのご来店お待ちしておりまーす!」

 氷魔法で凍らせて鮮度を維持する…か。輸送の時間を考えると、魔法陣を使っているのだろう。氷が溶けるごとに氷魔法を放つわけにはいか無いだろうし。そんな魔法の使い方もあるとは、いつか氷魔法を覚えておいても損は無いな。あやかしのような名の猫又亭も覚えやすいので、ついでに覚えておこう。

 少し軽くなった金袋を引っ提げ、再び街に繰り出した。


◇ ◇ ◇ ◇


 な、なにこの子超かわいぃ~! ヤバイよ! ほんとにアジェンテなの!?

 アルバニア冒険者ギルド受付嬢のニーナは今年で20歳になる。職として安定した冒険者ギルドに勤めて2年になる彼女は、目の前に突如として現れた黒髪の少年に興奮していた。

 切れ長の目に黒い瞳。短く切られた黒髪は整えられておらず、逆に飾らない良さがある。それに立ち居振る舞いも冒険者らしからぬ雰囲気があり、言葉遣いも丁寧ときた。

 普段どちらかと言えば粗暴な冒険者ばかりを相手に仕事をしているニーナにとって、は荒野に突如として現れたオアシス。ニーナがこの職場で初めて抱いた感情は、仕方の無い事なのかも知れない。

 この適職(登録できる職業)の数…ぜったい上位ランカー並よねぇ。ポイントもDまで溜まってるし、Gランク研修でとんでもない評価を受けたのね…15歳でこんなの見た事無い。かわいい上に強いだなんて反則だわっ! 少しでも長くアルバニアここに留まらせて見せるっ! 私の目の保養の為に!

 ジン君に職業を覚えてと言ったら、彼はなんだか悩み始めた。目を瞑って思案しているようだけど、ちょっと困っているように見える。よっぽど職に興味が無いのだろうか。冒険者なのに。素直に覚えようとしてるトコもこれがまたカワイイのよ。

 色々な規格外に、珍しさも相まってつい笑ってしまった。

 また明日も来てくれるみたい。いつも言わないのに『いってらっしゃい』とか言っちゃったし。仕事の楽しみが増えたわぁ♪
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」  王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。  パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。  アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。 「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」  目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?    ※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。 『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

処理中です...