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第20章 少しだけ、顔が変わった
女子学院へ通い始めてから、二週間が過ぎていた。
朝、目を覚ましたときの体の重さが、少しだけ軽くなっている。
それに気づいたのは、ほんの些細なことからだった。
以前は、起き上がるまでに時間がかかった。
目を開けても、しばらく天井を見つめたまま動けなかった。今日一日を思うだけで、胸の奥に冷たいものが溜まっていくようだった。
けれど最近は違う。
眠気が残っていても、学院の帳面のことを思い出す。
昨日途中まで直した一覧表の続きや、今日ローザに渡す予定の教室使用表のことを考える。そうすると自然に身体が起きるのだ。
それが、自分でも少し不思議だった。
「お嬢様」
朝の支度を手伝っていた侍女が、鏡越しに顔をのぞき込んだ。
「今日は少し、色味のあるお召し物になさいませんか」
「色味?」
「ええ。最近、以前よりお顔色がやわらかく見えますから」
リディアは思わず鏡の中の自分を見た。
派手な顔立ちではない。
大きく印象が変わったわけでもない。薄茶の髪も、落ち着いた目元も、侯爵家にいた頃と何も変わらないはずだった。
けれど、たしかに違うのかもしれない。
以前はいつも、どこかで力が入っていた。
笑うときも、背筋を伸ばすときも、呼吸をするときも。侯爵夫人として乱れないように、何かを押さえ込むようにして生きていた。
今はまだ、胸の奥に痛みが残っている。
思い出せば苦しいし、夜になるとふと、あの屋敷の静けさを思い出すこともある。
それでも、朝の顔つきだけは少し変わったのかもしれなかった。
「では、少しだけ色のあるものを」
そう答えると、侍女は嬉しそうに頷いた。
選ばれたのは、淡い若草色のドレスだった。華やかすぎず、それでも今までより少しだけやわらかい色だ。袖を通してみると、不思議と落ち着いた。
学院へ着くと、事務室にはすでにローザがいた。
「おはようございます、リディア様」
「おはようございます」
「よかった。昨日お願いした一覧表、朝一番で見せていただきたくて」
その言葉に、リディアは小さく笑った。
「そんなに急がなくても」
「急ぎますわ。あれがあると、来週の予定がずっと立てやすくなりますもの」
机に着き、鞄から紙束を取り出す。
教師ごとの授業予定と、教室ごとの使用表、それに教材の不足欄を学年ごとに見やすくまとめた一覧だった。
ローザは受け取るなり、ぱらぱらとめくって目を丸くする。
「まあ……これ、昨日のうちにここまで?」
「寝る前に少しだけ」
「少しだけ、ではございませんわ」
その言い方が可笑しくて、リディアはふっと息をこぼした。
こういうふうに、誰かが素直に驚いて、喜んでくれる。
侯爵家では、整っていることは当たり前だった。だから感謝されるより先に、それが当然の務めとして流れていった。
でもここでは違う。
机の上が整うこと
予定が見やすくなること
礼状がきちんと届くこと
そのひとつひとつを、ちゃんと「助かる」と言ってもらえる。
事務室の空気は、この頃ようやく落ち着いてきた。
紙の置き場所が決まり、帳面の書式もそろい始めたせいで、探し物に時間を取られることが減ったのだ。
以前は誰かが
「あれはどこでしたか」
と一日に何度も尋ねていたのに、最近はそれが目に見えて減っている。
「リディア様」
昼前、若い事務補佐の女性が、出来上がった封書の束を持ってきた。
「礼状、これで大丈夫でしょうか」
受け取って確認する。
宛名、敬称、文面の日付、寄付品の内容。どれもきちんと整っている。
「ええ。今回はとても綺麗に揃っているわ」
「本当ですか?」
「はい。前よりずっと見やすい」
その一言だけで、彼女の顔がぱっと明るくなった。
「うれしいです。前は、私が遅いせいで皆さまを待たせてばかりで……」
「遅かったのではなく、やり方が整っていなかっただけよ」
リディアはやわらかく言う。
「順番が見えれば、人はもっと落ち着いて動けるもの」
「……はい」
その返事は、前より少しだけ自信があるように聞こえた。
昼食のあと、クラウスが新しい寄付者名簿を持ってきた。
「こちら、来月分の予定なのですが」
椅子を引き寄せ、二人で並んで見る。
名簿の中には、先日視察に来たアシュベリー辺境伯の名もあった。
学院の暖房費の不足分を補うため、追加の支援を検討してくれているらしい。
カイルの名前を見た瞬間、リディアはほんの少しだけ指先に力を入れた。
あの日、彼は机の上を見ていた。
顔色ではなく、帳面を。肩書きではなく、整えられた流れを。
そのことが、今でも不思議なほど胸に残っている。
「リディア様?」
クラウスに呼ばれ、はっとする。
「申し訳ありません」
「いえいえ。こちらの支出配分、どう思われますか」
話を戻し、数字へ目を落とす。
考え始めれば、頭はすぐに切り替わる。
午後の作業が一段落した頃、ローザが何気ない口調で言った。
「最近、少しお顔つきが変わりましたね」
ペン先が止まる。
「私が?」
「ええ」
ローザは帳面を閉じながら、あっさり続けた。
「最初に来られた頃は、もっとお静かでしたわ。もちろん今も落ち着いていらっしゃるけれど……なんというか、今は少しやわらかいです」
やわらかい。
「そんなふうに見えますか」
「見えます」
ローザは迷いなく言う。
「前は、きれいだけれど触れたら割れてしまいそうな感じでした。でも今は違います。
」
その言葉に、リディアは返事を忘れた。
「……不思議ですね」
やっとそれだけ言うと、ローザは首を傾げた。
「不思議ですか?」
「ええ。私はまだ、そんなに変わったつもりはないのに」
「人は案外、自分のことは分かりませんもの」
そう言って笑い、ローザは教室へ戻っていった。
そのあともしばらく、リディアは机の上の紙を見つめたまま動けなかった。
変わったのだろうか。
自分ではまだ、胸の中に重いものが残っている。ふとした拍子に思い出して、どうしようもなく苦しくなることもある。侯爵家での二年間が消えたわけではない。
それでも、ほんの少しずつ何かは変わっているのかもしれない。
息の仕方が
朝の立ち上がり方が
そして、目の向け先が
帰宅すると、ちょうどイザベルが廊下にいた。
「お帰りなさいませ」
「ただいま戻りました」
母は娘の顔を見るなり、目を細めた。
「今日は少し、いい日だったようね」
「どうしてそう思うの?」
「顔に書いてあるわ」
その言い方に、リディアは思わず笑ってしまう。
「そんなにはっきり?」
「ええ。以前よりずっと」
イザベルは娘の肩にそっと手を置いた。
「少しだけ、顔が変わったわ」
同じことを、その日に二度言われるとは思わなかった。
リディアは無意識に頬へ手をやった。
何も特別なことはしていない。髪型も、服も、化粧も変わっていない。
それでも変わるものがあるのだろうか。
「誰かに褒められたから、ではないのよ」
イザベルが静かに言う。
「あなたが少しずつ、自分の足で立ち直り始めてるから」
その言葉に、リディアは目を伏せた。
立ち直る、というほど強いものではない。
まだ途中だ。痛みもあるし、立ち止まりそうになる日もあるだろう。
けれど、たしかに今日の自分は、昨日までとは少し違った。
夜、自室の鏡の前に立つ。
若草色のドレスは、思ったより自分に馴染んでいた。
顔立ちは何も変わらない。それでも目元の力が、少しだけ抜けているように見えた。
地味だったのではない。
ただ、あの屋敷では息を潜めるように生きていただけだった。
ふいに、そんな言葉が胸の内に浮かぶ。
リディアは鏡の中の自分を、しばらくじっと見つめた。
自分の足で立ち始めた姿だった。
朝、目を覚ましたときの体の重さが、少しだけ軽くなっている。
それに気づいたのは、ほんの些細なことからだった。
以前は、起き上がるまでに時間がかかった。
目を開けても、しばらく天井を見つめたまま動けなかった。今日一日を思うだけで、胸の奥に冷たいものが溜まっていくようだった。
けれど最近は違う。
眠気が残っていても、学院の帳面のことを思い出す。
昨日途中まで直した一覧表の続きや、今日ローザに渡す予定の教室使用表のことを考える。そうすると自然に身体が起きるのだ。
それが、自分でも少し不思議だった。
「お嬢様」
朝の支度を手伝っていた侍女が、鏡越しに顔をのぞき込んだ。
「今日は少し、色味のあるお召し物になさいませんか」
「色味?」
「ええ。最近、以前よりお顔色がやわらかく見えますから」
リディアは思わず鏡の中の自分を見た。
派手な顔立ちではない。
大きく印象が変わったわけでもない。薄茶の髪も、落ち着いた目元も、侯爵家にいた頃と何も変わらないはずだった。
けれど、たしかに違うのかもしれない。
以前はいつも、どこかで力が入っていた。
笑うときも、背筋を伸ばすときも、呼吸をするときも。侯爵夫人として乱れないように、何かを押さえ込むようにして生きていた。
今はまだ、胸の奥に痛みが残っている。
思い出せば苦しいし、夜になるとふと、あの屋敷の静けさを思い出すこともある。
それでも、朝の顔つきだけは少し変わったのかもしれなかった。
「では、少しだけ色のあるものを」
そう答えると、侍女は嬉しそうに頷いた。
選ばれたのは、淡い若草色のドレスだった。華やかすぎず、それでも今までより少しだけやわらかい色だ。袖を通してみると、不思議と落ち着いた。
学院へ着くと、事務室にはすでにローザがいた。
「おはようございます、リディア様」
「おはようございます」
「よかった。昨日お願いした一覧表、朝一番で見せていただきたくて」
その言葉に、リディアは小さく笑った。
「そんなに急がなくても」
「急ぎますわ。あれがあると、来週の予定がずっと立てやすくなりますもの」
机に着き、鞄から紙束を取り出す。
教師ごとの授業予定と、教室ごとの使用表、それに教材の不足欄を学年ごとに見やすくまとめた一覧だった。
ローザは受け取るなり、ぱらぱらとめくって目を丸くする。
「まあ……これ、昨日のうちにここまで?」
「寝る前に少しだけ」
「少しだけ、ではございませんわ」
その言い方が可笑しくて、リディアはふっと息をこぼした。
こういうふうに、誰かが素直に驚いて、喜んでくれる。
侯爵家では、整っていることは当たり前だった。だから感謝されるより先に、それが当然の務めとして流れていった。
でもここでは違う。
机の上が整うこと
予定が見やすくなること
礼状がきちんと届くこと
そのひとつひとつを、ちゃんと「助かる」と言ってもらえる。
事務室の空気は、この頃ようやく落ち着いてきた。
紙の置き場所が決まり、帳面の書式もそろい始めたせいで、探し物に時間を取られることが減ったのだ。
以前は誰かが
「あれはどこでしたか」
と一日に何度も尋ねていたのに、最近はそれが目に見えて減っている。
「リディア様」
昼前、若い事務補佐の女性が、出来上がった封書の束を持ってきた。
「礼状、これで大丈夫でしょうか」
受け取って確認する。
宛名、敬称、文面の日付、寄付品の内容。どれもきちんと整っている。
「ええ。今回はとても綺麗に揃っているわ」
「本当ですか?」
「はい。前よりずっと見やすい」
その一言だけで、彼女の顔がぱっと明るくなった。
「うれしいです。前は、私が遅いせいで皆さまを待たせてばかりで……」
「遅かったのではなく、やり方が整っていなかっただけよ」
リディアはやわらかく言う。
「順番が見えれば、人はもっと落ち着いて動けるもの」
「……はい」
その返事は、前より少しだけ自信があるように聞こえた。
昼食のあと、クラウスが新しい寄付者名簿を持ってきた。
「こちら、来月分の予定なのですが」
椅子を引き寄せ、二人で並んで見る。
名簿の中には、先日視察に来たアシュベリー辺境伯の名もあった。
学院の暖房費の不足分を補うため、追加の支援を検討してくれているらしい。
カイルの名前を見た瞬間、リディアはほんの少しだけ指先に力を入れた。
あの日、彼は机の上を見ていた。
顔色ではなく、帳面を。肩書きではなく、整えられた流れを。
そのことが、今でも不思議なほど胸に残っている。
「リディア様?」
クラウスに呼ばれ、はっとする。
「申し訳ありません」
「いえいえ。こちらの支出配分、どう思われますか」
話を戻し、数字へ目を落とす。
考え始めれば、頭はすぐに切り替わる。
午後の作業が一段落した頃、ローザが何気ない口調で言った。
「最近、少しお顔つきが変わりましたね」
ペン先が止まる。
「私が?」
「ええ」
ローザは帳面を閉じながら、あっさり続けた。
「最初に来られた頃は、もっとお静かでしたわ。もちろん今も落ち着いていらっしゃるけれど……なんというか、今は少しやわらかいです」
やわらかい。
「そんなふうに見えますか」
「見えます」
ローザは迷いなく言う。
「前は、きれいだけれど触れたら割れてしまいそうな感じでした。でも今は違います。
」
その言葉に、リディアは返事を忘れた。
「……不思議ですね」
やっとそれだけ言うと、ローザは首を傾げた。
「不思議ですか?」
「ええ。私はまだ、そんなに変わったつもりはないのに」
「人は案外、自分のことは分かりませんもの」
そう言って笑い、ローザは教室へ戻っていった。
そのあともしばらく、リディアは机の上の紙を見つめたまま動けなかった。
変わったのだろうか。
自分ではまだ、胸の中に重いものが残っている。ふとした拍子に思い出して、どうしようもなく苦しくなることもある。侯爵家での二年間が消えたわけではない。
それでも、ほんの少しずつ何かは変わっているのかもしれない。
息の仕方が
朝の立ち上がり方が
そして、目の向け先が
帰宅すると、ちょうどイザベルが廊下にいた。
「お帰りなさいませ」
「ただいま戻りました」
母は娘の顔を見るなり、目を細めた。
「今日は少し、いい日だったようね」
「どうしてそう思うの?」
「顔に書いてあるわ」
その言い方に、リディアは思わず笑ってしまう。
「そんなにはっきり?」
「ええ。以前よりずっと」
イザベルは娘の肩にそっと手を置いた。
「少しだけ、顔が変わったわ」
同じことを、その日に二度言われるとは思わなかった。
リディアは無意識に頬へ手をやった。
何も特別なことはしていない。髪型も、服も、化粧も変わっていない。
それでも変わるものがあるのだろうか。
「誰かに褒められたから、ではないのよ」
イザベルが静かに言う。
「あなたが少しずつ、自分の足で立ち直り始めてるから」
その言葉に、リディアは目を伏せた。
立ち直る、というほど強いものではない。
まだ途中だ。痛みもあるし、立ち止まりそうになる日もあるだろう。
けれど、たしかに今日の自分は、昨日までとは少し違った。
夜、自室の鏡の前に立つ。
若草色のドレスは、思ったより自分に馴染んでいた。
顔立ちは何も変わらない。それでも目元の力が、少しだけ抜けているように見えた。
地味だったのではない。
ただ、あの屋敷では息を潜めるように生きていただけだった。
ふいに、そんな言葉が胸の内に浮かぶ。
リディアは鏡の中の自分を、しばらくじっと見つめた。
自分の足で立ち始めた姿だった。
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