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天使は甘いキスが好き
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鈴は溢れる涙を片腕でゴシゴシと擦って、小さな公園のベンチに座った。
「なんで叩いちゃったんだろう? 裕太が居る前で…こんなんだから」
また涙が溢れる。どうして自分はこうなんだろう。
「またきっと、裕太に嫌われる。裕太、恵が可愛いから…大切だから」
もうお終い。この恋も切なさも。やっと通じた想いを、自分の手で壊してしまった。
「あ、れ~リンちゃんじゃない?」
鈴は不意に顔を上げる。サラリーマンが三人、酔っているのか鈴を囲む様にして、見下ろして来る。その中のひとりに見覚えがあった。平片と恋人同士になる前に、一晩だけのお遊びでホテルへ行った事のある顔だ。
鈴は蒼褪めて震えた。
ーーーなんで此処に!? 見付からない様に、都内で遊んでたのにっ。
都会の何処で会ったっけ? と鈴はズキズキと鳴る米神を押さえて、考える。
「何? 知り合い?」
「可愛いじゃん? 眼が青いね? コンタクト? オジサン達と遊ばない?」
鈴は震え上がった。罰が当たったんだ。心配してくれた恵の事を、思わず叩いたから。恥ずかしさに絶えられずに。
「ほら、あそこ。ラブホ在るしさぁ」
「この子男の子だけど、感度好いんだ。最後までしなかったけどな。震えて怖がって泣き出したからさ」
「何お前ホモ?」
「でもこんなに綺麗なら俺イケるかも」
鈴は鞄を胸に抱え、逃げ出そうと三人の隙間から抜け出した。が、二人に腕を掴まれた。鈴は悲鳴を上げる。
「裕太っゆうた!!」
無駄だと思いながらも、きっと嫌われただろう、愛しい人の名を呼ぶ。
「その手ぇ、放しやがれっ!」
ギュウッと瞑った鈴の耳に、平片の声が聞こえた。
「えっ!?」
「なんだお前っ!?」
鈴は信じられない思いで、平片を見詰めた。習っていた空手は今も健在で。三人の大人をあっという間に、伸してしまった。
「行くぞっ!!」
呆然とする鈴の腕を掴んで、平片が鈴を連れて走る。
「…なんで?」
「あ?」
鈴は人込みを縫う様に走る平片の背中を見詰めて泣いた。二人は漸く立ち止まると、鈴は平片の家の前まで来ていた事に気付く。
「昨日から夫婦で新年の旅行。兄貴は友人達とスキー旅行」
「…それは解ったけど」
鈴は解らなかった。平片の眼の前で、恵を叩いてしまったから。
「…どうして?」
「どうして追い掛けたかって? 当たり前だろう! 恋人が泣いて逃げるのを、ほっとく俺だと思ってたのかよ?」
鈴はまた涙を零した。
「だって。恵を叩いた。裕太の事僕の中で大事にしたかったのに…云われて、カッてなって叩いた~恥ずかしくて…」
わ~っと、ボロボロと泣く鈴を、平片が玄関の鍵を開けて鈴を中へ促し、ドアを閉める。
「恵が鈴にごめんって」
「…ヒク。…恵が?」
「あぁ。考え無しに云った事、後悔してる」
解るからこそ、鈴も後悔している。
「僕、今度こそ裕太に嫌われたと思ったんだ」
「なんで?」
「だからっ!」
顔を上げて、鈴が双眸を見開く。平片が唇を重ねたから。鈴は眼を閉じ、また涙を零す。
「鈴は泣き虫だな」
唇が離れて平片が笑う。
「う、うるさいっ」
鈴は真っ赤になって、そっぽを向いた。
「鈴は寂しがり屋だ」
「だまれっ」
「鈴はこんなに嫉妬深い」
「悪かったなっ」
「鈴」
「…なんだよ」
平片が顔の角度を変えて再びキスをする。
「…鈴」
「…何?」
「愛してる」
「なんで叩いちゃったんだろう? 裕太が居る前で…こんなんだから」
また涙が溢れる。どうして自分はこうなんだろう。
「またきっと、裕太に嫌われる。裕太、恵が可愛いから…大切だから」
もうお終い。この恋も切なさも。やっと通じた想いを、自分の手で壊してしまった。
「あ、れ~リンちゃんじゃない?」
鈴は不意に顔を上げる。サラリーマンが三人、酔っているのか鈴を囲む様にして、見下ろして来る。その中のひとりに見覚えがあった。平片と恋人同士になる前に、一晩だけのお遊びでホテルへ行った事のある顔だ。
鈴は蒼褪めて震えた。
ーーーなんで此処に!? 見付からない様に、都内で遊んでたのにっ。
都会の何処で会ったっけ? と鈴はズキズキと鳴る米神を押さえて、考える。
「何? 知り合い?」
「可愛いじゃん? 眼が青いね? コンタクト? オジサン達と遊ばない?」
鈴は震え上がった。罰が当たったんだ。心配してくれた恵の事を、思わず叩いたから。恥ずかしさに絶えられずに。
「ほら、あそこ。ラブホ在るしさぁ」
「この子男の子だけど、感度好いんだ。最後までしなかったけどな。震えて怖がって泣き出したからさ」
「何お前ホモ?」
「でもこんなに綺麗なら俺イケるかも」
鈴は鞄を胸に抱え、逃げ出そうと三人の隙間から抜け出した。が、二人に腕を掴まれた。鈴は悲鳴を上げる。
「裕太っゆうた!!」
無駄だと思いながらも、きっと嫌われただろう、愛しい人の名を呼ぶ。
「その手ぇ、放しやがれっ!」
ギュウッと瞑った鈴の耳に、平片の声が聞こえた。
「えっ!?」
「なんだお前っ!?」
鈴は信じられない思いで、平片を見詰めた。習っていた空手は今も健在で。三人の大人をあっという間に、伸してしまった。
「行くぞっ!!」
呆然とする鈴の腕を掴んで、平片が鈴を連れて走る。
「…なんで?」
「あ?」
鈴は人込みを縫う様に走る平片の背中を見詰めて泣いた。二人は漸く立ち止まると、鈴は平片の家の前まで来ていた事に気付く。
「昨日から夫婦で新年の旅行。兄貴は友人達とスキー旅行」
「…それは解ったけど」
鈴は解らなかった。平片の眼の前で、恵を叩いてしまったから。
「…どうして?」
「どうして追い掛けたかって? 当たり前だろう! 恋人が泣いて逃げるのを、ほっとく俺だと思ってたのかよ?」
鈴はまた涙を零した。
「だって。恵を叩いた。裕太の事僕の中で大事にしたかったのに…云われて、カッてなって叩いた~恥ずかしくて…」
わ~っと、ボロボロと泣く鈴を、平片が玄関の鍵を開けて鈴を中へ促し、ドアを閉める。
「恵が鈴にごめんって」
「…ヒク。…恵が?」
「あぁ。考え無しに云った事、後悔してる」
解るからこそ、鈴も後悔している。
「僕、今度こそ裕太に嫌われたと思ったんだ」
「なんで?」
「だからっ!」
顔を上げて、鈴が双眸を見開く。平片が唇を重ねたから。鈴は眼を閉じ、また涙を零す。
「鈴は泣き虫だな」
唇が離れて平片が笑う。
「う、うるさいっ」
鈴は真っ赤になって、そっぽを向いた。
「鈴は寂しがり屋だ」
「だまれっ」
「鈴はこんなに嫉妬深い」
「悪かったなっ」
「鈴」
「…なんだよ」
平片が顔の角度を変えて再びキスをする。
「…鈴」
「…何?」
「愛してる」
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