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天使は甘いキスが好き
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鈴は双眸を見開く。
「愛してくれるの?」
鈴は涙声で訊く。
「当たり前だろう」
鈴は唇を噛み締めながら、平片の胸に顔を押し付けた。
「嫌う訳無いだろう? 俺が認めた男だ。鈴は」
「うん」
「素直な鈴が好きだ。意地っ張りな鈴も、泣き虫な鈴も」
「もう、良いから…」
鈴は涙眼で見上げる。平片は鈴を横抱きに抱き上げて、自室へ向かった。
「恵、薬飲んだ?」
十和子が風呂上りの恵に訊く。
「あ、忘れてた」
「駄目でしょう? 痛み止めなんだから」
ギブスが濡れない様に、伊吹が背中を流してくれた。伊吹もホカホカになって、バスタオル姿でバスルームから飛び出して来る。床が伊吹の足跡で濡れて行った。
「あ、こら伊吹っ待てっ」
太一が追い掛けて、伊吹は駆けっこのつもりで大騒ぎ。
「恵? 元気無いな」
太一が伊吹を捕まえて抱き上げると、恵が塞ぎ込んでいるのに気が付いた。
「疲れたのかな。薬飲んだらもう寝る」
恵は頭をタオルで拭いて、薬を飲むと直ぐ自室へ上がった。恵はベッドに腰を下ろして、携帯のフラップを開く。
「鈴、怒ってたよね。どうしよう。電話し辛い」
ドヨンと落ち込む恵の手の中で、携帯が鳴る。
「うわっ!?」
思わず恵は手の中に在った携帯を、ポンと布団の上に放り投げてしまった。が、龍之介の着信だけ、音を変えていたので、直ぐ龍之介だと解った。
「わあ~~ごめんなさい!! 龍之介さんっ!」
恵は急いで携帯に出る。
【恵? 寝てた?】
「ううん。ごめんなさい、大丈夫」
【なら良いけど…勉強進んでる?】
「進んでるけど…」
恵は鈴を思い出し、うるうると泣き出した。
ベッドの中で平片が起き上がる。横で鈴は涙を零しながら眠っていた。平片は鈴の額に、汗で濡れた前髪を掻き上げてやり、目尻にキスをする。鈴の携帯が、数回目の着信暦を知らせた。恵からのメールだ。ベッドの下。平片は鈴が起きない様に、鈴の携帯に手を伸ばし、履歴を見る。
全て『鈴、ごめんね? 許して鈴』と打たれている。恵はどんな思いでメールを打ったのか。
「泣いてんだろうな。二人共素直なのかそうじゃないのか、まったく」
「う…ん」
鈴が寝返りを打つ。ゆっくりと開かれた眼は青い海の色だ。
「裕太?」
掠れた声が色っぽい。
「落ち着いたか?」
「…うん」
平片が何を云いたいか解っている。携帯が何度も鳴っていたから。
「恵が心配してる」
「…携帯…」
平片は起き上がって、キョロキョロと周りを見ている。携帯を探しているのだ。
「ほら。今さっきも鳴ってた」
「…ありがとう」
鈴は恵からの着信暦を見て、溜息を吐く。十数件のメールが、数分後毎に届いている。鈴は携帯のナンバーを出して鳴らせた。
「…話中だ」
「また掛ければ良いさ」
「うん。裕太、シャワー借りるね?」
全裸の鈴が惜しみなく、その姿を平片の眼の前に晒す。
「あぁ。後から行くから」
平片が眩しそうに見詰めた。鈴は立ち止まり、振り返る。
「ひとりで入る」
「ケチ」
「裕太はしつこいから、のぼせるのっ」
鈴が頬を染めてドアノブを掴もうとしたが、誰かが先にドアを開けた。
「裕太~晩飯…」
「愛してくれるの?」
鈴は涙声で訊く。
「当たり前だろう」
鈴は唇を噛み締めながら、平片の胸に顔を押し付けた。
「嫌う訳無いだろう? 俺が認めた男だ。鈴は」
「うん」
「素直な鈴が好きだ。意地っ張りな鈴も、泣き虫な鈴も」
「もう、良いから…」
鈴は涙眼で見上げる。平片は鈴を横抱きに抱き上げて、自室へ向かった。
「恵、薬飲んだ?」
十和子が風呂上りの恵に訊く。
「あ、忘れてた」
「駄目でしょう? 痛み止めなんだから」
ギブスが濡れない様に、伊吹が背中を流してくれた。伊吹もホカホカになって、バスタオル姿でバスルームから飛び出して来る。床が伊吹の足跡で濡れて行った。
「あ、こら伊吹っ待てっ」
太一が追い掛けて、伊吹は駆けっこのつもりで大騒ぎ。
「恵? 元気無いな」
太一が伊吹を捕まえて抱き上げると、恵が塞ぎ込んでいるのに気が付いた。
「疲れたのかな。薬飲んだらもう寝る」
恵は頭をタオルで拭いて、薬を飲むと直ぐ自室へ上がった。恵はベッドに腰を下ろして、携帯のフラップを開く。
「鈴、怒ってたよね。どうしよう。電話し辛い」
ドヨンと落ち込む恵の手の中で、携帯が鳴る。
「うわっ!?」
思わず恵は手の中に在った携帯を、ポンと布団の上に放り投げてしまった。が、龍之介の着信だけ、音を変えていたので、直ぐ龍之介だと解った。
「わあ~~ごめんなさい!! 龍之介さんっ!」
恵は急いで携帯に出る。
【恵? 寝てた?】
「ううん。ごめんなさい、大丈夫」
【なら良いけど…勉強進んでる?】
「進んでるけど…」
恵は鈴を思い出し、うるうると泣き出した。
ベッドの中で平片が起き上がる。横で鈴は涙を零しながら眠っていた。平片は鈴の額に、汗で濡れた前髪を掻き上げてやり、目尻にキスをする。鈴の携帯が、数回目の着信暦を知らせた。恵からのメールだ。ベッドの下。平片は鈴が起きない様に、鈴の携帯に手を伸ばし、履歴を見る。
全て『鈴、ごめんね? 許して鈴』と打たれている。恵はどんな思いでメールを打ったのか。
「泣いてんだろうな。二人共素直なのかそうじゃないのか、まったく」
「う…ん」
鈴が寝返りを打つ。ゆっくりと開かれた眼は青い海の色だ。
「裕太?」
掠れた声が色っぽい。
「落ち着いたか?」
「…うん」
平片が何を云いたいか解っている。携帯が何度も鳴っていたから。
「恵が心配してる」
「…携帯…」
平片は起き上がって、キョロキョロと周りを見ている。携帯を探しているのだ。
「ほら。今さっきも鳴ってた」
「…ありがとう」
鈴は恵からの着信暦を見て、溜息を吐く。十数件のメールが、数分後毎に届いている。鈴は携帯のナンバーを出して鳴らせた。
「…話中だ」
「また掛ければ良いさ」
「うん。裕太、シャワー借りるね?」
全裸の鈴が惜しみなく、その姿を平片の眼の前に晒す。
「あぁ。後から行くから」
平片が眩しそうに見詰めた。鈴は立ち止まり、振り返る。
「ひとりで入る」
「ケチ」
「裕太はしつこいから、のぼせるのっ」
鈴が頬を染めてドアノブを掴もうとしたが、誰かが先にドアを開けた。
「裕太~晩飯…」
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