戦国武将異世界転生冒険記

詩雪

文字の大きさ
57 / 200
第三章 帝国西部・刀編

第54話 シス村

しおりを挟む
 露天風呂拠点から2日の旅路、俺はレオ達3人と共に、彼らの故郷であるシス村に向かっていた。目的地であるドッキアへの道中に村があったので、立ち寄っても構わないというと彼らは喜んだ。

「そういえばドッキアに何しに行くんだ? やっぱダンジョン?」

「それもあるけど、一番はウォルター工房だよ」

 グレイ山脈の麓にある鉱山の街ドッキアは、その名の通りグレイ山脈の一角を構成する数多くの鉱山を背にし、良質な鉱物を産出する街としてその起源を有している。

 良質な鉱物を目当てに、一攫千金を狙う鉱山労働者、武具職人や宝石職人が多数集まるエネルギッシュな街だという。ドッキア産の武具は信頼性が高く、帝都で売られている武具の中でも1桁も2桁も値段が違っていた。

 帝都で黒王竜ティアマットの鱗を手に入れた俺は、アルバニア騎士団のベルモッド中隊長に勧められた武具店に、この素材を持ち込んで武器として加工できるかどうかを聞いてみたところ、『帝国で竜の鱗を加工できる技術を持つのはドッキアの職人だけだろう』と言われていたのだ。その場で店主が知る工房を教えてもらい、その店がウォルター工房という訳だ。

「ウォルター工房かぁ…」

 レオがウォルター工房と聞き、若干苦い顔をした。知っているのかと聞くと知っているというが、何となく歯切れが悪い。

「村にはそのドッキア冒険者ギルドの支部があるんだけどさ、そのおかげでドッキアの情報は結構流れてくるんだよ。それで…」

「そのウォルター工房は冒険者憧れの工房なんだけど、工房主が地人ドワーフで、武具の作り置きはしてないらしいわ。全部お客に合わせて作ってくれるらしいんだけど、すっごい値段を吹っかけてくるってウワサなのよ!」

 レオに代わってミコトが端的に教えてくれる。

「そういう事だ」

「なるほどな。技術に見合う値段かもしれないし、そうでない値段かもしれない。ウォルター工房の噂が独り歩きして、腕の真偽が分からないといったところか」

「所詮噂はウワサよ。ジン君は実際に行って確かめるんでしょ?」

「分かってるじゃないか、オルガナ」

 そう、自分の目で確かめるのが一番だ。その地人ドワーフというのにも会った事が無い。帝都西部には多く住んでいると聞いたが、それもそのはず、帝都西部に隣接するミトレス連邦は、地人ドワーフを含めた亜人達の国なのだから。

 おそらく、レオ達とは帝国内までの旅となるだろう。

「さぁそれはともかくだジン! シスに着いたぜ!」

 遠目から見てもスルトとは違い、かなり大きな村のようだ。だが村の守りはかなり質素。村の柵もあって無いようなもので、やはり聖地であるスルトとは警備にかけられる人材も少ないようだ。

 シスに着いた俺達は、それぞれが次は長旅になるという親兄弟への報告や準備の為に、今日は解散となった。


◇ ◇ ◇ ◇


 シスの宿を取り、ドッキア冒険者ギルドのシス支部に顔を出していた。そこは食堂が併設されており、雑多な雰囲気が漂う。帝都の立派なギルドもいいが、こういうのも嫌いじゃない。俺が訪れた時間帯は日も落ちかけていた事から、食事客や依頼報告の冒険者で中はごった返していた。

 俺が扉を開けると、視線がこちらへ集まる。気にせずにカウンターに座り、奥にいる店員に酒と肉入りのスープを頼むと、豆と温めた果実酒が同時に出てくる。メインは少し待てとの事だったので、酒を飲みながら待つ事にした。

「おいガキ。てめぇ、見ねぇ顔だな」

(だからなんだ。無礼な輩は無視するに限る)

 ぷはぁ~! 酒がうまい! この豆の茹で加減と塩加減も悪くない。ここまで来て、だいぶ寒くなっていたからな。温めた果実酒が身に染みわたるようだ。

 俺がうまうまと酒と豆を堪能していると後ろから怒声が聞こえ、横のカウンターにドンッと拳が振り下ろされた。

「何無視してんだこらぁ!」

「はい?」

 いや、あるとは思ったが…まさか本当に絡んでくるとは思わなかった。せめてメインの肉スープを食べてからにして欲しい。

「てめぇ、いい度胸してんじゃねぇか…そんなに酒飲みてぇなら飲ませてやるよ」

 そう言うと、絡んできた男は俺の頭の上で飲んでいた杯を傾け、ゆっくりと酒を浴びせてニヤニヤと笑う。

「おいおいジョゼフ! 飲ませすぎだろっ! ぎゃはははは!」

「こないだのガキみたいにしつけ過ぎんじゃねぇぞぉ! ひゃはははは!」

「はっ! 挨拶も知らねぇガキに世間を教えてやるのは俺様の仕事だからなぁ!」

「坊やぁ~、お姉さんが治癒魔法ヒールかけてあげよっか~? あ、治癒魔法ヒールじゃお洋服乾かないんだった! キャハハハッ!」

 下卑た笑い声が店内に響き渡る。こうやって新人いびりを普段からしているんだなぁ…なんだが怒りを通り越して哀れに思えてくる。

 こんな輩を放っておく村なのかここは。俺は後ろにいた従業員にこっそり聞いてみる。

(すみません、この方々はいつもこのような?)

(あ、ああ…最近この村に来た方やつらで…下手に腕が立つもんだからこの村では貴重な戦力でな。村を去るまで今のところ黙認してるんだ。すまんな坊主…)

 正気かこのギルド。

(そうでしたか。なら穏便に済ませる事にしましょう)

 どうやら他の従業員や客も同じようで、気まずそうにしている者や、同様にニヤニヤしながら事の成り行きを見守っている者ばかりだ。

「なーにーをコソコソやってんだぁ!?」

「挨拶もせず、申し訳ありませんでした。ジョゼフさん」

 結構なスピードで土下座をする。ここでこの輩をどうにかすれば、従業員曰くこの村の防衛力が下がる。それはレオ達の故郷にとっては今の迷惑行為以上に損失になる可能性もあるだろう。

 ここは耐えて気を良くさせておき、穏便に済ませるのがいい。

「コイツ土下座しやがったぞ! おんもしれぇ!」

「かわいいじゃな~い、ジェゼフ~、どうすんのぉ?」

「こんな根性無し見た事ねぇ! ガキはウチ帰ってママのオッパイでも吸ってな。ぎゃはははは!」

 ジョゼフは土下座するジンの頭を踏みつけながら、得意げにしている。

「こんなのが冒険者になっても何の役にも立たねぇ。酒が不味くなる。二度とツラ見せんじゃねぇ。失せろカス!」

 バキッ!

 ジェゼフに顔面を蹴られ、壁に叩きつけられる。

 ただギルドに立ち寄ったついでに、食事でもしようとしていただけなのにこの仕打ち…酷過ぎる…

 その時、このギルド兼食堂のドアを勢いよく開けたのがレオ、ミコト、オルガナの3人だった。


◇ ◇ ◇ ◇


「――火球魔法イグスフィア!」

 オルガナの放った4発の火球は全てアッシュスコーピオンに命中、奇怪なこえを上げながら、苦しんでいる。

『キキキキキキキ!』

「効いてるぞ! うぉぉぉぉ!」

 ガキャン!

 レオの放つ攻撃もちゃんとダメージが通っている。このままの攻撃ペースを維持出来れば倒せるかもしれないが、当初の予定より時間が掛かりつつある。

 弱点がなかなか見つからない中、次第にミコトに焦りが見え始めていた。

(弱点はどこなの!? レオもだんだん余裕がなくなってきてる! 私の矢も後3本、無駄打ちは出来ない…もう少しなのに!)

 残り少ない矢と戦況の悪化がミコトに焦りを生じさせ、レオへのサポートを一瞬遅らせる。これまでアッシュスコーピオンの攻撃を見事に回避し、受け止めていたレオはとうとう敵の攻撃を食らってしまった。

「ぐあっ!」

「レオ!!」
「レオ君!」

(いけない! 毒攻を食らってしまった! もうダメ―――)

「ミコト! オルガナ! まだ大丈夫だ! これは遅効性の毒だろう! 2人共落ち着いてサポートと弱点探しを頼む! それとオルガナ! 少し距離を取ってくれ、戦い方を変える!」

 するとレオは毒攻を貰ったにも関わらず、さっきとは違う動きに切り替える。敵の正面に立って攻撃を一身に受けるのではなく、側面の位置をキープし、これまでとは違う個所に攻撃し始めた。

 これはオルガナを敵の攻撃に晒す可能性を高める、ある種の賭けだった。

「レオ、ホントに!? ―――!?」

(今一瞬アッシュスコーピオンが尻込みしたような…どこかを庇っている?)

 ミコトは狙いを定め、庇っているように見える箇所に矢を撃ちこんでいく。

 シュン シュン シュン!

『キキキキキキキッ!』

(見つけたっ!!)

「レオ離れて! オルガナ牽制!」

「了解! ―――火球魔法イグスフィア!」

「レオ! そいつの弱点は尾の付け根よ! 矢が刺さってる部分を思いっきり斬って!」

 ミコトの声と共に、オルガナの火球2発が敵に命中する。距離を取った分、4発全てを当てる事は出来なかった。

「十分だオルガナ! 最後は任せろ! おぁぁぁぁぁ!」


 ズバンッ!


『ギキキキッ!』

 オルガナの火球で脆くなったアッシュスコーピオンの外殻尾の付け根に、レオの斬撃が深々と入る。斬撃と共に敵の動きがぎこちなくなり、先程までとは打って変わって動きが遅くなる。

『キキキ…キッ……』

 断末魔と共にアッシュスコーピオンは自重を支えられなくなり、地面に崩れた落ちた。

「見事だ3人共!」

 やり遂げた3人を見届け、祝いの言葉もそこそこにジンは即座にレオの治療に入る。患部の毒を吸い出し、毒消しを塗って布できつく縛り上げる。毒消しを溶かした水を飲ませ、レオを横に寝かせた。

 その手際の良さに、ミコトとオルガナは心配そうに側で見届けるしか出来ずにいた。

「レオ、俺は遅効性だなんて言ってないぞ」

「し、死ぬかと思ったわ…でも、これで連れてってくれるよな?」

「二言は無い。レオの覚悟は見せてもらった。見事な止めだった。ミコト、弓の正確性も威力もヤツには十分だった。よく重圧に負けず冷静に弱点を見抜いたな。オルガナ、この短期間でよくあそこまで出来るようになった。実は俺でも1週間であれだけの成長は難しいんだ」

「うん…うんっ…ぐすっ…」

「ありがとう、ジンくん…」

「レオ、ミコト、オルガナ。短い間かもしれないが、これからよろしく頼む」

 頭を下げ『よろしく』と言ったジンに、三人は激闘を制した喜びに満ち、これからパーティーの一員となる仲間に向かい返事をした。


 ――――こちらこそ よろしくっ!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」  王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。  パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。  アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。 「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」  目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?    ※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。 『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

処理中です...