戦国武将異世界転生冒険記

詩雪

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第三章 帝国西部・刀編

第52話 レオ達の訓練Ⅰ

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 その日から早速訓練を始めた。

「えーっと、まずは、アッシュスコーピオンに通用する攻撃手段を最低でも1つは身に付けて欲しい。剣術士ソードマンのレオは斬撃もしくは刺突、弓術士アルクスのミコトは牽制、出来れば敵に矢を刺せるまで、オルガナは魔法術師ソーサラーだったね?」

「ですです!」
「得意な属性は何だい?」
「火です!」
「…だけ?」
「えっ、そうだけど…やっぱり私って…」
「いや! 大丈夫! 何とかなる!」

 これが普通なのかが分からない。色々属性試して来た俺が変わってたのかもな。

「そー言えばジンってさ、探知魔法サーチ使えるし暗潜士アサシンだよな? 剣も出来るのか?」

「俺は剣闘士グラディエーターだよ。あと弓術士アルクス魔法術師ソーサラーでもあるから、ミコトとオルガナも安心してくれ。因みに暗潜士アサシンでもあるけど、登録は斥候士スカウターだから、魔物は気にせず訓練に集中してもらって大丈夫だ」

「「「ええええええ!」」」」
「どういう事? そんなのアリなの!?」
「剣闘士と斥候士って上位職だよな!? ってか2つも!?」
「ジン君がソロの理由がわかったよ…」

 職なんてどうでもいいが、他の冒険者にとってはこういう反応になるんだろうな。ちょっとニーナさん思い出すな。

「とりあえずレオは攻撃の威力を上げるために強化魔法の練習だ。アッシュスコーピオンは堅い殻と毒攻が厄介だが、強化魔法さえしっかり出来れば刃は通る。あの岩に斬撃もしくは刺突を深々と入れられれば、ダメージは通るはずだ」

 俺は温泉が湧き出ている岩とは別の岩を指差して、舶刀1本を抜き斬撃を入れる。露天風呂は壊されちゃ困るしな。

 ザギン!

 岩にくっきりと付けられた斬痕に3人は驚く。

「あんなに軽々と岩を切るなんて…剣闘士すげぇ」
「この痕と同じくらいの痕を1週間で付けてくれ」
「や、やってやる!」

 レオは早速岩を切る訓練に入った。後で剣の特性と強化魔法の武器への上手い伝え方も教えなければならない。

「次はミコト」
「うん!」
「強化してあの木に矢を撃ってみてくれるか?」

 オッケーと言い、シュンと一矢放つ。カァン! と言う音と共に矢は木に刺さり、ビィィンと震えている。矢速は問題ないし狙いも正確だった。だが弓にしか強化が施されていない。俺は手本として弓と矢を強化し木を撃つ。

 ズガン!

 矢は木を貫通し、奥の木に深々と突き刺さる。岩にも突き刺せるが、抜くのが大変なのでやらない。当のミコトは開いた口がふさがらない様子だ。

「えええっ!? 貫通した!? 弓矢ってあんな威力になるもなの!?」

「ミコトの場合、弓にしか強化がかかっていないんだ。矢も強化すれば折れにくくなるし、何より威力が上がる。弓の強化はしっかり出来てるし技術も問題ない。あとは手元を離れても強化を維持できるようにするだけだ」

「な、なるほど…」
「それにはこれ」

 俺は足元に落ちている石を拾って木に投げつける。すると衝突音と共に木がゆらゆらと揺れる。

「いちいち矢を放つのはこの練習では効率が悪い。ひたすら落ちてる石を拾って、強化魔法をかけて、ひたすら投げる練習だ」

「わかったわ! あの木を揺らせるようになれればいいのね!」

 早速石を拾い始めるミコト。恐らく出来るようになるまで、そんなに時間はかからないだろう。アッシュスコーピオンを倒すには、ミコトがポイントとなるはずだ。覚えてもらう事は多い。

「で、次にオルガナ」

「はぃ!」

「火魔法をあそこの岩に撃ってみてくれ」

 そう言われ、オルガナは魔法発動の準備に入る。
 同時に俺は発動までの時間を心の中でカウントする。

 1、2、3――――

「――火球魔法イグスフィア!」

 ボン! 火の球が発射され岩に当たって真っ黒になった。俺は岩に近寄りどの程度の衝撃があったのかを確かめる。どうやら黒く焦げただけで、熱焼ダメ―ジはあるようだが、物理ダメージは殆ど無い。

 黒王竜ティアマットの炎とはえらい違いだなと、比べる対象を間違えつつも、この火球魔法イグスフィアの改善点を探る。

 まずは発動まで5秒は遅すぎる。それに出力を上げて熱焼ダメ―ジを上げるか、別の魔法を覚えてもらうか悩むところだ。そもそも森で火魔法ってのはどうなんだ?

「うーん…あれぐらいの威力なら、森で放ってもさして延焼はしなさそうだな。後は発動速度を上げて、連射も…」

 俺がブツブツ言っていると心配そうにオルガナがこっちを見ている。

「あ、あのぉ…ジン君?」

「ああ、すまない少し考えてた。まず問題点だが、発動までの時間がかかり過ぎだ。それに物理ダメージが無いから、相手を以外のダメージが無い。最後に火球自体の速度も速いとは言えないから、躱される可能性も考えなければならない」

「ううっ」

「だけど、逆に威力がそんなに無い分相手に当てさえすれば、森で使っても延焼の心配をしなくていいという強みもある。つまり…」

 俺は右手に風魔法を発動し、ほぼノータイムで風刃を4発放つと、岩に4本の斬痕が残る。

「今のは風魔法だから見えなかったと思うが、オルガナには今くらいの発動時間を目標に火球を4発、発動出来るようになってもらう」

「ほえぇぇぇ。一瞬だったよ?」

 奇妙な感嘆の声をあげながら驚くオルガナに続ける。

「因みにオルガナ」
「ほぇ?」
「火魔法のダメージには燃焼ダメージと熱ダメージ、当たった時の衝撃ダメージの3つがある。この3つを合わせたダメージの火魔法を極めるなら、今後最低でもこれくらいは目指して欲しい」

 俺は少しその場を離れ、黒王竜ティアマットに何度も見せられた挙句、まともに食らったブレスをイメージして、空に向かって火魔法を発動する。

 ブゥゥゥゥン――― ブワッ!

「―――竜の炎閃フレアブラス!」

 凄まじい炎柱が上空に伸び、辺りに熱をばら撒いた。

「うわっ! なんだ!」
「あつっ!」
「きゃっ!」

 レオとミコトが何事かとこっちを見ると同時に、空に舞い上がる炎柱を見上げる。オルガナはその場にへたり込んでしまった。そんなオルガナに近づいて手を差し伸べる。

「同じ魔法術師ソーサラーでもこんなに違うんだな…」
「あんなん食らったら魔物もひとたまりも無いわね」

「今のが俺が知る最も強い火だ。本物はこれの比じゃ無いけど、俺もまだまだ未熟ってのもあって魔力消費が凄いから連発は出来ない。だが習得すればこの辺りの魔物や魔獣は一瞬で灰に出来る。森で使っちゃ駄目だけどな」

「ほ、ほんもの? …って、出来る訳ないよっ! 一周回って怖いよジン君!」

 一周回ったら何も変わらないのではと思いつつ、手を取り立ち上がるオルガナ。

「魔法発動のスピードを上げるには、ひたすらイメージを速く構築する事。さっきの風魔法の発動速度をイメージの助けにして、目標は0,5秒、今の10倍の速さだ」


 こうして各々の訓練が始まった。俺は火魔法で失った魔力を回復する為、瞑想に入る。レオの気合とミコトの投げる石が木に当たる音だけが、周囲に響き渡る。

 日の高い内はひたすら与えられた課題をこなし、夜は寝るまでずっと瞑想。レオには剣で岩を軽々と切り裂くイメージを、ミコトには矢が木を貫通するイメージを、オルガナには火球が一瞬で発動するイメージをひたすらさせる。慣れない内は完全に苦行だろう。

 冒険者は昼間の活動で失った体力と魔力を夜に癒す。野営の場合は魔物の夜襲には気を付けねばならないが、日が落ちてからもこのような鍛錬は出来る。昼間は実技訓練、夜はイメージ訓練と言ったところか。


◇ ◇ ◇ ◇


 訓練開始3日目。レオは早くも訓練の効果を実感していた。

 一昨日に比べ、自身が刻んだ斬痕が明らかに深くなってきている。これまで剣の訓練と言えば、ひたすら剣を振る事しかしてこなかったし、強くなるには実践を積むしか無いと思っていた。

 それも間違いでは無いのだろうが、ただ漠然と剣を振るのと、目標を定めて剣を振るのとでは、明らかに効果に差がある。レオは自身の成長が嬉しくなっていた。

「はぁっ!」

 ギャリィィン!

「も、もう少しだ! っはぁはぁ…」

「いい感じで振れてるじゃないか。今日中には行けそうだな」

「ジンっ! ああ、こんなに短期間に成長を感じた事は無いよ!」

「それは何よりだ。ところでレオ。聞きたいことがあるんだが」

「なんだ?」

「君らのパーティーには盾役、もしくは治癒術師ヒーラーはいないのか?」

「あ、ああ…実は盾術士スクードのディケンズ、俺らはケンって呼んでるんだけど、ケンのヤツこないだ他の冒険者に俺らの事を馬鹿にされて喧嘩してさ。それで怪我しちまって、今はシスで休んでるんだ」

「なるほど。今の君らが明らかにパーティーとしてバランスが悪いのは、そのディケンズ君がいないからなんだな」

「ははは…ジンにはそういう事も分かるんだな。でも短気で喧嘩っ早いけど、悪い奴じゃないんだ。あいつの治療費と生活費もパーティーとして稼がなきゃなんないから、手っ取り早く稼ごうと思ってこの森に入ったって訳だ」

「仲間を愚弄されて怒るのは仕方ない。別に俺は悪い印象は持たないよ。アッシュスコーピオンもその彼がいれば、もう少し楽になったのは間違いないけどな」

「やっぱりそうだよなぁ。でもいないヤツはアテに出来ない! 俺達でやってやるさ!」

「ああ」

 短気で喧嘩っ早くて仲間思いか。これは俺がレオ達と居たら、絶対絡まれるヤツだな。仮にレオ達と束の間行動する事になっても、あまり関わらないでおこうかな…

 次に俺はミコトの状況を見てみる。さっきチラっと見てみたが、もう石ころで木を揺らすくらいは出来ていた。だか彼女自身が満足していないようで、まだ一心不乱に石を投げている様だった。

「ミコト!」

 俺に呼ばれてミコトは動きを止める。

「ジン! あとちょっとで出来そうなの。見ててよね!」

 ズン! と石が木に当たり、木がゆらゆらと揺れる。

「どう!? どう!?」

「いい感じだ」

 見たかと言わんばかりにVサインを俺に向ける。だがその手は傷だらけで血が滲んで痛々しい。石に強化を込める余り、手の強化が及ばなくなって来ていたのだろう。

 手の強化もしっかりしないとな、と言って俺はミコトの手を取り、左腕に巻いていたストールを外してミコトの手に巻いてやる。

「あっ…」

「これは治癒魔法ヒールの魔法陣が組み込まれたストールなんだ。少し巻いておけばこれくらいの傷ならあっという間に治るよ」

「そんな貴重な魔道具いいの?」

「構わない。旅に出る前にお守りにと貰ったんだ。こういう時こそ使うべきだろう。休憩だと思って治るまでジッとしておいてくれ」

 洗ってはいるが、実は腰に巻いたやつだとは言えない。

「わかった。ありがと」

「治ったらもう石はいい。次は弓を使っていこう。弓の後もミコトには教える事がある。優しくないからな、覚悟しておいてくれ」

「やってやろうじゃない!」
(優しくないって、本気で言ってるのかなぁ…)

 オルガナも続いて見てみるが、かなり集中しているようだ。今日を入れてあと3日で10倍速く魔法を発動させるよう指示したから、実はオルガナが一番大変なのだ。徐々に早くなっているように見えるが、まだまだ遅い。彼女がどこまでやれるようになるかで、アッシュスコーピオン戦でのレオとミコトの役割が変わってくる。それを見極めるのも俺の仕事の内だろう。

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