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神同人作家と陸くんは嫉妬する
大雨のエントランス
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しかし大須賀を泊めた翌日、陸の言葉に由宇は過剰に反応してしまった。
推しだからそういう感情を持つのは当たり前だ、裏を返せば推しだからそういう仲になるんだと言われているのだと由宇は感じてしまった。そして蓋をしていた自分の気持ちが溢れ出てしまったのだ。
高西ユウだからそういう仲になったのではないか、もし高西ユウとして出会ってなければ、自分を好きになることはなかったのではないかととうとう陸に告げた。
渦巻いていた気持ちが止まらなくなって陸に八つ当たりしてしまったのだ。
最悪だ、と由宇は窓のそばでため息をついた。あれから陸からの連絡はない。きっといま彼は深く傷つき、悲しんでいる。それが分かっていながら由宇は陸に連絡できないでいるのは……怖いからだ。こんなに臆病で身勝手な由宇を、もう陸は見切ってしまったのではないか。年上のくせに、余裕のない我儘な自分。時間が経過するほど陸が遠く感じて足がすくんでしまう。
夜の雨はさらに激しくなっていく。一文字も書けないままに、コーヒーを淹れるためにキッチンに向かおうとした時、室内にエントランスホールの呼び出し音が響いた。
***
慌てて家を出たころに降っていた雨は、由宇さんのマンションに着く時に土砂降りになっていた。傘なんて持っていなかった僕はずぶ濡れのまま、エントランスホールで足を止める。連絡もしないでこんな時間に来てしまった。歓迎してくれるとは思えない状況。インターフォン越しに帰れと言われる可能性も否定できない。だけど、どうしても会いたい。決意して部屋番号を押すとしばらくして由宇さんの声が響いた。
「……陸?」
カメラ越しに僕の顔が見えたのだろうか。すぐ名前を呼ばれて、一気に涙腺が緩み鼻がツンとして涙がぼたぼたと落ちた。
「由宇さん……、由宇さあん」
名前を呼ぶしかできない。言葉が出なくてパクパクしていると、由宇さんはインターフォンの通話を切ってしまった。ああやっぱり拒絶されてしまった。もう、由宇さんは僕を嫌ってしまったんだ!
僕はその場にへたり込み、声を上げて泣く。エントランスホールに響く自分の声と雨の音。どんなに後悔してももう遅いんだ。もう由宇さんは僕のそばにいてくれない。僕だけの由宇さん……!
どれくらい泣いていたのか分からない。ガンガンと頭痛がひどくなり僕は一歩も歩けそうになく、そのまま床に座って泣いていた。すると奥からガタン、と音が聞こえ我にかえる。
マンションの住人だろうか。こんなとこにいたら不審者扱いされてしまう。そう思い立ち上がると奥から出てきたのはスエット姿の由宇さんだった。
「ばか、陸! ずぶ濡れじゃないか!」
走り寄ってきてしゃがみ込むと僕の体を抱きしめた。由宇さんの匂いに僕は止まりかけていた涙が一気に流れてきた。
推しだからそういう感情を持つのは当たり前だ、裏を返せば推しだからそういう仲になるんだと言われているのだと由宇は感じてしまった。そして蓋をしていた自分の気持ちが溢れ出てしまったのだ。
高西ユウだからそういう仲になったのではないか、もし高西ユウとして出会ってなければ、自分を好きになることはなかったのではないかととうとう陸に告げた。
渦巻いていた気持ちが止まらなくなって陸に八つ当たりしてしまったのだ。
最悪だ、と由宇は窓のそばでため息をついた。あれから陸からの連絡はない。きっといま彼は深く傷つき、悲しんでいる。それが分かっていながら由宇は陸に連絡できないでいるのは……怖いからだ。こんなに臆病で身勝手な由宇を、もう陸は見切ってしまったのではないか。年上のくせに、余裕のない我儘な自分。時間が経過するほど陸が遠く感じて足がすくんでしまう。
夜の雨はさらに激しくなっていく。一文字も書けないままに、コーヒーを淹れるためにキッチンに向かおうとした時、室内にエントランスホールの呼び出し音が響いた。
***
慌てて家を出たころに降っていた雨は、由宇さんのマンションに着く時に土砂降りになっていた。傘なんて持っていなかった僕はずぶ濡れのまま、エントランスホールで足を止める。連絡もしないでこんな時間に来てしまった。歓迎してくれるとは思えない状況。インターフォン越しに帰れと言われる可能性も否定できない。だけど、どうしても会いたい。決意して部屋番号を押すとしばらくして由宇さんの声が響いた。
「……陸?」
カメラ越しに僕の顔が見えたのだろうか。すぐ名前を呼ばれて、一気に涙腺が緩み鼻がツンとして涙がぼたぼたと落ちた。
「由宇さん……、由宇さあん」
名前を呼ぶしかできない。言葉が出なくてパクパクしていると、由宇さんはインターフォンの通話を切ってしまった。ああやっぱり拒絶されてしまった。もう、由宇さんは僕を嫌ってしまったんだ!
僕はその場にへたり込み、声を上げて泣く。エントランスホールに響く自分の声と雨の音。どんなに後悔してももう遅いんだ。もう由宇さんは僕のそばにいてくれない。僕だけの由宇さん……!
どれくらい泣いていたのか分からない。ガンガンと頭痛がひどくなり僕は一歩も歩けそうになく、そのまま床に座って泣いていた。すると奥からガタン、と音が聞こえ我にかえる。
マンションの住人だろうか。こんなとこにいたら不審者扱いされてしまう。そう思い立ち上がると奥から出てきたのはスエット姿の由宇さんだった。
「ばか、陸! ずぶ濡れじゃないか!」
走り寄ってきてしゃがみ込むと僕の体を抱きしめた。由宇さんの匂いに僕は止まりかけていた涙が一気に流れてきた。
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