ユウとリナの四日間

奈月沙耶

文字の大きさ
上 下
21 / 32

21

しおりを挟む
 リナは自分も空の絵を描きたくなって考える。おにいさんはきっと怒ったりしない。まっさらな画用紙を見つけてちゃぶ台の上に置く。リナが学校で使っているのと同じ十二色の絵の具のチューブとパレットと筆。筆を洗うバケツがない。あとはぞうきんだ。
 探してみたけど絵の具用のバケツはない。おにいさんはどんなふうにしてるのだろう。とりあえずリナは考える。そうだ。コーヒー牛乳のパックだ。お昼に飲みきれなくて冷蔵庫にしまっておいたそれを出してリナはストローを力いっぱい吸う。パックの中を空にしてからストローを外し、上の部分を開く。
 学校の給食で同じ形の牛乳を飲んでいて、食べ終わった後にはパックを開いて洗って回収するのだ。だからつくりはわかってる。上の部分を開けばコップの形になる。一年生のときにはこの中にあさがおを間引いた苗を入れて持って帰ったこともあった。リナのお母さんはそれを捨ててしまったけれど。
 ゆすいだ紙パックの中に水を入れてリナはちゃぶ台に持っていく。昨日そうじにつかったぞうきんも持っていく。さて、とリナは白い画用紙と窓の外の青空を交互に見やる。
 パレットに青い絵の具と白い絵の具を出す。筆を水につけてからパレットの上で絵の具をのばす。青い絵の具に白い絵の具を少し混ぜて水色をつくる。そしてその水色で画用紙を塗った。学校の図工の授業では自分の顔を描いたり朝顔の絵を描いたりした。ものの形を描かなければならないのは難しかった。でも、これなら楽しそうだ。
 思うがまま、大胆に筆を走らせる。楽しい。ぺたぺたと色を塗ってリナは少し口を尖らせる。思った通りの色にならない。目の前の空の色と違う。もっと青が濃くて、でも透明な感じがする。青いセロファンが何枚も重なったみたいな。なのにリナが塗った水色はただみずっぽい感じがする。水の量が多かっただろうか。バケツで筆をゆすいでぞうきんで毛先を拭く。それからパレットの上の水色に青い絵の具を足してみる。今度は良い感じだ。
 また筆を洗ってぞうきんで拭く。今度は白い絵の具だけを筆に付けて画用紙の水色のうえにのせてみる。雲だから、まあるくもこもこと。水を含ませないで描いてみたのは良かったようだ。いいかんじの白い色だ。だけどまだ違う気がする。
しおりを挟む

処理中です...