戦国武将異世界転生冒険記

詩雪

文字の大きさ
185 / 200
最終章 ジオルディーネ王国編

第181話 アメノハバキリ

しおりを挟む
 互いに左右逆に踏み込み、ルイに迫る。九本の大尾と本体を合わせれば、ルイは対複数をものともしない力がある。左と見せ掛け、背後に回ろうとする俺に複数の尾の薙ぎ払いが来るが、意識をコハクに向けざるを得ない中、俺への攻撃の軌道は単純だ。

 魔力反応にめがけて後追いで繰り出される攻撃をかわし、すれ違いざまに斬りつけると大尾が纏う雷がバチバチと放電され引っ込む。その傷を負った部分が再生して再び襲い掛かってくる事になるが、俺はルイ本体を脅かすことなく、移動しながら大尾を相手にし続けた。

 時折、戦闘空域に飽和雷電が降り注ぐが、魔力の収束を察知した段階で夜桜の強化を全開にし、刃を上空に向けて雷電を斬る。

 意識をルイのみに向けている訳にはいかない。注意しなければ俺まで巻き沿いを食らう攻撃を放つコハクにも注意し、攻撃の射線上に入らぬよう立ち回る。

 コハクに連携は望めない。俺の事は気にせず真向勝負で戦うコハクに対し、俺は尾に対する斬撃と、本体への遠距離魔法でルイの弱点を探る戦法に終始した。

「―――大火球魔法ノーブル・スフィア!」

『ギュアッ!』

 ボガァン!

 繰り出した火球は命中寸前で雷にかき消される。

 周囲を縦横無尽に飛び回り隙をうかがう俺にいら立ち、先に排除しようとルイの九本の大尾が同時に襲い掛かってくる。

「くっ!」

 ガコッ!

 数本をギリギリかわす事はできたが、迅雷の反応速度をもってしてもかわしきれない攻撃を夜桜を盾に受け止めた。

 さらに体勢が大きく崩れたところに左から尖った大尾が上半身に襲いかかる。これをビキビキと太ももの筋線維をちぎりながら強引に仰け反り回避を試みるが、かわしきれずに胸をかすめた。

 ザシュッ!

「がっ!」

 ゴオッ!

 痛みと衝撃で風渡りを維持できず、背から瓦礫がれきに落下する寸前で風魔法を乱雑に発動して何とか着地する。

 またも一撃で戦闘不能におちいるところだったが、四肢は無事。戦うにまだ支障はない。頭から流れる血をぬぐい、収納魔法スクエアガーデンからアリアにもらったストールを取り出して頭にパンッと巻きつけた。

「まだまだぁっ!」

 一方、ジンに猛攻を加えたルイの意識が自分から離れたのを刹那嗅ぎ取ったコハクは突貫。その狂暴な牙をルイの体に食い込ませ、胴の一部を食いちぎる。

 ガシュン!

『ギュオッ!』

 コハクに強烈な一撃をもらいつつ向き直り、なお変わらぬ力で対峙たいじするルイ。肉体の欠損ダメージをものともしない戦意は凄まじいの一言だ。

『ガロロロロ』

『コココココ。痛いやないの…―――統星の尾星スバルノオボシ!』

 大尾から放たれる九つの大雷玉。魔力の底を見せないその強力な魔法に対し、コハクは氷爪を繰り出して斬り裂こうと試みるが、全てに対処できずにあえなく雷玉の餌食となる。

 バチバチバチバチバチッ!!

『ガフォッ!』

「いかんっ!」

 ぐらついたコハクに再度雷を放とうと、身構えるルイの意識をこちらに向けるべく鼻先に迫る。夜桜の危険性を知るルイはとっさに頭を上げて斬撃の軌道からそれるが、俺はそのまま鼻先を、複数の風刃ウィンドエッジを頭上から見舞った。

 バンバンバンバン!

 それらすべてを雷を纏う大尾でかき消し、ルイは頭上を見上げる。

 そして頭上を取った俺の目に、ある物が映り込んだ。

(あれは魔力核!!)

 コハクが食いちぎったあとに赤い魔力核の一部が露出していた。氷に覆われた傷跡は再生することなく、核は露出したまま淡い光を放っている。

 とうとう弱点を見つけた俺は意識を悟られぬよう、立ち直ったコハクとともにルイへ挑む。核の部分を何度も狙う訳にはいかない。ただでさえ至近に迫るのは至難の業なのだ。そこを狙っていると勘付かれ、警戒されると手出しできなくなる可能性が高い。

 ルイが肉弾戦を嫌いつつあるのは動きから見えて来ていた。隙を見ては肉薄して斬撃を繰り出す俺がいる限り、ルイは先程放った雷閃のような溜めが必要な強力な一撃を放つ事はできない。

「おおおっ!」
『グォン!』

 突撃する俺の背後から時間差で左右の前脚を振るい、コハクが十本の飛ぶ氷爪を繰り出す。

 その攻撃を感じ取った俺はルイへの接敵寸前で上空に飛んだ。氷爪の攻撃により正面への対処を余儀なくされ、ルイが俺を視界から外すと同時に大量の火球魔法イグスフィアを展開。

 大尾が氷爪への対処で防御機能を失う中、ルイの本体めがけ全弾を撃ち込んだ。

 ドドドドドドドドド!

『かあっ!』

 ブルブルと身体を震わせ、宙に小さな雷玉を浮かばせるルイ。バンバンと音を立てながら、そのしゃぼん玉のような雷玉が火球と衝突し相殺されてゆく。攻撃への対応力、技の種類は無数なのかと舌を巻かざるを得ない。

 爆風の中、かまわず近接攻撃をくりだそうとコハクが向かっていくが、ルイは即座に距離を取り、ブオンと大尾が俺とコハクの目の前を通り過ぎた。空振りかと思いきや、そこに雷の壁があらわれ、追撃する俺達の行く手を阻んだ。

「くっ、そんな事もできるのか!」
『ガォン!』

 バチュン!

 雷の壁を斬り抜ける俺と、氷をぶつけてかき消すコハク。その先で刹那魔力を収縮させたルイが再度強力な雷を放った。

『―――紫電の雨インベルダウン

 九本の大尾からはるか上空へ放たれた雷玉が、無数の紫電を広範囲にわたって降らせた。エルナト鉱糸の外套を着る俺とコハクにとって、一筋の紫電にはさほどの殺傷力は無い。だが、戦闘領域に近づけない魔物達の中には一撃で消え去っている魔物もいる。

 雷玉を消そうにも一度この戦域から離脱しなければならない上に、雷玉は九個放たれた。探知魔法サーチを上空へ広げると、雷玉は上空を不規則に移動しているようでそのスピードも遅くはない。

 それはルイに空間を支配された瞬間だった。

 ビシッ!

「なんと面倒な…っ!」

 横を通り過ぎた紫電が突然角度を変え、俺の肩に命中する。紫電が命中するたびに大地魔法による耐性魔法レジストが明滅し、エルナト鉱糸の外套の上から衝撃が伝わってくる。

 巨体を有するコハクにも先程からビシバチと命中しているが、文字通り毛ほどのダメージも無いのか、なんら気にしている様子は伺えない。

『コココココ…ジンはんだけやあらへんで。雷のはやきこと、見せたるわ』

 ビシュンッ

「なっ!?」

 先程までとは段違いの速度で目前に迫られる。とっさに身を翻し外套を盾に身構えるが、九尾大狐の巨体が俺を打ち抜いた。

 ドゴン!

「がっ!」

 体当たりで吹き飛んだ俺の背後へ瞬く間に移動したルイが尾の一本を振るう。容赦なく背を打たれ、地面が一瞬にして目の前に迫った。

(か、風渡り…っ!)

 寸前で衝突を避けられたが、のどを血が逆流する。

「ごはぁっ! ごほっ! く、くそっ…」

 迅雷で反応出来なかった、というより、ルイは迅雷と同じ速度を発揮していたと言っても過言ではない。解けてしまった迅雷のダメージが四肢を中心に広がり、脚に至っては肉が裂けてしまっていた。

 風渡りを駆使しながらの空中戦にはもう挑めそうになかった。未だ上空で戦っているコハクも今のルイの速度について行くのがやっとの様子で、攻撃は後手後手に回っている。

(紫電の雨とかいうヤツのお陰でルイは今の速度を得ている。はるか上空の雷玉を破壊するしか防ぐ方法がない…)

 とにかく地上戦に持ち込まなければ話にならない。

 俺は今のルイの反応速度を上回るであろう一撃を放つべく、夜桜を納刀して腰を落とし、さやごと風を纏わせた。相当な溜めが必要となるが、地に叩き落とした俺への警戒が緩み、コハクの相手に忙しい今のルイには必ず届くはずだ。


 シュンシュンシュン―――


 風刃ウィンドエッジを夜桜を通じて放つ、一刀に全力を注ぐ飛ぶ斬撃。星刻石の魔力増強と古代種にも通ずる力。

「ふーっ…《 コハク! 離れろっ! 》」

(えげつない魔力反応、あの黒閃か!? しもたっ!)

 ルイは戦いの最中、瞬時に増大した魔力反応を感じ取り、コハクが離れたと同時に地上のジンに視線をやった。視線を移すという動作を挟んだ時点で、回避は間に合わない。

 頭の中に響く声でコハクが後方に体重移動した瞬間、抜刀する。



 ――― 天羽々斬



 ヒュアッ


(なっ、ちがっ――)

 ルイはさらに上空へ身をかわすが、遅れた九つの大尾に不可視の刃が届く。

『ギュイッ!!』

『ガオン!』

 全ての大尾が切り離され狼狽えたルイを見逃さず、コハクが飛びかかりルイを地へ叩き落とした。




 ■■■■■■




 日頃お読み頂き誠にありがとうございます。

 戦国武将異世界転生冒険記も最終話まで残すところあとわずかとなりました。ここまで書き上げられたのも、皆さんの応援のおかげです。

 さて、更新日につきまして。

 本日、6月2日公開の第181話から最終話までを毎日更新にさせて頂き、スピード感をもってラストまで駆け抜けようと考えています。

 最終話の後日、挿話とエピローグをお贈りして拙作は終了となります。

 最終話とは…?

 なんてのは考えないようにしてくださいませ。笑

 ではでは、明日からもほーんの少しでいいので楽しみにして頂けましたらうれしいです( ^^)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

タイム連打ってなんだよ(困惑)

こすもすさんど(元:ムメイザクラ)
ファンタジー
「リオ、お前をパーティから追放する。お前のようなハズレスキルのザコは足手まといなんだよ」  王都の冒険者ギルドにて、若手冒険者のリオは、リーダーの身勝手な都合によってパーティから追い出されてしまい、同時に後宮では、聖女の降臨や第一王子の婚約破棄などが話題になっていた。  パーティを追放されたリオは、ある日商隊の護衛依頼を受けた際、野盗に襲われる可憐な少女を助けることになるのだが、彼女は第一王子から婚約破棄された上に濡れ衣を着せられて迫害された元公爵令嬢こと、アイリスだった。  アイリスとの出会いから始まる冒険の旅、行く先々で様々な思惑によって爪弾きにされてしまった者達を受け入れていく内に、彼はある決意をする。 「作ろう。誰もが幸せに過ごせる、そんな居場所を」  目指すべき理想、突き動かされる世界、そしてハズレスキル【タイム連打】に隠されたリオの本当の力とは?    ※安心安全安定安泰の四安揃った、ハピエン確定のハズレスキル無双です。 『エ○ーマンが倒せない』は関係ありません。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

ダンジョンを拾ったので、スキル〈ホームセンター〉で好き勝手リフォームします

ランド犬
ファンタジー
 異世界に転移した佐々木悠人は、召喚でも勇者でもなかった。ただ迷い込んだ先で見つけたのは、王都を望む郊外にひっそりと口を開けるダンジョン。足を踏み入れた瞬間、発動したスキルは ――〈ホームセンター〉 壁を張り替え、部屋を増やし、畑や牧場、カフェまで作れる不可思議な力だった。 気ままに始めたリフォームは、もふもふなネコミミ獣人の少女との出会いをきっかけに、思わぬ変化を呼び始める。 拡張され続けるダンジョンの先で、悠人が作り上げる“住める迷宮”とは――?

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

異世界転移からふざけた事情により転生へ。日本の常識は意外と非常識。

久遠 れんり
ファンタジー
普段の、何気ない日常。 事故は、予想外に起こる。 そして、異世界転移? 転生も。 気がつけば、見たことのない森。 「おーい」 と呼べば、「グギャ」とゴブリンが答える。 その時どう行動するのか。 また、その先は……。 初期は、サバイバル。 その後人里発見と、自身の立ち位置。生活基盤を確保。 有名になって、王都へ。 日本人の常識で突き進む。 そんな感じで、進みます。 ただ主人公は、ちょっと凝り性で、行きすぎる感じの日本人。そんな傾向が少しある。 異世界側では、少し非常識かもしれない。 面白がってつけた能力、超振動が意外と無敵だったりする。

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...