戦国武将異世界転生冒険記

詩雪

文字の大きさ
95 / 200
第四章 エーデルタクト編

第91話 リュディア解放戦Ⅰ

しおりを挟む
 リュディア近辺に潜伏して2日目の夜。

 「兵舎と捕虜区画が離れているのは好都合だったな。よし、つついてみるか」

 敵陣は簡素な砦を中央に、東西南北に物見櫓、北区画に兵舎、西区画に厩舎、東区画に倉庫が設置されており、南の区画に檻、すなわち捕虜が集められていた。

 塹壕ざんごうなどは掘られておらず、全体が柵で覆われている訳でも無い。攻められる事を全く想定していないようだ。

 目標は北区画の兵舎。

 火球魔法イグ・スフィアを大量に空中に浮かべて敵陣に迫る。

「あ、あれは…!? 敵襲ー! 敵襲ー! 攻撃魔法が来るぞー!」

 カンカンカンカンカン!

 真っ暗な森に、襲撃の合図の鐘が響き渡る。

 さらに慌ててもらおうか。

「―――火球魔法イグ・スフィア!」

 ドドドドドドド!

 兵舎に次々と火球魔法が着弾し、北区画は火の海となる。

《 すごーい! 燃えるー♪ 》

 燃える兵舎を目の当たりにし、マーナは居ても立っても居られない様子。

「マーナ、見に行っていいよ。その代わり、帰って来るときは後を付けられないようにな」

《 ほんとにっ!? じゃあ行ってくるよ! 》

 そう言って火に突っ込んでいくマーナと入れ替えに、猛スピードでこちらへ向かってくる魔力反応が1つ。魔人だった。

「かかったっ!」

 すぐさまきびすを返し、森に逃げ込む。今、探知魔法サーチ遠視魔法ディヴィジョンに掛からないエルナト鉱糸で編まれた外套を着ていない。未だ目視される距離ではない事を考えると、相手は探知魔法サーチ持ちで、俺の魔力をて追って来ている。

 あまり離れすぎると、警戒され戻られてしまう。

 もう少し、もう少し付いて来い!

 ◇

 ここだっ!

 すぐさま外套を羽織り、Vの字に切り返す。

 遠視魔法ディヴィジョンで視える魔人はその場で急停止しているようだ。この外套の存在を知らなければさぞ驚いている事だろう。

 立ち止まって辺りを警戒している魔人に、側面から一撃を加える。

 シュオン!

「ぐぁっ!」

 魔人の片腕が宙を舞った。

「今の一撃を腕一本で済ますとは…大した反射神経ですね」
「なっ、何なんすかお前! 消えたと思ったらどこから現れたんすか!」

 距離を取り、上腕部を押えながらジンを睨みつける。

「………」
「ぐっ、ベルドゥをやったのはお前っすね!?」
「名は聞いていませんが魔人は1人倒しました。腕はそろそろ再生しましたか?」
「バレてたっすか」

 ドンと地を蹴り、突進してきた魔人の一撃をかわす。魔人が持つ短剣に近い刺突武器は、先端が尖っており刃は無い。刺突に特化した武器だ。

「俺っち暗殺とか奇襲が好きなんすよ。一方的なやつ。ガチ戦闘とか柄じゃないんっすよねー」

 と喋りながらも魔人の攻撃の手は緩まない。この手の武器は相手のリーチが短いだけに、受け流しても反撃に転じられやすい。だが懐まで迫ってくる分、こちらのカウンターは入れやすいのだ。

 バキッ!

 ギリギリ回避しつつ、軽く腹にパンチを入れてやる。

「その武器を見ればわかりますよ。速いばっかりで攻撃が軽い」
「人の事言えないっすっよ~、何すか今のパンチ。いっしっし!」

 こちらの攻撃をこの程度と認識させ、この場に留めて戦わせる必要がある。相手のスピードは侮れない。逃げられてもう一人の魔人と合流されるのは少々厄介だ。

 一撃目で仕留められたら最高だったが過ぎた事。ならば、こいつからいろいろ情報を聞き出せないだろうか。

 遠視魔法ディヴィジョンで辺りを視るが、しばらく敵の増援は来そうにない。というか陣地から動いていないようだった。

 暗闇の中、夜桜を納刀して舶刀を抜く。極近接ならこちらの方が相性がいい。

「助けは来ないようですね。火消にお忙しいようで」
「俺っちがここにいるからな。兵糧に火が回ったら大変っす」
「ああ、燃やしておけばよかったですね」
「捕虜も飢えるっすよ?」
「それは困ります」

 会話をしながらジリジリと互いに間合いを図る。やはりベルドゥより格段に強い。

 刹那互いに間合いを詰め、激しい打ち合いに突入する。

 ギンギンギンギン! ガキン!

「―――風刃ウインドエッジ!」

 バシュン!

「うわっ!」

 身体を仰け反らせ、見えない刃をギリギリ躱される。やはり俺と同じ、相手の魔力をつつ戦うタイプのようだ。それに反射神経も並外れている。

 ならば全方位攻撃はどうだ!

「まだまだありますよ!――樹霊の縛ドリアドバインド!」

 周囲の木がビュンっと枝を伸ばし、魔人に襲い掛かる。

「木属性!? 鬱陶うっとうしいっすね! 何種類魔法使えるんすか!」

 自らを拘束しに来る枝を躱し、強化した手脚で打ち砕き続ける魔人。上下前後左右あらゆる方向から襲いくる木の猛襲を見事に捌いている。

「あと1種類です!―――地の隆起グランドジャット!」

 二つの土壁を魔人の左右に出現させ、パンッと手を合わせ挟み潰す。

 ゴシャン!

 だが手ごたえは無く、土壁の上に立つ魔人は油断なくこちらを見下ろしていた。

「あのタイミングで躱しますか」
「はぁっ、はぁっ…あんたやべーよ…ベルドゥが敵わねぇ訳っす。一体何者っすかマジで」

「お名前を伺っても?」
「カールグレーン、傭兵っす。あんたは?」

「ジン・リカルド。冒険者です」
「とんでも無いっすね。にまでなったってのに、1人の冒険者にここまで苦戦するなんて」

「……なぜ魔人に?」
「魔人とか寒いっすよ。魔物で十分。傭兵は強さこそが全てっす。弱いと何も守れないっす」

「あなたとは人として会いたかった」
「いっしっし! また来世で会うっすよ!」

 脚を強化し、全力で土壁を蹴って最後の攻撃を繰り出すカールグレーン。

「うおぉぉぉ! 風穴開けてやるっすよ!」
「受けて立つ!―――流気旋風バーストストリーム!」

 バキィィィン!

 両者渾身の一撃を繰り出し、粉々に砕かれたのは刺突剣。

 攻撃の余韻の残る姿勢で互いに交差する刹那、スッと魔人の胸に手を当てる。

「―――衝雷鼓エレ・トロン!」

 ドンッ!

「ごふっ…!」

 強力な雷撃がカールグレーンの全身を焼き焦がす。

 黒焦げになり、正座しながら天を仰ぐ目の前のは、あっさりと自らの死を受け入れた。

「ま、魔法はあと1個って言ったっす…」

「すみません。嘘です」

「あ~あ…すっかり騙されたっす。ジン・リカルド…また、来世で会う…っす……」

「さようなら、カールグレーン」

 カールグレーンは再生する事無く、橙の魔力核を残し灰となって消えていった。

 これが魔人であり魔物の最後。見苦しい最期を遂げたベルドゥとは違い、見事に死を受け入れたカールグレーンに俺は頭を下げた。

 このような魔人もいるのだな。力に善悪は関係無し…何の為に振るうかが全てだ。なら、尚更魔人を生みだした元凶は許し難い。

「気が変わった。もうひと勝負と行こう」

 もう一度リュディアに足を向けた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」  王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。  パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。  アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。 「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」  目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?    ※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。 『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

ブラック企業で心身ボロボロの社畜だった俺が少年の姿で異世界に転生!? ~鑑定スキルと無限収納を駆使して錬金術師として第二の人生を謳歌します~

楠富 つかさ
ファンタジー
 ブラック企業で働いていた小坂直人は、ある日、仕事中の過労で意識を失い、気がつくと異世界の森の中で少年の姿になっていた。しかも、【錬金術】という強力なスキルを持っており、物質を分解・合成・強化できる能力を手にしていた。  そんなナオが出会ったのは、森で冒険者として活動する巨乳の美少女・エルフィーナ(エル)。彼女は魔物討伐の依頼をこなしていたが、強敵との戦闘で深手を負ってしまう。 「やばい……これ、動けない……」  怪我人のエルを目の当たりにしたナオは、錬金術で作成していたポーションを与え彼女を助ける。 「す、すごい……ナオのおかげで助かった……!」  異世界で自由気ままに錬金術を駆使するナオと、彼に惚れた美少女冒険者エルとのスローライフ&冒険ファンタジーが今、始まる!

処理中です...