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第40章「影の襲来(白百合の間を閉ざす影)」
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白百合の間の扉が
音もなく閉まった瞬間、
空気がわずかに震え、
冷たさが足元から這い上がってきた。
王太后が眉をひそめる。
「……この風……誰が扉を閉めたのです?」
しかし侍従も兵も、
誰一人として扉に触れていない。
記録官が震える声で呟く。
「これは……魔術では……?
白百合の間は古より“影祀りの部屋”……
扉は外側からではなく……
内側から閉じることがあると……」
王太后の瞳に険しい光が宿る。
「内側……?
では、誰が……?」
そのとき。
――“シャラ……ッ”
白百合の花弁が床を滑るように動いた。
花弁が宙に舞い上がり、
まるで雪が逆流するように、
天井へ向かって渦を描く。
宮廷魔術師は血相を変えた。
「下がれッ!!
これは——影が来る!!」
白百合の間の中心、
大理石の床に刻まれた“白百合紋”が
淡く光り始めた。
光は美しい。
けれど冷たすぎる。
シャルロットは胸を押さえた。
(影……
近づいている……
わたくしを……呼んでいる……)
突然、
白百合のレリーフが一斉に浮かび上がり、
白い影のような裂け目が壁に走った。
第二王子が剣を抜く。
「守りを固めろ!
何が起きても——
公爵夫人を中央から動かすな!」
兵たちがシャルロットの周囲を囲む。
だがシャルロットは
その中心に立ったまま、
不思議なほど静かだった。
(来る……
ミレイユが……)
冷たい風が吹いた。
そして——
白百合の香りをまとった影が
ゆっくりと姿を現した。
白いドレスの裾。
透けるような影の指先。
闇を映す瞳。
ミレイユが、
白百合の間の中心に立った。
しかしその姿は、
以前よりも“薄い”。
が、瞳だけは強く光っている。
王太后は息を呑む。
「これが……
カルロス公爵家を襲った影……!」
宮廷魔術師が杖を構える。
「後退を!
影を刺激するな!!」
しかし影は
誰にも視線を向けず、
ただひとりを見つめていた。
シャルロット。
影はゆっくり微笑んだ。
――「やっぱり……来てくれたのね」
シャルロットの心臓が跳ねる。
(ミレイユ……
わたくしを……呼んでいた……)
影は歩み寄る。
美しい歩み。
静かな舞のような足どり。
そのたびに、
白百合の間の温度が下がる。
王太后が震える声で言った。
「シャルロット、下がりなさい!!
その影は……あなたを狙っている!」
シャルロットは首を振った。
「逃げません……
わたくしは鍵です……」
王家の全員が息を呑む。
影はさらに近づき、
小さな声で言った。
――「あなたの涙は……
わたしを壊す……
でも同時に……
あなたこそが“扉を開ける鍵”」
シャルロットは凍りついた。
(鍵……
影を封じる鍵……
影を開く鍵……
どちらの意味……?)
影は柔らかく笑った。
――「ねえ……
あなたは自分を“妻”だと思っているの……?
違うわ……
あなたは“扉”なのよ」
――「わたしたち影が生まれた扉を、
閉じる力も、開く力も……
あなた次第……」
宮廷魔術師が叫んだ。
「囲め!! 影が動く!!」
兵が一斉に影を囲もうとする。
しかし——
影のドレスの裾が揺れただけで、
兵たちが弾かれたように後退した。
白百合の間の床に
白い霧が広がる。
影がシャルロットに手を伸ばす。
――「わたしはあなたを壊しに来たんじゃない。
“奪い”に来たの」
王太后が叫ぶ。
「何を……奪うというのです!!」
影の瞳がシャルロットを見据えた。
――「“本妻の席”。
わたしのものよ。」
シャルロットの胸が締めつけられる。
影が囁く。
――「そしてもうひとつ……」
影の手が、
シャルロットの胸元に触れようとする。
――「あなたの……『鍵の心臓』」
宮廷魔術師が蒼白になった。
「やめろ!!
鍵を抜かれれば……
影が世界にあふれる!!」
シャルロットは震えながらも
影をまっすぐ見据えた。
「ミレイユ……
あなたは……
何を望んでいるの……?」
影が初めて、
困ったように笑った。
――「望んだことなんて、
一度も……ないわ」
――「ただ……
“生まれた瞬間”から……
奪われたのよ」
白百合の花弁が
影のまわりで舞い上がり、
部屋の全員が身構える。
影は囁いた。
――「だから返して。
あなたの席も、あなたの鍵も……
“わたしのもの”なんだから。」
その瞬間、
白百合の間は音を立てて閉ざされ、
外の世界との繋がりが完全に消えた。
影の襲来は——
まだ始まったばかりだった。
音もなく閉まった瞬間、
空気がわずかに震え、
冷たさが足元から這い上がってきた。
王太后が眉をひそめる。
「……この風……誰が扉を閉めたのです?」
しかし侍従も兵も、
誰一人として扉に触れていない。
記録官が震える声で呟く。
「これは……魔術では……?
白百合の間は古より“影祀りの部屋”……
扉は外側からではなく……
内側から閉じることがあると……」
王太后の瞳に険しい光が宿る。
「内側……?
では、誰が……?」
そのとき。
――“シャラ……ッ”
白百合の花弁が床を滑るように動いた。
花弁が宙に舞い上がり、
まるで雪が逆流するように、
天井へ向かって渦を描く。
宮廷魔術師は血相を変えた。
「下がれッ!!
これは——影が来る!!」
白百合の間の中心、
大理石の床に刻まれた“白百合紋”が
淡く光り始めた。
光は美しい。
けれど冷たすぎる。
シャルロットは胸を押さえた。
(影……
近づいている……
わたくしを……呼んでいる……)
突然、
白百合のレリーフが一斉に浮かび上がり、
白い影のような裂け目が壁に走った。
第二王子が剣を抜く。
「守りを固めろ!
何が起きても——
公爵夫人を中央から動かすな!」
兵たちがシャルロットの周囲を囲む。
だがシャルロットは
その中心に立ったまま、
不思議なほど静かだった。
(来る……
ミレイユが……)
冷たい風が吹いた。
そして——
白百合の香りをまとった影が
ゆっくりと姿を現した。
白いドレスの裾。
透けるような影の指先。
闇を映す瞳。
ミレイユが、
白百合の間の中心に立った。
しかしその姿は、
以前よりも“薄い”。
が、瞳だけは強く光っている。
王太后は息を呑む。
「これが……
カルロス公爵家を襲った影……!」
宮廷魔術師が杖を構える。
「後退を!
影を刺激するな!!」
しかし影は
誰にも視線を向けず、
ただひとりを見つめていた。
シャルロット。
影はゆっくり微笑んだ。
――「やっぱり……来てくれたのね」
シャルロットの心臓が跳ねる。
(ミレイユ……
わたくしを……呼んでいた……)
影は歩み寄る。
美しい歩み。
静かな舞のような足どり。
そのたびに、
白百合の間の温度が下がる。
王太后が震える声で言った。
「シャルロット、下がりなさい!!
その影は……あなたを狙っている!」
シャルロットは首を振った。
「逃げません……
わたくしは鍵です……」
王家の全員が息を呑む。
影はさらに近づき、
小さな声で言った。
――「あなたの涙は……
わたしを壊す……
でも同時に……
あなたこそが“扉を開ける鍵”」
シャルロットは凍りついた。
(鍵……
影を封じる鍵……
影を開く鍵……
どちらの意味……?)
影は柔らかく笑った。
――「ねえ……
あなたは自分を“妻”だと思っているの……?
違うわ……
あなたは“扉”なのよ」
――「わたしたち影が生まれた扉を、
閉じる力も、開く力も……
あなた次第……」
宮廷魔術師が叫んだ。
「囲め!! 影が動く!!」
兵が一斉に影を囲もうとする。
しかし——
影のドレスの裾が揺れただけで、
兵たちが弾かれたように後退した。
白百合の間の床に
白い霧が広がる。
影がシャルロットに手を伸ばす。
――「わたしはあなたを壊しに来たんじゃない。
“奪い”に来たの」
王太后が叫ぶ。
「何を……奪うというのです!!」
影の瞳がシャルロットを見据えた。
――「“本妻の席”。
わたしのものよ。」
シャルロットの胸が締めつけられる。
影が囁く。
――「そしてもうひとつ……」
影の手が、
シャルロットの胸元に触れようとする。
――「あなたの……『鍵の心臓』」
宮廷魔術師が蒼白になった。
「やめろ!!
鍵を抜かれれば……
影が世界にあふれる!!」
シャルロットは震えながらも
影をまっすぐ見据えた。
「ミレイユ……
あなたは……
何を望んでいるの……?」
影が初めて、
困ったように笑った。
――「望んだことなんて、
一度も……ないわ」
――「ただ……
“生まれた瞬間”から……
奪われたのよ」
白百合の花弁が
影のまわりで舞い上がり、
部屋の全員が身構える。
影は囁いた。
――「だから返して。
あなたの席も、あなたの鍵も……
“わたしのもの”なんだから。」
その瞬間、
白百合の間は音を立てて閉ざされ、
外の世界との繋がりが完全に消えた。
影の襲来は——
まだ始まったばかりだった。
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