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天使は甘いキスが好き
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「はい。任せて下さい」
裕太の返事に、鈴は眼を逸らせる。胸の痛みに気付かぬ様に。
「よう」
平片が、手土産のドーナツの入った箱を持ち上げる。恵の隣でお昼寝をしている、伊吹がモゾリと動く。
「久しぶり! 鈴も」
「うん。久しぶり。具合はどう?」
鈴が布団の横に正座し、鈴の隣に平片が胡坐を掻く。
「なんかさ、俺那須高原に行っいたみたいなんだけど、俺覚えて無くて。でもほら、もう起き上がれる様になったんだぜ?」
証拠にと恵は上半身を起こす。が、恵はよろめいた。鈴が慌てて恵を抱き止める。
「無茶しちゃ駄目だよ。今何か飲み物貰って来る。お祖母ちゃんキッチンだと思うから」
鈴が立ち上がった。
「ありがとう。鈴後で勉強教えてくれる? なんかさ事故に遭って、此処数か月の記憶が無いんだ。勉強困ったよ」
無理に笑っているのが解る。鈴も平片も困って眼を合わせた。
「勉強の方は大丈夫。僕が教えるよ」
「助かるよ。ねぇ、あの…さ」
「何?」
恵は俯いて、暫く逡巡してから顔を上げて、二人を見た。
「俺の言葉、信じてくれる?」
平片が口角を上げる。
「当たり前じゃんか。俺は恵の親友だし、鈴は恵の従兄弟だろ? 俺達は恵の見方だ」
恵は双眸を見開き、涙が溢れて頬を濡らす。
「もう心配するな」
平片が恵の手を握り、恵の涙を拭ってやった。鈴は見ない様に眼を逸らす。立ちあがってキッチンへ向かうと、十和子が香りの良い紅茶を淹れる処だった。
「あら。今ダージリンっていうのを淹れてみたの。リラックス効果があるのよ?」
「へぇ。良い香りだね。あ、ねぇお祖母ちゃんこの食器棚に入っている、ローズヒップピーチ。もしかして僕のお母さんから?」
美肌に良いと聞いた事がある。
「そう。この間一緒に買いに行ったの」
十和子は鈴のアメリカ人の母親を、本当の娘の様に可愛がっている。
「後、柚子緑茶は若返り。ヘルシーバランスには安形鉄観音」
「詳しいんだね?」
「実は、この間帰国した鈴のママとレストラン行ったらね? ドリンクバーに書いて在ったのよ」
「成る程、あ、これうまい」
お菓子にと、付け足しに出したチョコを鈴がひとくち。
「こら」
鈴は肩を竦めて微笑む。
「そうだ、お願いがあるんだけど、お祖母ちゃんお買い物あるから、行って来ても平気かしら。例の人来ても中には入れないでね?」
鈴はまだ龍之介を警戒する十和子に、はいと頷いた。
「次いでだから、アイス欲しい」
「恵みたいな事云うのね?」
「そう?」
「鈴…しつこい様だけど頼んだわよ? あの大学生には」
「解っています。耳にタコできそう。タイムサービス間に合わないよ。そっちが目当てでしょ?」
「あぁ! 今日はニンジンとジャガイモが安いのよ。カレーにするから食べて行くわよね?」
「ん? ん~裕太が食べるなら僕も」
十和子は厭きれた。
「あんたって昔から変わらないわね。裕太君優先で。そのくせ本人を前にすると踏ん反り帰って」
「…良い事聞いちゃったな」
鈴が驚いてチョコを喉に詰まらせた。
「ぐ、けほけほっ」
十和子が慌てて水を鈴に手渡す。
「鈴、好い加減にしなさい。伊吹と変わらないわよ? つまみ食い」
平方が十和子の物まねをして十和子があらあらと笑う。鈴は紅くなって、横で笑う平片を見上げた。
ーーー生意気っ昔は僕より小さかったのに。
「じゃ、買い物行って来るわね」
「十和子さん行ってらっしゃい。今夜はカレーか。鈴は? 食べる?」
十和子の言葉を聞いていて、敢えて意地悪な事を云う。
「裕太が食べるなら…」
今日は十二月の大晦日。本当なら今頃御節の支度をしている頃だ。十和子が玄関を開けて鍵を掛ける音がする。
「どれ? 伊吹の真似してつまみ食いする、悪戯っ子は何処かな?」
裕太の返事に、鈴は眼を逸らせる。胸の痛みに気付かぬ様に。
「よう」
平片が、手土産のドーナツの入った箱を持ち上げる。恵の隣でお昼寝をしている、伊吹がモゾリと動く。
「久しぶり! 鈴も」
「うん。久しぶり。具合はどう?」
鈴が布団の横に正座し、鈴の隣に平片が胡坐を掻く。
「なんかさ、俺那須高原に行っいたみたいなんだけど、俺覚えて無くて。でもほら、もう起き上がれる様になったんだぜ?」
証拠にと恵は上半身を起こす。が、恵はよろめいた。鈴が慌てて恵を抱き止める。
「無茶しちゃ駄目だよ。今何か飲み物貰って来る。お祖母ちゃんキッチンだと思うから」
鈴が立ち上がった。
「ありがとう。鈴後で勉強教えてくれる? なんかさ事故に遭って、此処数か月の記憶が無いんだ。勉強困ったよ」
無理に笑っているのが解る。鈴も平片も困って眼を合わせた。
「勉強の方は大丈夫。僕が教えるよ」
「助かるよ。ねぇ、あの…さ」
「何?」
恵は俯いて、暫く逡巡してから顔を上げて、二人を見た。
「俺の言葉、信じてくれる?」
平片が口角を上げる。
「当たり前じゃんか。俺は恵の親友だし、鈴は恵の従兄弟だろ? 俺達は恵の見方だ」
恵は双眸を見開き、涙が溢れて頬を濡らす。
「もう心配するな」
平片が恵の手を握り、恵の涙を拭ってやった。鈴は見ない様に眼を逸らす。立ちあがってキッチンへ向かうと、十和子が香りの良い紅茶を淹れる処だった。
「あら。今ダージリンっていうのを淹れてみたの。リラックス効果があるのよ?」
「へぇ。良い香りだね。あ、ねぇお祖母ちゃんこの食器棚に入っている、ローズヒップピーチ。もしかして僕のお母さんから?」
美肌に良いと聞いた事がある。
「そう。この間一緒に買いに行ったの」
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「詳しいんだね?」
「実は、この間帰国した鈴のママとレストラン行ったらね? ドリンクバーに書いて在ったのよ」
「成る程、あ、これうまい」
お菓子にと、付け足しに出したチョコを鈴がひとくち。
「こら」
鈴は肩を竦めて微笑む。
「そうだ、お願いがあるんだけど、お祖母ちゃんお買い物あるから、行って来ても平気かしら。例の人来ても中には入れないでね?」
鈴はまだ龍之介を警戒する十和子に、はいと頷いた。
「次いでだから、アイス欲しい」
「恵みたいな事云うのね?」
「そう?」
「鈴…しつこい様だけど頼んだわよ? あの大学生には」
「解っています。耳にタコできそう。タイムサービス間に合わないよ。そっちが目当てでしょ?」
「あぁ! 今日はニンジンとジャガイモが安いのよ。カレーにするから食べて行くわよね?」
「ん? ん~裕太が食べるなら僕も」
十和子は厭きれた。
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「…良い事聞いちゃったな」
鈴が驚いてチョコを喉に詰まらせた。
「ぐ、けほけほっ」
十和子が慌てて水を鈴に手渡す。
「鈴、好い加減にしなさい。伊吹と変わらないわよ? つまみ食い」
平方が十和子の物まねをして十和子があらあらと笑う。鈴は紅くなって、横で笑う平片を見上げた。
ーーー生意気っ昔は僕より小さかったのに。
「じゃ、買い物行って来るわね」
「十和子さん行ってらっしゃい。今夜はカレーか。鈴は? 食べる?」
十和子の言葉を聞いていて、敢えて意地悪な事を云う。
「裕太が食べるなら…」
今日は十二月の大晦日。本当なら今頃御節の支度をしている頃だ。十和子が玄関を開けて鍵を掛ける音がする。
「どれ? 伊吹の真似してつまみ食いする、悪戯っ子は何処かな?」
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