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第四・一章 ドルムンド防衛戦
第103話 ドルムンド防衛戦Ⅹ 魔人 対 軍神
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「あっはー! どいつもこいつも弱っわ! 話になんないわねぇ!」
細い四肢からは想像できない膂力をもって、縦横無尽に前線を荒らし回る魔人ニーナ。
その動きについてゆける帝国兵はおらず、繰り出される凶刃は手あたり次第に命を刈り取ってゆく。
ニーナの殺気に当てられ、帝国兵と同様に戦意を挫かれていたジオルディーネ中央軍も徐々に戦意を取り戻し、魔人に倣えと押されていた前線を戻しつつあった。
帝国中央軍の副長達は懸命に前線を立て直そうとするが、暴れまわる魔人の存在で士気が上がりきらず、苦戦を強いられ始める。
ザクッ! バシュ! ドゴン!
「ぎゃあっ!」
「がふっ!」
「ぐぼっ…」
「ほらほらほら! さっきの威勢はどこ行ったのぉ? このまま皆殺し――――」
その時、煌めく細剣の神速の一閃が戦場を、そして魔人ニーナを貫いた。
――――流穿一閃
「ぎゃん!」
吹き飛ばされた魔人ニーナは地面を転げ、仰向けに倒れながら何が起こったか分からないといた様子で、大穴の空いた腹部に手を当てる。
同時に帝国兵に歓声が上がり、前線は熱狂に包まれた。
「うぉぉぉぉぉ!」
「だ、誰だ!? 攻撃が見えなかったぞ!」
「騎士団の紋章が無い! 冒険者か!?」
そんな熱狂を他所に魔人ニーナはゆらりと立ち上がり、自身にダメージを負わせた相手に視線を合わせる。
「た、立ちやがった!」
「嘘だろおい!」
「再生してるぞっ!」
明らかな致命傷を負いつつも立ち上がった魔人に、周囲の帝国兵は戦慄。
両者、時が止まったかの如く睨み合い、先に口を開いたのは魔人だった。
「同じ事した竜人がいたんだけど…ぐちゃぐちゃに殺してやったわ。あんたはどうして欲しい?」
涙の日に受けた竜人ガリュウの不意打ちを思い出したのか、あまりの怒りにワナワナと肩を震わせ相手を睨みつけた。
「同じ攻撃を2度も受けたのですか。油断が過ぎましたね」
「ふ…ふふっ…あんた司令官の隣に居たヤツよね? 綺麗な顔しちゃって、戦場まで男を追っかけて来るお飾り淫乱女だと思ってたわ」
「貴方こそ、せっかく穴を増やして差し上げたのに塞いでしまったのですか?」
「ええ、あんたと違ってあたしは間に合ってるからね」
「あら未使用でしたか。可哀そうですが、今後も魔物は相手にされないでしょう」
まさか、戦場のど真ん中で艶話で挑発し合う2人を誰が想像出来ただろうか。交わされる言葉とは裏腹に、2人が発する圧によって次第に周囲の空気は重く歪んでゆく。
その時、司令官のヒューブレストが前線に合流し、大声を上げた。
「これより中央軍はヒューブレストが率いる! かの軍神コーデリア・レイムヘイト殿が魔人を請け負う間に、我々は敵本陣を落とす! 皆続けぇっ!」
自軍の士気を取り戻すため、あえてティズウェル男爵夫人の名を出した司令官のヒューブレストは、意気衝天に攻めの一手を繰り出した。
「ぐ、軍神!?」
「10年前リーゼリアとの戦争を終わらせた英雄じゃねーか!」
「この戦場にいらしてたのか!」
「もう安心だ! 軍神と司令官に続けぇ!」
――――うぉぉぉぉっ!
このヒューブレストの檄が口火となり、コーデリアと魔人ニーナの緊張は頂点に達する。
コーデリアは右腰に差さるもう一本の細剣を抜き、左剣を垂直に立て、右剣を水平に構え切先を魔人に向ける。
対する魔人は吹き飛ばされた際に落とした短剣を拾うことはせず、腰回りに何本も差された短剣の内の2本を抜き、獲物を狙う猛獣の様に腰を深く落とした。
「あんたがあの帝国の軍神だとはね。もっとゴリゴリのマッチョ女だと思ってたわ」
「まだスタイルには自信があります。貴方も捨てたもんじゃないと思いますよ」
瞬間、
「あたしは処女じゃない! 死んで取り消せっ!」
「私は息子一筋です!」
――――ガキィィン!
互いの全力の一撃がぶつかり、その衝撃が周囲にまき散らされる。
その後、並の使い手では目で追う事さえも難しい激しい攻防は、2人を中心に円を描くように広がっていった。
キンキンキン! ガシュ! スヒン!
両者の剣が交わる音と、空を切る音が響く。
距離を取り、全身をバネにして魔人ニーナが自身の持てる最速の一撃を放つが、その一撃を2本の細剣を盾とし、暴風に舞う木の葉のごとくそれを受け流すコーデリア。
魔人と違い、一撃をまともに食らえば命に届いてしまうにも関わらず、相手の剣を前に脱力するという行動を取れる軍神の戦い方に、ニーナは技術と経験の差を思い知らされる。
(何なのこの動きっ! バカにされてる気分だわっ!)
対するコーデリアは全く余裕がない。先程から呼吸もできないほどの緊張感で、繰り出される凶刃をギリギリ防ぎ、躱している。
(流しても力で立て直されてしまいすね。それに馬鹿げた強化のせいで、いつも以上に剣を強化しないと折られてしまいます…長引けば魔力がもたないっ!)
通常、攻撃を受け流された相手は若干の隙が生まれるもの。極近接武器である短剣ならその隙は小さくなってしまうが、魔人ニーナはそれが無いと言える程だった。
これは武器だけでなく、脚、腰、胸に至るまで同様に強化魔法を施している証拠であり、またその状態を続けられるという事は膨大な魔力量を持っている事の裏返しである。
(人では持ちえない魔力量を得て、恐らく魔力操作や出力も上がるのでしょう。その上、魔物と同様に損傷部分を再生する。これが人と引き換えに得た、魔人の力という事ですね)
一見互角に見える戦いを繰り広げているが、現状コーデリアは圧倒的不利な状況であり、その打開策を見つけられずにいる。
両者共に二刀使いであり、どちらも戦闘スタイルは猛攻型である。
コーデリアの細剣は突きを得意とする為、相手との若干の空間が必要なのに対し、魔人ニーナの短剣は相手の懐近くにまで入らなければ届かない。
激しい剣戟を続けるうち、元冒険者であり過去魔物や魔獣ばかりを相手にしてきた魔人ニーナと、対人戦を想定し、鍛え、戦い抜いてきた元騎士であるコーデリアの経験の違いが現れはじめる。
魔人になってからというもの、自身より圧倒的に格下の相手に力を振るってきたニーナが、唯一経験した強者と呼べる者との戦いは竜人のガリュウのみであり、また、細剣を持った相手との戦いは初めてだった。
徐々に細剣の特性を理解しつつあったニーナは、コーデリアの攻撃が減り、受けに回り始めている事、そして刺突攻撃が目立つ事に気が付く。
(はっはーん、さてはこの女斬撃が苦手なのね? 受け流しても大して反撃できてないのは、私の獲物が短剣だから。超至近距離にいられたんじゃ、その長さの細剣で突くのは難しいもんねぇ)
ニーナの分析は概ね正しい。普通、細剣使いは短剣や素手には相性が悪いのだ。
そう、普通なら。
「あはっ、弱点みーっけ!」
先程まで手を伸ばし短剣の届く範囲で剣を合わせていたニーナは急激に接近し、攻撃を受け流された後に距離を取って、再度万全の体勢から攻撃に移る動きから、懐に入り続けて手数を増やす動きに変わる。
「くっ!」
細剣の弱点を見破られたコーデリアの表情が焦りの色に変わる。躱しきれずに相手の身体を掠めた短剣が血の色に染まるのを見て、ニーナは愉悦に満ちた表情を浮かべた。
「打つ手無しね! 死ねぇ!」
超至近から繰り出された2本の短剣が、コーデリアの顔面と胸に向けられた。
――――ドギャッ!
「…は?」
――――シュドッ!
死角から顎に受けた衝撃と共にニーナの視界に空が広がり、同時に腹部に強烈な痛みを感じ、吹き飛ばされた。
最初の不意打ちで吹き飛んだ時と同じように仰向けに倒れ、愉悦に満ちていた表情は困惑に変わる。
「っ、はぁっ、はぁっ…私の息子は今のを躱していましたよ?」
肩で息をしながら、コーデリアは相手に分かるはずもない自身の経験を語った。
2年ほど前、ジンとその父ロンが決闘をした時に、父ロンはジンが繰り出した攻撃を上半身だけで躱し、逆に後方回転した勢いで顎に蹴りを見舞ったという攻防である。その時ジンはこの蹴りをギリギリ躱していた。
ニーナは止めの一撃を躱された挙句脚撃を見舞われ、さらには流れるように腹部に刺突を入れられていた。
一方のコーデリアも無傷ではない。所々に受けた傷は軽傷とは言え少なくはない上に、失血により確実に彼女の体力は奪われていた。だが、コーデリアがこの機会を見逃すはずが無い。再生が間に合わないほどのダメージを与えなければ魔人は倒せないのは先刻の通りだ。
「ガフッ!……あんたっ、今の体術…剣舞士だったのね…?」
「細剣士だと思いましたか? そう見えたのなら作戦通りです」
剣舞士とは細剣士と武闘士の上位職である。元よりコーデリアは冒険者ではないので、そう認識するのは冒険者だけではあるが、あえてコーデリアはその様に答える。
極至近距離では細剣は不利であるかのように相手を油断させ、ここぞという時に手の内を繰り出す。戦い方としては肉を切らせ骨を断つリスクのあるやり方だったが、その成果が今の魔人ニーナの状態である。
これが対人戦経験の差だった。
息を切らし、血を流しながらも気を吐くコーデリア。
顎への一撃で脳震盪を起こしてふらつきながらも、再生中の腹部に手を当て辛うじて立ち上がるニーナ。
「参ります!」
「な、舐めるなぁ!」
どちらかが死ぬのが先か、ヒューブレストとアスケリノの挟撃が敵本陣を落とすのが先か。
両者の死闘はなお続く。
細い四肢からは想像できない膂力をもって、縦横無尽に前線を荒らし回る魔人ニーナ。
その動きについてゆける帝国兵はおらず、繰り出される凶刃は手あたり次第に命を刈り取ってゆく。
ニーナの殺気に当てられ、帝国兵と同様に戦意を挫かれていたジオルディーネ中央軍も徐々に戦意を取り戻し、魔人に倣えと押されていた前線を戻しつつあった。
帝国中央軍の副長達は懸命に前線を立て直そうとするが、暴れまわる魔人の存在で士気が上がりきらず、苦戦を強いられ始める。
ザクッ! バシュ! ドゴン!
「ぎゃあっ!」
「がふっ!」
「ぐぼっ…」
「ほらほらほら! さっきの威勢はどこ行ったのぉ? このまま皆殺し――――」
その時、煌めく細剣の神速の一閃が戦場を、そして魔人ニーナを貫いた。
――――流穿一閃
「ぎゃん!」
吹き飛ばされた魔人ニーナは地面を転げ、仰向けに倒れながら何が起こったか分からないといた様子で、大穴の空いた腹部に手を当てる。
同時に帝国兵に歓声が上がり、前線は熱狂に包まれた。
「うぉぉぉぉぉ!」
「だ、誰だ!? 攻撃が見えなかったぞ!」
「騎士団の紋章が無い! 冒険者か!?」
そんな熱狂を他所に魔人ニーナはゆらりと立ち上がり、自身にダメージを負わせた相手に視線を合わせる。
「た、立ちやがった!」
「嘘だろおい!」
「再生してるぞっ!」
明らかな致命傷を負いつつも立ち上がった魔人に、周囲の帝国兵は戦慄。
両者、時が止まったかの如く睨み合い、先に口を開いたのは魔人だった。
「同じ事した竜人がいたんだけど…ぐちゃぐちゃに殺してやったわ。あんたはどうして欲しい?」
涙の日に受けた竜人ガリュウの不意打ちを思い出したのか、あまりの怒りにワナワナと肩を震わせ相手を睨みつけた。
「同じ攻撃を2度も受けたのですか。油断が過ぎましたね」
「ふ…ふふっ…あんた司令官の隣に居たヤツよね? 綺麗な顔しちゃって、戦場まで男を追っかけて来るお飾り淫乱女だと思ってたわ」
「貴方こそ、せっかく穴を増やして差し上げたのに塞いでしまったのですか?」
「ええ、あんたと違ってあたしは間に合ってるからね」
「あら未使用でしたか。可哀そうですが、今後も魔物は相手にされないでしょう」
まさか、戦場のど真ん中で艶話で挑発し合う2人を誰が想像出来ただろうか。交わされる言葉とは裏腹に、2人が発する圧によって次第に周囲の空気は重く歪んでゆく。
その時、司令官のヒューブレストが前線に合流し、大声を上げた。
「これより中央軍はヒューブレストが率いる! かの軍神コーデリア・レイムヘイト殿が魔人を請け負う間に、我々は敵本陣を落とす! 皆続けぇっ!」
自軍の士気を取り戻すため、あえてティズウェル男爵夫人の名を出した司令官のヒューブレストは、意気衝天に攻めの一手を繰り出した。
「ぐ、軍神!?」
「10年前リーゼリアとの戦争を終わらせた英雄じゃねーか!」
「この戦場にいらしてたのか!」
「もう安心だ! 軍神と司令官に続けぇ!」
――――うぉぉぉぉっ!
このヒューブレストの檄が口火となり、コーデリアと魔人ニーナの緊張は頂点に達する。
コーデリアは右腰に差さるもう一本の細剣を抜き、左剣を垂直に立て、右剣を水平に構え切先を魔人に向ける。
対する魔人は吹き飛ばされた際に落とした短剣を拾うことはせず、腰回りに何本も差された短剣の内の2本を抜き、獲物を狙う猛獣の様に腰を深く落とした。
「あんたがあの帝国の軍神だとはね。もっとゴリゴリのマッチョ女だと思ってたわ」
「まだスタイルには自信があります。貴方も捨てたもんじゃないと思いますよ」
瞬間、
「あたしは処女じゃない! 死んで取り消せっ!」
「私は息子一筋です!」
――――ガキィィン!
互いの全力の一撃がぶつかり、その衝撃が周囲にまき散らされる。
その後、並の使い手では目で追う事さえも難しい激しい攻防は、2人を中心に円を描くように広がっていった。
キンキンキン! ガシュ! スヒン!
両者の剣が交わる音と、空を切る音が響く。
距離を取り、全身をバネにして魔人ニーナが自身の持てる最速の一撃を放つが、その一撃を2本の細剣を盾とし、暴風に舞う木の葉のごとくそれを受け流すコーデリア。
魔人と違い、一撃をまともに食らえば命に届いてしまうにも関わらず、相手の剣を前に脱力するという行動を取れる軍神の戦い方に、ニーナは技術と経験の差を思い知らされる。
(何なのこの動きっ! バカにされてる気分だわっ!)
対するコーデリアは全く余裕がない。先程から呼吸もできないほどの緊張感で、繰り出される凶刃をギリギリ防ぎ、躱している。
(流しても力で立て直されてしまいすね。それに馬鹿げた強化のせいで、いつも以上に剣を強化しないと折られてしまいます…長引けば魔力がもたないっ!)
通常、攻撃を受け流された相手は若干の隙が生まれるもの。極近接武器である短剣ならその隙は小さくなってしまうが、魔人ニーナはそれが無いと言える程だった。
これは武器だけでなく、脚、腰、胸に至るまで同様に強化魔法を施している証拠であり、またその状態を続けられるという事は膨大な魔力量を持っている事の裏返しである。
(人では持ちえない魔力量を得て、恐らく魔力操作や出力も上がるのでしょう。その上、魔物と同様に損傷部分を再生する。これが人と引き換えに得た、魔人の力という事ですね)
一見互角に見える戦いを繰り広げているが、現状コーデリアは圧倒的不利な状況であり、その打開策を見つけられずにいる。
両者共に二刀使いであり、どちらも戦闘スタイルは猛攻型である。
コーデリアの細剣は突きを得意とする為、相手との若干の空間が必要なのに対し、魔人ニーナの短剣は相手の懐近くにまで入らなければ届かない。
激しい剣戟を続けるうち、元冒険者であり過去魔物や魔獣ばかりを相手にしてきた魔人ニーナと、対人戦を想定し、鍛え、戦い抜いてきた元騎士であるコーデリアの経験の違いが現れはじめる。
魔人になってからというもの、自身より圧倒的に格下の相手に力を振るってきたニーナが、唯一経験した強者と呼べる者との戦いは竜人のガリュウのみであり、また、細剣を持った相手との戦いは初めてだった。
徐々に細剣の特性を理解しつつあったニーナは、コーデリアの攻撃が減り、受けに回り始めている事、そして刺突攻撃が目立つ事に気が付く。
(はっはーん、さてはこの女斬撃が苦手なのね? 受け流しても大して反撃できてないのは、私の獲物が短剣だから。超至近距離にいられたんじゃ、その長さの細剣で突くのは難しいもんねぇ)
ニーナの分析は概ね正しい。普通、細剣使いは短剣や素手には相性が悪いのだ。
そう、普通なら。
「あはっ、弱点みーっけ!」
先程まで手を伸ばし短剣の届く範囲で剣を合わせていたニーナは急激に接近し、攻撃を受け流された後に距離を取って、再度万全の体勢から攻撃に移る動きから、懐に入り続けて手数を増やす動きに変わる。
「くっ!」
細剣の弱点を見破られたコーデリアの表情が焦りの色に変わる。躱しきれずに相手の身体を掠めた短剣が血の色に染まるのを見て、ニーナは愉悦に満ちた表情を浮かべた。
「打つ手無しね! 死ねぇ!」
超至近から繰り出された2本の短剣が、コーデリアの顔面と胸に向けられた。
――――ドギャッ!
「…は?」
――――シュドッ!
死角から顎に受けた衝撃と共にニーナの視界に空が広がり、同時に腹部に強烈な痛みを感じ、吹き飛ばされた。
最初の不意打ちで吹き飛んだ時と同じように仰向けに倒れ、愉悦に満ちていた表情は困惑に変わる。
「っ、はぁっ、はぁっ…私の息子は今のを躱していましたよ?」
肩で息をしながら、コーデリアは相手に分かるはずもない自身の経験を語った。
2年ほど前、ジンとその父ロンが決闘をした時に、父ロンはジンが繰り出した攻撃を上半身だけで躱し、逆に後方回転した勢いで顎に蹴りを見舞ったという攻防である。その時ジンはこの蹴りをギリギリ躱していた。
ニーナは止めの一撃を躱された挙句脚撃を見舞われ、さらには流れるように腹部に刺突を入れられていた。
一方のコーデリアも無傷ではない。所々に受けた傷は軽傷とは言え少なくはない上に、失血により確実に彼女の体力は奪われていた。だが、コーデリアがこの機会を見逃すはずが無い。再生が間に合わないほどのダメージを与えなければ魔人は倒せないのは先刻の通りだ。
「ガフッ!……あんたっ、今の体術…剣舞士だったのね…?」
「細剣士だと思いましたか? そう見えたのなら作戦通りです」
剣舞士とは細剣士と武闘士の上位職である。元よりコーデリアは冒険者ではないので、そう認識するのは冒険者だけではあるが、あえてコーデリアはその様に答える。
極至近距離では細剣は不利であるかのように相手を油断させ、ここぞという時に手の内を繰り出す。戦い方としては肉を切らせ骨を断つリスクのあるやり方だったが、その成果が今の魔人ニーナの状態である。
これが対人戦経験の差だった。
息を切らし、血を流しながらも気を吐くコーデリア。
顎への一撃で脳震盪を起こしてふらつきながらも、再生中の腹部に手を当て辛うじて立ち上がるニーナ。
「参ります!」
「な、舐めるなぁ!」
どちらかが死ぬのが先か、ヒューブレストとアスケリノの挟撃が敵本陣を落とすのが先か。
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