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天使は甘いキスが好き
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裕太の兄、文也が鈴の全裸を凝視した。
「兄貴っ!?」
平片がベッドから飛び出して、毛布を鈴の裸体に巻き付ける。
「鈴ちゃん? 色白いネェ。おやキスマークいっぱい♪ 相変わらず美人だな」
「見るなっ!」
平片が吠える。
「スキーじゃなかったのかよ!?」
「早めに切り上げたの。それより、お前達そういう仲だったのかぁ」
平片の頬が引き攣る。
「それより良いのか? 鈴ちゃん固まってんぞ?」
ーーー文也さんに見られた、文也さんに見られた。
鈴の頭の中でエンドレス状態に嵌まっていた。
「鈴、大丈夫か!? 兄貴はあっち行け!」
平片が吠え捲くるので、文也は肩を竦めてドアを閉める。
「文也さんに見られたっ!!」
「解った解った。落ち着け鈴。俺も動揺している」
鈴は平片に抱き付いて、横腹を抓った。
「いっでぇっ!! 何すんだよ!?」
「裕太が悪い! 家には皆旅行で居ないって! うっ見られたっっ!!!」
鈴が真っ赤になる。
「どうしよう、裕太とヤッテルのばれた! ってか、僕の裸見られたぁ!」
「…そっちかい」
平片が床に座り込んだ鈴を、抱き締めた。
「俺が鈴を守るの。良いか? よく聞けよ?」
「それって催眠暗示みたいで嫌いっ!!!」
ーーー未来の生徒会長がこれかよ。
でも、こんな姿を見せるのは、平片だけだと信じている。
ベッドの上でぐったりな恵の、握られた携帯が鳴る。真っ赤な眼で、ディスプレイを見る。恵は飛び上がった。
「鈴っ!」
【…恵?】
「あのね? 何度もメールしたんだよ?」
【うん】
「鈴に嫌われたと思って、本当にごめんんね!! 考え無しに…平片との事嬉しくて」
【うん。心配してくれてたんだよな。僕こそごめん。痛かったろ? 叩いたりしたから】
鈴は電話の向こうで謝罪する。恵は見えない筈の鈴に、顔を横に振った。
「大丈夫だよ。だって…鈴には幸せになって欲しいんだから」
鈴が息を呑む。傍らで、平片が鈴の片方の手を握った。勇気をくれる大きな手。前に進められる様にと、愛を込めて。
「恵、ありがとう。あの、またそっちへ行っても良い?」
【当たり前だよっ鈴が来てくれなきゃ、俺まだ不安だもん】
泣き声が嬉しさに変わる。
「恵」
【あのね? 龍之介さんから云われたんだ。大切な親友も親戚も、大事にしなさいって。鈴、大好きだからね? あ、竜之介さんの次だけど…】
恵が恥ずかしそうに云う。鈴は微笑んで、双眸を閉じる。
「大丈夫。僕も同じだよ? 裕太の次に、恵が大好きだから」
「おい」
平片が割って入ろうとするのを、鈴は片手で平片の顔を押し退ける。
「じゃ、おやすみ。また明日ね?」
【うん。鈴おやすみ。平片にも云って置いてね? そこで声がしたから】
鈴は平片を一瞥して、解ったと答えた。電話を切ると、平片がベッドに鈴を押し倒す。
「電話して良かっただろ?」
「あぁ」
「これでスッキリしただろう?」
「まあな。で? その手はなんだ?」
「あ? ばれた?」
平片が、せっかく着替えた鈴のスラックスのジッパーを下ろす。
「この……万年発情期っ!」
鈴の声が隣室の文也の耳に届いた。
「お? 夫婦喧嘩か。犬も食わないっての」
これでは両親に孫を見せるのは、俺かよと。文也はベッドの上で雑誌を捲る。見合い話がいくつか来ている。改めて写真でも見るかと、階下へ下りて行った。
「兄貴っ!?」
平片がベッドから飛び出して、毛布を鈴の裸体に巻き付ける。
「鈴ちゃん? 色白いネェ。おやキスマークいっぱい♪ 相変わらず美人だな」
「見るなっ!」
平片が吠える。
「スキーじゃなかったのかよ!?」
「早めに切り上げたの。それより、お前達そういう仲だったのかぁ」
平片の頬が引き攣る。
「それより良いのか? 鈴ちゃん固まってんぞ?」
ーーー文也さんに見られた、文也さんに見られた。
鈴の頭の中でエンドレス状態に嵌まっていた。
「鈴、大丈夫か!? 兄貴はあっち行け!」
平片が吠え捲くるので、文也は肩を竦めてドアを閉める。
「文也さんに見られたっ!!」
「解った解った。落ち着け鈴。俺も動揺している」
鈴は平片に抱き付いて、横腹を抓った。
「いっでぇっ!! 何すんだよ!?」
「裕太が悪い! 家には皆旅行で居ないって! うっ見られたっっ!!!」
鈴が真っ赤になる。
「どうしよう、裕太とヤッテルのばれた! ってか、僕の裸見られたぁ!」
「…そっちかい」
平片が床に座り込んだ鈴を、抱き締めた。
「俺が鈴を守るの。良いか? よく聞けよ?」
「それって催眠暗示みたいで嫌いっ!!!」
ーーー未来の生徒会長がこれかよ。
でも、こんな姿を見せるのは、平片だけだと信じている。
ベッドの上でぐったりな恵の、握られた携帯が鳴る。真っ赤な眼で、ディスプレイを見る。恵は飛び上がった。
「鈴っ!」
【…恵?】
「あのね? 何度もメールしたんだよ?」
【うん】
「鈴に嫌われたと思って、本当にごめんんね!! 考え無しに…平片との事嬉しくて」
【うん。心配してくれてたんだよな。僕こそごめん。痛かったろ? 叩いたりしたから】
鈴は電話の向こうで謝罪する。恵は見えない筈の鈴に、顔を横に振った。
「大丈夫だよ。だって…鈴には幸せになって欲しいんだから」
鈴が息を呑む。傍らで、平片が鈴の片方の手を握った。勇気をくれる大きな手。前に進められる様にと、愛を込めて。
「恵、ありがとう。あの、またそっちへ行っても良い?」
【当たり前だよっ鈴が来てくれなきゃ、俺まだ不安だもん】
泣き声が嬉しさに変わる。
「恵」
【あのね? 龍之介さんから云われたんだ。大切な親友も親戚も、大事にしなさいって。鈴、大好きだからね? あ、竜之介さんの次だけど…】
恵が恥ずかしそうに云う。鈴は微笑んで、双眸を閉じる。
「大丈夫。僕も同じだよ? 裕太の次に、恵が大好きだから」
「おい」
平片が割って入ろうとするのを、鈴は片手で平片の顔を押し退ける。
「じゃ、おやすみ。また明日ね?」
【うん。鈴おやすみ。平片にも云って置いてね? そこで声がしたから】
鈴は平片を一瞥して、解ったと答えた。電話を切ると、平片がベッドに鈴を押し倒す。
「電話して良かっただろ?」
「あぁ」
「これでスッキリしただろう?」
「まあな。で? その手はなんだ?」
「あ? ばれた?」
平片が、せっかく着替えた鈴のスラックスのジッパーを下ろす。
「この……万年発情期っ!」
鈴の声が隣室の文也の耳に届いた。
「お? 夫婦喧嘩か。犬も食わないっての」
これでは両親に孫を見せるのは、俺かよと。文也はベッドの上で雑誌を捲る。見合い話がいくつか来ている。改めて写真でも見るかと、階下へ下りて行った。
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