鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー

吉良龍美

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鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー

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 さえが怯えて、疾風に訊く。
「すみません、あれは次男の隼人です。今テンパッてるんで」
「はあ…」
「お母さん…」
 里桜がぐったりとして、玄関で蹲る。
「まぁどうしたのよ? 二人とも」
「俺、駄目。運転しながら初酔い」
「俺も…先生運転荒いよ」
「仕方ねえだろ? バックシートで隼人が無言のオーラ出し撒くって、今のあいつに運転させたら、おっかねーよ。くそ、背後からシート蹴りやがるし」
 疾風と里桜は盛大な溜息を零す。
「あっ、薫さん! 鈴は!?」
 疾風がそうだと立ち上がる。
「…もしやの喧嘩? 鈴が此処に来た理由は、他にもあったのね?」
 隼人の慌てっぷりに、薫は頭を抱えた。

「寝てる…」
 どっと疲れた隼人は眠る鈴の横で膝を着いた。
「隼人さん鈴は? って…こいつ寝てんの?」
 里桜が呆れてテーブルに伏せた。
「鈴も疲れてるのよ。初めて此処までひとりで来たんだから」
「俺だって疲れたっ!」
 拗ねた里桜の頬を、疾風が人差し指で突く。
「俺もだ。おやじに電話してくるから、寝床用意頼むな里桜。俺はもう寝るぞ」
「は~い」
 話し声に鈴は煩いと云いたげに眉間に皺を寄せる。
「鈴」
 隼人の声に鈴が「ん…」と声をあげてほろりと涙を零した。
「すまない鈴。信じて欲しい、私は君だけを愛しているんだ」
 鈴にしか聞こえない様に、小さな声で呟く。うっすらと開いた瞳に、憔悴した隼人の顔が映った。寝ぼけた鈴は頬を撫でる隼人の手をそっと掴んで、唇に寄せると切なげに微笑み、また眠りの底へ落ちていった。

 明るい光が眩しくて、鈴は顔を横に向けた。
「……」
 鈴を抱き締めるように眠る隼人の寝顔が在る。どうして? と考えて鈴は昨夜の事を思い出した。
『すまない鈴。信じて欲しい、私は君だけを愛しているんだ』
 ーーー夢じゃなかったんだ。
 隼人の言葉を思い出して紅くなる鈴の頬に、隼人がキスをする。
「鈴、おはよう」
「…隼人さん」
「鈴、もう落ち着いてる?」
「うん。母ちゃんは?」
「薰さんとお祖母さんは買い物に行ってる。…まったくなんでいきなり此処に来る事になったのかな。説明してくれるかな? 鈴」
 隼人が起きだしたので、鈴も上半身を起こした。

 隣に隼人が居て、里桜と疾風がテーブルを囲っている。
「僕…」
 隼人が鈴の背を撫でる。鈴は里桜を見詰めて、枕元に置いていたバッグから、戸籍謄本を取り出した。隼人が受け取って、紙を開くと双眸を見開く。里桜がそれを受け取って言葉を呑み込んだ。
「僕、かあちゃんの子供じゃなかったんだ」
 疾風も驚愕して里桜を見た。
「兄ちゃんに悪い事したなって。僕家族だって信じて、いっぱい甘えてた。兄ちゃん…隼人さんの事好きだったんだよんね? もし…ね? もしも僕が…」
 涙が溢れて零れ落ちる。
「鈴、云うな。『いなかったら』なんて云ったら、俺が許さない」
 里桜が怒って睨む。不思議だった。小さかった頃、突然現れた小さな子供が『弟』だと云われ、言語障害でも必死に里桜の後をついて歩いていた鈴は、置いて行かないでとよく泣いていた。あれは置いて行かないでではなく『捨てないで』だったのではと、里桜は今気付く。
「君は昔も今も、薫さんや里桜の家族だ。これからも、天音鈴は里桜の双子の弟で、甘えん坊でやんちゃな可愛い男の子だよ。私の最愛の恋人だ君は。父さんや薫さんには、流石に秘密だけどね?」
「おい隼人お前なぁ」
 疾風が頭を抱える。隼人は鈴を抱き締める。里桜が見ていても、疾風が居ても。
「私から離れないで。私をひとりにしないで欲しい。鈴が私の全てなんだ。里桜にとっても大事な兄弟に変わりない筈だ」
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