戦国武将異世界転生冒険記

詩雪

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第二章 帝国中央編

第46話 黒竜飛来

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(つい早く昇格して欲しくて単独ソロのジン君にGランクさんを連れて行ってもらったけど、まさか狩猟を選ぶなんてなぁ…)

(でもゴブリンと一角兎オーガラビットはFランクだし、こないだ偶然遭遇したとか言って、パーティー推奨B級指定の暁大蛇ティタノボアを1人で狩って来た彼だもの…きっと大丈夫、よね…?)

 アルバニア冒険者ギルド受付のニーナは、帝都に来て半年が経つ青年ジンと、冒険者ギルドに登録して間もないGランク冒険者ユーリの心配をしている。依頼はとても簡単な内容ではあったが、なにせGランクの者を伴うのはリスクが高まる。

 彼女は中級者がいつかは通る道とはいえ、採取や護衛任務といった基本的に戦闘を伴わない依頼では無く、戦闘前提の狩猟依頼を受けると言ったジンの説得に失敗していた。

 ランクFの依頼なので危険度は高くない、心配し過ぎも冒険者にとってよくない事だと、ニーナは自分に言い聞かせたがこれがなかなか難しかった。

「お気に入りのジン君の事になると、ほんっとダメね」
「だって、ユーリ君が怪我でもしたら、私がジン君のポイントを減らさなきゃなんないのよ!? そんなのムリっ」
「はぁ…じゃあその時は私がやってあげるから。そもそもゴブリンと一角兎オーガラビットでしょ? F級指定じゃない。そんなに心配する事無いってば」
「ううっ…」

 同僚は呆れつつフォローするが、ニーナには響かないようだ。

 そんなやり取りがなされる中、誰も予想だにしない緊急連絡が冒険者ギルドに響き渡った。

「全員聞いてくれ」

 声の主はアルバニア冒険者ギルドマスターのアイザック。眼鏡を掛けた壮年の、いかにも管理職に向きそうな雰囲気だが今の気迫は冒険者そのものである。

「たった今騎士団より連絡がありました。南西グレイ山脈から猛スピードで黒い竜がこの帝都に向かっているとの事です。大きさと特徴から黒王竜ティアマットの幼体と推定されました。王種は頭が良く、テリトリー外の獲物をむやみに襲ったりしないはずですが、幼体は別です。腹を空かせ我を忘れて人でも食べに来たのでしょう」

「こ、黒王竜!?」
「S級じゃねぇか!」
「なんで冒険者ギルドここに話が来るんだよ。騎士団あいつらにやらせりゃいいじゃねぇか」
「騎士団と魔法師団は何してんのよ!」
「幼体っつってもバケモンクラスには違いねぇ…」

 ざわつく冒険者と職員達。

「静かに! 騎士団と魔法師団は今いる団員を二手に分け、帝都防衛隊と討伐隊を編成している最中です! もし帝都決戦となると街に大きな被害が出ます。ですが、ここからが本題です。飛来を確認して暫くした後、竜は森で墜落ようです。騎士団監視員の報告では、森で暴れている巨体が確認できている事から、まだ生きています」

「どういうことだ? させられた?」
「墜落して暴れてるって事は…」

「もうわかりますね? 討伐隊がまだ出立していない状況で竜が暴れているという事は、今この瞬間も我々と同じが戦っているという事ですよ」

 アイザックの一言一言でニーナの顔が次第に青ざめていく。南西の森にはジンとユーリがいる。

「騎士団の編成は待っていられません。おそらく騎士団も今戦っているのが冒険者だとわかり、早々にこちらギルドに情報を渡したのです。我こそはと言う人がこの場に居たら、私に続いて下さい。今すぐに仲間を助けに行きます!」

 黒王竜と聞き、冒険者達は簡単に手を上げることは出来ないでいる。幼体とは言え、中級ランク程度では全く敵う相手では無いのだ。王種とはそういう存在である。

 そんな中でも数名が手を上げて、出てゆくアイザックの後を追っていった。

 大騒ぎのギルド内。ニーナの脳裏には最悪の事態が巡っていた。

「ま、まさか…ジン君っ!」


◇ ◇ ◇ ◇


「ユーリさん! そっちに1匹通しました! 最初に言ったように、ゴブリンは群れると厄介ですが単独の戦闘力は大したことありません! 狙いを定めて思いっきり槍を突き出して!」

「わ、わかった! うおぉぉっ!」

 ドシュ!

 Gランク冒険者ユーリの槍はゴブリンの喉元を貫き、ゴブリンを魔力核へと変えた。

「や、やった! やったぞジン君!」

「やりましたね、ユーリさん!」

 ジンはCランクへの昇格を果たす為、Gランク冒険者のユーリを伴って帝都南西部の森に来ていた。

 依頼内容はゴブリン10匹と一角兎オーガラビット10匹。当初採取依頼と思っていたユーリは、狩猟を選んだ同行者をいぶかしんでいたが、『狩は早いうちに経験しておいた方がいい』とジンが言うので、しぶしぶ同行していた。

 ユーリはこれまでに三度、中級パーティに入って活動した実績がある。だが採取依頼しか経験しておらず、採取中に遭遇した魔物も同行したパーティだけで倒していたので、ユーリは魔物と戦ったことが無かったのだ。

 ジンはユーリが倒した10匹目のゴブリンが落とした小さな魔石を拾い、布袋に入れる。

「それにしても君は僕より2つも下なのに本当に凄いね。どうすれば――って、何度も聞いたか…」

「鍛錬あるのみですよ! 最低1日1000回は槍を振って下さい!」

 ユーリは最近冒険者になる為、近隣の村から帝都まで出て来た若者である。村の不作と魔物の出現が重なり、ギリギリの生活から親の負担を減らすべく、冒険者になる事を決意したという経緯がある。

 最初は畑仕事で培ったこの身体があれば、ある程度はやっていけると思っていた。しかし、いざ魔物と戦うとなると恐怖で身体が動かない。年下にも関わらず、バッサバッサといとも簡単に魔物を倒していくジンを見て、自分の弱さを痛感していた。

「はぁ…やっていけるかなぁ…」

「大丈夫ですよ。ユーリさんは体力がありますし、しっかり基礎から槍を学んでいけば、今日の依頼程度なら容易くこなせるようになると思います」

「……うん、そうだね。村を出た時点で、もう後には引けないんだ。コツコツやっていくよ」

 ニコッと笑うジンにユーリは安心感を覚える。戦いの才能だけではない、人を引き付ける魅力も彼は持っているのだと、ユーリは半ば呆れる心持ちでいた。

 ゴブリンの討伐証明は魔石、一角兎は角なのでギルドで売る分の肉を除き、二人は一角兎の肉にありついていた。肉と香辛料スパイスの芳醇な香りが辺りに満ちている。

 香辛料は決して安いものではない。それを常時ストックしているジンは、ソロならではの金回りようだ。しかも、それを惜しげもなく組んだばかりのメンバーに振る舞うのだから、ユーリからすればその器量も流石と思える。

 ふとユーリが肉を半ば食べかけていたジンを見ると、どうも様子がおかしい。南西の空をじっと見つめている。

「どうしたんだい?」

 聞くとジンは勢いよく立ち上がり、

「……何か近づいてきます―――っ!? あれは!!」

 空に黒い点が現れ、それが何かを確信したジンは即座に行動に移した。

「ユーリさん! 今すぐギルド戻って伝えて下さい! 竜が来たと!!」

 強化魔法を覚えたばかりのユーリには竜の姿はまだ見えないが、ジンの只ならぬ雰囲気に押されすぐに立ち上がった。

「竜だって!? わ、わかった! ジン君はどうするんだい!?」

「徐々に高度を落としていますし、この方角は帝都に向かっています! その前に竜の足止めをします! 早く行ってください!」

 そう言うと同時にジンの身体が緑に輝き、南西の方角に消えていった。

(竜を止める!? 一人で!? 無茶な!)
「…くそっ!」

 ユーリにはジンを止める事も、ましてや手伝う事も出来ない。
 ジンの言う通りにすべく必死に脚に強化魔法をかけ、全力で帝都へ駆けた。
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