鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー

吉良龍美

文字の大きさ
129 / 144

鬼畜オオカミと蜂蜜ハニー

しおりを挟む
「撮るな変態」
 里桜が噛み付く。ジンが鼻で笑うと、鈴に歩み寄ってその片頬を撫でた。
「可愛いな」
 鈴が頬を染める。ドキドキして眼を伏せると、扉の向こうから春彦と美代が顔を出した。
「きゃーーーーーー鈴ちゃん!」
 美代が鈴に抱き着いて可愛いを連発。女子達が唖然とした。
「あの人誰!?」
「あー、ごめん俺の妹」
「「「はあ?」」」
 生徒達が双眸を見開く。
「久しぶり、鈴ちゃん会えて嬉しい。ほんでもって~」
 美代が剛を一瞥して一言。
「熊もね」
「誰が熊じゃっ!!!」
「やだ~熊がミニスカ? キッモ」
「う、うるせーっ! 好きでこんな格好……」
 情けなくなって涙が出そうだと剛は唸る。
 やんやと美代と剛がいがみ合う。なんだが気が合っているようだ。鈴が困って美代の背を突いた。
「午前中だけのメイド当番だから、午後から着替えたら校内を一緒に見て回ろうね?」
「えっ? そのままの格好で良いじゃない? せっかく可愛いのに」
 デジカメも持参して来たと、がっかりして云う。
「母ちゃんにこの格好は見付かるとちょっと…」
「む~~~」
「ほら美代、邪魔になるから行くよ? 鈴ちゃん後でね? …剛」
 ビクッと肩を揺らした剛が汗ダラダラで春彦を振り返る。
「それお持ち帰りで」
「「「………怖くて聞けない」」」
 生徒達がドン引いた。

「父さん」
 疾風が豚汁とカレーの販売ブースに来ると、生徒とその家族らしき人達で賑わっていた。
「疾風、なんだもう買いに来たのか? まだ昼までには時間があるだろう」
「買いに来たんじゃないよ残念ながら。隼人が退院の迎えは良いそうだから、序でにこっちへ直接顔を出すってさ。なんかあずささんのお父さんだっけ? 院長先生と話し済んだら来るみたいだけど」
「そうなのか? あぁ、私の携帯にメール来ていたのか。気付かなかったよ」
 晴臣が携帯を確認する。薫が振り返って「大丈夫?」と訊いて来た。
「だと思って隼人が俺に電話寄越して来た。あいつ…記憶戻ったってさ」
「っ! まあっ本当に? 良かったわ!」
「それは良かった。これで鈴君も…」
 晴臣と薫がハッとして黙り込む。
「?」
 疾風が首を傾げる。そこへ校内アナウンスで疾風が呼ばれた。
「わりぃ俺行くから」
「あ、あぁ。また後でな」
 晴臣と薫が見送り、薫は嘆息する。
「鈴君の気持ちを優先してあげよう」
「……ええ」
 涙を浮かべた薫が俯いて首肯した。

「オレンジジュース二につと、チョコクレープひとつ」
 鈴がメモを衝立の向こう側に声を掛ける。すると剛が鉢巻を巻いて「おう」と云った。結局剛はメイド役は没になった。何故ならその異様な出で立ちにちいさな子供が恐怖で泣き叫んだからだ。今は体操着に鉢巻き姿だ。剛本人は「助かった」と喜んでいる。
「お姉ちゃんのメイドさん可愛い!」
 幼稚園児が母親とやって来て、「一緒に写真撮って」とせがまれ、鈴はしゃがんで園児と保護者の携帯で記念写真を撮る。するとちょっとした列ができて、写真撮影会が始まった。
「鈴君のおかげで客ががっぽり♪ 鈴君は特別そこで看板やってて!」
 女子の一声に鈴が眼を丸くする。「一緒に写真撮って」は可愛いおちびさん達だけではない。何故かオタク系の怪しげなおっさんまで並んでいた。
「…午前中の我慢か」
「鈴」
 メイド服から制服に着替えた里桜が、鈴に声を掛ける。
「生徒会の方行くけど、無理するなよ? 女子には声掛けといたから」
「うん、いってらしゃい。あの、後で話があるんだけど、いい?」
「え? あぁ~大丈夫だけど、生徒会の用事終わってからになるぞ?」
「うん、それで大丈夫」
 里桜が鈴の頭を撫でる。
「後でな」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】毎日きみに恋してる

藤吉めぐみ
BL
青春BLカップ1次選考通過しておりました! 応援ありがとうございました! ******************* その日、澤下壱月は王子様に恋をした―― 高校の頃、王子と異名をとっていた楽(がく)に恋した壱月(いづき)。 見ているだけでいいと思っていたのに、ちょっとしたきっかけから友人になり、大学進学と同時にルームメイトになる。 けれど、恋愛模様が派手な楽の傍で暮らすのは、あまりにも辛い。 けれど離れられない。傍にいたい。特別でありたい。たくさんの行きずりの一人にはなりたくない。けれど―― このまま親友でいるか、勇気を持つかで揺れる壱月の切ない同居ライフ。

血のつながらない弟に誘惑されてしまいました。【完結】

まつも☆きらら
BL
突然できたかわいい弟。素直でおとなしくてすぐに仲良くなったけれど、むじゃきなその弟には実は人には言えない秘密があった。ある夜、俺のベッドに潜り込んできた弟は信じられない告白をする。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

【8話完結】いじめられっ子だった俺が、覚醒したら騎士団長に求愛されました

キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。 けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。 そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。 なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」 それが、すべての始まりだった。 あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。 僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。 だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。 過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。 これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。 全8話。

大嫌いなこの世界で

十時(如月皐)
BL
嫌いなもの。豪華な調度品、山のような美食、惜しげなく晒される媚態……そして、縋り甘えるしかできない弱さ。 豊かな国、ディーディアの王宮で働く凪は笑顔を見せることのない冷たい男だと言われていた。 昔は豊かな暮らしをしていて、傅かれる立場から傅く立場になったのが不満なのだろう、とか、 母親が王の寵妃となり、生まれた娘は王女として暮らしているのに、自分は使用人であるのが我慢ならないのだろうと人々は噂する。 そんな中、凪はひとつの事件に巻き込まれて……。

竜人息子の溺愛!

神谷レイン
BL
コールソン書店の店主レイ(三十七歳)は、十八歳になったばかりの育て子である超美形の竜人騎士であるルークに結婚を迫られていた。 勿論レイは必死に断るがルークは全然諦めてくれず……。 だが、そんな中で竜国から使者がやってくる。 そしてルークはある事実を知らされ、レイはそれに巻き込まれてしまうのだが……。 超美形竜人息子×自称おじさん

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

バツイチ上司が、地味な僕を特別扱いしてくる

衣草 薫
BL
理性的でクールなバツイチ上司・桐原恒一は、過去の失敗から、もう誰も必要としないと決めて生きてきた。 男が好きだという事実を隠し、「期待しなければ傷つかない」と思い込んできた部下・葉山直。 すれ違いと誤解の果てに、直が職場を去ろうとしたとき、恒一は初めて“追いかける”ことを選ぶ。 選ばれないと信じてきた直と、逃げないと決めた恒一。 二人の距離が近づくことで、直は「ここにいていい」と思える場所を見つけていく。 元ノンケ上司×自己肯定感低め部下の社会人BL。※ハッピーエンド保証。

処理中です...