戦国武将異世界転生冒険記

詩雪

文字の大きさ
63 / 200
第三章 帝国西部・刀編

第60話 石の正体

しおりを挟む
「やったー! おっ父! 久々の依頼だね!」

「久々は余計だ! それで、刀身以外の事も重要だろう。聞かせてくれ」

 その後、俺が知りうる限りの刀の各部名称やこしらえについて詳しく説明する。

「一体何なんだ…この業界で長年やってるが初めて聞く事ばかりだ。ここまで洗練された武器が世に出回っていないなんざ考えられねぇ。ドルムンドの古い文献にはもしかしたら載ってるかもしれないが、廃れる理由も見当たらねぇ。ジン、野暮な事だが後学の為に聞いておきてぇ、刀を一体どこで知ったんだ?」

 当然の疑問だろう。まさか前世の記憶とは言えないし、ましてや天啓てんけいですとも言えない。それを言うと日本ひのもとの先達の功績を奪う事になる。なので、答えはあらかじめ用意してある。

「結論から申し上げますと、東大陸の極東の島国で細々と作られていると聞きました。私はスルト村の出身です」

「聖地の出だったのか!? なるほどな…なら世界各地から来る巡礼者に、そこの出身者がいてもおかしくねぇ」

「ご明察です。その巡礼者と仲良くなり、色々教えて頂きました。自分で言うのも何ですが、無垢な子供のなせる業かと」

「お前さんのどこが無垢なんだっての!…ったく。まぁ確かに東大陸東部に関しての情報は交易が無い分、ほとんど無いに等しい。しかもあっちの方は地人ドワーフが住むには暑すぎて向かねぇ土地だしな」

 虚実半々と言ったところか。もちろんそんな巡礼者に会った事は無い。だが俺は近いものがあるのではと思っている。根拠は帝都の酒店で買った『清酒』と言う酒。原材料は東大陸東部でしか採れない物を使っていて、これが前世で飲んだ事のある白酒によく似ていた。巡礼者の中に着物に近い召物を着ていた人もいたので、もしかすると前世の日本ひのもとに近い文化があるのかもしれない。

「まぁそれなら納得だ。存在する武器だったってのはちぃと残念だが、俺が地人ドワーフのプライドに掛けて既作を全て超えてやる! 逆に腕が鳴るってもんだ! それで、刀以外のこしらえなんかはどうするんだ?」

「はい。刀と同じく、竜の鱗を使ってさやを作って頂きたい。武器相応の収まる場所が無ければ、武器に対して失礼です。あと、刀のつばの形を籠目紋かごめもん(六芒星、ヘキサグラム)にして頂きたいのです」

「ほう、お前さん属性魔法も使うのか」

「さすがです。私は武器と属性魔法の同時行使を多用します。予め籠目紋かごめもんを備えておけば、武器への魔力干渉がやすくなると思われます」

「よく考えてるねぇ。普段のお客さんと全然違うよ」

「これが本物って奴だカミラ。金だけの奴らと、夢見がちな奴らが大体だが、素材を持ち込んでくる奴は自分に合った武器を本気で探してやがる。強い弱いの話じゃねぇ。たとえその考えアイデアが理外だろうが、そいつに力が無かろうが、そういう奴は必ず無二の武具に巡り合う」

「わかるよ、おっ父」

「話が逸れたな。分かった。つばの素材はこっちで良さげな物を選んでもいいか?」

「もちろんです。私の細かな要望はそれだけです。あと―――」

 俺はカミラさんの方を見て頭を下げた。

「鞘やつかと言った拵全般の造形デザインは、カミラさんにお願いしたいのです」

 ブワッ

 フムフムと一緒に聞いていたカミラさんだったが、俺の一言を聞いた瞬間、魔力のみなぎりを感じた。人とは違う、形容しがたい力強い魔力だ。彼女の身体は震え、その瞳は形容では無く褐色かっしょくの魔力が揺らめいている。

「え、ええんですか? あたしに任せてもろて」

 何やら雰囲気と口調が一変した?
 カミラさんの様子に驚く俺に、グリンデルさんが説明してくれる。

「ああ、お前さん亜人と関わるのは初めてか?」

「お察しの通りです」

「なら知らないのも無理ねぇな。別にカミラが特別って訳じゃない。お前さんら人間が亜人と呼んでる俺ら地人ドワーフ獣人ベスティアは見た目は人間と殆ど変わらねぇ。だが先天的に人間より優れた何かしらの力を持っている。細けぇ事は省くが、亜人はすべからく感情が高ぶるとそれがに現れんだ。俺みてぇに歳食っちまうとそれも制御出来るようになるが、カミラは眼と、ついでに口調が素に戻っちまう。ガキの証拠さ」

「そのような特徴が…教えて頂きありがとうございます。では大丈夫という事で、カミラさんよろしくお願いします」

「ありがとうジン君! こんな素材扱わせてもらえるなんて細工師冥利に尽きるわ! 任してください!」

 少しして、瞳が燃え上っているように見えたカミラさんも落ち着きを取り戻し、俺は念のためにともう一枚黒王竜の鱗を取り出し、ついでに金袋も取り出す。

 そこである事を思い出し、鱗ともう一つの素材を取り出した。

「ん? まだ鱗持ってたのか。だが一枚で刀と鞘を作るのには十分だぞ?」

「そうですか。しかし私が持っていても懐に納まっているだけです。刀を打って頂いている間は、カミラさんが素材に触れなくなるのもどうかと思いますので、お預けいたします。何なら自由に使って頂いてもいいですよ」

「それは助かるよ! じゃあ、遠慮なく預かるね! 燃えてきたよぉー!」

 そう言いながら鱗に頬ずりをしているカミラさんを見て、俺は笑ってしまった。

「気遣い感謝する。まぁカミラはこんなだが、腕はなかなかだ。任せてやってくれ。言っとくが親馬鹿じゃねぇからな。職人としての目利きだ!」

「わ、わかっております。私もそのように感じたのでお任せしたのです。あとグリンデルさん。割と大事な事をお願いし忘れておりました」

「おいおい、頼むぜ。この期に及んで今度は何だ」

「えーっ、ジン君! 急いでるとかは無しだよ! おっ父もあたしも完璧な仕事にしたいんだから!」

「ち、違いますよ! 期限を設けるなんて身の程をわきまえぬ事は絶対に致しません。これも刀身に使えますか?」

 ゴトッ――― 

 テーブルの上に赤子の拳大こぶしだいの石を置く。

「なんでぇこの石。青黒い…これも見ない石だな。鱗といい木刀といい、お前さんは珍しいモン持ち過ぎだろ」

 石を手に取り、グリンデルさんはマジマジと見つめながら頭をかしげる。すぐにこれが何なのか聞いて来ない所が職人たる所以だろう。後から聞いた事だが、自分の知らない素材を客に持ち込まれると、自然に負けん気が出てしまうらしい。

 灯にかざしたり拡大鏡というもので見たりし、暫く見ている内に、奥から小さめの槌を持ってきて俺に目くばせする。俺が頷くと、石をキンキンと軽く叩き始めた。

「この跳ねっ返りと音…とんでもねぇ密度だ。しかもこの薄く赤く光ってる部分、魔力核なんだろうが…こんな色見た事ねぇな。S級の魔物から取れるのか? ―――だぁっ! くそっ、降参だ! なんなんだこの化け物みてぇな石は!?」

「この石は俺が村から出る際に母上から頂いたものです。俺が生まれた際に村の皆から贈られたと仰っていました。俺も最初はただの綺麗な石程度にしか思っていなかったのですが、収納魔法スクエアガーデンを開発された人曰く―――」

「お前さんパルテール・クシュナーとも知り合いなのか。はっ! もう驚かねぇよ!」


「この石はおそらく星刻石です」


 ガタタッ


 2人が同時に立ち上がる。

「ば、馬鹿野郎! ありえねぇっ!! 星刻石っつったら―――ブクブクブク」
「おっとーっ!」
「グリンデルさーん!」

 グリンデルさんはその場で泡を吹いて倒れてしまい、カミラさんも直後に顔面蒼白になり、グリンデルさんに重なって倒れてしまった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」  王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。  パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。  アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。 「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」  目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?    ※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。 『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

処理中です...