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第四章「侯爵家の令嬢として
アルテンベルク侯爵家の朝は、早い。
父、レオンハルト・フォン・アルテンベルクは、夜明け前から書斎に籠もる習慣を持つ。亡き妻が生きていた頃からそうだったと、古参の使用人たちは言う。
リーゼロッテが書斎を訪ねたのは、朝食の前だった。
扉をノックすると、低い声が返ってきた。
「誰だ」
「リーゼロッテです、お父様」
少しの間があった。
「入りなさい」
レオンハルト侯爵は、五十二歳になる。
かつては社交界で「北方の獅子」と呼ばれた猛々しさの面影を残しつつ、今は落ち着いた威厳をまとった初老の貴族だ。白髪交じりの黒髪、娘と同じ深緑色の瞳。書類に向けていた目を上げ、リーゼロッテを見た。
「こんな朝早くに。何かあったか」
「少し、ご相談がございます」
「座りなさい」
リーゼロッテは父の向かいに座った。
書斎は静かだった。暖炉の火が低く燃えていて、積み上げられた書類の間に、亡き母の小さな肖像画が置いてある。リーゼロッテはいつも、この部屋に来るたびにその肖像画を見る。
今日も、少しだけ見た。
(お母様、聞いていてください)
「お父様」
「ああ」
「一つ、やってみたいことがございます」
話したのは、二つのことだった。
一つは、孤児院への支援。
王都の外れに、聖イレーナ孤児院という施設がある。資金難で建物の修繕もままならず、子どもたちが冬の寒さに耐えながら暮らしていると、慈善活動に熱心な伯爵夫人から聞いたことがあった。
もう一つは、女子教育施設の設立。
平民の女子が読み書きや算術を学べる場所が、王都にはほとんどない。学びたくても学べない子どもたちがいる。小さな規模でいいから、始めてみたいと思っていた。
父は黙って聞いていた。
リーゼロッテが話し終えると、しばらく暖炉の火を見ていた。
「費用は」
「私の持参金の一部を使わせてください。あとは、賛同してくださる方々からの支援を募ろうかと」
「婚約者の公爵には話したか」
「……まだです」
「なぜ」
リーゼロッテは少し間を置いてから答えた。
「まず、自分の足で立てるかどうか、確かめてみたいのです」
父は娘を見た。
深緑色の瞳で、じっと。
リーゼロッテは視線を逸らさなかった。
長い沈黙があった。
「……お前の母も」
レオンハルトは静かに言った。
「そういう目をするときは、もう決めていた」
リーゼロッテは何も言わなかった。
「分かった。費用の件は父が手配しよう。施設の場所も、心当たりがある」
「お父様」
「ただし」
父は書類に目を戻しながら言った。
「無理をするな。お前は一人じゃない」
リーゼロッテは立ち上がり、深く一礼した。
「ありがとうございます、お父様」
扉を閉める前に、もう一度だけ肖像画を見た。
母が微笑んでいた。
孤児院への最初の訪問は、その週の木曜日だった。
聖イレーナ孤児院は、王都の東の外れにあった。
石造りの建物は古く、壁のところどころに亀裂が入っている。庭の木は手入れが行き届いておらず、枝が伸び放題だ。しかし門をくぐると、子どもたちの声が聞こえた。
甲高い笑い声。誰かを呼ぶ声。転んで泣く声。
リーゼロッテはその声を聞いて、少しだけ胸が緩んだ。
院長のシスター・アガーテは、七十近い小柄な修道女だった。リーゼロッテを見て目を丸くし、それから深く頭を下げた。
「アルテンベルク侯爵令嬢様が、直々においでくださるとは」
「こちらこそ、受け入れてくださってありがとうございます」
「何かご支援いただけると伺っておりましたが、まさかお嬢様ご本人が」
「施設の様子を自分の目で見てから動きたかったので」
シスター・アガーテはもう一度頭を下げた。
「……どうぞ、中へ」
施設の中を案内してもらいながら、リーゼロッテはメモを取った。
修繕が必要な箇所。不足している物資。子どもたちの人数と年齢層。冬の暖房費の問題。雨漏りのする部屋。
マリアが後ろから小声で言った。
「お嬢様、随分と細かく」
「使うお金に無駄を出したくないから」
子どもたちはリーゼロッテを珍しそうに見た。
綺麗なドレスの令嬢が来ることなど、滅多にないのだろう。
五歳くらいの小さな女の子が、リーゼロッテのスカートの裾を、おずおずと引っ張った。
リーゼロッテはしゃがんで目線を合わせた。
「なあに?」
女の子は少し考えてから言った。
「おねえさん、綺麗」
リーゼロッテは笑った。
完璧な微笑みではない。少し驚いて、それから本当に嬉しくなって、そういう顔で笑った。
「ありがとう。あなたも綺麗よ」
女の子は頬を赤くして、走って逃げていった。
マリアが後ろで、こっそり目を拭いていた。
帰り道の馬車の中で、リーゼロッテはメモを読み返していた。
「マリア、泣いていたでしょう」
「……泣いていません」
「嘘をつくのが下手ね」
「お嬢様だって、笑っていらっしゃいました」
「笑っていたわ」
「本物の笑顔でした」
リーゼロッテはメモから顔を上げた。
「……そうだったかしら」
「はい」
マリアははっきり言った。
「あの子どもたちと話されているとき、公爵様の前では見たことのないお顔をされていました」
リーゼロッテは窓の外を見た。
何も言わなかった。
しばらくしてから、静かに言った。
「そうね。あの子たちは何も求めないから」
「え?」
「完璧な婚約者でいることも、侯爵家の娘らしくあることも、誰かの期待に応えることも――あの子たちは何も求めない」
窓の外を、秋の街が流れていく。
「だから、笑えたのかもしれない」
マリアは黙っていた。
黙って、また目を拭いていた。
「泣かないの、マリア」
「……はい」
「約束でしょう」
「はい……でも」
「でも?」
「お嬢様が本物の笑顔をされると、どうしても」
リーゼロッテは小さく息を吐いた。
「難儀な侍女ね」
「はい、存じております」
女子教育施設の話が社交界に広まったのは、それから二週間後のことだった。
きっかけは、慈善活動に熱心な伯爵夫人が茶会の席で話したことだった。
「アルテンベルク侯爵令嬢が、平民の女子のための教育施設を作るらしいわ」
「まあ、あの大人しい令嬢が?」
「意外ね。公爵の婚約者として内助の功に徹しているとばかり思っていたけれど」
「お父上の侯爵様も全面的に支援されるとか」
「素晴らしいじゃない。ぜひ私も支援に加わりたいわ」
噂は広まるのが早かった。
一週間もしないうちに、リーゼロッテのもとへ支援の申し出が届き始めた。
エドワードがその話を聞いたのは、週に一度の面会の日だった。
「慈善事業を始めたそうだな、リーゼ」
「ええ」
「孤児院の支援と、教育施設の設立と」
「はい」
エドワードは少し眉を動かした。
「君らしくないと思うが」
リーゼロッテは首を傾けた。
笑顔のまま、穏やかに。
「あら」
静かに言った。
「では公爵様は、私のことをよくご存知でいらっしゃるのですか?」
エドワードは、答えられなかった。
リーゼロッテはそれ以上何も言わなかった。
ただ微笑んで、話題を変えた。
「お茶が冷めてしまいますよ、公爵様」
その夜、リーゼロッテは記録帳を開いた。
今日の分を書き足した。
第二十三項。本日の面会にて、慈善事業について「君らしくない」との発言あり。二年間の婚約期間中、婚約者の関心事を把握していなかった証左として記録。
ペンを置いた。
窓の外は夜だった。
リーゼロッテはランプの明かりの中で、今日一日を振り返った。
孤児院の女の子の顔。
「おねえさん、綺麗」という声。
あのとき自分が笑った顔を、自分では見ていない。
でも、マリアが言った。
本物の笑顔でした。
リーゼロッテは手帳を閉じた。
(そうか)
立ち上がり、窓の外を見た。
夜空に星が出ていた。
(「公爵の婚約者」でいる間は、本物の笑顔を知らなかった)
でも今日、知った。
「アルテンベルク侯爵令嬢」として動いたとき、子どもたちの前で、自分の意志で笑ったとき。
それが、本物だった。
(なら)
リーゼロッテは星を見ながら、静かに思った。
(婚約者を失っても、私は笑っていける)
翌週、社交界の夫人たちが囁いた。
「アルテンベルク侯爵令嬢、最近輝いていらっしゃるわね」
「公爵の婚約者としてではなく、ご自身の名前で活動されているからかしら」
「あのお方、ずっと控えめでいらっしゃったけれど」
「本当はこういう方だったのね」
その言葉は、リーゼロッテの耳には届かなかった。
しかしマリアの耳には届いた。
マリアはその夜、こっそり日記に書いた。
社交界の方々が、初めてお嬢様のお名前で呼んでいた。公爵様の婚約者としてではなく。アルテンベルク侯爵令嬢リーゼロッテ様として。
お嬢様はまだご存知ない。
でも、始まっている。
「アルテンベルク侯爵令嬢、本当にお心の美しい方ね」
社交界の夫人たちが囁く声が聞こえた夜。
リーゼロッテは孤児院の修繕費の見積もりを計算していた。
誰かに褒められるためではなく。
誰かに認められるためでもなく。
ただ、自分がそうしたいから。
――初めて、そういう動き方を知った夜だった。
父、レオンハルト・フォン・アルテンベルクは、夜明け前から書斎に籠もる習慣を持つ。亡き妻が生きていた頃からそうだったと、古参の使用人たちは言う。
リーゼロッテが書斎を訪ねたのは、朝食の前だった。
扉をノックすると、低い声が返ってきた。
「誰だ」
「リーゼロッテです、お父様」
少しの間があった。
「入りなさい」
レオンハルト侯爵は、五十二歳になる。
かつては社交界で「北方の獅子」と呼ばれた猛々しさの面影を残しつつ、今は落ち着いた威厳をまとった初老の貴族だ。白髪交じりの黒髪、娘と同じ深緑色の瞳。書類に向けていた目を上げ、リーゼロッテを見た。
「こんな朝早くに。何かあったか」
「少し、ご相談がございます」
「座りなさい」
リーゼロッテは父の向かいに座った。
書斎は静かだった。暖炉の火が低く燃えていて、積み上げられた書類の間に、亡き母の小さな肖像画が置いてある。リーゼロッテはいつも、この部屋に来るたびにその肖像画を見る。
今日も、少しだけ見た。
(お母様、聞いていてください)
「お父様」
「ああ」
「一つ、やってみたいことがございます」
話したのは、二つのことだった。
一つは、孤児院への支援。
王都の外れに、聖イレーナ孤児院という施設がある。資金難で建物の修繕もままならず、子どもたちが冬の寒さに耐えながら暮らしていると、慈善活動に熱心な伯爵夫人から聞いたことがあった。
もう一つは、女子教育施設の設立。
平民の女子が読み書きや算術を学べる場所が、王都にはほとんどない。学びたくても学べない子どもたちがいる。小さな規模でいいから、始めてみたいと思っていた。
父は黙って聞いていた。
リーゼロッテが話し終えると、しばらく暖炉の火を見ていた。
「費用は」
「私の持参金の一部を使わせてください。あとは、賛同してくださる方々からの支援を募ろうかと」
「婚約者の公爵には話したか」
「……まだです」
「なぜ」
リーゼロッテは少し間を置いてから答えた。
「まず、自分の足で立てるかどうか、確かめてみたいのです」
父は娘を見た。
深緑色の瞳で、じっと。
リーゼロッテは視線を逸らさなかった。
長い沈黙があった。
「……お前の母も」
レオンハルトは静かに言った。
「そういう目をするときは、もう決めていた」
リーゼロッテは何も言わなかった。
「分かった。費用の件は父が手配しよう。施設の場所も、心当たりがある」
「お父様」
「ただし」
父は書類に目を戻しながら言った。
「無理をするな。お前は一人じゃない」
リーゼロッテは立ち上がり、深く一礼した。
「ありがとうございます、お父様」
扉を閉める前に、もう一度だけ肖像画を見た。
母が微笑んでいた。
孤児院への最初の訪問は、その週の木曜日だった。
聖イレーナ孤児院は、王都の東の外れにあった。
石造りの建物は古く、壁のところどころに亀裂が入っている。庭の木は手入れが行き届いておらず、枝が伸び放題だ。しかし門をくぐると、子どもたちの声が聞こえた。
甲高い笑い声。誰かを呼ぶ声。転んで泣く声。
リーゼロッテはその声を聞いて、少しだけ胸が緩んだ。
院長のシスター・アガーテは、七十近い小柄な修道女だった。リーゼロッテを見て目を丸くし、それから深く頭を下げた。
「アルテンベルク侯爵令嬢様が、直々においでくださるとは」
「こちらこそ、受け入れてくださってありがとうございます」
「何かご支援いただけると伺っておりましたが、まさかお嬢様ご本人が」
「施設の様子を自分の目で見てから動きたかったので」
シスター・アガーテはもう一度頭を下げた。
「……どうぞ、中へ」
施設の中を案内してもらいながら、リーゼロッテはメモを取った。
修繕が必要な箇所。不足している物資。子どもたちの人数と年齢層。冬の暖房費の問題。雨漏りのする部屋。
マリアが後ろから小声で言った。
「お嬢様、随分と細かく」
「使うお金に無駄を出したくないから」
子どもたちはリーゼロッテを珍しそうに見た。
綺麗なドレスの令嬢が来ることなど、滅多にないのだろう。
五歳くらいの小さな女の子が、リーゼロッテのスカートの裾を、おずおずと引っ張った。
リーゼロッテはしゃがんで目線を合わせた。
「なあに?」
女の子は少し考えてから言った。
「おねえさん、綺麗」
リーゼロッテは笑った。
完璧な微笑みではない。少し驚いて、それから本当に嬉しくなって、そういう顔で笑った。
「ありがとう。あなたも綺麗よ」
女の子は頬を赤くして、走って逃げていった。
マリアが後ろで、こっそり目を拭いていた。
帰り道の馬車の中で、リーゼロッテはメモを読み返していた。
「マリア、泣いていたでしょう」
「……泣いていません」
「嘘をつくのが下手ね」
「お嬢様だって、笑っていらっしゃいました」
「笑っていたわ」
「本物の笑顔でした」
リーゼロッテはメモから顔を上げた。
「……そうだったかしら」
「はい」
マリアははっきり言った。
「あの子どもたちと話されているとき、公爵様の前では見たことのないお顔をされていました」
リーゼロッテは窓の外を見た。
何も言わなかった。
しばらくしてから、静かに言った。
「そうね。あの子たちは何も求めないから」
「え?」
「完璧な婚約者でいることも、侯爵家の娘らしくあることも、誰かの期待に応えることも――あの子たちは何も求めない」
窓の外を、秋の街が流れていく。
「だから、笑えたのかもしれない」
マリアは黙っていた。
黙って、また目を拭いていた。
「泣かないの、マリア」
「……はい」
「約束でしょう」
「はい……でも」
「でも?」
「お嬢様が本物の笑顔をされると、どうしても」
リーゼロッテは小さく息を吐いた。
「難儀な侍女ね」
「はい、存じております」
女子教育施設の話が社交界に広まったのは、それから二週間後のことだった。
きっかけは、慈善活動に熱心な伯爵夫人が茶会の席で話したことだった。
「アルテンベルク侯爵令嬢が、平民の女子のための教育施設を作るらしいわ」
「まあ、あの大人しい令嬢が?」
「意外ね。公爵の婚約者として内助の功に徹しているとばかり思っていたけれど」
「お父上の侯爵様も全面的に支援されるとか」
「素晴らしいじゃない。ぜひ私も支援に加わりたいわ」
噂は広まるのが早かった。
一週間もしないうちに、リーゼロッテのもとへ支援の申し出が届き始めた。
エドワードがその話を聞いたのは、週に一度の面会の日だった。
「慈善事業を始めたそうだな、リーゼ」
「ええ」
「孤児院の支援と、教育施設の設立と」
「はい」
エドワードは少し眉を動かした。
「君らしくないと思うが」
リーゼロッテは首を傾けた。
笑顔のまま、穏やかに。
「あら」
静かに言った。
「では公爵様は、私のことをよくご存知でいらっしゃるのですか?」
エドワードは、答えられなかった。
リーゼロッテはそれ以上何も言わなかった。
ただ微笑んで、話題を変えた。
「お茶が冷めてしまいますよ、公爵様」
その夜、リーゼロッテは記録帳を開いた。
今日の分を書き足した。
第二十三項。本日の面会にて、慈善事業について「君らしくない」との発言あり。二年間の婚約期間中、婚約者の関心事を把握していなかった証左として記録。
ペンを置いた。
窓の外は夜だった。
リーゼロッテはランプの明かりの中で、今日一日を振り返った。
孤児院の女の子の顔。
「おねえさん、綺麗」という声。
あのとき自分が笑った顔を、自分では見ていない。
でも、マリアが言った。
本物の笑顔でした。
リーゼロッテは手帳を閉じた。
(そうか)
立ち上がり、窓の外を見た。
夜空に星が出ていた。
(「公爵の婚約者」でいる間は、本物の笑顔を知らなかった)
でも今日、知った。
「アルテンベルク侯爵令嬢」として動いたとき、子どもたちの前で、自分の意志で笑ったとき。
それが、本物だった。
(なら)
リーゼロッテは星を見ながら、静かに思った。
(婚約者を失っても、私は笑っていける)
翌週、社交界の夫人たちが囁いた。
「アルテンベルク侯爵令嬢、最近輝いていらっしゃるわね」
「公爵の婚約者としてではなく、ご自身の名前で活動されているからかしら」
「あのお方、ずっと控えめでいらっしゃったけれど」
「本当はこういう方だったのね」
その言葉は、リーゼロッテの耳には届かなかった。
しかしマリアの耳には届いた。
マリアはその夜、こっそり日記に書いた。
社交界の方々が、初めてお嬢様のお名前で呼んでいた。公爵様の婚約者としてではなく。アルテンベルク侯爵令嬢リーゼロッテ様として。
お嬢様はまだご存知ない。
でも、始まっている。
「アルテンベルク侯爵令嬢、本当にお心の美しい方ね」
社交界の夫人たちが囁く声が聞こえた夜。
リーゼロッテは孤児院の修繕費の見積もりを計算していた。
誰かに褒められるためではなく。
誰かに認められるためでもなく。
ただ、自分がそうしたいから。
――初めて、そういう動き方を知った夜だった。
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