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天使は甘いキスが好き
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恵がチラリと平片に云う。朝の一時限から、平片は授業をサボっている。この後は三時限で、音楽の時間だ。
「お前こそ行けよ」
「やだ」
平片は眼を丸くして恵を見る。まじめで通っていた恵が授業に出ないなんて。
「俺は平片の幼馴染で親友だ。傍に居たって良いだろう?」
平片は親友の言葉に俯いて、そっぽを向いた。
「…先生に怒られても知らねぇぞ」
「そん時は平片も一緒な」
平片は唇を噛み締めた。恵はいつもそうだ。昔から何かあれば一緒におこえあれる。恵が悪い訳じゃないのに。恵は平片の傍に居てくれた。
ーーーなんで俺じゃないんだよ。
平片はいつから気付いたのか、自分でも解らないぐらい、恵の事を好きになっていた。いつの頃からか、恵を想って自分自身を慰める。罪悪感が無い訳ではない。平片の肩に重みを感じて、平片はハッとした。平片が座っていた階段に陽が当たりだしたのか、恵はウトウトし始めて、とうとう平片の肩に頭を預けて居眠りをした様だ。
ーーーシャンプーの匂い…。
昔はよく一緒にお風呂に入ったのを、思い出す。女の子の様な顔立ちが、上級生から恵は眼を付けられ始めたので、親に頼んで祖父の家で遣っている道場で、空手を習った。
頑張って今は黒帯だ。恵の長い睫毛がピクンと揺れる。唇が緩く開き静かな寝息が聞こえた。
ーーー恵ってやっぱ美人だよな…伊吹が恵の小さい時にそっくりだから、伊吹もこんな風になるのか。
時の流れは速いなと、爺くさい事をボンヤリと思う。
ーーー少しだけ…。
平片は恵の柔らかそうな、ぷっくりとした唇を見詰める。
ーーーお前、俺が顔も知らない奴とキスしたのかよ?
恵を見詰め続けて来た。昔はよく平片の後ろに隠れて泣いていた。小さな可愛い恵は、やはり綺麗な少年へと成長していく。
ーーー罰、当たんねえよな? キスぐらい。少しなら。触れるぐらいなら…。
平片はドキドキしなが、恵に唇に自分の唇を重ね様とした。が、恵はムニャッと眼が覚めて、顔を上げた。
その刹那。
ゴンッ!
「ってぇっ!!」
平片は両手で鼻を覆った。
「いったあいっ! 何だよ!?」
恵は額を押さえながら平片を見、ギョッとなる。
「うわっ!? 平片鼻血! わりぃ、俺寝てたよな? 急に顔を上げたから」
「ふぁいひょうふだ(大丈夫だ)ひにふるな(気にするな)…」
目眩がする。罰が当たったのだ。神様のいけず…。三時間目は平片は鼻の片方にティッシュを詰めて、授業に出た。クラスメイト達が、何が遭ったのかより、その様が可笑しいらしく、チラリと見れば、笑いを堪えている。恵は平片の後姿を眺めながら、内心謝る。
ーーーでもなんで、平片の鼻とぶつかったんだ??
恵は音楽教師の持ち込んだCDから流れる、シューベルトを聴きながら首を傾げた。
ーーーあ、そうかぁ。あいつも眠くてウトウトしてたんだ。そうかそうか。
ひとり納得の恵に反して、髑髏を巻くような負のオーラを撒き散らす平方に、教師は何事かとビビリまくった。
「細川、明日平片の家行くのに、何かお菓子でも持ってくけど、お前もうち等と行くか?」
放課後。お泊り組みのクラスメイトが恵を誘う。
「明日食べるお菓子?」
恵は掃除当番で、箒を持つ手を止めた。
「そうかお菓子か。でもこの後約束してるから、ごめん。俺の分明日お金払うから、買って置いて貰って良いかな?」
「あれれ? もしかして例の彼女?」
恵は真っ赤になった。
「……犯罪じゃん」
ぼそりと平片が離れた所から、窓の外を眺めて云う。
「お前部活は?」
恵がクラスメイトに訊く。
「ふーんだ。この間もう引退。それより恵、高校絶対同じ所受けるんだよな?」
恵はハッとする。私立足立学園中学は、私立足立高校と同じ敷地内にある。このまま高校を受ければ、皆と同じ進路になる。黙り込む恵に、平片は不安になって恵に近付いた。
「なんだよ、まさか他を受けるのか?」
「細川? 皆と一緒の高校だろ?」
「恵…」
平片が恵を見詰める。
「お前こそ行けよ」
「やだ」
平片は眼を丸くして恵を見る。まじめで通っていた恵が授業に出ないなんて。
「俺は平片の幼馴染で親友だ。傍に居たって良いだろう?」
平片は親友の言葉に俯いて、そっぽを向いた。
「…先生に怒られても知らねぇぞ」
「そん時は平片も一緒な」
平片は唇を噛み締めた。恵はいつもそうだ。昔から何かあれば一緒におこえあれる。恵が悪い訳じゃないのに。恵は平片の傍に居てくれた。
ーーーなんで俺じゃないんだよ。
平片はいつから気付いたのか、自分でも解らないぐらい、恵の事を好きになっていた。いつの頃からか、恵を想って自分自身を慰める。罪悪感が無い訳ではない。平片の肩に重みを感じて、平片はハッとした。平片が座っていた階段に陽が当たりだしたのか、恵はウトウトし始めて、とうとう平片の肩に頭を預けて居眠りをした様だ。
ーーーシャンプーの匂い…。
昔はよく一緒にお風呂に入ったのを、思い出す。女の子の様な顔立ちが、上級生から恵は眼を付けられ始めたので、親に頼んで祖父の家で遣っている道場で、空手を習った。
頑張って今は黒帯だ。恵の長い睫毛がピクンと揺れる。唇が緩く開き静かな寝息が聞こえた。
ーーー恵ってやっぱ美人だよな…伊吹が恵の小さい時にそっくりだから、伊吹もこんな風になるのか。
時の流れは速いなと、爺くさい事をボンヤリと思う。
ーーー少しだけ…。
平片は恵の柔らかそうな、ぷっくりとした唇を見詰める。
ーーーお前、俺が顔も知らない奴とキスしたのかよ?
恵を見詰め続けて来た。昔はよく平片の後ろに隠れて泣いていた。小さな可愛い恵は、やはり綺麗な少年へと成長していく。
ーーー罰、当たんねえよな? キスぐらい。少しなら。触れるぐらいなら…。
平片はドキドキしなが、恵に唇に自分の唇を重ね様とした。が、恵はムニャッと眼が覚めて、顔を上げた。
その刹那。
ゴンッ!
「ってぇっ!!」
平片は両手で鼻を覆った。
「いったあいっ! 何だよ!?」
恵は額を押さえながら平片を見、ギョッとなる。
「うわっ!? 平片鼻血! わりぃ、俺寝てたよな? 急に顔を上げたから」
「ふぁいひょうふだ(大丈夫だ)ひにふるな(気にするな)…」
目眩がする。罰が当たったのだ。神様のいけず…。三時間目は平片は鼻の片方にティッシュを詰めて、授業に出た。クラスメイト達が、何が遭ったのかより、その様が可笑しいらしく、チラリと見れば、笑いを堪えている。恵は平片の後姿を眺めながら、内心謝る。
ーーーでもなんで、平片の鼻とぶつかったんだ??
恵は音楽教師の持ち込んだCDから流れる、シューベルトを聴きながら首を傾げた。
ーーーあ、そうかぁ。あいつも眠くてウトウトしてたんだ。そうかそうか。
ひとり納得の恵に反して、髑髏を巻くような負のオーラを撒き散らす平方に、教師は何事かとビビリまくった。
「細川、明日平片の家行くのに、何かお菓子でも持ってくけど、お前もうち等と行くか?」
放課後。お泊り組みのクラスメイトが恵を誘う。
「明日食べるお菓子?」
恵は掃除当番で、箒を持つ手を止めた。
「そうかお菓子か。でもこの後約束してるから、ごめん。俺の分明日お金払うから、買って置いて貰って良いかな?」
「あれれ? もしかして例の彼女?」
恵は真っ赤になった。
「……犯罪じゃん」
ぼそりと平片が離れた所から、窓の外を眺めて云う。
「お前部活は?」
恵がクラスメイトに訊く。
「ふーんだ。この間もう引退。それより恵、高校絶対同じ所受けるんだよな?」
恵はハッとする。私立足立学園中学は、私立足立高校と同じ敷地内にある。このまま高校を受ければ、皆と同じ進路になる。黙り込む恵に、平片は不安になって恵に近付いた。
「なんだよ、まさか他を受けるのか?」
「細川? 皆と一緒の高校だろ?」
「恵…」
平片が恵を見詰める。
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