戦国武将異世界転生冒険記

詩雪

文字の大きさ
74 / 200
第三章 帝国西部・刀編

第71話 暗雲

しおりを挟む
「陛下! 緊急事態でございます!」

 帝都アルバニア、ジオルディーネ王国の獣王国ラクリ侵攻の報から1週間後、玉座にて政務をっていた皇帝ウィンザルフの元に再度驚くべきしらせが入る。

「どうした」

「サーバルカンド王国が東のエリス大公領、及び北のピレウス王国に宣戦の布告を行ったとの事です!」

「なにっ!?」

 傍にいた大臣や騎士団員も含め、玉座の間が騒然となる。

 サーバルカンド王国とはピレウス王国と、その属領であるエリス大公領に隣接する国である。ジオルディーネ王国とは南西部で国境を接しているが、両国が同盟、あるいは従属関係にある事実はこれまでになかった。

 だが、ジオルディーネ王国のミトレス連邦への侵攻と、サーバルカンド王国の今回の侵攻が無関係なはずがなかった。万が一この両国の目的が一致していたなら、戦の結果次第で帝国と同等か、もしくは帝国をも上回る版図の勢力が敵に回る事になる。

 そしてミトレス連邦が落ちれば北西部でジオルディーネ王国と国境を接する事になり、ピレウス王国、エリス大公領が落ちればグレイ山脈を挟んで南西部にサーバルカンド王国と国境を接する事になる。帝国は今なお帝国南東に位置し、ラングリッツ平原を挟んだ東大陸のリーゼリア王国とも戦争中なので、最悪、敵三国に囲まれることが想定される。

「おのれ、蛮王…やってくれるではないか。南部三公にはリーゼリアの侵攻を最大限警戒しろと伝えろ。南部ビターシャに兵を集めておけ。いつ叔父上ピレウス王から援軍要請が来るか分からん。西部ガーランドには引き続き警戒と、ラクリの報を可能な限り集めろと伝えておけ」

「御意!」

「皆の者聞け! 国力から考えても、サーバルカンドは既にジオルディーネの手に落ちたと判断し、両国併せジオルディーネと呼称、敵国と認定する! もはや戦時と心得よ!」

 ―――はっ!

 なおウィンザルフの言う南部三公とは、帝国の法から独立を認められたセト、ミレオル、イブリースの3つの公爵家が治める自治領を指す。

 ウィンザルフに特に忠誠厚い3人の公爵は、これまで互いに競い合うようにリーゼリア王国との戦に臨んでいた。万が一、エリス大公領が旧サーバルカンド王国に攻め滅ぼされた場合、この三公国は東にリーゼリア王国、西に旧サーバルカンド王国という敵国に挟まれることになる。

 ウィンザルフは南部の城塞都市ビターシャに兵を集めておき、三公国の西より敵軍が攻めてきた場合に備えようとしている。仮に攻めてきた場合、三公国に参戦はさせず、本国の兵だけで迎え撃つ算段だった。そして当面の間、三公国だけでリーゼリア王国へ対処させ、事態の急変に備えようとしている。

 後日分かる事だが、サーバルカンド王国の王都サブリナは、わずか一週間でジオルディーネ王国に陥落させられていたのだ。その余りにも早い侵攻劇は、ピレウス王国、エリス大公領に大きな後手を踏ませていた。


◇ ◇ ◇ ◇


 一方でジンが出て行った後のドッキア冒険者ギルドのギルドマスター執務室。

 ここにも信じ難い一報が入っていた。

「マスター、ガーランドギルドマスターより通信魔法トランスミヨンです」

「えーっ、今日は忙しいわねぇ。―――はいはーい、どしたのカストルちゃん?」

「(ちゃんはやめろちゃんは! そんな事より大変なことになった)」

「なになに~? もう仕事増やさないで欲しいなぁ」

「(そんな事言える状況じゃないぜ? ラクリのギルドから連絡があった。ジオルディーネとサーバルカンドの15ギルド、全てからの連絡が途絶えたらしい)」

「………」

「(最後に連絡の取れたジオルディーネの職員曰く、襲われたんだと。人間に)」

「マスター達は何してるのよ。全員そこそこの実力者でしょ?」

「(マスターは職員の安全が最優先だからな。逃がす事に専念したと考えられるが、詳細は分からん。だが冒険者がたむろしてるギルドに押し入って制圧するなんざ、並の戦力で無い事は確かだ)」

「仮に王国の手によるものなら、はっきり言って一国に喧嘩売ったようなもんよぉ? ギルドあたしたちに喧嘩売るなんていい度胸じゃない。最初そっちに冒険者流れて来るよねぇ。こっちにも回してもらって構わないわぁ」

「(感謝する。前代未聞の事態だ。西大陸ギルド本部で対応が協議されるだろう。互いに最前線として密に連絡を取ろう)」

「おっけーよぉ」

 クリスティーナは通信室を出て、執務室に戻るや椅子に深く腰掛けた。

(何が起きているのかしらねぇ…。西方の冒険者はここ含めて強い子たちが多いけど、今は無事を祈るしか無いわねぇ…)


◇ ◇ ◇ ◇


「うぎゃぁぁぁぁ!ごふっ……」
「ひぃぃぃぃっ!」

「メフィスト様。やはり力の無い奴隷や老人子供はダメですね。C級魔力核の魔力は肉体が耐え切れません」

「見りゃ分かるでしょ! ったく、こいつらで成功確率は1割程度、やっぱ冒険者が一番いいなぁ」

「はい。下級ランク程度でも十分な戦力となるでしょう。徐々に意識はに行くと思われますが、投入するタイミングさえ誤らなければ、獣人ベスティアにも通用するでしょう。サーバルカンドはたった300匹で…っと失礼、300人の奴隷でしかも一週間で王都を陥落させましたからね」

「そして勝手に消えてくれる…ぷっ、ひゃっひゃっひゃっ! 我ながら最高の兵器ですね! うひゃひゃひゃ!」

「ええ、それでは奴隷にはD級以下、冒険者や力のあるものにはC級以上の核を優先的に使いましょう」

「早く冒険者捕まえて来いよぉ! サイコー傑作を作りたいからさぁ!」


 ジオルディーネ王国国王直属魔導研究省。
 
 ジオルディーネ、サーバルカンド両王国の侵攻と冒険者ギルドへの襲撃。これら全ての元凶は悪夢ともいえる兵器の開発によって実行されていた。

 ◇

「ええい! フルカス! まだ進軍できんのかっ!」

 ジオルディーネ王国国王エンス・ハーン・ジオルディーネは、獣王国ラクリでの先遣隊敗北の報を聞いてから、フラストレーションを爆発させていた。

「申し訳ありません陛下。戻った先遣隊の報告によれば、ラクリの戦力はわずか3人だったようですが、一刻も経たず半数を失って撤退したとの事です。普通の兵では、もはや何人送った所で返り討ちに合うでしょう。戻った者達への処分として全員兵器と化す魔力核の準備と、今しばらく戦力の増強を目指すべきかと」

 そう進言するのはジオルディーネ王国軍作戦参謀であるフルカス。今回の兵器開発の報を聞いた国王の領土拡大宣言を拝命し、実際に軍を動かしている人物である。

「2万じゃ足りんと言うのか! ぐぬぬ…メフィストにはよせいと言っておけ!」

「御意」

「あーっ、イライラするのう! 亜人風情が覇王たるこの儂に逆らいおって! 全員儂のにしてやるから待っておれ! 亜人も! いけ好かぬ帝国も! 全て平らげてくれるわ!」 

 西大陸に大きな暗雲が漂おうとしている。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」  王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。  パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。  アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。 「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」  目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?    ※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。 『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

処理中です...