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第二章 帝国中央編
第45話 原素
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俺がダンジョンで感じた魔素の違和感、先生はそれを『原素』と呼んでいた。原素の存在を明確に意識したのは15年前。スルト村に残された『神獣の残滓』と呼ばれる現象と、その神獣が置いていった一つの石のお陰だという。
先生が体験した神獣の残滓は、魔素から生成される魔力によるものではなく、別の何かだと先生は考えたらしい。そこでダンジョンに存在する魔素、ここで言う原素によって作られた魔力による魔法、もしくは現象ではないかという事に行き着いたそうだ。
同時にその神獣が置いていった石には魔力核らしきものが混ざっていたが、どうも自分が知る魔力核とは別の何かのように感じたという。その石は現在国宝なので、皇帝の居城であるクルドヘイム城から持ち出す事は出来ないらしいが、先生はその石に混ざっている発光体は通常の魔力核ではなく、原素から出来た魔力核なのではと推察したらしい。
原素という、魔素とは違う力の存在を定義した先生は、次に帰還魔法陣に目を付け、その研究に没頭したという。5年という歳月をかけて、人が持つ魔力を魔素から原素へ、その原素を用いて魔力へ変換することが出来れば、ダンジョン内でのみ発現する帰還魔法陣を外に持ち出すことが出来ると考えた。
何度もダンジョンへ足を運び、苦心の末に完成したのが陣魔空間を作り出す魔法陣という事らしい。だが、この陣魔空間の魔法陣とダンジョンの帰還魔法陣には、全く異なる面があるという。
それは魔力干渉を起こすか否か。陣魔空間はその作成者以外の魔力を持つ者は、内部に干渉する事が出来ないというものだった。要するにすり抜けるという事だ。確かにダンジョンの帰還魔法陣は、魔力を込めた者以外も同時に空間に入っている。
「すごいです先生。今のお話でも先生の偉業は歴史に残るものでは無いでしょうか」
「私はそんなものには興味は無いのですがね。陣魔空間が収納魔法として、色々な人に役立ててもらえるならそれでいいのです。今の私の研究は、その魔力干渉と出口の設定です」
「確かに…陣魔空間に出口が設定できれば、世界の移動の概念が変わります。それこそ都市間、もっと言えば大陸間で瞬間移動が出来てしまう」
「その通り。だが、それを行うには膨大な距離の空間を作る魔力が必要となる」
「数年かけて魔法陣に魔力を込めなければならないとなると、馬を走らせた方がよっぽど早いですもんね」
「課題は山積みだよ」
そう言って先生はカラカラと笑う。その表情は言葉とは裏腹にとても楽しそうだった。
「ジン君、とても楽しかったよ。原素については他の研究者にも伝えてあるんだがね。やはりその身で魔素との違いを体感できる者でないと、理屈が分かってもなかなか及ばない面がある。君は私が初めて会った原素の理解者だ。おそらく世界には、原素を感じることが出来る人がまだまだいると思う。世界を旅して、ぜひそのような人を私に紹介してくれ!」
「先生からの任務、承りました。私も原素について旅をしながら考えます。その時はぜひ聞いて頂ければ幸いです」
「ああ、楽しみにしているよ」
◇ ◇ ◇ ◇
すっかり研究話に没頭してしまったが、元々の目的である収納魔法を手に入れた。一度複雑怪奇な魔法陣に触れ、魔力の逆流を受けた後、先生に教えてもらった簡易版の魔法陣を描くと収納魔法は発動するという。
魔法陣に込めた魔力の分だけ空間は広くなり、使用者自身ならいつでも出し入れ可能。空間内に重さや時間の概念は無いそうなので、仮に生肉を入れたとしても腐ったりすることは無い。俺が最初に想像した通りの、完璧な仕様だった。
やったぞ! これで旅の荷物が大幅に減らせる!
早速、金袋以外を収納魔法に出し入れしてみると、自由自在だった。内部の容量はまだ分からないが、これから徐々に分かっていくだろう。
上機嫌に魔法師団本部を後にし、冒険者ギルドへ向かった。
「こんにちはニーナさん」
ギルドの窓口に行くと、まだニーナさんがいたので声を掛ける。
「あ、ジン君! どういうこと!? もう依頼人さんから完了の報告が来てるんだけど! しかも特別報酬までついて!」
興奮している様子のニーナさんは捲し立てる様に詰め寄ってきた。
「ああ、本当に付けて頂いたんですね。有り難い事です。管理人さんが思っていた以上に早く終わったからですかね」
「依頼期間の3日どころか、依頼から半日も経たずに終わったんだからそれは付くわよ! 相手は貴族なんだし!」
賑やかなニーナさんはさておき、俺はギルドカードを差し出す。何やら訳が分からないといった様子だったが、依頼は完了である。この依頼達成でランクアップの為、新たなギルドカードへの更新手続きに入っているようだ。
少し待っているとニーナさんに呼ばれ、新たなギルドカードが渡された。今度は青に”D”と刻まれたカード。これで中級者ランクの仲間入りを果たした。
「報酬も倍の金貨4枚! お疲れさま! そしてランクアップおめでとー!」
パチパチパチ、と手を叩いて自分の事の様に喜んでくれている。
有難い事だが、なんだかギルドに来る毎に馴れ馴れしくなっていくニーナさんに少し困惑する。
別にいいんだけど…なんかこう、視線が熱い。
これで事前に帝都でやりたかった事は終わった。ゆくゆく次の目的を決めるため、ニーナさんに地図が無いかどうか聞いてみる。
スルト村からマイルズ、帝都と進んできたのは縁があっただけの事。ここからは目的地を見つけて旅を進める予定だ。
「地図? ジン君まだ持ってなかったんだ。あるわよ~、ギルド特製の冒険者限定の地図が。ちょっと待ってねー」
そう言うと、ニーナさんが裏から3枚の地図を持ってきた。
「一番高いのがこの世界地図。世界中にあるギルドの粋を集めて作られたものよ。もちろん未開の地は載ってないけど、主要な都市国家は勿論、そこに至る街道やダンジョンの場所、遺跡とか冒険者にとって大事なスポットがもれなく載っているわ。因みに大金貨3枚になりまーす」
「大金貨3枚!? さすがに高いですね…と言うか、いきなり世界地図は不要かと」
「だ、だよねー…じゃあ、お姉さんがおススメなのはこれ。西大陸の地図よ! 世界地図より細かく村や街の情報が書かれているわ。それに冒険者さんが自分で色々書き込めるように作られているから、この地図が国を渡って広範囲に活動する冒険者さんに人気よ。因みにこっちは大金貨1枚です! これより小さな地図となると帝国東部と西部に分かれた地図かしらね。こっちは金貨2枚ですっ」
「では、西大陸の地図を頂きます。料金はバンクから引いておいて下さい」
そういって俺は真新しいギルドカードを渡す。
「了解よ。でもジン君、もう帝都を出ちゃうの?」
「すぐにという訳ではありません。まだまだ帝都で学べることもあるでしょうし、行き先も全然決まっていません。とりあえず地図を持っておかないと色々思案も出来ませんからね。しばらくの間、色々教えて下さいねニーナさん」
「そう! わかったわ、任せてよ! こっそり依頼も取り置くから、そっちの方もよろしくね♪」
「ありがとうございます。よろしくお願いします!」
真新しい地図とギルドカード手にして冒険者ギルドを出る。
明日からは依頼を積極的にこなしていこう。次の目的地を探しながら。
先生が体験した神獣の残滓は、魔素から生成される魔力によるものではなく、別の何かだと先生は考えたらしい。そこでダンジョンに存在する魔素、ここで言う原素によって作られた魔力による魔法、もしくは現象ではないかという事に行き着いたそうだ。
同時にその神獣が置いていった石には魔力核らしきものが混ざっていたが、どうも自分が知る魔力核とは別の何かのように感じたという。その石は現在国宝なので、皇帝の居城であるクルドヘイム城から持ち出す事は出来ないらしいが、先生はその石に混ざっている発光体は通常の魔力核ではなく、原素から出来た魔力核なのではと推察したらしい。
原素という、魔素とは違う力の存在を定義した先生は、次に帰還魔法陣に目を付け、その研究に没頭したという。5年という歳月をかけて、人が持つ魔力を魔素から原素へ、その原素を用いて魔力へ変換することが出来れば、ダンジョン内でのみ発現する帰還魔法陣を外に持ち出すことが出来ると考えた。
何度もダンジョンへ足を運び、苦心の末に完成したのが陣魔空間を作り出す魔法陣という事らしい。だが、この陣魔空間の魔法陣とダンジョンの帰還魔法陣には、全く異なる面があるという。
それは魔力干渉を起こすか否か。陣魔空間はその作成者以外の魔力を持つ者は、内部に干渉する事が出来ないというものだった。要するにすり抜けるという事だ。確かにダンジョンの帰還魔法陣は、魔力を込めた者以外も同時に空間に入っている。
「すごいです先生。今のお話でも先生の偉業は歴史に残るものでは無いでしょうか」
「私はそんなものには興味は無いのですがね。陣魔空間が収納魔法として、色々な人に役立ててもらえるならそれでいいのです。今の私の研究は、その魔力干渉と出口の設定です」
「確かに…陣魔空間に出口が設定できれば、世界の移動の概念が変わります。それこそ都市間、もっと言えば大陸間で瞬間移動が出来てしまう」
「その通り。だが、それを行うには膨大な距離の空間を作る魔力が必要となる」
「数年かけて魔法陣に魔力を込めなければならないとなると、馬を走らせた方がよっぽど早いですもんね」
「課題は山積みだよ」
そう言って先生はカラカラと笑う。その表情は言葉とは裏腹にとても楽しそうだった。
「ジン君、とても楽しかったよ。原素については他の研究者にも伝えてあるんだがね。やはりその身で魔素との違いを体感できる者でないと、理屈が分かってもなかなか及ばない面がある。君は私が初めて会った原素の理解者だ。おそらく世界には、原素を感じることが出来る人がまだまだいると思う。世界を旅して、ぜひそのような人を私に紹介してくれ!」
「先生からの任務、承りました。私も原素について旅をしながら考えます。その時はぜひ聞いて頂ければ幸いです」
「ああ、楽しみにしているよ」
◇ ◇ ◇ ◇
すっかり研究話に没頭してしまったが、元々の目的である収納魔法を手に入れた。一度複雑怪奇な魔法陣に触れ、魔力の逆流を受けた後、先生に教えてもらった簡易版の魔法陣を描くと収納魔法は発動するという。
魔法陣に込めた魔力の分だけ空間は広くなり、使用者自身ならいつでも出し入れ可能。空間内に重さや時間の概念は無いそうなので、仮に生肉を入れたとしても腐ったりすることは無い。俺が最初に想像した通りの、完璧な仕様だった。
やったぞ! これで旅の荷物が大幅に減らせる!
早速、金袋以外を収納魔法に出し入れしてみると、自由自在だった。内部の容量はまだ分からないが、これから徐々に分かっていくだろう。
上機嫌に魔法師団本部を後にし、冒険者ギルドへ向かった。
「こんにちはニーナさん」
ギルドの窓口に行くと、まだニーナさんがいたので声を掛ける。
「あ、ジン君! どういうこと!? もう依頼人さんから完了の報告が来てるんだけど! しかも特別報酬までついて!」
興奮している様子のニーナさんは捲し立てる様に詰め寄ってきた。
「ああ、本当に付けて頂いたんですね。有り難い事です。管理人さんが思っていた以上に早く終わったからですかね」
「依頼期間の3日どころか、依頼から半日も経たずに終わったんだからそれは付くわよ! 相手は貴族なんだし!」
賑やかなニーナさんはさておき、俺はギルドカードを差し出す。何やら訳が分からないといった様子だったが、依頼は完了である。この依頼達成でランクアップの為、新たなギルドカードへの更新手続きに入っているようだ。
少し待っているとニーナさんに呼ばれ、新たなギルドカードが渡された。今度は青に”D”と刻まれたカード。これで中級者ランクの仲間入りを果たした。
「報酬も倍の金貨4枚! お疲れさま! そしてランクアップおめでとー!」
パチパチパチ、と手を叩いて自分の事の様に喜んでくれている。
有難い事だが、なんだかギルドに来る毎に馴れ馴れしくなっていくニーナさんに少し困惑する。
別にいいんだけど…なんかこう、視線が熱い。
これで事前に帝都でやりたかった事は終わった。ゆくゆく次の目的を決めるため、ニーナさんに地図が無いかどうか聞いてみる。
スルト村からマイルズ、帝都と進んできたのは縁があっただけの事。ここからは目的地を見つけて旅を進める予定だ。
「地図? ジン君まだ持ってなかったんだ。あるわよ~、ギルド特製の冒険者限定の地図が。ちょっと待ってねー」
そう言うと、ニーナさんが裏から3枚の地図を持ってきた。
「一番高いのがこの世界地図。世界中にあるギルドの粋を集めて作られたものよ。もちろん未開の地は載ってないけど、主要な都市国家は勿論、そこに至る街道やダンジョンの場所、遺跡とか冒険者にとって大事なスポットがもれなく載っているわ。因みに大金貨3枚になりまーす」
「大金貨3枚!? さすがに高いですね…と言うか、いきなり世界地図は不要かと」
「だ、だよねー…じゃあ、お姉さんがおススメなのはこれ。西大陸の地図よ! 世界地図より細かく村や街の情報が書かれているわ。それに冒険者さんが自分で色々書き込めるように作られているから、この地図が国を渡って広範囲に活動する冒険者さんに人気よ。因みにこっちは大金貨1枚です! これより小さな地図となると帝国東部と西部に分かれた地図かしらね。こっちは金貨2枚ですっ」
「では、西大陸の地図を頂きます。料金はバンクから引いておいて下さい」
そういって俺は真新しいギルドカードを渡す。
「了解よ。でもジン君、もう帝都を出ちゃうの?」
「すぐにという訳ではありません。まだまだ帝都で学べることもあるでしょうし、行き先も全然決まっていません。とりあえず地図を持っておかないと色々思案も出来ませんからね。しばらくの間、色々教えて下さいねニーナさん」
「そう! わかったわ、任せてよ! こっそり依頼も取り置くから、そっちの方もよろしくね♪」
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