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第三章 帝国西部・刀編
第72話 ジェンキンス総合商店Ⅰ
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街中でジェンキンスさんの店を聞き、店のドアの前まで来ている。
「何と立派な…」
なんでも街の人曰く、ジェンキンスさんの店はこの街で最も多くの商品を扱う総合店らしい。入口の看板には『ジェンキンス総合商店』の煌びやかな文字。
入口はドアを開け閉めする人が居たり、入口への階段は純白で、立派な装飾が施された手摺が付いている。中は沢山の客で賑わっているようだ。
いきなり店主に会わせろと言える雰囲気の店では無い。とりあえず入る事にする。スッと扉が開き、中を見渡すととにかく広い。側にあった案内板を見ると1階が日用品と食材売り場、2階が一般向けの服飾品、3階が冒険者向けの売り場である。
迷わず階段を上がり3階へ。すると1、2階と雰囲気が全く変わり人も疎らになり、何なら案内係の方が多いくらいだった。階下から上がる俺を目にし、制服を着こなした男の係員が近づいてくる。
「いらっしゃいませ。本日はどのような物をお探しでしょうか?」
「冒険者用の服を探しています」
「承知いたしました。こちらへどうぞ」
案内されて装備売り場まで歩く。途中色々目にするが、傷薬や毒消しといった消耗品、寝袋や冒険者向けの調理用具といった野営用の小物まで揃っている。奥に行くにつれ、武器や鎧といった装備品が置かれ始める。
「こちらが冒険者様向けの防具や服の売り場となります」
ざっと見渡す。立派な具足に紛れて色々な装備品が置かれているが、どうも頼りないというか俺に向いていそうな物が無い。フルプレートアーマーとかいう鎧、誰が買うんだ? 盾術士でも付けないだろうと思いながら引き続き探す。
しかし、商品が多すぎてもう選べる気がしない。ここまでの品ぞろえを見た事が無かったというのもあるが。
ウロウロしながら商品を探していると、ふと目に付いた売り場があった。なぜかこの売り場だけ絨毯が敷かれている。いかにも高級品を置いてあるかのような雰囲気を醸し出していた。
俺がそこに行こうとすると、案内係から待ったの声がかかる。
「あの、お客様。そちらの売り場はミスリル鉱を扱った特別仕様の装備品売り場となります。少々お値が張っておる商品ばかりで、お客様をご落胆させてしまいますと、当店と致しましても本意ではございませんので…」
何と丁寧な『入らないでくれ』だろう。過去に値段を見て暴れた奴でも居たのだろうか…俺の懐事情を心配しての事だろうが、なめて貰っちゃ困る。だが、ここで腹を立てるようではならず者と変わらないので、冷静に対応させて頂く事にしよう。
「ミスリル鉱ですか。確かに私の意中ではありませんね」
「恐れ入ります」
俺は事前にグリンデルさんとカミラさんに聞いていた、俺にお勧めの素材を使った装備を聞いていたので、有無を聞いてみる事にする。
「ではアヴィオール鉱、もしくはエルナト鉱糸で編まれた装備はありますか?」
「…えっ!? しょ、少々お待ち下さい!」
そう言って裏に引っ込んでいく案内係。暫くすると、ようやく目的の人が顔を出した。
「お客様大変お待たせしました。ここからは先程の案内係に代わりまして…おや? 貴方は…」
「こんにちはジェンキンスさん。ウォルター工房でお会いしたジンです」
「ああ! これはこれは! 来て頂けたのですね! 先程は案内の者が失礼いたしました。日頃からお客様の懐を読み違えるなと教育しているのですが、流石にジン様は私でも見抜けませんよ」
「あまり虐めないで下さい。すみません、みすぼらしい恰好で」
「はっはっは! そのような事はありません、普通ですよ! ジン様は商人としてもやって行けそうですなぁ。さて、ご要望の品はこちらの階にはございません。この上の階になりますので、どうぞこちらへ」
4階に案内された俺はこれまた豪華な内装に驚く。ジェンキンスさんが言うにはここは特別な客しか通さない場所らしく、広い空間にテーブルと椅子が3組しか置かれていない。ここは客が自分で選ぶのではなく、店員が客の要望を聞いて持ってくるやり方のようだ。
出された茶を飲みながら待っていると、ジェンキンスさんが見本を持って対座する。
「しかし、アヴィオール鉱にエルナト鉱とは。ウォルター工房に依頼を通す方はやはり違いますね」
「…断られたとは思わないのですか?」
「はい、あちらをご覧ください」
ジェンキンスさんが指した窓を見ると、遠くの一番大きな煙突から煙が吐き出されている。恐らくあれはウォルター工房の大煙突だろう。
「なるほど、一目瞭然ですね」
「ええ、あの煙突から煙が見えたのは2年以上ぶりです。普段は小さな炉でお仕事をなされているようですから、あの街一番の煙突から煙が出ると、分かる人には分かるのです。ウォルター工房が本気で武具を打っていると」
「………」
「タイミング的にもジン様がいらっしゃった時期と一致しますし、何よりグリンデルさんならジン様のご依頼をお受けになると思っていましたから」
「有り難い事ですが、ジェンキンスさんのご商売の機会を奪ってしまったかもと、今日はその件でもお伺いしたのです」
「はっはっは! お若いのにお気を回しすぎですよ! 確かにあの騒ぎが止めにはなりましたが、ここ数年ずっと断られていましたからね。ほとんど忘れられない為に顔を出していたに過ぎませんから」
「私も同じ冒険者としてお恥ずかしい限りです。あのような輩のお陰で、優れた装備が世に出る機会が減るのですから」
「なにもジン様が恥じる事は無いでしょう。当店ではあれ以来、装備を購入されるお客様には、注意事項を確認したかの誓約書をご記入頂くように致しました。生産者がいてこその商店ですからね。私共も商人として改めてそういった部分は責任を持たなければならないと痛感致しました」
「さすが、行動に移されるのが早いですね。しかし大変な事でしょう」
「確かにそういった細かな事を嫌がる冒険者様も多いでしょう。しかし」
「私が生産者ならジェンキンスさんの店に卸しますね」
「ふふっ、お察しの通りです。この店の商品は他の店とは一味違うぞ、とお客様にお気づき頂ければ差別化につながり、最後は儲けに繋がります」
「はははっ、お見事な商魂です。私の気も軽くなるというものです」
「ジン様のようなお客様ばかりだと私も商売のし甲斐と言うものがあるのですがねぇ。店はお客様を選べませんから。さぁ、前置きが長くなりました。アヴィオール鉱糸、エルナト鉱糸を含む5大鉱糸すべてを取り揃えているのはこの街では当店のみです。そういう意味でも、僭越ながら当店にお尋ね頂いたジン様は正解と言わざるを得ません」
そう言ってジェンキンスさんは肌触りの良い5枚の生地をテーブルに並べてくれる。
「何と立派な…」
なんでも街の人曰く、ジェンキンスさんの店はこの街で最も多くの商品を扱う総合店らしい。入口の看板には『ジェンキンス総合商店』の煌びやかな文字。
入口はドアを開け閉めする人が居たり、入口への階段は純白で、立派な装飾が施された手摺が付いている。中は沢山の客で賑わっているようだ。
いきなり店主に会わせろと言える雰囲気の店では無い。とりあえず入る事にする。スッと扉が開き、中を見渡すととにかく広い。側にあった案内板を見ると1階が日用品と食材売り場、2階が一般向けの服飾品、3階が冒険者向けの売り場である。
迷わず階段を上がり3階へ。すると1、2階と雰囲気が全く変わり人も疎らになり、何なら案内係の方が多いくらいだった。階下から上がる俺を目にし、制服を着こなした男の係員が近づいてくる。
「いらっしゃいませ。本日はどのような物をお探しでしょうか?」
「冒険者用の服を探しています」
「承知いたしました。こちらへどうぞ」
案内されて装備売り場まで歩く。途中色々目にするが、傷薬や毒消しといった消耗品、寝袋や冒険者向けの調理用具といった野営用の小物まで揃っている。奥に行くにつれ、武器や鎧といった装備品が置かれ始める。
「こちらが冒険者様向けの防具や服の売り場となります」
ざっと見渡す。立派な具足に紛れて色々な装備品が置かれているが、どうも頼りないというか俺に向いていそうな物が無い。フルプレートアーマーとかいう鎧、誰が買うんだ? 盾術士でも付けないだろうと思いながら引き続き探す。
しかし、商品が多すぎてもう選べる気がしない。ここまでの品ぞろえを見た事が無かったというのもあるが。
ウロウロしながら商品を探していると、ふと目に付いた売り場があった。なぜかこの売り場だけ絨毯が敷かれている。いかにも高級品を置いてあるかのような雰囲気を醸し出していた。
俺がそこに行こうとすると、案内係から待ったの声がかかる。
「あの、お客様。そちらの売り場はミスリル鉱を扱った特別仕様の装備品売り場となります。少々お値が張っておる商品ばかりで、お客様をご落胆させてしまいますと、当店と致しましても本意ではございませんので…」
何と丁寧な『入らないでくれ』だろう。過去に値段を見て暴れた奴でも居たのだろうか…俺の懐事情を心配しての事だろうが、なめて貰っちゃ困る。だが、ここで腹を立てるようではならず者と変わらないので、冷静に対応させて頂く事にしよう。
「ミスリル鉱ですか。確かに私の意中ではありませんね」
「恐れ入ります」
俺は事前にグリンデルさんとカミラさんに聞いていた、俺にお勧めの素材を使った装備を聞いていたので、有無を聞いてみる事にする。
「ではアヴィオール鉱、もしくはエルナト鉱糸で編まれた装備はありますか?」
「…えっ!? しょ、少々お待ち下さい!」
そう言って裏に引っ込んでいく案内係。暫くすると、ようやく目的の人が顔を出した。
「お客様大変お待たせしました。ここからは先程の案内係に代わりまして…おや? 貴方は…」
「こんにちはジェンキンスさん。ウォルター工房でお会いしたジンです」
「ああ! これはこれは! 来て頂けたのですね! 先程は案内の者が失礼いたしました。日頃からお客様の懐を読み違えるなと教育しているのですが、流石にジン様は私でも見抜けませんよ」
「あまり虐めないで下さい。すみません、みすぼらしい恰好で」
「はっはっは! そのような事はありません、普通ですよ! ジン様は商人としてもやって行けそうですなぁ。さて、ご要望の品はこちらの階にはございません。この上の階になりますので、どうぞこちらへ」
4階に案内された俺はこれまた豪華な内装に驚く。ジェンキンスさんが言うにはここは特別な客しか通さない場所らしく、広い空間にテーブルと椅子が3組しか置かれていない。ここは客が自分で選ぶのではなく、店員が客の要望を聞いて持ってくるやり方のようだ。
出された茶を飲みながら待っていると、ジェンキンスさんが見本を持って対座する。
「しかし、アヴィオール鉱にエルナト鉱とは。ウォルター工房に依頼を通す方はやはり違いますね」
「…断られたとは思わないのですか?」
「はい、あちらをご覧ください」
ジェンキンスさんが指した窓を見ると、遠くの一番大きな煙突から煙が吐き出されている。恐らくあれはウォルター工房の大煙突だろう。
「なるほど、一目瞭然ですね」
「ええ、あの煙突から煙が見えたのは2年以上ぶりです。普段は小さな炉でお仕事をなされているようですから、あの街一番の煙突から煙が出ると、分かる人には分かるのです。ウォルター工房が本気で武具を打っていると」
「………」
「タイミング的にもジン様がいらっしゃった時期と一致しますし、何よりグリンデルさんならジン様のご依頼をお受けになると思っていましたから」
「有り難い事ですが、ジェンキンスさんのご商売の機会を奪ってしまったかもと、今日はその件でもお伺いしたのです」
「はっはっは! お若いのにお気を回しすぎですよ! 確かにあの騒ぎが止めにはなりましたが、ここ数年ずっと断られていましたからね。ほとんど忘れられない為に顔を出していたに過ぎませんから」
「私も同じ冒険者としてお恥ずかしい限りです。あのような輩のお陰で、優れた装備が世に出る機会が減るのですから」
「なにもジン様が恥じる事は無いでしょう。当店ではあれ以来、装備を購入されるお客様には、注意事項を確認したかの誓約書をご記入頂くように致しました。生産者がいてこその商店ですからね。私共も商人として改めてそういった部分は責任を持たなければならないと痛感致しました」
「さすが、行動に移されるのが早いですね。しかし大変な事でしょう」
「確かにそういった細かな事を嫌がる冒険者様も多いでしょう。しかし」
「私が生産者ならジェンキンスさんの店に卸しますね」
「ふふっ、お察しの通りです。この店の商品は他の店とは一味違うぞ、とお客様にお気づき頂ければ差別化につながり、最後は儲けに繋がります」
「はははっ、お見事な商魂です。私の気も軽くなるというものです」
「ジン様のようなお客様ばかりだと私も商売のし甲斐と言うものがあるのですがねぇ。店はお客様を選べませんから。さぁ、前置きが長くなりました。アヴィオール鉱糸、エルナト鉱糸を含む5大鉱糸すべてを取り揃えているのはこの街では当店のみです。そういう意味でも、僭越ながら当店にお尋ね頂いたジン様は正解と言わざるを得ません」
そう言ってジェンキンスさんは肌触りの良い5枚の生地をテーブルに並べてくれる。
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