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最終章 ジオルディーネ王国編
第157話 駆け抜けた先で
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「まさか街村の外で暖かい料理を頂けるとは思いませんでした。感謝を。リカルド殿」
肩の高さで綺麗に切りそろえられた髪を、耳に掛けながら頭を下げるファンデルさん。構いませんと告げ、話を進めるよう促した。酒もどうかと思ったので茶を出している。通常、乱波は事を告げるとさっさと行ってしまうが、俺も帝国軍に利用されているとはいえ、一方的に情報を貰うのだ。食事を出したのなら、食後の茶くらい出さないとさすがに母上に顔向けできない。
茶を傾けながら、滔々と王国内の情勢を話してゆくファンデルさん。
だが、俺が特に聞きたかった女王ルイの情報は未だ入っていないのだという。
というのも、スウィンズウェル騎士団の一員としてラプラタ川の戦いを終えて国に帰る予定だったのが、突如軍務大臣から俺の助勢をするよう告げられたのだという。
イシスに入った翌日に告げられた任務。元々ファンデルさんの担当する地域は帝国北部でありこの地域では無かったのだが、今は異常な戦時中という事で隠者の目も手が足りない状態らしい。能力のある者しか隠者の目に属する事は出来ないので、おいそれと構成員を増やす事も出来ないのだとか。
「なかなか大変なようだ」
「頷きたいところです。正直に白状すると、皆さんの移動が速すぎて見失っていたのです」
確かにラプラタ川を渡ってからというもの、俺達3人と1匹は時折歩を緩める事はあってもほとんど歩いていない。本来イシスからイシュドルへの移動は徒歩で一月はかかる道のりである。走れば何日という面倒な計算はしていないが、ラプラタ川からここまで7日かかっている。地図で見る距離を考えると、ここからイシュドルまではあと7日と言ったところか。ようやく半分、早くも半分、どちらにもとれる距離だ。
「やはり先の戦闘ですか」
「はい。街道からそれて森に入られる事は知っていましたので。大きな戦闘音を聞きつけ、アイレ殿とコハク殿の魔力反応を発見したと思ったら、賊の反応もあったので僭越ながら」
「なるほど」
つまり俺がグリムロックと暴れなかったら、ファンデルさんは俺達を見つけられなかったわけだ。今となっては過ぎた事なのでアレコレ考える必要も無いが、俺はタダで情報が得られ、ファンデルさんは一度見失った俺達を発見でき、任務を遂行できた。互いに運が良かったと思っておこう。
翌朝。
といってもまだ日は登っておらず辺りは暗いままだが、次の目的地が決まったので早々に出立する事にした。
目的地は王都イシュドルへ至る街道直線上にある、リージュという街である。ここは帝国に早々に恭順の意を示したユリエフ卿なる貴族の領都となっている街で、南下して来る帝国軍が王都イシュドルへ至る最終拠点の候補となっている街らしい。
この街、というかユリエフ卿の領地ではすでに冒険者への迫害を止めており、連れ去られた亜人や、その前から売買されていた人間を含む奴隷達は領主による買取が進められているらしく、領民も大人しくこれに従っているとの事だ。なので、アイレやコハクが立ち寄ったとしても危害を加えようとする者は少ないはず。
俺達がピクリアから駆け抜けてきたこの場所もコカール卿という貴族の領地なのだが、実はこの貴族も既に帝国に恭順しており、途中の街村もユリエフ卿の領内程では無いが比較的立ち寄りやすいものになっていたようだ。
これを聞けばわざわざ野営をする必要も無かったように思えるが、それも過ぎた話。そろそろイシュドルの情報が欲しいと思っていたので、リージュに立ち寄るのは必要事項だろう。
リージュには此度の戦役前から潜んでいる隠者の目の構成員がいるらしく、その者を訪ねれば王都の情報や女王ルイの情報も得られるかもしれないとファンデルさんは言った。
「あれ? ファンデルさんは?」
ようやく覚醒したアイレが細剣を腰に携えながら辺りを見回す。
「さっき発ったよ。途中、あちこち村に立ち寄ってから俺達とは別ルートでリージュに向かうらしい」
「そうなんだ。一緒に旅できると思ってたのに。残念」
残念がる彼女は昨晩いろいろファンデルさんと話をしていたようで、もう仲良くなっていた。仮にもファンデルさんは諜報員なのだが、任務外となるとやはり一人の女性である。アイレの人と仲良くなる能力は相当に高い事もあり、時折笑い声すら聞こえていた。
「一応彼女は騎士団員で軍部直属の人だぞ」
「ん、旅とそれは関係あるの? 行き先は同じなんでしょ?」
「…いや、特にないが」
「ならいいじゃない」
敵わないな…。
眠気眼のコハクとマーナにも簡単な朝食を出し、いざリージュへ向けて出発。
アイレは2、3日中にベッドで眠れるかもと、一人足取りは軽かった。
◇
ファンデルさんと別れた森の野営から3日間、駆けに駆けて3日目の夕方ごろにリージュの街に到着した。ジオルディーネ兵に見つかる事も厭わず走りやすい街道を走ったので、思ったよりも早くに到着した。
途中から3人の競争の体を成し始めた今回の移動。俺は大人だから2人に勝ちを譲ってやった。しかしアイレも勝ち誇る余裕などなく、若干顔を上気させているだけで、呼吸の荒れていないコハクをよそにハァハァと肩で息をしている。
そもそもコハクだけ足音が違っていた。カンッ、カンッと下駄の音が響いたと思ったら大きく跳躍し、俺達を前で待っているのだ。コハクに行く先は分からないから先頭を行く訳にもいかず、追い抜かれては跳躍、追い抜かれては跳躍を繰り返していた。
マーナはお察しだろう。この翼狼に疲れなど皆無。ふわふわと飛んで付いて来たり、俺達3人の頭の上を順番に乗り移りながら遊んでいた。
「参った、完敗だ!」
「コハクはともかく私の全力についてこられる人間がいるなんて…あんたもなかなかやるわね…」
「いっぱい はしった」
顔を歪め、声を掠れさせながら精一杯の笑顔でコハクの頭を撫でてやる。最近頑張ったら頭を撫でてもらえると学習したコハクは、撫でる手にグイグイと頭を押し付けるようになってきた。これまで為されるがままだった様子から思うと、一つ意思表示を覚えたという事なのかもしれない。
少し嬉しくなりつつも、斜陽に染まるリージュの街の門前の様子を伺う。鎧を着た傭兵か冒険者らしき者や、荷を担ぎ軽装に身を包んだ旅人、荷馬車を曳く馬に飼葉をやる商人風の人らが行列を作っている。
夕暮れ時は街に戻る一行で混雑するのはどこの街も同じという事だ。アイレとコハクにフード付きの簡素なローブを手渡し、今は岩の上でくつろいでいるマーナを交えて、街に入る前の確認をしておかなければならない。
「目的は王都イシュドルの情報とルイの情報。それに休息だ。長居するつもりはないからそのつもりで」
「了解。やっぱり私とコハクは隠した方がいいわよねぇ」
そうすべきだろう。いくら冒険者排斥と奴隷解放を宣言している街とは言え、どんな不穏な輩がいるとも限らない。アイレの長い耳と鮮緑の髪は一発で風人とバレてしまうし、コハクは丸い獣耳と白銀の髪、それに尻尾で獣人と思われるのは必至。2人には悪いが、とりあえずそれらは隠してもらう必要がある。
しぶしぶローブを纏い、フードを目深に被るアイレ。コハクもアイレを見本にモゴモゴとローブを装着した。
問題はあと1人というか1匹。いくら聖獣が人と共にする事が認知されているとはいえ、突然街に聖獣が居る事が分かれば騒ぎになるかもしれない。堂々とお披露目なんて絶対にすべきではないが、ここへ来て街の外で待ってろなんて言いたくないし、布袋に入ってろなんて口が裂けても言えない。
「マーナ」
《 なぁに? 》
「コハクに抱っこされてくれ」
《 いいけど…なんでぇ? 》
俺とマーナのやり取りを聞いて、コハクが手を広げてマーナを迎え入れる。
やはりこの組み合わせは素晴らしい。…っと、そんな事を考えてる場合じゃない。
「うむ。とりあえず宿に着くまでピクリとも動かないでくれ」
「なるほど。ぬいぐるみ作戦ね。私でもいいんじゃない?」
「やめておけ」
「なんでよ!」
むくれるアイレを放置して、マーナには酷な事を伝えねばならない。
「門番に突っつかれても、街中で子供に撫でられたとしても、コハクが思わず落としてしまったとしても一切の反応は禁止だ。そのまま地面に転がってもらう必要がある。もちろん万物の選別を人前で使うのもダメだ。その代わり、頭の中の文句ならいくらでも受け付けるし、あとで好きなものを好きなだけ飲み食いしてもらっていい。人気の少ない夜なら何とか出歩けるかもしれん。どうだ? やってくれないか?」
《 好きなだけ!? でも落ちて踏んずけられでもでしたら…ぐぬぬぬ… 》
「うっ おおかみさん おちない」
思い悩むマーナはさておき、コハクがシュンとしてしまった。
「あっ、違うぞコハク! 例えだ、たとえ! なっ? コハクはマーナを落とさない! うん間違いない!」
「たとえ」
「そう、たとえだ! コハクの服は雪のように白い。でも雪じゃないだろう? それが例えだ!」
マーナを抱いたままじーっと自分の着ている着物を見つめる。そして何かを掴んだように小さく呟いて俺を見上げた。
「ふくしろい ゆきしろい おおかみさん ちょっとしろい」
「しろい ゆきじゃない ちがう」
カラコロとマーナが居た岩の上に登って『たとえ』と連呼するコハク。こんなに喋ったのを初めて見た気がする。なんとか気を取り直してくれたようで、安心と少しの感動が押し寄せた。
「私をぬいぐるみの似合わない可愛げのない女扱いした罰が当たったのよ」
そこまで言ってないだろう…
《 ぐぬぬぬぬぬ… 》
まだ悩んでるし…
その後、騒ぎをなるべく起こさない為にもとマーナの背中を押し、何とか納得させられた。
『やるからには徹底的にやるからね!』と気合の声が聞こえ、門前の行列に並ぶと面白いくらいに固まったマーナを見て思わず笑いそうになるが、何事も無く情報を集められることを祈るばかりだ。
街に入る前にどっと疲れが増した気がした。
肩の高さで綺麗に切りそろえられた髪を、耳に掛けながら頭を下げるファンデルさん。構いませんと告げ、話を進めるよう促した。酒もどうかと思ったので茶を出している。通常、乱波は事を告げるとさっさと行ってしまうが、俺も帝国軍に利用されているとはいえ、一方的に情報を貰うのだ。食事を出したのなら、食後の茶くらい出さないとさすがに母上に顔向けできない。
茶を傾けながら、滔々と王国内の情勢を話してゆくファンデルさん。
だが、俺が特に聞きたかった女王ルイの情報は未だ入っていないのだという。
というのも、スウィンズウェル騎士団の一員としてラプラタ川の戦いを終えて国に帰る予定だったのが、突如軍務大臣から俺の助勢をするよう告げられたのだという。
イシスに入った翌日に告げられた任務。元々ファンデルさんの担当する地域は帝国北部でありこの地域では無かったのだが、今は異常な戦時中という事で隠者の目も手が足りない状態らしい。能力のある者しか隠者の目に属する事は出来ないので、おいそれと構成員を増やす事も出来ないのだとか。
「なかなか大変なようだ」
「頷きたいところです。正直に白状すると、皆さんの移動が速すぎて見失っていたのです」
確かにラプラタ川を渡ってからというもの、俺達3人と1匹は時折歩を緩める事はあってもほとんど歩いていない。本来イシスからイシュドルへの移動は徒歩で一月はかかる道のりである。走れば何日という面倒な計算はしていないが、ラプラタ川からここまで7日かかっている。地図で見る距離を考えると、ここからイシュドルまではあと7日と言ったところか。ようやく半分、早くも半分、どちらにもとれる距離だ。
「やはり先の戦闘ですか」
「はい。街道からそれて森に入られる事は知っていましたので。大きな戦闘音を聞きつけ、アイレ殿とコハク殿の魔力反応を発見したと思ったら、賊の反応もあったので僭越ながら」
「なるほど」
つまり俺がグリムロックと暴れなかったら、ファンデルさんは俺達を見つけられなかったわけだ。今となっては過ぎた事なのでアレコレ考える必要も無いが、俺はタダで情報が得られ、ファンデルさんは一度見失った俺達を発見でき、任務を遂行できた。互いに運が良かったと思っておこう。
翌朝。
といってもまだ日は登っておらず辺りは暗いままだが、次の目的地が決まったので早々に出立する事にした。
目的地は王都イシュドルへ至る街道直線上にある、リージュという街である。ここは帝国に早々に恭順の意を示したユリエフ卿なる貴族の領都となっている街で、南下して来る帝国軍が王都イシュドルへ至る最終拠点の候補となっている街らしい。
この街、というかユリエフ卿の領地ではすでに冒険者への迫害を止めており、連れ去られた亜人や、その前から売買されていた人間を含む奴隷達は領主による買取が進められているらしく、領民も大人しくこれに従っているとの事だ。なので、アイレやコハクが立ち寄ったとしても危害を加えようとする者は少ないはず。
俺達がピクリアから駆け抜けてきたこの場所もコカール卿という貴族の領地なのだが、実はこの貴族も既に帝国に恭順しており、途中の街村もユリエフ卿の領内程では無いが比較的立ち寄りやすいものになっていたようだ。
これを聞けばわざわざ野営をする必要も無かったように思えるが、それも過ぎた話。そろそろイシュドルの情報が欲しいと思っていたので、リージュに立ち寄るのは必要事項だろう。
リージュには此度の戦役前から潜んでいる隠者の目の構成員がいるらしく、その者を訪ねれば王都の情報や女王ルイの情報も得られるかもしれないとファンデルさんは言った。
「あれ? ファンデルさんは?」
ようやく覚醒したアイレが細剣を腰に携えながら辺りを見回す。
「さっき発ったよ。途中、あちこち村に立ち寄ってから俺達とは別ルートでリージュに向かうらしい」
「そうなんだ。一緒に旅できると思ってたのに。残念」
残念がる彼女は昨晩いろいろファンデルさんと話をしていたようで、もう仲良くなっていた。仮にもファンデルさんは諜報員なのだが、任務外となるとやはり一人の女性である。アイレの人と仲良くなる能力は相当に高い事もあり、時折笑い声すら聞こえていた。
「一応彼女は騎士団員で軍部直属の人だぞ」
「ん、旅とそれは関係あるの? 行き先は同じなんでしょ?」
「…いや、特にないが」
「ならいいじゃない」
敵わないな…。
眠気眼のコハクとマーナにも簡単な朝食を出し、いざリージュへ向けて出発。
アイレは2、3日中にベッドで眠れるかもと、一人足取りは軽かった。
◇
ファンデルさんと別れた森の野営から3日間、駆けに駆けて3日目の夕方ごろにリージュの街に到着した。ジオルディーネ兵に見つかる事も厭わず走りやすい街道を走ったので、思ったよりも早くに到着した。
途中から3人の競争の体を成し始めた今回の移動。俺は大人だから2人に勝ちを譲ってやった。しかしアイレも勝ち誇る余裕などなく、若干顔を上気させているだけで、呼吸の荒れていないコハクをよそにハァハァと肩で息をしている。
そもそもコハクだけ足音が違っていた。カンッ、カンッと下駄の音が響いたと思ったら大きく跳躍し、俺達を前で待っているのだ。コハクに行く先は分からないから先頭を行く訳にもいかず、追い抜かれては跳躍、追い抜かれては跳躍を繰り返していた。
マーナはお察しだろう。この翼狼に疲れなど皆無。ふわふわと飛んで付いて来たり、俺達3人の頭の上を順番に乗り移りながら遊んでいた。
「参った、完敗だ!」
「コハクはともかく私の全力についてこられる人間がいるなんて…あんたもなかなかやるわね…」
「いっぱい はしった」
顔を歪め、声を掠れさせながら精一杯の笑顔でコハクの頭を撫でてやる。最近頑張ったら頭を撫でてもらえると学習したコハクは、撫でる手にグイグイと頭を押し付けるようになってきた。これまで為されるがままだった様子から思うと、一つ意思表示を覚えたという事なのかもしれない。
少し嬉しくなりつつも、斜陽に染まるリージュの街の門前の様子を伺う。鎧を着た傭兵か冒険者らしき者や、荷を担ぎ軽装に身を包んだ旅人、荷馬車を曳く馬に飼葉をやる商人風の人らが行列を作っている。
夕暮れ時は街に戻る一行で混雑するのはどこの街も同じという事だ。アイレとコハクにフード付きの簡素なローブを手渡し、今は岩の上でくつろいでいるマーナを交えて、街に入る前の確認をしておかなければならない。
「目的は王都イシュドルの情報とルイの情報。それに休息だ。長居するつもりはないからそのつもりで」
「了解。やっぱり私とコハクは隠した方がいいわよねぇ」
そうすべきだろう。いくら冒険者排斥と奴隷解放を宣言している街とは言え、どんな不穏な輩がいるとも限らない。アイレの長い耳と鮮緑の髪は一発で風人とバレてしまうし、コハクは丸い獣耳と白銀の髪、それに尻尾で獣人と思われるのは必至。2人には悪いが、とりあえずそれらは隠してもらう必要がある。
しぶしぶローブを纏い、フードを目深に被るアイレ。コハクもアイレを見本にモゴモゴとローブを装着した。
問題はあと1人というか1匹。いくら聖獣が人と共にする事が認知されているとはいえ、突然街に聖獣が居る事が分かれば騒ぎになるかもしれない。堂々とお披露目なんて絶対にすべきではないが、ここへ来て街の外で待ってろなんて言いたくないし、布袋に入ってろなんて口が裂けても言えない。
「マーナ」
《 なぁに? 》
「コハクに抱っこされてくれ」
《 いいけど…なんでぇ? 》
俺とマーナのやり取りを聞いて、コハクが手を広げてマーナを迎え入れる。
やはりこの組み合わせは素晴らしい。…っと、そんな事を考えてる場合じゃない。
「うむ。とりあえず宿に着くまでピクリとも動かないでくれ」
「なるほど。ぬいぐるみ作戦ね。私でもいいんじゃない?」
「やめておけ」
「なんでよ!」
むくれるアイレを放置して、マーナには酷な事を伝えねばならない。
「門番に突っつかれても、街中で子供に撫でられたとしても、コハクが思わず落としてしまったとしても一切の反応は禁止だ。そのまま地面に転がってもらう必要がある。もちろん万物の選別を人前で使うのもダメだ。その代わり、頭の中の文句ならいくらでも受け付けるし、あとで好きなものを好きなだけ飲み食いしてもらっていい。人気の少ない夜なら何とか出歩けるかもしれん。どうだ? やってくれないか?」
《 好きなだけ!? でも落ちて踏んずけられでもでしたら…ぐぬぬぬ… 》
「うっ おおかみさん おちない」
思い悩むマーナはさておき、コハクがシュンとしてしまった。
「あっ、違うぞコハク! 例えだ、たとえ! なっ? コハクはマーナを落とさない! うん間違いない!」
「たとえ」
「そう、たとえだ! コハクの服は雪のように白い。でも雪じゃないだろう? それが例えだ!」
マーナを抱いたままじーっと自分の着ている着物を見つめる。そして何かを掴んだように小さく呟いて俺を見上げた。
「ふくしろい ゆきしろい おおかみさん ちょっとしろい」
「しろい ゆきじゃない ちがう」
カラコロとマーナが居た岩の上に登って『たとえ』と連呼するコハク。こんなに喋ったのを初めて見た気がする。なんとか気を取り直してくれたようで、安心と少しの感動が押し寄せた。
「私をぬいぐるみの似合わない可愛げのない女扱いした罰が当たったのよ」
そこまで言ってないだろう…
《 ぐぬぬぬぬぬ… 》
まだ悩んでるし…
その後、騒ぎをなるべく起こさない為にもとマーナの背中を押し、何とか納得させられた。
『やるからには徹底的にやるからね!』と気合の声が聞こえ、門前の行列に並ぶと面白いくらいに固まったマーナを見て思わず笑いそうになるが、何事も無く情報を集められることを祈るばかりだ。
街に入る前にどっと疲れが増した気がした。
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